2019年11月18日月曜日

子育てに経済的な支援(手当)が手厚いベルギー:ベルギー取材レポートその1

2年ぶりの海外取材はベルギーへ。EUの本部があるブリュッセルを中心に取材してきました。

まず、ベルギーという国を整理しなければなりません。私もEUの本部が置かれ、ダイヤモンドの流通拠点であること、「フランダースの犬」の舞台であることくらいしか知りませんでしたが、今回多くのことを学びました。
欧州は地続きのため、永い歴史の中で侵略や戦争を繰り返して国も国境もたびたび変化しています。ベルギーも1830年の独立革命でネーデルランド(オランダ)から独立し建国されましたが、2度の世界大戦では中立国でありながらドイツ軍の侵略、占領を経験しています。
1830年の独立革命で制定された憲法では、国の公用語をフランス語としました。wikipediaによると「憲法は(フランス語が最多数の言語でなかったにもかかわらず)投票権をフランス語話者のオート=ブルジョワジー(haute-bourgeoisie)と聖職者に限定した」とあります。独立時の公用語はフランス語となりました。

ベルギーは言語圏で分断された連邦国家


言語に紐付いた共同体
行政地域
第二次大戦後の復興期、ベルギーの北部と南部の言語圏の確執と地域差が表面化し対立します。北部は海運の拠点でもあり古くからダイヤモンド貿易でも栄えたアントワープなど、海岸線と港を持つオランダ語圏(フランダース地域)。南部はもともと鉱山や工場を多く抱えていた地域(ベルギーはイギリスに次いで産業革命の大陸ヨーロッパ最先端を走っていた)で、戦争による被害に加え産業構造の変化により経済的には停滞しているフランス語圏(ワロン地域)。
1962年に言語境界線が定められ、翌年には言語圏で4つの地域に分けられます。ベルギー憲法が公式にオランダ語に翻訳されたのは更に遅れて1967年のこと。1993年に改訂されたベルギー憲法により「ベルギーは言語共同体と地域で構成された連邦制国家である」とされました。このことからもわかるとおり、現在もオランダ語圏(フランダース地域)とフランス語圏(ワロン地域)はお互いに相容れないのです。ブリュッセルはオランダ語・フランス語を併用する中立的な連邦首都として首都圏地域を構成しています。

地域政府は経済、雇用、農業、エネルギー、運輸、環境などの政策分野の権限を有し、連邦政府は、財政、司法、軍事、外交など、連邦の利益に関する政策分野を担います。従って、教育や子育て・家庭政策は地域政府が決めます。

子育て支援政策は 地域ごとに


保育・託児に関する政策は、
・フランス語圏:出産子供局(L'Office de la Naissance et de l'Enfance :ONE)
・オランダ語圏:出産子供局(Kind en Gezin)
・ドイツ語圏:子供家族サービス(Dienst für Kind und Familie:DKF)
がそれぞれの地域で担当し、助成や手当などもそれぞれに異なります。


 ベルギーの合計特殊出生率は2010年(1.86)頃までは上昇傾向にありましたが、その後は一転下降傾向にあり、2016年は1.70です。
ベルギーは1つの国でありながら、子供支援や家族政策は共同体または地域レベルで行われているため、必然的に、共同体や地域により状況は異なります。1980年から2017年までの合計特殊出生率の推移を地域ごとにグラフにすると、ブリュッセル地域の数値が最も高く、フランダース地域とは大きな差があります。「ベルギーの合計特殊出生率」の数値だけを見ても、国レベルで統一された制度がないベルギーにおいては、国内の現状を理解することは難しいのが現状です。
さらに、移民が多いベルギーの多国籍性も考慮しなければなりません。ブリュッセル地域の出生率が高いのは、同地域の出生数の52%は外国籍の市民であり、同地域における外国籍市民の合計特殊出生率は2.06で全体を押し上げています。また、フランダース地域およびワロン地域ではそれぞれ、21.6%および18.2%が外国籍であり、同地域における外国人の合計特殊出生率はそれぞれ2.56、および2.33と極めて高いことを見逃すわけにはいきません。

今回の取材で、子どもが生まれれば手当がもらえるので、「子どもが多ければそれだけで働かなくても暮らせるほどになり浪費する親も居る」という話を聞きました。
 左の表はブリュッセル地域の場合ですが、フランダース地域もワロン地域も、ドイツ語共同体も多少の金額の差はありますが同様の手当が支給されます。
表の「その他」に書いているように、家族状況や収入に応じて支給金額も変わります。
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毎年8月に支給される学校手当は、進級時に文房具を買い足すための足しにということでしょうか。
取材でベルギーに6日間滞在しましたが、日本の消費税にあたる付加価値税(VAT)は高い(標準税率21%。食品6%、レストランの飲食12%などの軽減税率も)ものの、全体的な物価は日本とほぼ同じくらいの印象でした。2019年11月時点では1€=120円前後ですから、2020年からの金額では日本の児童手当よりも高くなりますし、18歳になるまで支給される(しかも13歳から支給額が上がる)ようですのでやはり経済的な支援は日本よりも充実していると言えます。
今現在、子どもが3人居れば毎月約6万5千円が支給されているので、家計は大助かりです。教育費や食費が掛かる中学生(12歳)から手当が増額されるのも日本とは反対で、実態に叶っています。