2018年2月19日月曜日

日本ハムの社長がセクハラの現場にいたことで引責辞任した背景は?

2月15日発売の週刊新潮で新潮砲炸裂。「日本ハム社長」電撃辞任の真相は“空港アテンダントへのセクハラ事件”として日本ハム社長交代の背景をすっぱ抜きました。
Yahoo!ニュースにも記事が掲載されました。
日ハム役員、セクハラ発言=昨年10月、同席の社長辞任
(元記事は時事通信社のものでしたので、そちらをリンクします) 

昨年10月、日本ハムの社長(当時)一行がドイツ出張のために羽田空港を利用し、搭乗前にラウンジに立ち寄りました。そこで一人の執行役員(当時)が航空会社の女性従業員性的な内容を含む不適切な発言をしたと航空会社から問い合わせがあり、それを認めて執行役員だけでなく同席していた社長(当時)も辞任したというものです。その時、執行役員は酔っていたとされます。
どのような発言だったのかの記述もありますが、ここでは控えさせていただきます。

この記事を見て、すぐに日本ハムのウェブサイト(IRに関するリリース)を確認すると、1月29日付けで「代表取締役の異動(社長交代)、取締役および執行役員の異動に関するお知らせ」というリリースが配信されていました。


この一連の記事で驚く点は2つ。

1,ラウンジの利用顧客を特定して、航空会社から連絡が入ったこと
嫌な思いをしたからといって、ラウンジに居たお客様が誰だかを突き止めて追求しようとするに至ることはなかなかないはずです。
入り口では航空券などのチェックはするものの、ラウンジの中に入ってしまえば多くの利用者の一人にすぎません。その中で、名札を付けている訳でもなく、顔の知られた有名人でない限りは顧客を特定する事は普通は困難です。

2,発言だけで当事者と社長が引責辞任したこと
この手の発言は言った言わないもありますし、本人は酔っていて覚えていないというのが普通のパターンです。本人でさえなかなか認めませんし、責任を取ろうとはしません。同席していたというだけで社長も辞任するなんてこれまで聞いたことがありません。社長が自ら申し出たのか、それとも会社側が辞任勧告を出したのでしょうか。

顧客を特定して問い合わせてきたのは何処の航空会社か気になって、(昨年の10月の運行状況まで調べられなかったので)2月の羽田空港の運行スケジュールを元にちょっと調べてみました。

羽田からドイツへ飛ぶのはANAとルフトハンザ


羽田空港国際線のヨーロッパ便は、パリ、フランクフルト、ミュンヘン、ロンドンの4路線だけです(2018年2月現在)。ドイツに飛んでいるのはANAとルフトハンザです。どちらもスターアライアンス加盟の航空会社でコードシェア便も飛ばし、ラウンジは共用しています。一方、羽田空港国際線ターミナルでラウンジを運営する航空会社は、JALとANA、それにキャセイ航空の3社ですが、今回の現場はANAのラウンジということになります。 


社長と執行役員という多忙な身。そんなに余裕を持って空港には来られないでしょう。ラウンジで過ごすのは出発前の限られた時間ですから、よほど酒に弱い人でないと酔うほどには飲めません出発前に会食か宴席に顔を出す、あるいは食事などである程度お酒が入ってから空港に到着したと考えるのが妥当です。新潮の記事では、「前祝いで飲酒して」ともあります。であれば夜の出発便と考えられます。
夜の遅い時間にドイツへ出発するのは、午前0:55発のフランクフルト便が有ります。ミュンヘンは昼の早い時刻に出発の1便だけですので除外して良さそうです。

こうして見ると、フランクフルトへ飛び立つ前にANAのラウンジを利用したと考えるのが妥当でしょう。


問い合わせをした会社と受け取った会社

それぞれの対応の背景にあるもの


普通なら航空会社のラウンジ内はプライベートな空間なので、ファーストクラスのラウンジ(ANAの場合はSUITE LOUNGE)であっても利用者の中で個人を特定するのはなかなかに困難です。深夜で利用者が少なかったためか、それとも日本ハムの社長・役員と言うことで貼り付きのVIP対応で特定できたのでしょうか? 

