2017年9月23日土曜日

mikuセミナー 「フランスの子育てのヒントを日本に生かすには」 -質疑応答


パネルディスカッションより続く

男性A:貴重なお話し有り難うございます。私自身3回お産に立ち会って、2人目で11日、3人目19日のお休みを取ったんですけど、その辺で大分意識変わったなっていうのを思い起こしながらお話しを聞いていました。質問は2つ有ったんですけど、でも時間があれなので1つだけお伺いしたいんですけど、40代が分水嶺というお話しがあって、男性の働き方も意識も変わって来ているなとあったんですけど、それ以上の年代の人にはそれ以前の意識の人もいらっしゃって、日本には粘土層という言葉がある様に、50代とか60代とかなかなかそういう考えが浸透していかない粘土層っているんですけど、フランスにもやっぱり50代60代のガンコ親父みたいな感じで、「父親はこうあるべき」みたいなことを言ったりするんでしょうか。どんな風土なんでしょうか。

高祖:有り難うございました。ファザーリング・ジャパンでも粘土層をぶち破ろうということで、イクボスプロジェクトを実施しており、今、上の管理職を揺さぶっています。

高崎:いるんですよ。ただ、発言力は弱いんです。というのは、国が明確に示してしまったことだし、人間としての本能と言うこともあったんですけども,父親がいるって言うことは人間として正しいあり方で、声を大にしてそれに反対するのは、自分が恥ずかしいっていう風土なんですね。「わかんないこと言ってる、あの人はずかしーー」みたいな目で見られるようになってます。なので、ちらっとは言うんですよ。育休・産休取ってる人達に「おまえらの時代は良いな-」みたいな事は言うんですが、若い人達が「またあの人恥ずかしいこと言ってる」みたいな目で完全に見てますね。
オモシロイ話ちょっと良いですか?
とある地方で講演させていただいた時に、地方新聞の方がその後コンタクトしてくださって、働き方改革について「今若い人達で、『就職活動で最終面接まで通ったら,日曜日に会社に電話して、本当にその会社が働き方を尊重しているかどうかを確認する』っていうんです。働く事に対する意識の違いを僕も感じていてですねえ」とちょっとそれに対してネガティブな感じで返してくださったんですね。私は逆にそういう人達は働き方改革の希望の光だと思っているので、20代の人達は意識が違って戸惑うかもしれないけれど、そういう時に声を上げられる世代を大事にしていかないともう変わらないので、逆に大事にした方が良いんじゃないんですか?というお返事しました。するとその方、そういう見方はできなかったって。それはやっぱり自分も(その方は40代)上の世代の影響を知らずに受けていたんだろうっておっしゃったんですね。長時間労働は良い事だ、それに対して異議を唱えるゆとり・悟り世代がわかってないんだみたいな固定観念ができている。いかにそれを打ち破るかっていうのは、やっぱり発想の新しさが良い事なんだ、それが光に向いて、良い方に向いていくんだって言い続けていかなければならないんですね。ということがありました。

女性A:大変興味深いお話し有り難うございました。実は、保育園で疑問に思ったので教えていただきたいのですが、預けている子どもが病気や急に熱が出たときには、フランスの場合はどういう対応になるのですか?

高崎:まず、フランスの保育園の仕組みなんですけれども、小児看護士の資格を持っている人が、必ず保育園に一人いなければならないんですね。看護士なので、薬の投与ができるのです。急な発熱の場合はまず親御さんに電話をします。で、看護士が診て状態が重篤ではない場合は熱冷ましを与えて、ちょっと様子を見て大丈夫そうならいつもの時間までお預かりする形にしましょう。やっぱり苦しそうだったら御電話する形で良いですか?みたいにワンクッション置くんですね。もう一つ、地域の消防団との連携が強くありまして、本当にこれは病院に連れて行った方が良いな、危ないなという場合はそこに連絡するマニュアルがあるんです。なんでもかんでも親御さん、熱出た、吐いた、はいお家、っていうのではなくて、ケースバイケースです。それでもやっぱり迎えに来て貰わなければ困るわということになったら、これは働き方なんですが、病気の子どもを迎えに行くっていうのは親だからしょうがないよね、という文化があります。看護休暇も労働法で決まっています。
それでもやっぱりあるんですよ。こどもがいるとしょうがないよね、でもねっていうのはあるんですけど、日本でのそれとは微妙に違いますよね。日本は大変なんですよね?
どういう風に大変なんでしょうね?

高祖:大変ですよ。それを語り出すとまた1時間くらい………

女性B:貴重なお話し有り難うございました。私自身助産師なんですけれども、結婚してすぐに子どもができまして、3年間お休みをして。私の主人は社会人になって10年間一度も有給を取ったことがないような、医師なんですけど。私もキャリアを…、産後のボランティアですとかやってましたけど、やっぱりスキルアップしたいと思いまして、保活に失敗をして、職場に保育園があるところを見つけて、子どもを連れて車で30分通院をして1年間頑張ったんですが、3交代勤務をしつつ子どもを連れて行って、沢山の荷物を運んでおむつ持って帰ってきてというのをやって、結局保育料が二人で10万円。手取りが20万円を切るっていう、夜勤もしててこんな状態で1年間本当に死にそうになってしまったんですが。
フランスの職場の託児所なり附属保育園というのは、事情はどうなんでしょうか?

高崎:フランスでは職選びの基準で、福利厚生がとっても重要なんですね。今おっしゃったように、それがあるところを探すというのがかなり増えています。企業内保育園も沢山あって、特に2000年から2005年6年くらいにはそれはかなり盛んだったんですが、そうなると2つ大きな問題があるんですね。
一つは子どもにも、通勤をさせないといけない。もう一つは父親か母親どっちかの企業のお世話になるので、性差によって差ができてしまう。だいたい企業保育園を使うのは母親の方だって言うデータが出てしまった。男女差別を増進させる物だから、企業保育園を増設するのはよろしくないというのが今の傾向です。じゃあ、どうしてるのかと言いますと、良い事を考えた人がいまして、企業保育ネットワークというのを作りまして、会社の人事部と契約すると、そこのネットワークが持っている全国どこの保育園でも枠を一つもらえるようになっているんです。つまり、自宅に一番近い保育園が会社の福利厚生で手配されるようになった訳ですね。
それはまさに企業保育園、企業と契約して保育園を作ってきた私立保育園に子どもを預けていたお母さんが、「おたくの企業で作る保育園がうちのそばにできるんだけど、同じ会社の保育園ならあっちに入れさせてもらえないかな」って言ったことから始まったんです。ああ、なるほどね、と思って彼らは自分達の範囲から始めて、それが記事になったりしたので全国の保育園などが賛同して問い合わせしていたんです。それじゃあネットワーク化しようということで始まって。名案ですよね。
フランスは特に、子育て支援というのは女性支援政策であって、なんでかというと女性が歴史的に負っている部分が多いから。男女差別対策であるっていうのは大きくあるんですね。日本だとそれ言うと問題になるんですって。何故かというと、本来平等であるべきところ、女性ばかり優遇するわけにはいかないでしょ?って。これは某大きな広告会社さんで聞いて、ゲーッと思ったんですが。
同じ事をフランスに帰って聞いたんです。日本ではそういう風な言われ方をしていると。そしたら、もともと差別で低いところにいるんだから下駄履かせないと一緒の所に行けないでしょって、これまた素晴らしい現状認知力を垣間見て。男女が平等であるべきだから女性ばっかり優遇できないと言うんだったら、まず数字で揃えろって言われました。でも揃うことは向こう100年ないから毎日戦うようにして、そういう声をフランスでも抑えていくんだよと言われました。

:母親アシスタントを共同で使うっていうのがありますね。

高崎:そうですね。母親アシスタントというのは基本3人、4人の子どもをみられるので、それぞれのこの保護者さん3~4人で1人の母親アシスタントにお願いしているんですね。なので、監視する保護者さんが沢山いるかたちになるので、それだけでも安心材料になってるらしいですね。

女性C:有り難うございます。私はイギリスで出産・子育てして、同じヨーロッパでも似ているところと違う所が凄い興味があったんですけれども、私の質問は、もしフランスで子育て支援が充実していると、逆に子どものいない人、できないのかもしれないし欲しくない人は、社会的にどういう経験というかプレッシャーがあるのか、あるいは子どものいない人生もフランスではある意味受け入れられていて、尊重されているのかをお聞きしたかったんですけれども。

高祖:あと子どもがいない人から不満が出ないかとかいうことですね。

高崎:そうですね。まず、子どもの有る無しというところからなのですが、もちろんみんな思うところ有るんですね。ただ、フランスという国の場合、これは良い文化なのですけれども、凄い個人主義の国なので、それが人それぞれなのだから言ってもしょうがないねと。産んだ、産まない選択をした人も尊重されるべきなのだから、産んだ選択をした人も尊重しようということで、お互いそれはもう言わない。ということが大人のあり方という風になっていますね。他人は違うんだから。
もう一つ、社会的プレッシャーが違う所にあって、日本は産む産まないだと思うのですけれど、フランスはカップルであるかないかなんです。「お一人様」が凄い悪く見られるんです。シングルになると全員くっつけようとするのです。途端によってたかってウワッて「あんた一人だったら紹介するよ」って友人家族が総動員で、とにかく人間ていうのはつがいで生きるべきであるという考え方なんですね。だから、変な話、同性愛者に対する権利の方も凄い早かったんですよ。性的な指向が大多数と違っていても、人間はつがいで生きるべきなのだから彼らの権利を守りましょう、みたいな考え方なんですね。

