2014年8月30日土曜日

たかの友梨社長の言動に見る、創業社長・ワンマン社長が起こしやすい過ち

-(新聞社の記事はいずれ削除されるので、ハフィントンポストの朝日新聞記事にリンク)

8月28日、大手エステティックサロン「たかの友梨ビューティクリニック」の従業員の女性が、残業代の未払いなどを労働基準監督署に通報したことで、社長から従業員の前で詰問されたとして、厚生労働省に公益通報者保護の申し立てを行い、労働組合が不当労働行為の救済申し立てと会見を行いました。

毎日新聞によると、
エステサロン大手「たかの友梨ビューティクリニック」を経営している「不二ビューティ」(本社・東京都渋谷区)が給料から違法な天引きをしているなどと労 働基準監督署に内部通報したところ、長時間の詰問など精神的な圧迫を受けたとして、仙台市内の店に勤務していた宮城県の女性社員が28日、厚生労働省に公益通報者保護の申告をした。加入する「エステ・ユニオン」も宮城県労働委員会に不当労働行為の救済を申し立てた。
 とあります。朝日新聞では少し違います。
「たかの友梨ビューティクリニック」を経営する「不二ビューティ」(東京)の従業員が加入するブラック企業対策ユニオンは28日、同社の高野友梨社長(66)から、組合活動をしていることを理由にパワーハラスメントを受けたとして、宮城県労働委員会に不当労働行為の救済を申し立てた。
組合活動に対するパワハラに対しての申し立てのみを取り上げています。

今回の報道では、注目すべきポイントが2つあります。

1,内部告発と、公益通報者保護法

まず、女性従業員が厚生労働省に公益通報者保護の申し立てを行ったという点。
公益通報者保護の申し立てをするということは、内部告発が行われたと言うことです。内部告発を行った女性従業員に対して、会社が不当な扱いをしたことは公益通報者保護法違反にあたります。毎日新聞やNHKを始めとする多くのメディアはではこのことを報じています。
不二ビューティ(少なくとも高野社長)は、公益通報者保護法の存在を知らなかったか理解していなかったと思われます。
※何故だか朝日新聞の記事では公益通報者保護の記述は見当たりません(2014年8月29日05時00分配信記事)。

2,労働組合の存在と申し立て

厚生労働省に公益通報者保護の申し立てを行ったのは、内部告発をした本人です。一方、労働委員会に不当労働行為の救済を申し立てたのは本人ではなく、労働組合です。労働組合も、メディアによって「エステ・ユニオン」であったり「ブラック企業対策ユニオン」であったりと2つの名前が出ていますがいずれにしても労働組合が申し立てを行ったことは間違いありません。
社内に労働組合が組織されていなくても、業界で組織する労働組合など労働者の加入先は存在します。経営者は、不当労働行為に対する駆け込み先・相談先は社外にもあるということを知っておくべきです。

オーナー経営者の陥りがちな罠

オーナー経営者は、会社は自分の物であり、従業員も自分の言いなりになるものだという意識の方が少なくありません。今回報じられている、高野社長が展開した持論はまさにそんな意識を背景にしたものと言えます。

今回の内部告発は、いわば正当派の告発ですが、最近は従業員によるSNSでの告発や不適切な投稿も形を変えた内部告発と言えます。会社や従業員を私物化したり不当な行為をしていると、すぐに告発される時代になったと言うことを肝に銘じて、自分の会社を振り返ってみましょう。

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2014年8月16日土曜日

木曽路の牛肉偽装、補償は現金にするも差額分だけ

しゃぶしゃぶ店などを全国展開する木曽路は14日、北新地店(大阪市)など3店で、松阪牛などの銘柄牛を使用するメニューについて、ブランド牛ではない安価な和牛を使った料理を提供していたと発表しました。提供数は3店合計で2012年4月以降、7171食にのぼり、料理長らが材料費を削るために偽装を続けていたことが、社内調査で確認されたといいます。

