2020年1月10日金曜日

子育て先進国のいいとこ取りをして、日本の出生率を上げる

このまま出生率が上がらなければ、日本は人口減少の悪循環から抜け出すことができません。これまでの海外取材を振り返り、各国の取り組みの良いとこ取りし、もっと出生数(出生率)を上げるためにはどうしたら良いかを考えてみます。
これまで取材した子育て先進国と日本の変化を整理ー2020年版


職場復帰を保証する


独立行政法人経済産業研究所 客員研究員 山口 一男氏の論文「女性の労働力参加と出生率の真の関係について-OECD諸国の分析と政策的意味」では、働く女性の出生率を増加させる要因は「仕事と育児の両立度」と「職の柔軟性による両立度」であり、後者が与える影響のほうがより大きいと指摘されています。

取材先の国の多くでは、女性が育休を取得し職場復帰するときには、元の職場で同じポジションに戻すことが法律で決められていたりそれがあたりまえだったりという環境でした。それらの国では、チームや職場の残った人間がお互いにカバーをするのが当然。お互い様で、次は私の番だからという考え方です。これなら安心して妊娠・出産に臨めます。
対して日本ではマタハラやパワハラの報道が後を絶ちません。一時的にでも職場を離脱することに対して寛容ではありません。一度席を空けると、そこには別な人間を入れて埋めてしまうのが日本の一般的な企業です。

出産し、育休を終えても復職できないのでは妊娠・出産をためらうのはあたりまえです。女性の就業率が70%を越えた現状で、妊娠・出産=退職、あるいはポジションを失うということであれば出生率が上がるはずがありません。復職の難しさが職の柔軟性を阻む最初の壁です。日本の企業風土的に柔軟な対応が難しいのであれば、労働基準法を改正して復職を保証することを、まず義務づけるべきです。

待機児童解消に向けて


まず、大前提としてこれからの日本の人口構成(出生数予測)を確認する必要があります。本来なら、出生数が毎年200万人を越えた第2次ベビーブーム(1971~74)で生まれたこども達が大人になり、2000年代初頭には第3次ベビーブームが期待されました。しかし日本では第3次ベビーブームは訪れず出生数は増えませんでした。
2013年にカナダ(BC州)を取材したときは、第3次ベビーブームと移民政策を背景に早急な保育所や託児施設の整備が求められていました。2016年の人口は約465万人ですから、わずか3年で30万人以上、7%も人口が増えています。同じ時期、日本では第3次ベビーブームは起こらなかった代わりに、女性の社会進出と就労率の上昇を背景に保育ニーズが急激に高まりました。急激な需要増に対応を迫られるということでいえば、この時のカナダと日本は同じです。

カナダではこの状況にどう対応しようとしたかというと、(用地取得から建設に時間もコストも掛かる)保育所を作るだけではなく、多様な形で子どもの面倒を見てくれる人と場所を増やそうとしました。 保育士資格や子どもを預かるライセンスは定期的な研修受講を義務づけ(研修に参加しないとライセンスの更新ができない)、保育の質が低下しないようにもしていました。同時に、受け入れ可能な施設や空き状況の情報を一本化し、マッチングの仕組みも整備しました。

→ブリティッシュ・コロンビア州の子育て支援
大規模な保育所から自宅預かりまで、施設の充実度も託児料金もピンキリですが、何処を選ぶかは託児に求める要素やクオリティ、経済状況等に応じて選択すれば良いわけです。