高祖:有り難うございます。じゃあ最後の質問を。

男性B:有り難うございました。ちょっと視点が変わってしまうかもしれないのですが、フランスは子どもの教育にいっぱいお金を使っているというイメージがあるんですけれど、日本って逆なんですよね、高齢者の方にお金がいっぱい流れているイメージがあるんですけれど。結局お金って限られているじゃないですか。フランスでは子どもにお金を遣っている分高齢者にはお金が行っていないようなことになっているのか、それとももっと負担が大きいからなんとかなっているのか、そこらへんわかるようだったら教えていただきたいのですが。

高崎:すいません、実はこれ私の宿題なんですけれども、フランスで高齢者の人と子どもの子育てに対するかかっている国の予算の違いを並べたものって見たことが無いんですね。というのが、その2つは比べる対象じゃないんですよ。日本でこの前内閣府でお話しさせていただいた時も、高齢者の方の反応はどうですかって聞かれて、「ああっ、そうか」って思ったんですね。
フランスではまず子育て、子どもに関することは触ってはいけないこと、アンタッチャブルなことと思われていて、国の未来であって、それをどうこう言うのはよろしくないと。政治家もそうなんです。政争の道具にしないという共通認識があるのです。なので、ある子育ての政策が通ると、政権が右になろうが左になろうがそれはもうそのままという共通認識があります。あと、高齢者の方達がどうするかなんですけれども、彼らにとっても「子どものことはしょうがないよね」って言う感じなんです。削るのだったら他から削る。特に、国防だの何だの他にも扱うところはありますよね。そっちから手を着けて、子どものことは触らないでおこうというのはあります。
その考え方の一つに、私もはっとしたんですけど、「みんな子どもだったことあるでしょ」って言われたことがあるんです。あなたも3歳児だったことはあるのだから、今の3歳児にどうこう言わない方が良い。その考え方を日本の方にしたことがあるんですね。やっぱり自分も子どもの事はあったのだから、社会的な状況が変わっても今の子ども達も、あなたが子どもであることを許されたように子どもを守るという考え方はできないの?と聞いてみたんです。その人は一瞬ぽかーんとして、「いやー、過去のご恩をかえすというのは日本では無理だね」と。うっそーーー、ご恩返しという言葉があるのだからできるんじゃないのと思ったんですけれど、「いや、その考え方は難しいと思うよ、日本では」とハッキリ言われてちょっとショックを受けたんですよ。
逆にみなさんはどう思われるかなと。あなたが子どもだったときに守られて大人になったのだから、今の成人として子ども達を守ろうって言う考え方は日本では理解されるかどうか。
されると思う人、手を上げてください……
あああっ少ない!
それはちょっと難しいのじゃないって言う方。やっぱり先のこととか今の権利ということを話して前提で、それが守られているから子どもの事も守られるよという方。ほんとお気になさらず手を上げてください。
そうですよねえ、やっぱりありますよね。

高祖:なんかこの先がくらーい感じになってしまいますね……

河合:しかし、そうしていかないと社会は続かないですよね。もっとも、フランスが子どもにわんさとお金を遣う背景には「子どもは国力だ」という発想も強くあるようですね。。まあ、軍事力の増強に繋がる発想です。日本では、いつも「『産めよ増やせよ』はいけないんだ」とみんなが批判をしますけれど、実はフランスはドイツに占領されてとても辛い思いをしたわけで。地続きで、いつもそういう危機感がある。
そして、なぜ負けたのかというと、やはり子どもがいなかったからだと。フランスは、18世紀から少子化の傾向があった訳ですよね。その時、「子どもがいなかったから大変なことになるんだ」という結論を、社会が出したらしいのです。そんなことを、人口学の研究者の方から聞いたことがあるんです。

高崎:それ、おもしろい話だなと思ったのですが、前に家族省の人をインタビューしたんですね。日本は出生率の目標数字というのがあるんですよ。1.8っていう。フランスでは出生率はどう思われてるんですか?って尋ねると、「産むのは個人の自由だから、それに国が何か目標を設定するっていうのはやっちゃいけないことになってるんだよね」と言われました。いかにそれを産める方に持っていくかを考えるのが国がやるべき事で、裏を返すと出生率というのは、社会が円滑に行っているかどうかの指標なんですって。下がってくると問題があるぞって言うことで、整えるべき事があるっていう指標だと考えています。だから、目標数値ではないと言うのがとっても良い考え方だと思います。

高祖:ということでもう時間が無くなってしまいました。みなさんこのまま夜中討論会をしたいくらいなんですが。最後に一言メッセージをいただいて終わりたいと思います。

河合:私、高崎さんがこの本を出してくださったことって、凄いことだと思うんです。私たちがフランスに行って取材しても書けない、ここ(フランス)で産んで、たまたま書く、取材する方であるといういろんな偶然が重なって、高崎さんのこの本がある
私もフランスの事知りたくていろいろ読んできたんですけれど、高崎さんの本は本当に具体的に書いてあるんです。フランスってこうらしいよ、という話はいくらでも聞こえてくるんだけれど、本当のところはどうなのかという細かい所まで書いてあって。財源のこともきっちり書いてありますし、本当に有り難うございます。
皆さんも是非読んでみてください。

高崎:今の涙が出るほど嬉しいのですが、私がこの本を書いた動機っていうのは、やっぱりそれ(元気を与えること)だったので、調べて行く間、私自身、フランスの人達に感動したんですね。本当に諦めないんですよ。フランス人は文句が多いっていうのは、いかにして今より1%でも良い世の中にできるかというのを、しつこくしつこくやっている人達なんですね。彼らが凄いリアリストなのは、「理想は理想よ、でも理想がないと前に進めないでしょう」と。それを目指して1%でも前に進もうと。どっかの講演でも私お話しをさせていただいたのですが、日本で直せるところは、「子育ては大変」というのを広めましょう、と。もう一つは「解決」という言葉を禁止ワードにして子育ての世界は「改善」にしましょう。解決しようと思うととっても我田引水で、非現実的な話しか出てこないんです。出生率を1.8にするとか。1.8にするのじゃなくて、1.43を1.5にするところから始めようよ。とにかく1%ずつ善くしようよ。という考え方をフランス人から学べるのじゃないかと思ってるんですね。それに感動したので、保育教育関連では素人の私が、子どもを産んだだけ・たまたま取材ができる人間だっただけの私でも書いてしまおうと思ったのはそれで、本当に一人一人この本を読んでくださった人が一人ずつ声を上げていけば、ちょっとずつ変わっていくかもしれないと感じたんです。フランス式で。
ということで、ここにいる皆さんからまず声を上げていただき、子育ては大変なんだということを広め、まずおむつは園で捨てられるように…と、一つ一つ改善して行けたら。今度国会議員の方とお目にかかれるので、それでまた頭下げてこようと、そこからお願いしようと思ってます。
本当に今日はお忙しいところ有り難うございました。


<登壇者プロフィール>

高崎順子氏:ライター
東京大学文学部卒業後、出版社に勤務。2000年渡仏し、パリ第4大学ソルボンヌ等でフランス語を学ぶ。ライターとしてフランス文化に関する取材、執筆のほか、各種コーディネートに携わる。著書に『パリ生まれ プップおばさんの料理帖』(共著)など。

河合 蘭氏:出産ジャーナリスト
1959年東京生まれ。3児を育てつつ現代人が親になる際のさまざまな問題を30年間に渡り追ってきた。主な著書は「科学ジャーナリスト賞2016」受賞作『出生前診断 出産ジャーナリストが見つめた現状と未来』(朝日新聞出版)、『卵子老化の真実』(文藝春秋)、『未妊-「産む」と決められない』(NHK出版)、『助産師と産む-病院でも、助産院でも、自宅でも』(岩波ブックレット)など。翻訳書、共著多数。講演やメディアへのコメント、写真撮影も行う。国立大学法人東京医科歯科大学、聖路加国際大学大学院、日本赤十字社助産師学校の非常勤講師。
http://www.kawairan.com/

高祖常子:育児情報誌miku編集長
子育てアドバイザー、保育士、社会教育主事ほか。NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク理事、NPO法人ファザーリング・ジャパン理事マザーリングプロジェクトリーダー、NPO法人タイガーマスク基金理事、NPO法人子どもすこやかサポートネット副代表ほか。育児誌を中心に編集・執筆を続けながら、子ども虐待防止と、家族の笑顔を増やすための講演活動、ボランティア活動も行う。地方紙にて「育児コラム」連載、オールアバウト「子育て」ガイドとしての記事執筆、編著は『ママの仕事復帰のために パパも会社も知っておきたい46のアイディア』(労働調査会)、『パパ1年生』(かんき出版)、『新しいパパの教科書』(学研)ほか。3児の母。