メニュー表示と異なった食材を使用していたことに関するお詫びとお知らせ

今回の木曽路の発表も、昨年一連のホテルレストランの不適切・偽装表示やこれまでの食品不祥事に何も学んでいないと言えます。

朝日新聞によると、
 北新地店に7月、大阪市消費者センターなどの立ち入り調査があり、偽装の疑いが浮上。これを受けて、全118店舗を対象に、12年4月以降の仕入れ数量と販売数量などを調べたところ、3店舗で偽装が確認された。
とあります。まず、今年7月の立ち入り検査の時点で最悪のケースを想定しなければなりません。社内調査と併行して発表のタイミングや内容・補償などについても検討を始めたでしょう。少なくとも半月以上の日数が経過しています。その間、十分な議論と準備をして14日の発表を迎えたはずです。しかし、松原社長の謝罪会見は翌15日となり、14日に発表した補償内容を修正しました。
14日の発表時には、当該メニューを食べたお客様に対しては、予約記録やレシートなどで確認できれば差額分を食事券などで補償するという内容でした。しかし15日、社長が出席する謝罪会見で、一転して現金で補償すると発表しました。お客様からすれば、「差額だけ補償?」という声も聞こえてきそうです。
しかも、謝罪会見の席で社長は(こんな場で言うのもなんですがと前置きをした上で)「木曽路の肉は上等なので、味にそう差は無い」 という発言まで飛び出しました。

7月の立ち入り検査のきっかけについては何も発表されていませんが、内部告発であることは間違いないでしょう。偽装をしたのは料理長だとしていますが、毎月の商品別売上と仕入れ原価を店舗毎で管理しているのであれば、すくなくとも店長は気がつくはずです。むしろ、店長が自店の利益を水増しするために指示していた可能性すら否定できません。さらには、それを本部が見て見ぬふりをしていたかもしれません。そうでなければ、内部告発に至ることは希です。

最初の発表では社長が同席せず、後日社長が改めて会見をしたといえば、そう、昨年の阪急阪神ホテルズの会見と全く同じです。

阪急阪神ホテルズ 出崎社長遅すぎる会見 偽装を否定し誤表示と強調

しかも、阪急阪神ホテルズの出先社長と同様、松原社長は言わなくてもいい「言い訳」を口にし、会社ぐるみの関与を否定しました。株価も同様に大きく下げました。阪急阪神ホテルズと同じ轍を踏んだとしたら次は社長の辞任会見になるのでしょうか。

東証・名証1部上場企業でありながら、木曽路もコンプライアンス・広報についての認識が甘いうえに、お客様に再び嫌な思いをさせていることに気がついていません。
1人前7000円の松阪牛を注文するお客様が、1500円の差額をわざわざ請求するでしょうか?接待で会社の経費で処理していたら?全額返金であれば別ですが、大人数で食事して、返金額が大きな金額になるような人でなければなかなか請求しないでしょう。そして多くは請求をせず、裏切られた思いだけを記憶に留めて離れていくのでしょう。
サイゼリアでは、単価は安かったとはいえレシートが無くても自己申告で返金に応じました。
こんなところからも、お客様への姿勢の差が見事に見えてしまいます。

松阪牛 松阪牛みや川さんのホームページより拝借いたしました

木曽路の返金額を計算してみると、
差額1,500円×7,000食=10,500,000
約1000万円余分に貰っていたのでその分だけ返金しますと。 
しかし、全額返金しても、7000円×7000食で4900万円。しかも、これは全員が返金請求した場合。予約記録やレシートがなければ返金されないので、実際には半分も請求があるとは思えません。全額返金でも、2000万円にも届かないでしょう。
売上高 457億2,100万円(平成26年3月期)の企業にあって、この額をケチった!という印象が残ってしまいました。
7000円の料理を注文するお客様は、木曽路にとっても上顧客だったはずです。全額返金だけでなく、なお「プラスの何か」を考えて、改めて木曽路ファンにするくらいのことを考えるべきです。

クライシスに際しての対応次第で、会社の評判を地に落とすこともあれば、ジャパネットたかたの時のように信頼に繋げるきっかけとなることもあります。しかし残念ながら、最近の記者発表・クライシス対応ではますます会社の評判を落とすことばかりなのが残念です。

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2014年8月14日木曜日

スマホ対応が必用なのはECサイトだけでない

7月29日、ニールセンから”スマホからのオークション/フリマサービス利用者数は約2,000万人に成長”というニュースリリースが配信されました。

- スマホからのオークション/フリマ利用者数は1年間で2倍に成長し、約2,000万人に
- PC、スマホ共に、Yahoo! オークションが一番人気
- オークション/フリマサービスはPCでは35歳以上男性、スマホでは34歳以下女性が牽引


という内容です(以上、図と共にリリースより引用)。

このリリースは、オークションやフリーマーケットの利用に関してのみ切り出した数字としていますが、この傾向-アクセスの端末がPCからスマホへ-はECサイトだけでなく、インターネットへのアクセス全体に言えることです。

