2015年8月27日木曜日

公共事業のコンペ、受託事業に参加して

北野エースでも販売中の、福岡サンパレスのカレー4種
少し前に、株式会社福岡サンパレスの中川社長様が尋ねてこられました。
 
株式会社福岡サンパレスは、それまで福岡サンパレスを運営していた財団法人福岡勤労者福祉センターを解散し、その後を引き継いで運営するために2004年に設立された会社です。親会社は、明太子のふくやグループ。運営の委託先を決定するための公募に応募、コンペの1位となり受託企業となりました。当社はこのコンペに参加するふくや様の事業プラン作成のお手伝いをさせていただいたことが始まりで、経営が軌道に乗るまではと私が社長を2年ほど勤めさせていただきました。福岡サンパレスの土地建物の所有は福岡市で、言うなれば市が大家さんです。そして、(株)福岡サンパレスは、ホールとホテルの運営だけでなく、隣の国際会議場の1階レストラン「ラ・コンテ」の運営も引き継いでいます。中川社長は、「ラ・コンテ」の大家さんである国際会議場との運営受託契約について、当時の交渉・契約の当事者であった私の所に背景や経緯などの確認に来られたのでした。

この国際会議場との契約の内容に関しては、コンペに勝利して運営を引き継いだ後に初めて明らかになったことも多くあり、驚きや困惑の連続でした。

●事前に開示されていない情報は多い


今振り返ると、当時の私は民間のコンペは多く経験しているもののこのような「官」が実施するコンペへの応募経験は限られていました。実際のコンペ・プロポーザルでは、募集に関する内容説明書の他に、仕様書や要求水準書、様式集、その他必要に応じた資料が開示されます。これらを詳細に読み込み、どのような提案が求められているのか、開示されていない情報の中に提案内容に重大な影響を及ぼす物は無いかなどを検討しなければなりません。中途半端な思い込みで取りかかると、募集主旨から離れ要求水準を全く満たさない提案になりかねません。めでたくコンペに勝っても、運営開始後に「聞いてないよ~」とか「そんなことを今頃言われても」ということにもなるのです。

福岡サンパレスの案件では提案企業はふくやグループさんで、当社は提案書の作成をお手伝いするところから始まったので、獲得後の運営の詳細にまでは 私の神経が行き届いていませんでした。その最たるものは事業所税です。ある日突然高額な事業所税の納付書が送付されてきました。財団の運営では免除されていた事業所税(事前に開示された財務諸表には当然記載無し)が、民間の運営になることで課税されることになると知ったのは、この納付書が送られてきて市役所に問い合わせてからのことです。
そういえば、福岡ドームでも、事業所税のことで揉めたと中内正社長からもうかがっていました。1000㎡を超える床面積の規模での事業に関わる事はなかなかないので、すっかり記憶の彼方でした。また「ラ・コンテ」の運営受託条件のことでも、「聞いてないよ~」があり‥‥

このようなことを回避するためには、設定されている質問・意見受付期間を有効に使わなければなりません。そのためには、提案書提出までのスケジュール建てが非常に重要になります。質問受付期間があっても、何も質問できないままにその期間が過ぎてしまうと、これはどうなんだ?こんな提案して良いのか?これにかかるコストは何処が持つの?など答えの出ない疑問を抱えた(あるいは何も疑問も持たない)まま提案書を作成し、プレゼンをすることになってしまいます。質問期間終了までにある程度の提案の骨子を組み立てて、疑問を解消しておくことが非常に重要になるのです。


先の大分県立美術館の開館準備プロモーションに関するコンペを始め、この数年「官」のコンペ・プロポーザルに自ら参加したりプロジェクト・コンソーシアムの一員にと声をかけていただくことが多くなり、毎回新しい経験をさせていただいています。おかげさまで経験値も上がってきています。先頃は、東京都のコンペ案件でも受託することができました。

何か皆様のお役に立てることがあるのではないでしょうか?