基調講演 Part1
基調講演 Part2

パネルディスカッション
質疑応答



mikuセミナー 「フランスの子育てのヒントを日本に生かすには」 -パネルディスカッション

第一部基調講演より続く

第2部は、高崎氏、出産ジャーナリスト河合 蘭氏、育児情報誌miku編集長の高祖常子によるパネルディスカッションです。

河合蘭さん自己紹介

河合:こんばんは、河合蘭と申します。今日はおもに育児のお話しでしたけれども、私は育児の入り口である出産を特に面白く感じている人間で、初めてお産の取材をしてから今年で30年目になります。しかし、この10年ほどは妊娠の前の不妊という問題も大きくなり、現在は不妊から産後しばらくまでを守備範囲としてやっている、フリーのジャーナリストです。
少子化対策についてお話しさせていただきますと、やっぱりこの時代に生きている出産ジャーナリストであるなら、黙っているのはいけない、取り組む義務がある、と思って取材してはおります。
普通に妊娠や不妊について取材をしていますと、日本が産みにくい国であるがために、女性たちのからだが悲鳴を上げている現場を目の当たりにします。例えば、産みにくいのでなかなか産まない。そうすると、妊娠しにくくなって体外受精の苦労をなさったり、やっと産もうと思ったら今度は何か危険サインが出てきて帝王切開の方がいいと言われる。女性は手術台に乗ってお腹を開けなければ子どもを産めないというケースが、すごい勢いで増えているんですね。それは痛ましいと思って、命がけで命を生み出す女性達にもっと思い遣りを持ってほしいから、少子化対策の取材も始めたわけです。
2014年に、医学書院の助産雑誌という雑誌で、「やっぱり知りたい少子化のはなし」というタイトルで1年間の連載をしました。日本が少子化になって来た頃、まさに80年代のあたりに国立社会保障・人口問題研究所の所長をしていた阿藤誠さんに取材をしたり、その当時ちょうど「少子化危機突破タスクフォース」が動いていたので、その委員会の中で非常にビビッとくる発言をしていた松田茂樹さんなどを一生懸命取材したんですけれど。
私自身も、何故産めないのかということを浮き彫りにしたくて、産みたいけど産めない方にインタビューやアンケートを精力的にやっていたんですよ。でも、やればやるほどイライラが募ってくるのです。まさに高崎さんが最後におっしゃった、非合理的なことがまかり通っている、それなのに口を開けない状況が現場にいっぱい有る。日本のやり方というのは、子どもができると生活が困るようになっているのですから、間接的な一人っ子政策のようなものです。
日本の少子化の歴史も洗ってみたのですが、国民に対しておこなった調査の結果などかえりみられず、言ってみれば関係者たちによる我田引水の連続です。少子化対策という言葉ができたときには、各省庁がその流行ワードを使って予算を撮りました。例えば道路の段差を直すことも、少子化対策に入っています。
声が大きい人が言っていること、比較的お金がかからない政策であること、これが日本の少子化対策で大事にされてきたことです。そこでよくフィットしたのが、女性の労働力確保にもつながる「両立支援」ですね。その名の下に、保育園は増えました。でも、これくらいならできるだろうというところでやったわけで、効果は出るはずがありません。労働力対策しかおこなわれてこなかったのが日本の少子化対策の実態かなと思ったんですね。家族政策はなく、子どもというものは個人が好きで産むもの、個人の責任で育てるものというところは崩れないのが日本なんだな、とがっかりしました。
その私が何故ここに呼んでいただいたかと言いますと、久しぶりに刺激的なことを知ったからです。それが、この高崎さんの本の第一章「2週間で男を父親にする」という章でした。
私は数年前、ふとしたきっかけで、20代の頃自分がカメラマンだったことを思いだしたんですね。そして、「理屈でだめなら、感性で表現してはどうだろう?」と、人が親になるときの映像を作ろうと思い立ったんです。
それで再びカメラを持って撮り始めたら、ふっと、ドキッとしたのがお父さんの顔なんですよ。会社にいるときのおとうさんとは別人の顔、電車に乗っている男性とは全く別の顔がそこにあったんです。綺麗な、命のそのまんまである我が子を見て、お父さんもすごい綺麗な素敵な顔をしている。それで、撮りため写真の中から5人のお父さんを選んでスライドショーを作り、you tube にアップしました。
そして、次に、東洋経済オンラインという今とてもよく読まれているニュースサイトに「「父になる」瞬間を大事にしない残念な日本人 妻の出産で休むのが男の育児の重要な一歩だ」という記事を書きました。そして、冒頭にyou tubeに上げた動画を埋め込み、そして記事の最後に高崎さんの本を引用したのです。記事は今年の父の日の朝6時に配信してもらって、コメント欄はたくさんのお父さんたちの声でみるみる埋まっていきました。この記事は、もっとみんなが、当たり前に、我が子が生まれるときにそばにいられるといいのに、という思いで書きました。
出産前後に男性を休ませるということ、これは「お産人間」的に見ると、生物学的に見てとても大事です。私はお産人間なので、人間を本能を持った動物だと思っていつも見ておりますが、男性という性は、今、そういう行為を必要としていると思うんですね。。
では、最後に、その動画を見てください。


スライドショー上映
命生まれる現場から(1) 父の日メッセージ Father's Day Message


高祖:有り難うございます。今のスライドを是非流していただきなと思っていましたのでよかったなです。今の話にもありましたけれども、フランスの場合「14日間の男の産休を取って2週間で父親になる」とのこと。日本のお父さんの実態は、子どもが生まれたら1週間くらいは休んでるのかなと言うような噂がありましたが、育休の取得率は約3パーセント。そしてファザーリング・ジャパンの調査によると、育休は取れなくても、育休として取っているのかと思って、薄い期待を込めて調査しましたが、結果、有給も取っていなくて、育休を取得しても数日間という結果でした。
結局、育休でも有給でも、取っているのは1週間以内ですね。ほんとに3日間くらいしかとってなかったというのが実態です。生まれた日に立ち会うパパが増えていますが、立ち会いの時、それと中1日くらい、退院の時。それしか取っていない。というようなことでした。でもパパたちは本当に歯を食いしばって、無理やり育休取るのも大変なんですよね。
コメントも集めると「育休?おまえが産むわけではないだろう」と言ってしまう相変わらずの上司がいる訳です。そういうなかで、無理やり頑張って育休取ってもその数日間だけで、入院中に育休が終わってしまうなら、「育休取らないでも良いから定時に帰ってきてくれ」というママ達の声が、凄く多かったんです。でも日本の場合、もし2週間だけでも育休取得したときに、その後もパパが子育てを継続してくれるという確証が無いように思います。そこはフランスではどうですか?

高崎:父親の育児家事参加に良い事を考えると、働き方ですよね。一番の違いは。働き方改革とセットでやらないと、どうにもならないだろうなというのは、本当に考えれば考えるほど出てくるし、皆さん同じ意見だと思うんですけれども。フランスは基本、35時間労働制がありまして、管理職の人は年俸制なんですね。つまり、残業しても面白くないんですよ。年俸制だから残業代付かない。
管理職じゃない人は残業しちゃいけないんです。というのは、残業に対する社会保障税みたいな雇用者が払わなければならない税率、社会保障率が高いので、頼むから取らないでくれって言われるんですね。結果、誰も得をしないのでみんな残業しないで帰るんです。長時間労働が全く良いと思われていないので、お父さんを見てる時間が長いんですね。
それでも、G8のメンバーとして(経済が)まわっているのは、どういうやりかたをしているのかというと、ちょっと話が長いんですけど、みんなが休める、短時間で帰れる工夫をしているんです。
その一つがまず、勤怠表・出勤表の社内共有で、誰がいつ出勤してどれだけ会社に残っているかというのが、ほぼ全員が見られるようになっているんです。夫は大きな会社に勤めてるんですけれど、取材をしたいなと思ったときに「広報の担当者の勤怠表を見てやろう」といって、オンラインで全く自分と部署の違う広報の担当者の勤務状況が見られるんです。何故それをするのかというと、与えられたタスクに対して労働力がどれだけあるかというのを現場が共有しているんですね。来月これだけ大きな仕事があるけれど、誰それ、誰それ、誰それ、休むんだったらこういう風に組まないとならないね、とみんなが共有する。その枠は従業員、同僚で休みを組み合わせ、工夫して取るんですけれども、それでも廻らない場合の責任はマネージャーだよね、と言うのがかなりハッキリしている。なので、みんなマネージャー以下の人は休みは権利として取って、それで廻らなかったら自分達より給料の良いマネージャーの責任だっていうのが明確なんです。マネージャークラスのいない人達は、マネージャーの責任を取ろうとしない共同文化があるんです。そういう働き方の違い。
まず、休暇に対する考え方の違い、ワークシェアリングに対する考え方の違いというのが、かなり大きくあるのだと思います。

高祖:働き方って本当に大きいと思います。mikuのフランス取材の記事の中でも登場するんですが、現地のパパとママに「働き方ってどうですか?」と話を伺ったところ(パパがフランス人、ママは日本人)、「たまには残業があってね。30分か1時間くらい」ってパパが言うんです。そしたら日本人のママが「割となんて、(日本と比べたら)全然残業無いじゃないのよ!」って。割とじゃなく、たまーーーにある程度らしいです。
日本の場合、働き方が変わればパパがもう少し子育てできるようになると思いますね。

河合:私のこの動画見て、東洋経済オンラインの記事を読んだら、自分が責められているように思う男性も多いと思うんですね。日本のパパたちは、自分達だってそうしたいんだけれども、「2週間も休むなんて絶対無理!」ってほとんどの方が言いますよ。だから「じゃあ、1週間でどう?」という感じで話していくのはいいなあ、なるほどなあって思って聞いていました。バカンスが3週間だから、2週間でどうだ、ということだったんですね。でも、日本で2週間は、確かに長すぎる。
日本では、私は一日もそばにいられないパパを時々見るんですが、本当に可哀想なんです、お産の現場で途中で「じゃあ、仕事だから」ってお父さんがいなくなるんですよ。あと30分でパパが出かけるためのタクシーが来るっていうとき、強烈な陣痛が襲って来ることもあります。今までずーーっと「まだまだだね」とか言っているところに、そういう雷のような陣痛が来て、産んでしまうんですよ。それくらい、母親というものは一緒に子どもを迎えたいんですね。お父さんの仕事に合わせて、堪えているように陣痛が来ない人もいらっしゃいますしね。
臨月のお母さんの会話には、いつも「お父さんが休んでいるのはこの日とこの日だから、この日に陣痛が来るといいな」という話が出てきます。そういうことを伝えたいんだけれども、実は男性はもう妻の気持ちはわかっているだけに、すごい苦しい思いをしている。その表情を、今年は、父の日以来何回も見ています。
ところで、一度聞いてみたかったんですが、フランスのバカンスって、なぜ有るんですか?どういう歴史があるんですか?