当社でも、育児のポータルサイト【こそだて】を運用していますが、直近1か月のアクセスの約8割はモバイル(約4%のタブレット含む)からです。【こそだて】の利用者は30代前半を中心とする子育て中の女性(9割以上)。ニールセンのリリースでも指摘していますが、スマートフォン利用者のうち女性若年層が大きなウェイトを占めるのであれば、子育て中の女性の生活スタイルを想像するとこの結果(アクセスの8割がスマホ)は想像に難くありません。働いている女性でも、職場を離れれば一番身近なネットに繋がるデバイスはスマートフォンでしょうから、プライベートなネット端末は間違いなくスマホです。
【こそだて】ほどではないにしても、当社がコンサルや運用管理をさせていただいているクライアント様のサイトでも、ECサイトに限らずスマホの比率はどんどん上昇しています。ここで個別のデータを開示することはできませんが、メインのターゲットが女性のサイトでは、年齢層を問わずスマホの比率が5割を超えています。PCがモバイルを超えているのは限られたB2Bサイトなどごく少数です。

また、モバイルアクセスの過半数がiOS(iPhone・iPad)であることも多いです。iPhone、iPad では標準ブラウザでFLASH動画が再生されません。ホームページのTopページやメニューにFLASHを使っているサイトはいまでも多く見かけますが、期待通りに表示されていない事も多いのです。サイト制作会社から「カッコイイですよ」と薦められて、高いお金を払ってFLASH動画を導入した会社もあるのではないでしょうか。今ではそれがあだになっている可能性もあるのです。
このような環境変化が進んでいるにも関わらず、スマホ対応どころか10年前に作ったままのようなホームページのところも多く見かけます。今時のビジネスでは事前の情報収集にネットは欠かせません。それなのに、会社の名前で検索しても出てこない、出てきても内容がわからないでは話になりません。
サイトを見ている人の環境変化についていけないと、知らない間に取り残されることになるのです。

※当社のサイトについては、紺屋の白袴と笑ってお許しください。クライアント様や【こそだて】の対応に追われて後回しになっています。近いうちにリニュアル予定です。

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2014年8月10日日曜日

ベネッセ原田社長が犯した、石原環境相と同じ過ち

7月22日:お客様情報流出に便乗した不審な電話や勧誘へのご注意のお願い

ベネッセは、上記の注意喚起の案内をホームページに掲載しました。詐欺(まがい)の電話がかかってきたと、ベネッセや国民生活センターに問い合わせが来ているとのことです。しかし、個人情報が流出した個別の家庭への連絡は行っていないようです(少なくとも、情報流出に関するお詫びの封書が届いた我が家には、その後何も来ていません)。
我が家に届いたお詫びの封書
このような詐欺(あるいは詐欺まがい)の電話がかかってくるのは、個人情報を漏洩したことがそもそもの原因ではありますが、原田社長(あるいはベネッセが)もう一つ大きな過ちを犯したからだと私は考えます。それは、7月17日に表明したお詫び対応です。

情報が流出した顧客へのお詫び対応として200億円の原資を準備し、「誠実に対応する」と発表しましたが、200億円という数字を示すべきではなかったと考えます。確かに、200億円を2000万人で分ければ1000円ですし、全額が分配される訳ではありません。一人あたりにすれば過去の例と同じく500円程度に落ち着くのでしょう。しかし、普通の人にとっては200億円という金額は実感を伴わないとてつもなく大きな額で、何か自分にもしてくれるのだろうと淡い期待を持つ人もいるでしょう。そんな人をターゲットとして詐欺師は新たなシナリオを作り上げ、早速流出リストを手に入れ、行動に出たのです。どんなトークで電話を掛けてきているのかはわかりませんが、電話の中で「ベネッセ」「個人情報を漏洩」「200億円の原資をもとに」とか言っているのは想像がつきます。200億円という具体的な数字を出したことによって、犯罪者に新たな材料を提供してしまったのです。
そしてもう一つ、世間に「お金で解決しようとしている」というイメージを与えてしまったことです。石原環境相の「金目」発言と同じです。

日本人は、お礼やお詫びなどの姿勢・気持ちを現す時には、心と形式を大切にします。 金額や物に置き換えるのは最後の最後です。その順番を逆にしたことで、印象は相当に悪くなったのではないでしょうか。残念でなりません。