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2015年8月25日火曜日

東京オリンピックのエンブレム問題を機に、著作件と商標について考える

東京オリンピックのエンブレムの騒動を発端に、著作権や意匠権について注目が集まっています。

著作権は、思想や感情を創作的に表現する音楽や著述、絵画や映像、あるいは建築物やコンピュータプログラムなど、創作物の知的財産を保護する国際的な権利です。著作権には大別すると財産権と著作者人格権とがあり、普通著作権と言われるのは財産権のことです。創作・著作物に財産的価値を認め、保護しています。著作権の侵害と訴えられる前提として、著作物が存在する必要があります。
著作物が音楽の場合は、CDの販売やダウンロード、カラオケの再生、コンサートや放送で演奏・再生される度に、楽曲と歌詞の使用に対して使用料が支払われます。小説などの書籍では増刷する度に印税として著作権使用料が支払われます。これらは、著作権のなかでも複製権といわれる物です。
著作権の侵害の多くは、商業的な収益源となり得る著作物について、得られるべき収益に影響を与える行為だとして訴えられるケースです。

この財産権としての著作権は譲り渡すことができます。小室哲哉氏が、氏の持つ楽曲の音楽著作権を手放したのは話題になりましたし、一般的な広告コピーライティングなどは、原稿納品時に買い取り(著作権の譲渡)が普通です。
一方、著作者人格権は、財産権として手放しても作者の意志・オリジナルを保護する考え方で、著作権を買い取ったからと言っても作者の意志に反した扱いはできないというものです。同一性保持権や公表権などがこれにあたります。問題になるのは、著作物の舞台化・映像化の際や替え歌で原作者の人格権を侵害したとしてトラブルとなり、使用差し止めや制作中止を訴えられたりするケースです。

意匠権は、工業製品のデザインや商品・パッケージのデザインなど、著作権同様オリジナルを保護しようとするものです。一目見てその商品と認識できるような形や色彩の組み合わせなどです。Appleがサムスン社を相手取って、スマートフォンのデザインがiPhoneの意匠権を侵害してると訴訟を起こして激しく争ったのは記憶に新しいところですし、かつてはビールの缶のデザインで類似誤認を招くと使用差し止めの訴えもありました。つい最近では、韓国ロッテが日本のグリコ「バトンドール」の製品パッケージに良く似た商品を販売してグリコから販売差し止めの訴えを起こされています。グリコは捻った特徴のあるパッケージ形態を韓国でも意匠登録済みだということです。

商標・意匠登録は必須


今回東京オリンピックのエンブレムで問題になったのは、ベルギーのリエージュ劇場のロゴマークに似ているということが発端でした。エンブレムやロゴは、広く流通する著作物や工業製品と違って、ローカルな商店のロゴや商品のパッケージなど、どこに存在しているかが解りづらいという問題があります。そこで、オリジナルの権利を主張するために商標や意匠登録をし、権利を確定させます。
著作権の所有者であることを明確にし、主張するのがⓒ。法的に商標登録を済ませていることを主張するのがレジスターマークの®です。
今回の東京オリンピックのエンブレムでも、JOCでは日本だけでなく世界中の登録商標について事前チェックは済ませていると言っています。そして、既に新しいエンブレムの登録出願は済ませているでしょう。

そもそも、東京オリンピックのエンブレムに対して模倣されたと訴えているデザイナーですが、本来なら結構無理があります。世界的に知られているマークというわけでもなく、似ているからすぐに侵害したと言うことにはなりづらいからです。模倣ではなくオリジナルの創作物で偶然似ることもなくはありません。模倣や盗作であることを証明あるいはその根拠を示す必要があります。しかし、そもそも商標・意匠登録しておけば類似のデザインに対して法的に争うことができます。大事なロゴなどは登録しておくことで、似たようなデザインに対して使用差し止めなどの訴えができます。それもやっていませんでした。
今回の騒動では、著作権侵害という訴えではありません。デザインを模倣されたと主張するもので使用の差し止めを要求しています。 自分のデザインを模倣して東京オリンピックのエンブレムを作ったのだから、そのデザインによって得られる利益の一部は自分のものだという訴えになるのでしょうか。

いずれにしても、苦労して世に出す商品やブランドを、先に商標登録している企業や個人から使用差し止めの訴えを起こされて、名前を変えたりデザインを見直すようなことは避けなければなりません。事前の調査と登録はしっかりやっておくことをオススメします。
商標・意匠登録の調査は、特許庁の特許情報プラットフォームで簡易検索ができます。
「ブライトウェイ」を検索した結果

私は弁護士や弁理士の専門資格を持つ訳ではないので、上記記載内容に間違いがあったらお知らせください。修正いたします。また、商標や意匠登録についての詳細や権利訴訟については、専門家にお尋ねください。