取材した国で子どもの預け先で困っていない国は、ニュージーランド(幼保一体化をいち早く進めた)とノルウェー(法律で保育所の確保を義務づけ)だけで、ほかはどこも保育所・託児先の問題は大なり小なりありました。カナダと日本は需要と供給のバランスが絶対的に崩れている状況で、それをどう解決するかという同じ問題を抱えていました。ほかの国では希望に対してどこまで応えるか、利用者はどこまで妥協できるかという選択の仕方の問題です。
パリの公園はベビーシッターに連れ
られた子どもたちで保育園さながら
パリ市でも保育所は不足していて整備を進めていますが、入所希望を全て満たすまでには相当な時間がかかります。そこで、補助するのでベビーシッターを積極的に活用してくださいという発想です。補助を受ければベビーシッターを利用しても保育園に預けた場合と大差ない利用料になります。パリの公園に行けば、ベビーカーや小さな子どもを連れたベビーシッターをたくさん見ることができます。

将来出生数の2017年推計 これより2年早く90万人割れ
日本では認可保育所の定員増ばかりが議論の対象になりますが、時間とお金をかけて箱物を準備している余裕はありません。まず数的な需要を満たす方策が求められます。しかもこれからどんどん出生数が減ることが明確な状況で、需要に供給が追いついた瞬間から今度は供給過剰に転じることは明白なのです。
カナダのように、預かり先をまず確保し、フランスのように補助によって経済的な負担をならす。もっといえば、カナダのように誰もが入れたがる大型の認可園の料金を高くするなど、マーケットの原理を導入して不公平感を無くすということを同時に考えて良いかもしれません。
カナダBC州を取材時(2013年)にはなんと、3年間で2000カ所の認可保育施設(ライセンスの付与)確保を計画していました。日本とカナダBC州の人口比はほぼ30倍ですから、日本で言えば3年で6万カ所設置するという規模です。日本でもこの位のスピード感が必要です。

父親にも産休と柔軟な育休


山口 一男氏の論文で指摘された、働く女性の出生率を増加させるもう一つの要因は「仕事と育児の両立度」を上げることです。そのためには、夫の育児・家事参加が重要になります。日本は取得可能な育休の日数が世界的にもトップクラスです。しかし、その実態はいまだ男性の取得率は僅かに6%程度に留まっています。さらに育休の取得日数は1週間程度という人がほとんどです。EU諸国の「父親休暇」(父親の産休)の平均2週間にも満たない日数です(育休は父親休暇とは別に設定してあります)。
日本の場合はまだ半数が里帰り出産(2016年miku調べ)で、(妻の)両親のサポートに支えられている現状ですが、その比率も段々と下がってきています。里帰り出産をしたり両親のサポートが厚いと、父親が生まれた子と接するまでに時間がかかるうえに両親に頼ってしまい、妻子と接する頻度も少ないまま過ごしてしまいがちです。そうすると父親であることを意識するまでに時間が掛かってしまいます。結果、育児・家事への参加意欲はなかなか芽生えません。

権利としての育休ではなく、取得を義務づける父親の産休を制度化することで生まれたばかりの我が子との接触を早くから持つことになり、父親としての自覚も芽生えることが期待できます。その際には、ブルガリアやルーマニアのように育児講習参加義務づけないと、単なる休暇になりかねません。産休取得は、(里帰り出産などで顔合わせのタイミングも違うので)出生後3カ月以内に○週間取得し、育児講習参加証明書を提出すること(しないと無給)などとしたら良いでしょう。
産休中の給与・給付金は、有給の特別休暇とするか、雇用保険か健康保険か、あるいは地方自治体の行政予算からとするかは検討しなければなりませんが、産休取得=所得の大幅減とならないことが重要です。

育休の取得方法についても、ベルギーのような柔軟さをいきなり求めるのは難しいでしょうが、現在最大でも2回にしか分割できない(考え方は出生直後の産休取得と改めての育休)ものをもっと回数、期間を柔軟に設定できないでしょうか。EUでの主流は最大○○週を分割して、子どもが△歳になるまで取得可というものです。育休取得可能期間もかなり長めです。育休が未就学の5歳まで分割取得できるようになると、夫婦で交互に取得するなどしながら、負担も軽減できるのではないでしょうか。