そもそも、「お客様は神様」という意識が強いかつての日本の企業では、お客様の非を追求するような行為は御法度でした。お客様からの無茶な要望や理不尽な要求であっても、それに応えるべきだという空気がありました。過去には航空会社に勤める友人から「上級会員ほど無理なことを言うし、態度が悪い」という話を聞いたこともあります。昭和の映画に出てくる成金社長は、だいたいそんな感じでしたね。今回のような事が起きても、お客様の顔を立ててそのままやり過ごしていたでしょう。
しかし、時代は変わっています。今、人手不足も手伝って、企業はお客様と同じく従業員のことも大切にします。お客様の言うことだったら何でも聴くという時代ではないのです。


個人にではなく会社に問い合わせ

今回は利用者個人にではなく、所属する会社(予約と支払いは会社で行ったのでしょう)に問い合わせをしています。 会社対会社での申し入れです。これまでにもセクハラ発言に限らず、同社役員・従業員による不適切な言動があったのでは?と考えてしまいます。
10月下旬に航空会社からの問い合わせで社内調査をし、事実確認をして航空会社へは謝罪。セクハラ発言をした執行役員と社長(いずれも当時)から辞意を申し出、臨時取締役会で役員交代が決定したということです。
一連の記事ではセクハラ発言の場に居たことを辞任理由(あるいは理由の一つ)に挙げています。公式には辞任の理由は明らかにされていませんが、セクハラ発言が有った点については広報IR部でも認める報道があります。
これまで、セクハラやパワハラが問題になったのは恒常的に行われている様な場合です。今回のように特定の個人による一度(ひょっとすると何度も?)の、しかも会社の外で起こしたことが会社全体の問題として取り上げられることは極めて希と言えます。
しかし、日本ハムは過去にも食肉偽装などで消費者の信用を失い、コンプライアンスの徹底を図ってきたはずです。再びブランドに傷を付けることはできないと、社内への改めての意識改革を求めての社長辞任となったのかもしれません。
日本ハムに限らず、今やハラスメントは社内外を問わず、黙認したり看過できない時代になったということです。

#MeToo」の流れは、海の向こうの話ではなく、すでに日本でも静かに広がり定着しつつあります。





2018年2月9日金曜日

アカデミア賞授賞式に出席してきました

左から 森清範氏(清水寺貫主)、畠山重篤氏(漁師・エッセイスト、NPO法人「森は海の恋人」理事長)、田中裕也氏(建築家・ガウディ研究者)
昨年末、田中裕也さんから連絡をもらい、「全国日本学士会主催のアカデミア賞を受賞することが決まり、その授賞式が京都で開催されるので時間が合えば出席して欲しい」と打診がありました。2か月以上先のスケジュールなのですぐには確定できませんでしたが、 心配していた会議も入らなかったので出席することができました。

素晴らしい講演

田中さんがアカデミア賞を受賞した事は連絡でわかっていましたが、他の授賞者の情報などは全く知らずに出かけました。
会場に行き初めてわかったのは、今年度の授賞者は3名。他の2名は
社会部門 森清範氏(清水寺貫主)
文化・社会部門 畠山重篤(漁師・エッセイスト、NPO法人「森は海の恋人」理事長)
そして、田中裕也さんが 国際部門での受賞でした。

授賞式の後には、受賞者による記念講演が設定されていました。
森清範氏は、冒頭に漢字の揮毫を披露しての講演。 毎年恒例の日本漢字能力検定協会が発表する今年の漢字を揮毫する姿がお馴染みですが、目の前でその揮毫が繰り広げられました。今日の一字は、観音様の「観」。懇親会の席でご一緒させていただいた清水寺の学芸員さんに話をうかがったら、今回の揮毫のために準備した筆や台座は、日本漢字能力検定協会さんからお借りした物で、今年の漢字を発表するときの物そのものと言うことでした。
揮毫に続いての講演では、仏教の講話に今年の漢字発表の裏話など、学び有り笑いありでさすがにお上手。勉強になりました。

畠山さんも、京都大学で教壇に立たれているだけありお話しが上手です。何故牡蠣の養殖で山に木を植える事に至ったのか、そして科学的に有効だと証明されこの活動が英語の教科書に載ることになったというお話し。その際に、「森は海の恋人」をどう訳すのが最適かと悩んだ時に救いの手をさしのべてくださったのが、なんと皇后陛下であったことなど、驚きの連続でした。 そして皇后陛下のアドバイスでたどり着いたのが「long for」という表現。「long for」は愛するよりも慕う、焦がれる、憧れると言うニュアンスだそうです。「森は海を慕い、海は森を慕う」と。その後に国連で講演することとなり、このエピソードを話すと、聴衆が総立ちでスタディングオベーションだったと言うことです。

田中さんの講演は、これまでの40年の実測図面制作活動や最近新たに発見したガウディコードについて。私の場合は、10年以上にわたって連載をお願いし、ずっと原稿の校正を通してその過程を追い続けていたのでその再確認という感じでしたが。実測して図面を描いているだけでは無収入。奥様のサポートが有ったからこそ今の自分があるのだとの感謝の言葉が、何よりも心に残りました。