高崎:第1次大戦と第2次大戦の間くらいに有給休暇の法律ができまして、それからかなり労働者、組合が強くて勝ち取ったんですね。それをだんだん長くしていく感じで、ジリジリと長くなっていたものなんですけれども。やっぱり「働く事は良い事だ」じゃないんです。労働っていうのは使役、使われてやるものであって、天職としてやっている人はもちろんいますが、一部のエリートなんてほんとに日本のブラック企業並みに働いていますし、職人さんの世界もそうですね。特に、食の関係者の人なんかよく働くんですけれども、それは例外的なもので、パッション(情熱)が有る人。それ以外は時間と給与・待遇を労働契約上で交換する物なんですね。なので、休みが多ければ多いほど良いんです。休暇に関する法律には誰も反対しないですね。多ければ多いほど良いよねって。
男性休暇の法律が2002年に通ったときに、社会的な反発って無かったんですか?という質問を受けるんですけれど、多分それフランス人が聞くとポカンとして、休める法律作って誰が反対するんだって。
雇用主の方はもちろん嫌なんですけれども、雇用主の方も休めるんですよ。雇う方も休みたいから、あまりないですね。ちょっとお話しがそれてしまいましたが、やっぱり労働階級の闘争の歴史っていうのがバカンスの背景にはあるんですね。

高祖:日本でも子育てしたいパパは増えてはいるんですけど、一部から「何にもやってくれなくて!」という嘆きをよく聞く事があります。フランスでは、最初から看護師さんがパパの意識を押さえるというか、妊娠中に「パパいつ来るの?」って聞いて、パパが来るときに一緒に沐浴指導や赤ちゃんのお世話を習う。(フランスに)取材に行ったときに病院で看護師さんにお話しを伺わせていただいて、やっぱりママの方は産んで直後だし、ほとんど動けてなかったりするので、パパがその場で動いてくれないとどうしようもないですからね。そういう状況の中で一緒に教えられたら、パパが動かざるをえない。
それって前からそういうシステムがあるんですか?

高崎:やっぱり2000年代からってものがありますよ。国が父親休暇を設定して、「やってね!」ていうのもあるし、それからフランス人の方達の、データもファクトもないんですが、皮膚感覚な話で言うと、今の40代が分水嶺なんです。社会の変化も大きいんですけれども、世界的なリーマンショックを経験して、働くことの、お金だけが価値じゃないって思ったときに、自分の幸せはどこにあるんだっていうのを、押しつけられる価値観以外を考え始めたのが今の40代が始めなんじゃないかなって。フランスでも多分。そうなったときにやっぱり自分は仕事よりも家庭の幸せが欲しいって人達が、その気持ちに正直になり始めたのが今の40代。今から15年くらい前、彼らが25歳。そのあたりが分水嶺に近いと思いますね。

高祖:そしてそのまま2週間父親休暇を取って、取った後はパパは仕事に復帰しちゃうじゃないですか。そのまま(父親休暇の)休んでいたときの感覚で家事とか育児は続けていってるんですかね?

高崎:これも皮膚感覚的なもので「とった人はやってるよ」っていうものはあるんですけれども、私の周りを見ている限りでは続いていますね。ひとつ目覚めというか、発想の転換があると、「自分がやることなんだな」と思うと男性もやるんですよね。やっぱり出産の現場に立ち会うと、これは大変なことをやって貰ったなという認識が男性の側にも生まれてくるんで、良い意味での負い目に感じてくれている方も多いんですね。こんなにかわいい子どもを与えられた。自分が産んだわけじゃないし、痛い思いもしてないし。いくら無痛分娩とはいえ。

高祖:そうすると、さっきの(河合さんの)写真にもありましたけれど、立ち会い出産の経験をされた方は、子どもへの関わり方はより良い方向になるかもしれませんね?

河合:それは、そこにいなければならないという訳ではないですが、いれば、より有利となるというか。早くから育児の体制に入りやすいわけです。
オキシトシンという有名なホルモンがあるんですけれどね、「育児ホルモン」とか「Loveホルモン」とかいろいろニックネームがあるんですけれども、女の人だけでなく男の人、父親にも出るんです。これが、妊娠中から育児期間にかけてどういう風に変化していくかというと、人間ではまだちゃんとわかってないんですけど、マウスの実験で調べている方がいて、それを見ると、メスの方は妊娠中からじわじわと上がっていくんです。
そして、陣痛が来る前あたりから結構ガーッと急上昇していくんです。私も覚えがあるんですけれど、臨月のお産の数日前に上の子を抱いていて、バスの中だったんですが、突然上の子が可愛くて可愛くて、どうしようかというくらい可愛くなっちゃったんですね。もう「発作」ですよ。カワイイ発作が起きちゃって、うわー凄いな、さすが臨月だって思ったんですけれど、あの時、急にホルモン値が上昇したんだと思います。助産院の帰りで出やすかったんですかね。
そういうホルモンが、雄のマウスにはどのように出るかというと、やっぱり産後に出てくるんですね。妊娠中にはあまり出ません。でも育児していますとね、だんだん女性にキャッチアップしていって、最後はお父さんもお母さんも同じくらいになります。
ただお父さんにはお母さんよりずっと不利な時期があるわけで、だから、お産という凄い時期は大切にした方がいいんです。お産の直後って赤ちゃんは覚醒していて、あの時期にしかない反射もあるんですよ。そして強烈に「私よ、ほら見て!可愛いでしょ!」というオーラを出す。それをお父さんも浴びて、お母さんに早くキャッチアップした方がいい。そうすれば、特に新米のパパはパワフルなスタートになっていくだろうって思いますね。

高祖:保育士さん不足もあります。日本だと潜在保育士さんはたくさんいるけれど、なかなか保育士さんにならない。待遇とか賃金とかがちょっとずつ上がってはきてますけれど。それがさっきのお話しだと(フランスの)保育の仕事はは大変だという社会の認識があるとか、ある程度地位がちゃんとしているのかなという感じがしたんですけれど、そこら辺はどうですか?

高崎:フランスの保育関係者の人達も、もともと地位はそんなに高くなかったんですね。母親の代わりでしょ、とか、学が無くてもできるんでしょみたいな扱いをされていたんですけれども、それを変えていこうっていう流れが強くあってですね。そのために何をしたかというと、免状のシステムを作られたんですね。幼児教育師とか小児看護師といった、レベルの高い大卒修士クラスの免状をトップクラスに置いて、准看護師とかをその下に着けてピラミッド式に生涯教育で上がっていけるような仕組みを作ったんです。
もう一つ具体的には、親御さん達と話すときには専門用語で話すようにと推奨しているんです。「おしっこ」「うんち」と言わないんです。「大」「小」を「排泄しました」という言い方をして、自分は育児・保育のプロフェッショナルであって、あなたとは違う立場で子育てをサポートしているんだというのをアピールしなさい、というやり方をしているんですね。お父さん、お母さんの代わりではない。私は凄く象徴的で面白いなと思ったのは、トイレトレーニングでいつやるかを決めるのは親御さんなんです。「あなたたちが言うまでやりませんから」と最初に言われます。やり始めることを家庭で決めたら、こちらでもやりますよ、と。もちろん、人によっては「そんなこと言われてもどうしたら……いつからなんて」と。
フランスでは、3歳で保育学校に入るときにはおむつはとれてないといけないんですね。なので、だいたい3歳の9月までにはみんな必死でおむつをとるんですけれども、その目安を保育士さん達はプロの経験からわかっているんです。一人で階段の上り下りをできるようになったら、股関節と筋肉の準備ができているので、トイレトレーニングを始めてOK。それより早くやっても無駄よ!とハッキリ言われます。とてもロジカルだなと思ったりもしますけれど、やはりそういう知識を持っている人、プロであるということで線引きをして、敬意を勝ち取るやりかたを意識的にしていますよね。

高祖:有り難うございました。お話しの中でもありましたが、ミルクのタイミングとかも、フランスでは「あなたはどうすんの?どうしたいの?」みたいに親が意志をちゃんと示していくことが必要なんですね。子育て全体もも同じような感じですか。

高崎:子どもに対して一番責任を持つ人は誰なのかを毎日問いかけられる感じですね。例えばこれ、日本の関係者の方に問いかけられたんですが、土曜日にも保育園ってありますよね。働き方にも繋がるんですが、フランスでは絶対に土曜日に保育園は無いんですよ。週休2日の制度になってから、残念ながら土曜日にも働かなければならない人は、他の預け先を見つけてくださいなんですね。だから、土曜日に保育園に子どもを預けに行くことは無いんです。でも、日本だと土曜日も預けることになっているので、契約してしまえば土曜日働いていない週休2日の家庭の子どもも保育園に行っている。それに対して保育士さん達はフラストレーションを抱いているんですね。どうして子どもと一緒にいられるのに預けるのかしら?でも、それは「各家庭のやり方なのだから」、と思えない何かがやっぱりそこにはあって、働き方の大きな問題かもしれない。それは保育士さんと親御さん達との打ち解けの仕方にも問題があるのかなと思いますね。