教育費の軽減と子ども手当の充実


日本の子育てでは、教育費の負担も重荷になっていますが、ノルウェーなど大学まで学費が無料の国も少なくありません(その代わり、大学進学前にふるいにかけられます)。それでも幼児教育・高校の無償化などが進み、かなり教育費(学費)負担は軽減されてきました。
フランスやベルギーでは、子ども手当が充実していて、子どもがいることが経済的な負担にならないよう配慮されています。ベルギーでは、「子どもが6人いて働かないでも暮らせる」と豪語する親もいるという話まで聞きました。
児童手当は年齢が上がると減額ではなく中学から増額するなどの見直しがあっても良いでしょう。

「国難」というなら本気の予算を


安倍首相「国難とも言える状況」少子化対策進めるよう指示
昨年末、戦後出生数が初めて90万人を下回る見通しとなったことを受けて、安倍首相は「大変な事態であり、国難とも言える状況だ」と指摘しました。
家族関係社会支出(対GDP比)
2017年にも一度計算しましたが、改めて最新のGDPで日本とフランスの家族関係社会支出を計算してみます。

フランス
 27,802億ドル×2.92%=811.8億ドル
日本  
 49,718億ドル×1.31%=651.3億ドル

GDPで日本の6割にも満たないフランスが、日本の約25%も多く 家族関係社会支出に予算を割いています。
本当に国難というなら、せめて今の2倍、対GDP比2.6%(それでもフランスよりも小さい)の約1,300億ドル=14兆3千億円くらいの支出は覚悟して予算編成をしてほしいものです。上記の施策を実行に移しても、増額分の7兆円でまかなえるのではないでしょうか。一般会計の約10%ですから、ほかの予算を10%ずつ削減して子育て支援に振り向けるのです。

生まれてくる子ども100万人(現在は90万人を割っていますが)のために7兆円を使えば、単純計算で一人あたり700万円です。ベビーシッター補助に一日1万円、年間250日支給しても250万円です。年収400万円の父親の産休・育休の給付金にあてても約6割として(1年丸々取得しても)240万円。これは最も支援した場合に現状にプラスする金額ですから、ここまでしても直接給付の追加予算としては7兆円なんていう金額には到底届きません。出産祝い金を一律に100万円給付しても1兆円にしかなりません。
実際には事務手続き費用やシステム構築なども発生するでしょうが、普通の企業並の効率で仕事すればそれほど大きな額にはならないはずです。それこそ、出生時にマイナンバーと紐付ければ、あとはほとんど電子認証決済で手続きができるようになるのではないでしょうか。産休・育休取得を後押しするために企業への助成なども考えるでしょうが、最低限の予算にとどめておくべきです。実際、これまで上げた施策を全部実施しても(給付金や助成額にもよりますが)7兆円という金額には届かないでしょう。少なくとも箱物や無駄なシステム投資にお金を使わず、実際に出生率を上げるための施策に覚悟を持って使えば、その半額でも効果は出るはずです。

安倍総理が国難と言うからには、それなりの覚悟を持って取り組んでほしいものです。

1月12日追記

事実婚と婚外子の受け入れ


Facebookで「結婚した女性の出産数は大きく下がってなくて、結婚する女性の数が減ってるというデータを見たことがあります。もしそちらの影響が大きいなら、出産しない理由だけでなく結婚しない理由を取り除くことも必要ですよね」というコメントをいただきました。
確かに男女ともに生涯未婚率が上がっている現状では、出産する前提に結婚があるとすれば大きな問題です。 そこで、海外の出生数に対する婚外子の割合を調べてみると、OECDの平均でも40%で、日本の2.3%は極めて低い事がわかります。
日本は明治以降も家長制を引きずり、子どもは「家」を構成する要素であり、「家」を繋ぐ存在という役割で位置づけられてきました。しかし、「家」を繋ぐために子どもを生むわけではありません。「家」に縛られた妊娠・出産など前時代のものです。

