2018年9月9日日曜日

日本体操協会が取材窓口を一本化できないのは「権力闘争」が背景に?

宮川選手の会見に始まる日本体操協会のパワハラ問題。
29日の協会の記者会見の翌日朝には、塚原副会長の取材に対するコメント、そして協会の2度目の記者会見。
その後31日には、塚原夫妻からは反論の声明文がFAXで送られました。宮川選手へ直接謝罪の申し出をしたもののそれが拒否されると、「宮川紗江選手に対する謝罪」とするFAXがマスコミ各社へ配付されました。

そこまでの経緯は
体操協会からではない塚原副会長のプレスリリースから見えてくるもの 
であらかた整理しています。

その後、速見コーチが宮川選手を平手打ちする動画がフジテレビ系列で流され、これを機に再び様々な議論が巻き起こっています。
  

日本体操協会の広報窓口は機能しているのか?


日本体躯協会2018年度組織図

日本体操協会が30日に記者会見をした後、塚原夫妻は独自に報道各社に対してプレスリリースを配信し、個別取材にも応じています。
今日も、フジテレビ系列のMr.サンデーで、宮根氏と2時間に及ぶインタビューに答えています。そのインタビューの中で、「権力闘争」という言葉も飛び出しました。

野次馬的にはますますオモシロイ展開になってきた!というところですが、客観的に見ると「体操協会大丈夫なの?」という展開です。

塚本夫妻は現時点でも日本体操協会の副会長と女子体操強化本部長という立場。それなのに協会を通してとは思えないプレスリリースをFAXしたり、メディアの取材に単独で応じ、時には協会批判とも受け取れるような発言をしています。

この状況を見る限り、日本体操協会のガバナンスは既に崩れていると見て良いと思われます。あるいは塚原夫妻は日本体操協会のコントロールから外れて暴走をしていると言っても良いでしょう。
日本体操協会の組織図を見ると、コンプライアンス委員会も広報委員会もあります。しかし、実態として機能しているのか疑問としか言いようが無い状況です。塚原夫妻がマスコミに登場し発言している様は、協会の役員として看過できるものなのか、第三者として見ていても疑問を抱かざるをえない状況です。

ガバナンス・広報のコントロールを欠いていると受けとめられる状況は、組織のあり方として非常に危ういといわざるをえません。
今回は宮川選手に対する暴力・パワハラに端を発した問題でしたが、このまま体操協会全体を見直さざるをえない問題と捉えるのが一般の受けとめ方になって来ているのではないでしょうか。ますます先がオモシロク、いえ混迷しそうです。

2018年9月6日木曜日

もう一度、IDカードを下げて外出していないか注意を

1992年アメリカズカップ取材時のIDカード
先日、83歳の母親がテレビドラマを見ながら、こう尋ねてきました。

「近頃は、首からなんか札下げるのが流行っとるんね?」

最近、オフィスビルではセキュリティチェックが厳しくなっています。そもそもテレビ局や大手広告代理店では、オフィスの入退出はIDカードをかざすのが当たり前です。そんなこともあり、オフィスや病院を舞台にしたドラマだと、職場の場面では登場人物が首からIDカードをぶら下げているのが普通になりました。

かつては、IDカードはF1やアメリカズカップなどの国際的なイベントの際、世界中からやってくるジャーナリストを一般人と明確に識別し、セキュリティエリアへの立ち入りを許可するためなど、限られたシーンで求められていました。そのため、IDを取得するためには定められた要件を満たす事前の申請書類の提出が必要で、認められれば発行PINの通知かIDカードが送られてきました。今のようにICカードなど無い時代ですから、顔写真付きです。
一方国内では基本顔パスみたいなもので、見慣れない顔だと停めて確認する程度。名刺がID代わりでもありました。国会やプロ野球の球場だと記者クラブ章やペンクラブのバッジなどで識別していました。

首からカードを下げる様な場面は、参加した人をグループ分けするなどのイベント性の強いシーンに限られました。名札を首からぶら下げて外を歩くことは、小学生が名札をつけて歩いているような恥ずかしさを感じたものです。