高祖:そのあたりすっごい語りたくなっちゃったんですけどね。保育園もどうして8時までやってるんだ!って叫びたくなりますが、もう時間になってしまいました。
残り15分質疑応答にしたいと思います。この機会ですので恥ずかしがらずに。

高崎:感想も歓迎です。

質疑応答へ

<登壇者プロフィール>
高崎順子氏:ライター
東京大学文学部卒業後、出版社に勤務。2000年渡仏し、パリ第4大学ソルボンヌ等でフランス語を学ぶ。ライターとしてフランス文化に関する取材、執筆のほか、各種コーディネートに携わる。著書に『パリ生まれ プップおばさんの料理帖』(共著)など。

河合 蘭氏:出産ジャーナリスト
1959年東京生まれ。3児を育てつつ現代人が親になる際のさまざまな問題を30年間に渡り追ってきた。主な著書は「科学ジャーナリスト賞2016」受賞作『出生前診断 出産ジャーナリストが見つめた現状と未来』(朝日新聞出版)、『卵子老化の真実』(文藝春秋)、『未妊-「産む」と決められない』(NHK出版)、『助産師と産む-病院でも、助産院でも、自宅でも』(岩波ブックレット)など。翻訳書、共著多数。講演やメディアへのコメント、写真撮影も行う。国立大学法人東京医科歯科大学、聖路加国際大学大学院、日本赤十字社助産師学校の非常勤講師。
http://www.kawairan.com/

高祖常子:育児情報誌miku編集長
子育てアドバイザー、保育士、社会教育主事ほか。NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク理事、NPO法人ファザーリング・ジャパン理事マザーリングプロジェクトリーダー、NPO法人タイガーマスク基金理事、NPO法人子どもすこやかサポートネット副代表ほか。育児誌を中心に編集・執筆を続けながら、子ども虐待防止と、家族の笑顔を増やすための講演活動、ボランティア活動も行う。地方紙にて「育児コラム」連載、オールアバウト「子育て」ガイドとしての記事執筆、編著は『ママの仕事復帰のために パパも会社も知っておきたい46のアイディア』(労働調査会)、『パパ1年生』(かんき出版)、『新しいパパの教科書』(学研)ほか。3児の母。

基調講演 Part1
基調講演 Part2

パネルディスカッション
質疑応答




2017年9月7日木曜日

mikuセミナー 「フランスの子育てのヒントを日本に生かすには」 基調講演 Part2 日本へのヒント

part1より続く

日本でヒントになりそうなことは


親になることの支援策・制度について、日本のヒントになりそうなことを私なりに考えてみました。
現代の日本の生活の中で、「親になるということ」はどういうことなのかな、と考えるきっかけがあると良いのかなと。子どもが産まれたら自動的に親になり、愛情は母性として湧いてくるのではありません。いまのあなたの生活が親になることでどう変わるのか、どういう風なサポートが必要で、誰が一緒にやってくれるの?ということを体系的に考える必要があるのかなと思います。



日本でも「男の産休」を


その準備期間のために、まず母親の産休に加えて父親休暇は必要だと思います。母親は妊娠がわかって8か月の間に気持ちの準備をする、否応なくさせられる時間が有ります。しかし、父親は目の前のパートナーのお腹が膨れていくのを触っているだけで、自分に身体的な変化は無いので感覚が感じ取れません。
2週間である必要はないかもしれません。フランスは長期休暇が普通にあって、それよりもちょっと短い2週間という決め方をしたけれど、日本ならゴールデンウィークやお盆・お正月休みよりもちょっと短い1週間程度の期間で父親休暇を設定してやってみてはどうかと思うのです。それを「男の産休」という言い方にして本などに書いていたら、昨年安倍総理が女性フォーラムの席で「男の産休やります」と言ってくださいました。皆さんも盛り上げてくれたら、結構早く実現するかもしれません。
日本の育休制度は、OECD加盟国の中でも有数の取得期間・補助金の額を誇っています。しかし、実際の取得率が凄く少なく、取っている方でも1週間というケースがほとんどのようです。というのは、育休という言葉に対するイメージが凄く悪いから。子育てのために会社を休むというと、頭の古い上司にとっては、育休 イコール キャリアの中断というイメージが強く有って、それがたとえ1週間であってもなかなか踏み込めない言葉のイメージがあります。だから、「男の産休」でも「父親休暇」でも良いのですけども、新しい言葉、新しい考え方で、父親が休めて子育てに入れる仕組みを作れれば良いかなと。

そのために、フランスでは誰が助けているかというと、第一は医療従事者なのですね。父親の一番の教師役は助産師さんです。助産師さんは発言力が強く、産婦人科の先生よりもお産の現場に実は強かったりします。順調なお産だと、産婦人科の先生は現場に登場しなかったりもします。助産師さんが一人で取り上げます。

出産は高度医療


フランスでは出産を医療として捉えています。なので、出産は大病院に集中させています。手持ちのデータでは、フランスでお産ができる病院は全国で544しかありません。過疎の所は(近くに病院が無くて)大変ですが、お産に間に合うようにスケジュールをあわせて出かけるのです。数的にはちょっと大変なのですが、80万人の子どもは全てこの544病院で生まれています。集約化した分サポートはしっかり、全国どこの病院でも同じ医療サービスが受けられるようにしようとしています。544病院のどこにいっても今日本でも話題になっている無痛分娩で出産できます。その場で決めても受けられます。というのは、麻酔科医が常駐しているからです。途中で緊急帝王切開になるかもしれないので、これは義務です。無痛分娩が女性の権利としてあるので、分娩中には必ず麻酔科医が常駐することが義務づけられています。
集約化された病院で、全国同じような医療サービスが受けられる事の一つに、助産師さんによるサポートもあるのです。
もう一つ、フランスでこの点は良いなと思ったのは、全国統一で出産事項が支援機関に繋がる仕組みがあることです。自治体によって異なるのではなく、母子保護センターという統一の機関があって、フランスで子どもを産んだ人はそこにさえ行けばわかるということになっている。それから、ここが川上からの虐待のスクリーニングシステムにもなっていることです。子どもが産まれて1週間後には必ず医療機関に行くことになっているので、そこで様子がおかしいお母さんお父さんがいたら、医療従事者が見たらすぐにわかります。この人は要チェックだなと思ったら、界隈の医療関係者で情報を共有します。
「え、個人情報を?」と一瞬思って尋ねると、「子どもの安全が第一でしょう」との答えがかえって来ます。ここからも、親への期待値が低いことが理解できます。

仕事と出産・育児を両立させるために


親であることで一番大変なのは、仕事との両立です。仕事と私生活をどういうふうにバランスを取るか。特に私生活では子どもが産まれると、かなりバランスが変わってきます。それは、良いことばかりではなく、もちろん悪い影響もあります。悪い影響、難しい影響を最小限にしようというのがフランスの考え方です。支援の仕方もかなり多角的です。
その1は、なるべくお金をかけさせないようにする。妊娠、出産、育児にまつわる経済的な負担を広く緩和していくのですね。まず、出産関係費は無料、6歳までの子どもの受診料は基本無料、出産祝い金が1000ユーロ(約13万円 2017年9月1日時点)出ます。日本でも出産育児一時金が42万円出ますが、それは出産費用でだいたい消えてしまいますよね。それとは別に1000ユーロもらえるので、皆さんベビーベッド買ったりベビーカー買ったりしています。
子どもが増えることで、税率が下がる人もいます。フランスでは所得税は世帯毎の申告です。たとえば、世帯(夫婦2人)で45万円の課税所得があったとします。そこに子どもが一人生まれると、子どもは成人するまで(所得税の計算上は)0.5人という計算をして、45万円は2.5人による所得という計算になります。子どもが増えれば増えるほど税率は下がっていくわけです。

3歳からは義務教育の保育学校に


3歳からは、全入・無料の保育学校に入ります。わかりやすく言うと、公立幼稚園みたいなもので、国家教育省、日本で言う文科省が教育プログラムを立てていて、自治体で運営されています。3歳以上は全員入れて、待機児童はありません。各自治体は3歳以上の子どもは必ず入学させなければならないと国の教育法で決まっています。もしできないと、自治体に罰則が課されるので、どの自治体も必至に対応します。
3歳からの教育と言っても、まだものの道理もわからないですし、団体行動もこれから覚えていくところです。そこで、国家教育省から修士以上の教養課程を経た教諭、プラス自治体からクラスの副担任のような形で一人、専門の職員が付きます。子どもの手洗いとか食事とか、生活周りの世話はその自治体からの専門職員が面倒をみます。担任の先生は給食は一緒に食べません。休み時間も一緒に過ごしません。なので、完全に教育に集中できます。
フランスの保育学校というのはオモシロイ仕組みなので、もう少しご紹介しますと、だいたい朝8時半から4時半までです。その時間を学校の先生と自治体の職員が見ます。一クラスだいたい25人です。4時半からは学童保育になります。学童保育はそれぞれの学校に付いているので、子ども達は学校の敷地内からは出ません。学童保育は、自治体が雇用した人達がチームを組んで当たります。
学童保育のチームと日中の教員のチームは対等の関係です。学童保育のチームは4時半から6時半までの他に、お昼休みも担当します。3歳から6歳の学童保育では児童8人につき大人一人と配置が決まっているので、25人クラスの場合、児童は教育、副担任、3人の学童スタッフと、計5人の大人に見守られて1日を過ごす計算です。
親御さん達は8時半に子どもを預けて、6時半に迎えに行きます。自治体によっては、通勤時間を考慮して7時45分から朝の学童をやっているところもあります。