OECD各国の婚外子割合
mikuで取り上げた子育て先進国だけを抜き出して日本と比べると、左下のグラフになります。フランスは約6割(65年ではまだ5.9%!)、一番割合が低いカナダでも1/3が婚外子です。23年ぶりの女優復帰で話題になっている後藤久美子さんも、ジャンアレジさんとは事実婚で3人のお子さんがいます。

日本でも、都市部ではだんだんと事実婚が認められるようになってきましたが、法律や制度、企業の就業規則などはまだ追いついていません。事実婚を社会的に受け入れ、婚外子でも嫡出子と同等の権利を認め、冷ややかな目や白い目で見られることのない社会になれば、出生数も増えるのではないでしょうか。
極めて保守的な安倍政権・自民党ですが、子どもを「家」に属するものではなく、生まれた瞬間から一人の人間として権利を認めるような考え方に変え、民法などの法律や制度の見直しも必要でしょう。

過去の取材レポートリンク

これまで取材した子育て先進国と日本の変化を整理ー2020年版
子育て先進国と日本との違いを整理してみると 2017
子育て先進国と日本との違いを整理してみると 2014

ベルギー取材レポート
その1 子育てに経済的な支援(手当)が手厚いベルギー
その2 週1回の半休で最高40カ月の育休取得が可能
その3 日本の育児支援は周回遅れ、EUでは量の確保から質の向上へ

パリ取材で見えてきた日本の子育て支援の方向性
その1 取材先をフランスにした理由
その2 出産の負担が経済的・体力的に小さいこと  
その3 男性が「産休」を取って育児・家事をする事の意味  
その4 保育園とベビーシッターの差が僅かに月1万円  
その5 都市インフラ的には子育てに優しいとは言えないパリなのに

ノルウェー取材レポート
家族が大事という共通認識と、その実行-ノルウェーに見るFamily Firstな働き方
保育園で0歳児の預かりが無いノルウェー

カナダ取材レポート
根本的に前提を変えるべき時に来た日本の子育て支援
Child Care Resource Centre に代わるのは日本では? 
Nobody's Perfect (ノーバディズ パーフェクト)発祥の国で、現状を聞いて来ました 
ブリティッシュ・コロンビア州の子育て支援を整理しました 

mikuの海外取材記事
経済的支援だけでなく柔軟な子育て休暇が充実のベルギー 
「男を2週間でパパにする」フランスの子育て - vol.50 
フィンランドの子育てに学ぼう! - vol.44 
子どもの権利を最優先する国 ノルウェーの子育て - vol.39 
それぞれの子どもを尊重する!カナダの子育て - vol.35 
子どもの個性を伸ばす!ニュージーランドの子育て - vol.30 
スウェーデンで浸透している「叩かない子育て」は、日本で実現できるか? - vol.24

 


2020年1月7日火曜日

これまで取材した子育て先進国と日本の変化を整理ー2020年版

昨年のベルギー取材を終えた時点で子育て先進国取材は5カ国となりました。過去にも2度子育て先進国と日本の違いを整理してきましたが、ベルギーを加えて各国の変化も加えて再度整理してみます。

過去の取材国のそれぞれの取り組み詳細(取材時)については、過去の記事を参照いただくとして(最後にリンクを付けます)、最初のニュージーランド取材からは8年、カナダ(BC州)から7年など随分経過しているため、取材時と現状とでは大きく変化している可能性もあります。
※ニュージーランドの新しい情報は、「ニュージーランドにおける子育て支援政策~乳幼児保育政策を中心に:クレアレポート No.450」などをご覧ください。

