2020年2月26日水曜日

女性は職場の花ではなく戦力、ジェンダー規範・ハラスメントについて正しく認識するー中堅・中小企業のリスク回避と危機管理

一部上場企業や誰もが知る大手企業でも度々炎上する、ジェンダー表現やハラスメント行為。九州や地方都市ではいまだに男性と女性の性差による役割意識が強く残っていて、地場企業、同族企業・ワンマン社長の会社ではセクハラやパワハラが黙認されているところもありそうです。
就業規則の制定と見直しでも触れましたが、近年ハラスメントの防止については法整備が進み、セクハラ・パワハラ・マタハラ・パタハラなど職場のハラスメントについては厳しく対処するよう求めています。
ハラスメントに関する法律とハラスメント防止のために講ずべき措置」のページ
厚生労働省は、「明るい職場応援団」という サイトを立ち上げ、さまざまなコンテンツを用意して情報発信・啓発をしていますが、その中のハラスメントに関する法律とハラスメント防止のために講ずべき措置」というページが全体像をコンパクトにまとめていますので、一通り目を通されることをオススメします。

社会的な役割に性による差を付けない


パワハラは上司や先輩だけでなく、取引関係でもその優越的な立場を背景とする強要や言動も該当します。どんなことがパワハラになるのかは、ここで細かく書く必要も無いでしょう。テレビ東京系列のドラマBizで昨年放送された「ハラスメントゲーム」では、様々なハラスメントを取り上げていました。Paraviでは今でも見ることができます。
ドラマを見るまでもなくどんなことがハラスメントに当てはまるかはだいたい理解できているつもりだと思います。しかし、実際にはどこまでいっても「つもり」であり、日常的にハラスメント行為を行っていることは少なくないのです。#Metoo運動のような分かり易いパワハラ・セクハラ被害もありますが、ジェンダーに関する言動については無意識に、あるいは気付かずに過ちを犯し、時として大きな問題になります。

無意識の「男は、女はこうあるべきだ」という言動が今ではハラスメントとして責められるのです。皆さんの会社では、「職場のお茶くみは女性の役割」だという暗黙の了解はできあがっていませんか?日本においては「性差による役割の固定化」がなかなか解消されません。国会議員や企業の経営ボードでの女性比率が上がらないのもこの意識が変わらないからだと言われています。
小泉進次郎大臣が育休を取得すると宣言して大騒ぎになりましたが、これが良い例です。年配の政治家は、国会議員は雇用関係ではないから育休はけしからんという言い方をしますが、そもそも「子育ては母親(女)がするものだ」という前提で発言していることを若い世代は見抜いています。 

就業規則の制定と見直しでも書いていますが、ハラスメントについては、それらの言動を行った者について厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知する必要があります(均等法第11条)。

少数派を排除しない


今はLGBTに対する理解も広まり、高校の制服では女子がスカートだけでなくパンツも選べ、男性がスカートを選ぶことを認めるところも出てきました。アンケートの回答欄で性別の所に男性・女性だけでなく「選ばない」「回答しない」などの選択肢を入れることも増えています。少数派を排除しないというのが基本です。

誰もが知る大手企業が作成したネット配信動画CMでも度々炎上しています。視聴者が「男だから」「女だから」こうあるべきだ、という押しつけや役割意識を動画の中に読み取ってしまうと、あっという間にSNSで吊し上げられ炎上となってしまう時代です。
今時「男が化粧するなんて」という発言などしようものなら総スカンです。今やデート代は男が支払うものという事もありません。

女性を戦力として活用するためにはジェンダーについて正しく理解し、 ジェンダー視点を持った経営を心がけることが令和の経営者の常識となるはずです。

中堅・中小企業のリスク回避と危機管理-目次に代えて(まえがき)



2020年2月6日木曜日

もし、従業員やその家族が新型コロナウイルスに感染したら

連日TOPで報道される新型コロナウイルスに関するニュース。中国との渡航や物流の制限で、インバウンド消費だけでなく国内生産にまで影響が及びそうです。感染者を乗せていたことがわかった豪華クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号からは、昨日・今日で20人の感染者が確認され、乗客は暫く船内に留まらざるを得ない状況となりました。ダイヤモンド・プリンセスの乗客とその家族や仕事先などへは相当な影響が想像できます。船に滞在中の追加の料金などは日本政府が負担するでしょうが、その間の逸失利益までは補償されることは考えられません。さらには船主、今後クルーズを予定していたお客様も予定が見えなくなってきました。
 