全ての育児と保育形態に国からの補助金


3歳未満の子ども達は保育園に預けなければなりませんが、フランスも日本同様保活はかなり大変です。全国平均で保育園の定員は0-2歳児約240万人のうち17%しかありません。育休を取るお母さんもいるので、子どもを預けて働くお母さんはだいたい全体の半分くらいです。それでも保育園が足りないので、保育園に入れない人はどうしているのかというと、母親アシスタント、日本で言えば保育ママに当たる人達が認可を受けて、自宅で小規模保育をやっています。その人の経験であったり自宅の広さによって預かれる子どもの数が違うのですが、一人から四人までみることができます。この母親アシスタントが全国平均で33%位をカバーしています。
それ以外、子どもを団体保育に預けるのは忍びない、4人一緒に面倒見させるのは忍びないという人はベビーシッターを雇って自宅で面倒見てもらいます。母親アシスタントとベビーシッターは、個人間での契約です。
この全ての保育形態に国から補助金が出ます。保育園には運営費が、母親アシスタントとベビーシッターには保護者に対して補助金が出ます。加えて、1年間にかかった保育費の半額が所得税から控除されます。個人ベビーシッターなどはかなり高額になりますから、申告した所得税よりも払い戻される控除額の方が多い場合も有ります。その場合は差額の小切手を送ってきます。ただ、ベビーシッターと契約できる人は払えるだけの所得が有る人です。毎月10万、15万円のシッター代を払える人は、ベビーシッター制度を使った方がお得ということになります。あとで半額戻ってくるので、貯金しているようなものだと言う人もいます。
多様な保育手段には、それぞれにメリットがあります。とはいえ、一番人気はやはり保育園です。フランスでは保育園に預ければ、社会性を早く身につけられるといいます。保育園は認可園のみで、無認可園というものは存在しません。どこの保育園でも、だいたい同じようなサービスが受けられます。

6歳未満の保育・教育に日本の6倍の公的支出


フランスではどのくらい保育・教育にお金を遣っているかというと「2015年 6歳以下の保育・教育に関する公的資金支出内訳」をみてみると、合計が4兆176億円(円概算、1ユーロ=128円)です。0~3歳未満の保育園に行っている子ども達だけで、1兆9916億円です。3~6歳の保育学校に行っている子ども達で2兆247億円を支出しています。これは、保育・教育関連のみで医療費は含まれていません。日本の0~6歳の保育関連費用は0.7兆円です。
どうしてこれだけのお金をかけるかというと、子どもを助けるためには親を助けなければならないという考えなのです。子どもの一番の幸せは親といることであるという、揺るぎない信念があります。虐待する親がいたら、親を助けて親が虐待しないようにすれば良いことだという風に考えます。ですから、親をジャッジしないのです。いかに親と一緒にいられるか、一緒にいられない問題があるなら、それをどう改善できるか。
例えば一つの例として、「保育手段選択の自由」という補助金があります。親が育休を選択した場合収入が減ります。その収入の一部を補填しましょうということで国からお金が出ます。家庭内保育をしても、家庭外保育をしても同じように補助金を出しますよという考え方に基づくものです。

保護者の負担を最小限にして,なるべく辛くないようにしようということで、保育に関する負担はとにかく少なくするよう考えられています。その考え方は、保育園でも同じです。

保育園で保育士がやってはいけないこと


保育園の例を紹介します。
(スライド写真の保育園は)住宅地の1階にあるのですが、もともと公認会計士の事務所でした。園庭は凄く小さいものが中庭にあるだけで、実質ありません。子ども達の外遊びは義務じゃないのです。外遊びをさせるということは危険を伴うので、無理してやることないんじゃないの、という考え方があります。
保育園は、お父さん、お母さん達が入ることを前提にしてあります。送ってきて,お迎えに来て、その時に必ず保育士さん達に申し送りをしないとならないのです。何故かというと、連絡帳が無いからなんです。家での食事や睡眠の状況などを全部口頭で伝えないとならない。そのためには、5分、10分かかります。靴を脱がずに上がれるように、保護者用に靴カバーを用意してあります。

(0歳児クラスの写真)とっても装飾が少ないんです。子ども達はどう過ごしているかというと、基本、床に転がっています。保育士さんは驚くほど抱っこしません。子ども達は好きなように動き回っています。「そんなにほったらかしていていいんですか?」と尋ねると、「子どもだって好きなように過ごしたいでしょう」と。続いて「保育士は抱きたいときに子どもを抱いちゃいけない。自分が抱きたいときに子どもを抱いて良いのは親だけ」だと言われました。「子どもが抱っこして」って来たら抱っこするけれど、それ以外に自分から手を伸ばして来る大人は親でなくちゃいけない。0歳児のどんな小さい子でも、対する大人別に愛着の形成ができる。親のように接する人には、親と同じような愛着を形成してしまうので、混乱が起きてしまう。だから、保育士は絶対にそうしちゃいけない。
私がビックリしたのは子どもの抱き方で、正面から抱っこしちゃいけない。子どもを正面から抱っこして良いのは親だけであって、保育士は全部横抱きにする。腰骨に乗っけて二人抱きするのが保育士さん。

入り口にベビーマットが置かれてあり、ここで子どもの服、冬だったらコートなどを脱がせます。これは親御さんがやります。0歳児のミルクをどんな風にやるのかを決めるのは親御さんです。毎日、今日はどれだけ飲ませてください、と伝えます。それは親御さんだけで決めるんですかと尋ねると、小児科の先生と相談して決めてきてくださいと伝えますと。
保育園では面倒は見ますが、何をどれだけあげたら良いか、子どもの食欲を管理するのは親の仕事ですから、と言われます。言ってくれたらちゃんとやります、と。
ほ乳瓶の消毒や扱いも、全部は国際基準のHACCP(ハサップ)のマニュアルに従ってやっています。

親にも保育士にも負担をかけない


お昼寝は、15分に1回見回りをしています。(スライド写真の)おむつかえ台の下に階段が付いていますが、これは子どもが歩けるようになったら自分で上がらせるんです。おむつかえの度に子どもの上げ下げをすると、保育士さんが腰を痛めるので、負担を減らすためです。
1歳児2歳児の部屋も装飾は何もありません。行事も12月のクリスマス会と、年度末の7月にちょっとしたバザーの年2回だけです。保育園では何をしているかというと、基本、家と同じ過ごし方をさせます。午前中だけは、折角みんなと一緒にいるので、お歌うたいましょう、ダンスしましょうというのはありますが、午後は基本的に自由なひとり遊びです。もちろんお友達と遊んでも良いですが。
国の方針で、保育園までは早期教育はしない方が良いということを打ち出しています。というのは、子どもの発達は「波状発達」だから。例えば文字、認知、行動などいろいろな発達項目があるのですが、あるところが伸びた、でもそれが減ってしまう、でまた伸びてまた減る、という、獲得と喪失を繰り返しながら成長していくというのが、発達心理学的にわかってきている。ということはあまり早期に教育して詰め込んでも無意味だよね、とアカデミア(大学などの専門研究機関)で言っている訳なんです。国はそれを取り上げて、早期教育は止めましょうということになったのです。

フランスの保育園では、基本的に全て共有で物を使っています。シーツも何もかも、全部支給品です。その代わり、みんな同じ物を使います。ただ、これだけでは寂しいので、ぬいぐるみとおしゃぶりだけは自分のものを家から持って来て良い事になっています。寝る場所(ベッド)は固定で、週に1回シーツを替えます。シーツは袋式で寝袋みたいになっていて、そこにすぽんと入って寝るようになっています。掛け布団はありません。
エプロン、シーツ、口拭きなどなど、全て共有にしてどういう風に廻しているかというと、1台の洗濯機と1台の乾燥機で廻してますと。専任の洗濯・掃除をする用務員さんがいて、一人で廻しています。一人の用務員さんと1台の洗濯機、1台の乾燥期でどうしてできるのかなと考えると、人数が違うんですね。フランスでは、認可保育園の最大収容数は60人までと決まっています。日本だと、平均がだいたい60人くらいだそうですね。100人超えの園もたくさんあるようです。対象年齢もフランスよりも広いので、もちろん人数も多くなるんですけど。結果的に人数も少ないので共有でも廻していけるわけです。
親御さん達の負担が少ないということは、同時に保育士さん達の負担も少ないのです。まず行事が無い、連絡帳が無い、それはなぜかというと、子どもの世話に集中して欲しいからなんです。親にとって子育ては大変なこと、イコール、子育てをサポートする保育関係者にとっても、ものすごく大変な仕事という認識なのです。なので、彼らの負担を最小限にしようということで、様々な工夫をし、分業化・スリム化ということを徹底的に行っています。