2010年代は北欧諸国も出生率が低下


上記の表には最新データしか示していませんが、例えば合計特殊出生率をOECDのデータから抜き出してグラフ化(2010~2017)すると以下のようになります。
このグラフにはmikuで取り上げた北欧の2国、スウェーデン(高祖常子が取材)、フィンランド(現地取材はせず、大使館と周辺取材のみ)も加えてみました。
OECD全体では1.7をキープして変わらないのですが、子育て先進国として取材した国は各国とも漸減傾向です。特に幸福度や様々な指標で上位に位置する高福祉国フィンランドの出生率の急降下は、世界的にも話題になりました。
最高レベルの子育て政策も無駄? 急減するフィンランドの出生率(Forbes JAPAN)
こうしてみると、政策的に一番成功しているのはフランスのように見えます。

日本の女性の就業率も北欧並みに上昇したのに
出生率は上がらない


次に、女性の就業率の変化を見てみます。
出生率が各国共に漸減しているのと反対に、女性の就業率は漸増しています。
日本の女性の就業率も2010年時点ではG7全体の平均以下でしたが、ニュージーランド取材翌年の2013年に追いつき、2019年には71%に達しました(グラフの色を揃えられず、見づらくて申し訳ございません)。
これまでは女性の労働力率と合計特殊出生率は正の相関関係があると言われ、女性の社会進出が進んでいる国ほど出生率は高いとされてきました。日本の女性も北欧諸国並みの就業率に達したのだから、出生率も北欧並みに上がるかというとそうはなりませんでした。上の2つのグラフを見る限り、この相関はもはや当てはまらなくなっています。
この相関の真偽と根拠について確かめようと探していたら、こんな論文に行き着きました(なんと、2006年の論文です)。 

独立行政法人経済産業研究所 客員研究員 山口 一男氏(シカゴ大学社会学部教授)の研究論文
女性の労働力参加と出生率の真の関係について-OECD諸国の分析と政策的意味
 
ここに、指摘してあるのは、「女性の労働力参加の増加は出生率の減少を生み出す強い傾向にあったが、1980年代以降その影響の大きさが弱まったために出生率の減少を抑えた」ということであり、女性の社会進出が出生率を上げるわけではないということです。
出産・育児の機会コストを規定するのは女性の立場からみた仕事と家庭の役割の両立し易さであり、この役割両立度は、
① 家族環境(夫が家事・育児を共にするなど)
② 職場環境(就業時間や場所に柔軟性があるなど)
③ 地域環境(託児所施設が十分にあるなど)
④ 法的環境(育児休業が保証され所得補償が十分にあるなど)
といった様々な社会環境に依存すると指摘しています。
さらに、この論文では働く女性の出生率を増加させる要因は「仕事と育児の両立度」と「職の柔軟性による両立度」であり、後者が与える影響のほうがより大きいと結論づけています(2006年)。
この論文を読むと、取材した国々に当てはまることばかりです。是非ご一読ください。
しかし、フィンランドの出生率低下を見ると、更に一歩進んでこの役割両立だけでは語れない段階にきているのかもしれません。

日本で近年大きくクローズアップされた保育所問題の背景には女性就業率の増加があります。山口氏が指摘する仕事と家庭の役割を両立しやすくする環境の一つである③地域環境の要素ですが、保育所を増やしても待機児童がなかなか減りません。出生数は減っているのに女性の就業率が上がり、保育を必要とする家庭の増加数が子どもの減少数を上回っているからということがこのグラフからも良くわかります。
※令和元年の就業年齢(15歳~64歳)は7,517万9千人。女性は約半数とすると約3,760万人。就業率1%は、約37万人に相当します。2010年から就業率が10%上がったということは、毎年約37万人ずつ働く女性が増えているわけです。

子育て支援の財源はどこから?