※ダイヤモンド・プリンセス号の 状況や対応は、ウェブサイトで随時アップデートされています。

今はまだ国内での感染者は40人を超えたところで全員が隔離された状態ではありますが、3次感染が確認されたということは既に気付かないまま感染している人が、市中にいる可能性もあります。ダイヤモンド・プリンセスを香港で下船した乗客は横浜から乗船しており、乗船時には既に感染していた可能性があります。もしそうであれば感染源は船の中ではないことになり、日本国内の乗船までのどこかでか、あるいは日本に来る前に感染したことになります。
また、ダイヤモンド・プリンセス号は、那覇、鹿児島にも寄港して乗客は下船して観光をしているということですから、そこで感染している人がいるかもしれません。昨日奈良で感染が確認された20代の男性も観光客との対応の過程で感染したとみられており、無症状の感染者が観光をしていることが考えられます。他にも、中国から空路で入国した人でも、感染して潜伏期間だったり無症状であった人も複数いるかもしれません。

こうなってくると、満員電車で濃厚接触の可能性が高い都市部では静かに感染が拡大している可能性もあります。国際線も就航し、飛行機や新幹線で大都市との人の行き来が多い福岡市も、既に感染者がいるかもしれません。

「もしも」を想定してみる


感染のピークは4月頃になるという予想もありますから、まだまだ広がる可能性は否定できません。それでは、自社の従業員やその家族が新型コロナウイルスに感染していることがわかったらどうするでしょう?

まず、職場で日常接触する人は濃厚接触者として検査を受ける可能性は高いでしょう。感染源は自社内にあるのか、あるいはそれ以外かは大きな問題です。もしも社内で複数の人間に感染が確認されたら、社内の誰かが感染して広げたことになり、放置しておくと新たな感染源となりえますし、既に社外へも広げている可能性もあります。これまでの報道を見ていると、混乱を避けるためにある程度の報道規制か情報開示の制限をしている可能性もありますが、当事者となった場合には想定外とならないように準備をしておく必要もあります。
業種や職種によっても人との接触頻度や程度は違いますが、ビジネスのモデルがB2B(対企業)かB2C(対一般消費者)かでも対応は大きく変わります。

B2B企業であればWEBサイトで事実公表をし(許されれば)、お取引先や関係する業務上のパートナー、従業員へ電話やメールで知らせる必要があります。しかし、その前に以下の事を整理しておく必要があります。

1,緊急対応のメンバー指名と組織図(役割分担の明確化)
2,事実の整理(感染者の特定、状態など)
3,考えられる感染源と感染者の接触範囲
4,クライアント様、お取引先企業への影響
5,対応措置ー営業自粛、IT系企業であれば在宅やテレワークでの業務分散など
6,Q&A
など

B2C企業だと、感染者が多くのお客様に対して接客していることもあります。飲食店であれば、保健所からの営業停止やなんらかの指示が出るのでしょうか?
いずれにしても、まずは営業自粛をしてその後の対応を検討せざるをえません。予約中心の高級レストランであれば顧客リストもあるでしょうから個別の連絡、対応もある程度可能です。昨年放送されたTBSのドラマ「グランメゾン東京」でも、スタッフからノロウィルスが検出されたという場面では、自主的に休業して直前にお食事をしたお客様1軒1軒に様子伺いと事情説明に行く場面がありました。しかし、これが不特定多数のお客様を迎える繁華街の居酒屋であったり、郊外のショッピングモールの食品売り場であったらどうでしょう?

これだけのことを感染が発覚して直ぐに準備するのは実際には無理です。しかし、4~6については今からシミュレーションすれば準備は可能です。正解はありませんが、一度シミュレーションしていれば慌てることはありません。特にQ&A。クライアントさんや従業員、マスコミや株主など、その立場になって考えるといろんな疑問や知りたいことが出てくるはずです。100くらいの想定質問を書き出し、それぞれに対する回答を議論しながら整理できれば自信も付きます。これだけ話題になり、自社への影響の可能性が否定できない状況では、どの会社も想定外という言い訳はできません。

自社の業務を振り返る機会としても、研修やグループワークで検討してみてはいかがでしょうか?
もちろん、手洗い・うがいの徹底とアルコール消毒液の設置などは言うまでもありません。

※リタイアしたら、私も豪華クルーズ経験してみたいものです。ということで ダイヤモンド・プリンセス号の紹介動画を貼り付けさせていただきました。