今回、田中さんがアカデミア賞を受賞されたことで、奈良県庁へも足を伸ばすきっかけとなり、さらには京都で増えている新しいゲストハウスに宿泊体験することもできました。

田中さんの功績は重々承知していたのですが、あまりに身近だったので鈍感になっていたのかもしれません。
これからも更なるご活躍をお祈りいたします。





2018年2月8日木曜日

奈良県庁からの問い合わせで、約50年ぶりの奈良

ほぼ50年ぶりの東大寺大仏殿
奈良を訪れたのは小学生の頃に1度だけ。かれこれ50年ほど前のことで、奈良公園で鹿にせんべいをあげたのと大仏様を見た記憶が、かすかに残っているくらいです。社会人になっても京都へはちょくちょく出かけることは有ったものの、奈良へは一度も足を運んでいません。改めて奈良へ行きたいとずっと思っていましたが、ビジネスでも縁が無く今に至っていました。
そこへ昨年末、大阪の広告代理店に勤める高校の同級生からメールが来ました。関西に来る時に、奈良まで足を伸ばせないかと。Jr東海が「うましうるわし奈良」というキャンペーンを始めて、気にもなっていたところです。

奈良までというのは、奈良県こども・女性局長が、育児情報誌miku50号のフランス取材記事や編集長の「感情的にならない子育て」を読まれて、一度編集長にお話しを伺いたいとのこと。ただ、講演など謝礼・交通費を出せるような依頼はすぐにはできないので、まずは私が関西に出かける際に時間がもらえればと。
そのメールを受け取る少し前に、ガウディ研究家の田中裕也さんからも京都に来られないだろうかとメールで打診がありました。全国日本学士会主催のアカデミア賞を受賞することが決まり、その授賞式が京都で開催されるので時間が合えば出席して欲しいとの連絡でした。授賞式に合わせてバルセロナからご家族で帰国するということでもあり、久しぶりに再会できるのを楽しみに出席を決めていました。朝からの授賞式なので前泊することにし、前日は関西方面での仕事を入れる予定にして。この日なら時間的にも余裕が有り、奈良まで足を伸ばすのは難しくないという返事をしました。

このメールを貰うまでは奈良県のことはほとんど調べたこともなく、京都や大阪と奈良市との位置関係も曖昧でした。改めて調べると、京都から奈良へは近鉄特急でわずか35分ほど!県庁は近鉄奈良駅から歩いてすぐの所にあります。大阪(難波)からも近鉄の快速で40分ほどで行けます。移動に要する時間は、東京や大阪で打ちあわせの際の移動時間と変わりません。これは意外でした。これなら他の商談や打ちあわせも入れられます。

東大寺の大仏様と国宝の数々


 夕方4時のアポイントとしていただいたことで、奈良県庁をその日最後の訪問先とすることができ、慌てて大阪や京都に戻る必要もありません。少し早めに奈良へ向かえば、東大寺を散策する時間が取れます。 京都で打ちあわせを済ませ、13:30発の近鉄特急に滑り込み出発。奈良は京都と同じように山に囲まれた地形の所にあり、山を越えて(トンネルを抜けて)行くものだとばかり思っていましたが、京都から奈良はずっと平地。トンネルも山越えもなく、本当にあっけなく2時過ぎにはもう奈良に到着です。
小雪がちらつく中を東大寺に向かうと、途中すれ違うのは外国人ばかり。東大寺の駐車場には大型観光バスが沢山並んでいます。聞こえてくるのは中国語がほとんどで、ごくたまに英語やスペイン語が混じる程度。鹿にせんべいをやっているのも、参道でお土産を買っているのも中国人ばかりです。

南大門で運慶作の仁王像を見上げ、大仏殿では盧舎那仏を見上げ、ととにかく大きな造形物ばかりで圧倒されます。
法華堂では観音菩薩像に心を洗われるような感覚を覚え、二月堂からは大仏殿の先に奈良の町並みを見渡し、東大寺を1時間半ほど散策して県庁へと向かいました。

働き方改革の参考にと


県庁では、子ども・女性局の福西局長がお待ちでした。
奈良県には大規模な工場や事業所が少なく、県下で1番大きな事業所は、実は県庁なのだそうです。奈良県で働き方改革を進めようとすれば、まずは県庁から見本を示さなければということで、フランスや海外の事例などを聞かせて欲しいというご要望です。
霞ヶ関でも東京都庁でも、毎日深夜まで灯りが消えることなく職員の皆さんは働いています。働き方改革と言いながらもその旗を振る中央官庁や行政職員が1番遅くまで仕事をしていては、民間企業の働き方が変わる訳がありません。

様々な方向から矢継ぎ早の質問に、奈良では県庁がまずその範を示そうとの意気込みが伝わってきました。来年度以降、奈良県庁でどのような取り組みが進められるか楽しみです。

※奈良には、リクルートの先輩で杉並区和田中の校長を勤め、「よのなか科」をスタートさせた藤原和博さんが、今は奈良市立一条高校の校長としていらっしゃいます。次回奈良へ行くときには藤原さんにも連絡して、学校訪問をしてみたいと思っています。