保育園をどう定義するか


フランスでは、「子どもが尊重されていると感じ、安全に快適な生活をおくる場所である」と定義され、それ以外は二の次とされています。外遊びも必要無い。とにかく、子どもが安全で快適であればいい。教育プランもありますが、それは二の次。保護者の期待値もそれほど高くない。自分が見ていない間、安全で快適であれば良い。別に言葉を教えてくれなくていい。
こんなフランスの状況を見ていて、日本にヒントになることは無いかなと考えると、小規模保育をもっと制度化できたらいいんじゃないかなと思うんですね。保育園を増やすというのは、なかなか難しい。特に日本のように設備に対する期待値が高かったり、園庭が必ずないと困りますというと。フランスの母親アシスタントのような保育ママを、もう少し増やしていけないかな、と。
そのためには、保育手段に対する親の意識改革が必要なのじゃないかなと。日本でも小規模保育はかなり増加傾向ではあるんですけど、まだまだ保育手段イコール保育園という意識があるので、最初から小規模保育園を選ぶ親御さんは、やっぱりまだ少数派です。
私、親御さん達と話をしていて、はっと気がついたのですが、なぜ保育園神話があるかというと、その背景に母親に罪悪感があるからなんです。私が面倒見られないのだから、代わりに最高の環境の所に、できるだけ良いところに子どもを預けたいというのがあるようです。それで、まず認可保育園に殺到して、それがダメなら無認可に、それがダメなら小規模保育園みたいなチャート式の保活になって。最初から小規模保育園を選ぶことができない心理的なブロックがあるのではないかなと個人的に感じました。
そこのところを、子どもを託すときに大事な事は何なのかということを、保活を始める前に親御さん達が考えられるような時間が取れたら良いなと思いますね。
本当に園庭が必要なのだろうか、子ども達は毎日外遊びが必要なのだろうか、朝から晩までお遊戯と行事の準備とお歌の練習で忙しくて、へろへろになって帰ってくるような保育園。それは充実していて教育もされ、良い事なのですが、果たしてそれを自分は子どもに望むのか。という問いかけをするようなことがあっても良いのじゃないかなと思うんですね。

日本の教育関係者の方達とお話しすると、とにかく保育園の毎日はぎちぎちで忙しいと。子ども達が家庭外で過ごす場所だから、できるだけ充実した時間を、とかなり善意のところからきていて。
日本の保育園はとても素晴らしい所が沢山あるんですね。食育なんかもフランスは比べものにならないくらい素晴らしいし、保育士さん達のモチベーションもかなり高いと思うんですけども、最善を尽くして、子ども達に最善を与えようという思いから、もうちょっと軽減できる負担が見えなくなっているのじゃないかな、と思ったりするようなことがあります。

フランスはなるべく関係者の負担を減らそうとします。それは何故かというと、負担を減らすことで、保育士が子ども達に全力で当たれるようにと考えているから。日本も「子ども達の為に」と考えられてはいるけれど、それがどんどん負担を増やしていく。スタートは同じなのだから、もうちょっとお互いの良いところを見つけ合って、無理が来てしまっている部分は何か改善できるではないかと思うんですよね。日本式の充実した保育でも無理が無ければ良いのです。でも、いま潜在保育士さんが70万人超えていて、実際働いている保育士さんの数40万人より圧倒的に多いんですよね。これで保育士さん不足が叫ばれている現状というのは、やっぱり現場に何か改善すべき点があるのじゃないかなあとは思います。
そのうちの一つとして、私はシンボル的に強く言っているのですが、おむつの園内廃棄を何とかしていただきたいと。やっぱり象徴的な例だと思うんです。G8に名を連ねる先進国で、廃棄物を公共の場に持ち歩かせて平然としている社会は良くないと思います。恥ずかしいと思った方が良いと思います。なんでそれがOKなのか。
例えばその理由として「週に2回しかゴミの回収がなくて置いておけないんです」というものがあるですが、介護施設では持ち帰りなく、できているのですよね。何故保育園ではできないのですか?同じ認可園でも園内廃棄をやっている保育園もありますよね。あっちではできて、どうしてこっちの保育園ではできないのですか?ということを、もうちょっと声を大にして話をしても良いのじゃないかなと。

これは国の資料(内閣府)であったんですけど、文京区の認可保育園でオムツを持ち帰っているお母さんが問い合わせをしたそうです。その時の答えの一つがゴミの廃棄の問題で、2番目の理由が「お子さんの健康管理のために、親御さんにはおむつを持って帰っていただいた方が良いと思います」というもの。(持ち帰っても)見ませんよねえ。
私、その場にいたら言いたかったんですけど、「おむつ取れたら、私どうやって排泄物で(子の健康を)管理したらいいんでしょうね?保育園から全部教えてくれるのですか?」と。(保育士さんから全部は)聞けませんよねえ。
誰かがちょっと質問したら、論理的に通らなくなるような理由がまかり通ってしまっているのですね。親がこうあるべきという「べき論」が、現実的な運営上の不具合をカバーしてしまっている状況はよろしくないと思います。それは親御さん達の罪悪感や苦しさを増幅させるだけで誰も幸せにならないんですね。

これだけ孤立育児ですとか、ワンオペ育児ですとかという言葉が流行ってきている中では考える時期に来ているのではないかなと思う次第です。
今、日本で一番やるべき事は、「子育ては大変だ」ということを、社会全体で共通認識を持つことではないかなと思います。それさえみんなが持てば、いろんなことが少しずつ変わっていくのではないでしょうか。

<開催概要>
2017年08月22日(18:30-20:30)
開催場所:筑波大学文京校舎(茗荷谷キャンパス)4階会議室
(東京都文京区大塚3-29-1 茗荷谷駅下車徒歩2分)
定員:30人(先着順)

<登壇者プロフィール>
高崎順子氏:ライター
東京大学文学部卒業後、出版社に勤務。2000年渡仏し、パリ第4大学ソルボンヌ等でフランス語を学ぶ。ライターとしてフランス文化に関する取材、執筆のほか、各種コーディネートに携わる。著書に『パリ生まれ プップおばさんの料理帖』(共著)
フランスはどう少子化を克服したかなど。  


パネルディスカッションへ


基調講演 Part1
基調講演 Part2

パネルディスカッション
質疑応答

 



mikuセミナー 「フランスの子育てのヒントを日本に生かすには」 基調講演Part1



6月のフランス取材でもお世話になった『フランスはどう少子化を克服したか』(新潮新書)の著者、高崎順子氏が来日されるのにあわせ、8月22日、miku主催で初めての一般向けセミナーを開催しました。高崎氏の基調講演の後、高崎氏、出産ジャーナリスト河合 蘭氏、育児情報誌miku編集長の高祖常子によるパネルディスカッションの2部構成です。
当日のセミナーの様子を、3回に分けてお伝えします。
 

基調講演:高崎順子氏

「フランスの子育てのヒントを日本に活かすには」


はじめに フランスの合計特殊出生率の推移

フランスでは第2次大戦後の社会の変化に呼応し、女性の社会進出が進むと同時に、1970年代から出生率が下がり始める。1975年に2.00を切り、1994年に最低値1.66を記録。そこから持ち直し、2010年に2.02到達。2011年は2.0をキープしたが、121314年は1.97から1.99で微増減して現在も1.9以上はキープしている。

1960年代70年代の出生率の低下を、フランス政府が冷静に分析。仕事か出産かを選ばなければならなくなった女性は、仕事を優先する傾向が見られました。今のままでは女性は子どもを産まずに仕事を続けていく。逆転の発想で、産めると思って貰うにはどうすれば良いかを考えると、出産・育児と仕事の両立支援しかないという結論に至ります。そこからまず補助金の拡充、そして90年代からは育休制度など、補助金以外の両立支援策を進めていきます。
フランスの出生率回復の話をすると、必ず「多産文化のある移民が貢献している」と指摘されます。私も気にはなっていましたが、実際にフランスで生活している中では、移民だけが貢献している印象がない。フランス国立人口統計学研究所が調べたところ、一番出生率が高かった2010年では、移民女性を除いた数値が1.9、移民は0.1の貢献はあるものの、ベースの部分はいわゆるフランス人の数値とわかりました。フランスで家庭を築いてしっかりフランス人として生活している人がこの数字を支えています。
一方で、日本でも出生率が2.0を切ったのはフランスと同じ1975年。出生率1.66になったのは日本の方がフランスよりも5年早い1988年。日本はそこから回復せず、2004年には最低の1.26を記録し、ここから持ち直して2016年には1.44まで回復。それでも、フランスとはまだ大きな開きがあります。
私は25歳まで日本にいました。日本の妊娠・出産の考え方・常識を持ってフランスに行って子どもを産んでいます。自分が持っていた考え方とフランスで見た現状とで一番大きな違いは、フランスでは「子育ては大変なことだ」という共通認識があること。「お父さん、お母さんだからできるでしょ!」という考え方がなく「こんな大変なことは親だけじゃできないよね」という考え方が基本的にあるのです。それはメディア記事や官報などの文面だけではなく、私自身が感じたことです。
例えは、長男が1歳になって保育園に行くことになったときに、マンションの管理人さん達が井戸端会議をしていました。そこで「うちの子どもが今日から保育園なの」と言ったら、「おめでとう。やっとあなた少し楽になるわね」と祝福されたんです。「これで仕事でも何でも好きにできるようになるから。子どもはいろんな大人に囲まれて育った方が良いし、子育てっていうのは助けられてやった方が、親も子どもも良いんだから」と、管理人さんに言われました。

フランスの子育て支援の2つの柱


充実した子育て支援は、論理的に体系的に組み立てられています。ロジックの建て方には2つの柱が有ります。
1つは「親になることを支援する」。
妊娠したり子どもができたからといって、その日から頭が切り替わって突然「親業」ができる訳ではありません。親には学んでなるもの。準備してなるもの。その親になる過程から支援しようという考え方。
その後親で有り続けるために、親であることをどう支援したら良いかというのが2本目の柱です。
フランスの子育て支援政策では、現場でも、この2本柱で考えられています。まず「親にならせる」そして「親であり続ける」を支える。この2つのポイントを頭に置いていただいて、日本の子育て環境改善のヒントになるようなお話しをさせていただきます。