上記山口氏があげた「出産・育児の機会コスト」を下げる要因のうちの①②については家庭や職場の問題で、国や行政が関わるのは③地域環境、 ④法的環境ということになります。③地域環境と④法的環境が整備されれば①②についても自然と改善されてきます。そのためにも、職の柔軟性と育児休業時等の所得補償、子どもの育児に対する手当など経済的な支援も必要になります。
それを可能にするためには、個人への補償・手当だけでなく企業への助成などの財源を確保しなければなりません。フランスやベルギーでは子どもを育てる上での経済的な負担はほとんど無いといった感じでした。
今回、比較表に税金についての項目を追加しました。可処分所得、所得税や社会保障負担率は、会社員以外も含めた平均です。OECDが今注目しているのはTax wedge(税のくさび)です。 これは雇用主が支払う給与などの総額から引かれる諸税と社会保障負担費の割合のことです。フランスやベルギーは50%前後にもなります。所得の半分は手取りで持って行かれているのです。それに加えて20%を越える高い付加価値税です。
付加価値税率(標準税率及び食料品に対する適用税率)の国際比較
上のグラフは、財務省のページに掲載されているデータですが、ここで注目するのは食品の軽減税率(ブルーの帯)です。Tax wedgeが高いフランスやベルギーも付加価値税は20%を越える高率ですが、食品は5.5%と6%。日本よりも低率です。
一方、Tax wedgeが日本並みのノルウェーや北欧諸国は、軽減税率の食品でも10%を越えています。ここに税の考え方の違いが出ているようです。

ベルギーのホテルの自室で食事
スーパーで購入した食材とワイン
海外取材ではその都市に1週間ほど滞在するので、可能であればキッチン付きのホテルを選ぶようにしています。取材相手の都合やスケジュール次第で食事の時間も不規則になります。ホテルに戻ってからも取材の整理やメールのチェック、返信などで時間に追われます。
欧米ではレストランの食事の量も多く毎回外食では疲れてしまうし食費もかかるので、半分は地元のスーパーなどで食材を調達しホテルで自炊して食事をします。その方が時間も有効に使えます。スーパーでの食品価格は感覚的にはフランスやベルギーでは日本とあまり変わりませんでした。しかし、ノルウェーでは何もかもが高く、お菓子でさえもなかなか手が出せませんでした。

日本でこれから財源を確保する方法としてTax wedgeを上げるか、付加価値税を上げるか、どちらかの選択が迫られますが、所得が増えない現状では答えは自ずと見えてくるのではないでしょうか。

子育て先進国のいいとこ取りをして、日本の出生率を上げる」 へつづく

過去の取材レポートリンク
子育て先進国と日本との違いを整理してみると 2017
子育て先進国と日本との違いを整理してみると(2014)

ベルギー取材レポート
その1 子育てに経済的な支援(手当)が手厚いベルギー
その2 週1回の半休で最高40カ月の育休取得が可能
その3 日本の育児支援は周回遅れ、EUでは量の確保から質の向上へ

パリ取材で見えてきた日本の子育て支援の方向性
その1 取材先をフランスにした理由
その2 出産の負担が経済的・体力的に小さいこと  
その3 男性が「産休」を取って育児・家事をする事の意味  
その4 保育園とベビーシッターの差が僅かに月1万円  
その5 都市インフラ的には子育てに優しいとは言えないパリなのに

ノルウェー取材レポート
家族が大事という共通認識と、その実行-ノルウェーに見るFamily Firstな働き方
保育園で0歳児の預かりが無いノルウェー

カナダ取材レポート
根本的に前提を変えるべき時に来た日本の子育て支援
Child Care Resource Centre に代わるのは日本では? 
Nobody's Perfect (ノーバディズ パーフェクト)発祥の国で、現状を聞いて来ました 
ブリティッシュ・コロンビア州の子育て支援を整理しました  

mikuの海外取材記事
経済的支援だけでなく柔軟な子育て休暇が充実のベルギー 
「男を2週間でパパにする」フランスの子育て - vol.50 
フィンランドの子育てに学ぼう! - vol.44 
子どもの権利を最優先する国 ノルウェーの子育て - vol.39 
それぞれの子どもを尊重する!カナダの子育て - vol.35 
子どもの個性を伸ばす!ニュージーランドの子育て - vol.30 
スウェーデンで浸透している「叩かない子育て」は、日本で実現できるか? - vol.24