まず、「親になること支援」。
フランスの出生率回復の話をすると、移民以外にも、アムールのことだったり、変な話、夜の生活がお盛んだから子どもができるんだろうという俗っぽいことを言う人もたくさんいてびっくりします。フランスのデータでは、女性の初産出産平均年齢は30.4歳、過去10年で0.8歳遅くなっています。初産の高齢化は日本と同じです。2015年の全国の出生数は80万人。このうちの95%を20歳から40歳の出産適例年齢の女性が占めています。高齢化が進んでいることが顕著に現れるのが、35歳から39歳の女性です。この年齢の女性が100人いると、2005年では5.6人の出生だったのか、2015年では7人まで上がっています。40歳以上も増えてはいますが、同じく2005年には100人の女性から0.6人生まれていたのが、2015年には0.8人と、増えているとはいえかなり少なめです。これはフランスでは42歳までは不妊治療が医療保険でカバーされているのですが、それ以降は出ないからです。
フランスでは、42歳以上は諸々の事情を考えると出産に適していないと考えている(明確には言わないけれど)ということです。ですから、女性の頭の中にも42歳という出産年齢のリミットがあって、それまでに仕事の設計や家族計画の設定をしているという現実があります。

妊娠の30%はできちゃった妊娠です。そのうちの6割は中絶しています。つまり、中絶に至る妊娠が全体の18%ある訳です。逆に見ると、経緯はどうであれ残りの82%は、親が考えて選んで出産しています。
フランスでのピルの使用率は41%(日本は1%未満)。加えて,緊急避妊薬を未成年には匿名で無料配付しています。学生証を提示すれば成人でも無料でもらえます。中学生高校生には、学校の常任看護師から匿名で受け取ることができます。何が言いたいかというと、産みたくない人は妊娠を止められる手段があるということ。妊娠・出産は女性が自ら選択するものであると明確に示されているということです。
そんな環境で親になることを選ぶ。それでも、親になることは難しいと考えられています。男女、あるいはフランスで認められている同性婚のパートナーシップの中に子どもが入ってくると、関係の変化が著しいのです。その関係の変化がとてもデリケートで悩ましい。けして幸せなものだけではないと、フランスの家族省のパンフレットにも書いてあります。その変化の過程がスムーズである様に周りが助けていこうと。
具体的には、まず情報提供。親になることはどういうことかを、多角的に伝えていきます。

出産だけでなく医療費なども無料


フランスでは妊娠の14週までに医療保険に届け出をすると、それ以降こどもを産むまで医療費が全額無料になります。妊娠7か月からは妊娠周り以外の医療費も全て無料になります。
届け出をするとお得なので、みんな届け出をします。届け出をした人の手元には親手帳が届きます。親手帳には、親になるのは大変だけれども,いろいろ楽しい事もあるよ、ということが書いてあり、更に親になることの精神的・肉体的・社会的負担、法的責任、体罰は無意味だから止めましょうという、最新の発達心理学に基づく説明なども。一番最後には支援先の情報が出ています。フランスは親支援の窓口は全国統一なので、家族省から配付している親手帳に載っている連絡先に電話すれば、誰でも相談に乗ってくれます。日本はだいたい自治体毎にそういう相談窓口がありますね。

妊娠中6回の出産準備クラスが無料で受けられますが、お父さん向けのクラスを開催している病院がかなりあります。また出産時にはパートナーの立ち会いを推進しています。
フランスの法律では、子どもが産まれたときに3日間の有給休暇が取れることが決まっています。これは、会社が雇用したときの義務であり、もし休暇を与えなかった場合には罰則があります。ですから、会社員であれば基本的に子どもの出産に立ち会えます。出産後、母親は平均で4日間入院し、その間に赤ちゃんのお世話の講習を受けます。その講習は助産師さんが各個室に行って行うのですが、そのアポイントはお父さんがいる時間帯にとります。病院では大部屋はあまりなく、だいたい2人部屋か個室です。子どもが産まれると部屋に案内され、「明日からのお世話が始まりますね。お父さんは明日何時に来るの?」と最初に聞かれます。講習は2人に対してやるので、「お父さんが来たら教えてください」と言われます。講習は必ず2人で受けます

2週間の父親休暇


その講習で学んだスキルを存分に発揮するために,フランスには2週間の「父親休暇」というものがあります。これも誰でも取れます。さきほどの出産休暇は労働法で決まっていますが、父親休暇は会社的には無給休暇。医療保険から手当てが払われて、有給休暇扱いになります。雇用主の負担はないですが、社会保険料から自分の給料相当が戻ってきます。労働法の定める3日間の出産休暇と医療保険が出してくれる11日間の父親休暇を合わせて14日間、こどもが生まれて2週間の休暇です。
この後半の11日間については、子どもが産まれて4か月以内であればいつ取っても良いのです。第一子の場合はお父さんお母さん揃って休暇をとり育児を始めますが、第2子以降は子どもを保育園に入れるのを少しでも遅らせようと、母親の産休が終わった直後に父親が休暇を取ります。この父親休暇は、公務員では取得率ほぼ100%です。自営業を含む民間企業ではだいたい70%です。

いきなりどうして2週間も休みがとれるのでしょう?一応予定日の1か月前には雇用主に届けなければならないことになっていますが、いつ生まれるかはわかりません。それでも、いつ生まれても2週間の休みは社会的にもご祝儀程度に認められています。2002年に導入される時にもそれほど反発はありませんでした。なぜ反発が無かったかというと、子どもが産まれることは人生の一大事なのだから、何よりも優先しろという考え方があるからです。加えて、フランスはバカンスの国で、夏期休暇は3週間から4週間みんなが休みます。3週間、4週間みんなが休む習慣があるので、2週間休んだところでいつものバカンスよりは短いしね、と考えます。ということで大きな社会的な摩擦なく受け入れられているのですが、一つ日本との違いを強調したいのが、子育てのための育休ではないことです。父親休暇は正式には「お父さんが子どもを迎えて父親になるための休暇」という名前です。日本では父親休暇というのは存在していませんので、育休の中から1週間なり1か月なりあててお休みを取りますが、名前が育休なので子育てのためと思われるのが当然です。でも、フランスでは違っていて、育休は育休で別にあります。父親休暇の2週間は、「あなたが父親になるために」使ってというものです。
父親休暇を取得した層は取得しなかった層よりも、その後の家事育児の参加が多く見られるというデータがあります。
フランス人は何でもデータを取りたがるので、導入した政策については効果をデータで取ります。

出産後の母親を孤立させない


父親休暇を取った人がどの程度育児に参加しているかを見ると、取った人は取らなかった人より明らかに育児・家事に参加しています。一方、母親にもサポートはたくさんあり、出産後の母親を一人にさせない、孤立させない工夫がいろいろあります。そのためにも父親休暇が存在するのですが。
全国統一の機関で、母子保護センターというものがあります。ここでは妊娠出産した母親と6歳までの子どもを医療的にカバーする、母子限定の保健所のようなところです。産院はこの母子保護センターと連携を取ります。まず、出産1週間後に新生児の体重を測りに来させます。母子保護センターで新生児の体重を測ると、母乳・ミルクの飲みの善し悪しなどは体重の増減ですぐにわかります。母親はしっかりチェックをして欲しいので、新生児用体重計がある母子保護センターに行きます。母子保護センターには、小児科医、小児科専門の看護師、助産師などの医療スタッフが揃っていて、母子をサポートします。産後の肥立ちが良くないとか、帝王切開で動けないなどでセンターに来られないという場合には、助産師の訪問が受けられます。第一回の訪問は無料で受けられます。

産後のサポートについての説明は、家族向けの補助金を監督する家族手当金庫という全国組織のカウンセラーが、入院中に各病室を訪問し、「これからこんな補助金・サポートが受けられます。そのためにはこの書類を書いて提出しなければなりません」という説明をして廻ります。その時に、もし産後に具合が悪いようだったら、助産師さんに訪問してもらえるように手続きしますということまで助言します。産後、母親が一人にならないよう、誰かに育児相談できるような仕組みが整えられています。これは全国統一です。
もう一つ、産後の母親は赤ちゃんの生後1ヶ月半から骨盤低筋トレーニングを10回受けられます。これも医療保険で全額払い戻しが受けられます。どうして骨盤低筋回復トレーニングをするかというと、内臓脱落を防ぐためです。骨盤低筋が緩んだままにしておくと、老後、60歳を過ぎる頃になると内臓全体が下がってきて、それを支えきれなくなるからです。女性のその後の生活のために必要なことだとして、トレーニングするようかなりきつく言われます。


<開催概要>
2017年08月22日(18:30-20:30)
開催場所:筑波大学文京校舎(茗荷谷キャンパス)4階会議室
(東京都文京区大塚3-29-1 茗荷谷駅下車徒歩2分)
定員:30人(先着順)

<登壇者プロフィール>
高崎順子氏:ライター
東京大学文学部卒業後、出版社に勤務。2000年渡仏し、パリ第4大学ソルボンヌ等でフランス語を学ぶ。ライターとしてフランス文化に関する取材、執筆のほか、各種コーディネートに携わる。著書に『パリ生まれ プップおばさんの料理帖』(共著)
フランスはどう少子化を克服したかなど。  


基調講演 Part2-日本の参考になること
パネルディスカッション
質疑応答