外をオフィスの延長で考えない


昨年、「ピースサインの写真よりも怖いIDカード下げた外出」 をここにエントリーして警鐘を鳴らしました。しかし、冒頭の母の発言のように、テレビや映画、Net配信の番組でIDカードをぶら下げた登場人物を多く見ていると、どこでもそれが普通で場合によってはカッコイイと思ってしまう人も出てくるでしょう。職場で同僚はみなIDカードをぶら下げ、一緒に昼食を食べに外に出れば外でもIDカードをぶら下げています。本人達は何の違和感も感じません。しかし、まわりから見れば異様な集団であり、しかもIDカードのおかげでどの会社のどの部署のグループかまで容易に識別できてしまいます。スマホで写真を撮れば、一網打尽でグループの情報が取れてしまいます。
あれだけ個人情報について神経質になっていながら、不思議です。

今、小学生でも学校の外では名札を着けないか裏返すようにしています。名前で呼ばれて話しかけられると警戒心は薄れ、犯罪に巻き込まれる可能性が高まるとの懸念からです。スマホで写真を撮り、拡大すれば名前がすぐにわかります。
IDカードから顔と名前、所属がわかれば、今ではネット検索でいろいろなことが解ります。ストーカーの危険だけでなく、ネット上の情報プロファイリングにより自宅住所や家族・交友関係まで探り当てられまてしまいかねません。

テレビや映画でみんな首からIDカードを下げているからと、それが施設の外に出ても普通の事、格好いいことと勘違いしないよう、今一度従業員に徹底しましょう。それが徹底できないのなら、蓋付きのIDカードホルダーの導入を検討するべきです。





2018年9月3日月曜日

体操協会からではない塚原副会長のプレスリリースから見えてくるもの

8月29日の宮川選手の記者会見を受けて、日本体操協会が緊急記者会見を行いました。翌日には塚原副会長が「全部うそ」とコメントし、同時に「プレスリリース」で全て明らかにすると言っていました。その日の午後には体操協会の2回目の記者会見が開かれました。
31日、協会の記者会見を無視するかのように、塚原夫妻からFAXによるプレスリリースが配信されました。内容は、宮川選手の会見内容に反論する声明文でした。
第三者委員会も立ち上がらないうちに、一方的な反論リリース。この時点で協会は2人になんらかの処分を下しても良いくらいです。プレスリリース(声明文)の内容についてはこちらの The PAGE の記事が詳しく書いています。




「宮川紗江選手に対する謝罪」のFAXを報道各社に送っています。
FAX全文がデイリースポーツニュースに掲載されています。

塚原夫妻「宮川紗江選手に対する謝罪」FAX全文

声明文、謝罪文の内容やそれに対する宮川選手ならびに世間の受けとめ方は様々なメディアで報道されていますので、ここではそこは話題とせず、広報的な視点からの疑問と問題転を取り上げます。

プレスリリースっていったい何?


宮川選手の記者会見の翌朝、塚原副会長が「プレスリリースします」としきりに口にしていました。私は、日本体操協会から、協会としての見解・対応をプレスリリースするということだろうと思っていました。協会は30日に緊急対策会議を開き、第三者委員会を設置し調査する事を決め、記者会見でそれを発表しました。報道を見る限り、緊急対策会議には塚原副会長は出席していなかったようです。しかしこれが塚原副会長が言うプレスリリースなのかと思いました。

プレスリリースは、報道機関向けの発表・情報提供のことです。文章での提供だけでなく、記者会見や発表会もプレスリリースの形態の一つです。30日に開いた体操協会の記者会見もプレスリリースです。
ところが翌31日、塚原夫妻からはプレスリリースとして5枚の声明文がマスコミ各社へFAXされました。

通常プレスリリースは、政府・行政機関や企業・団体などから発信されます。芸能人や政治家などが個人名で、事務所を通じ報道各社へコメントや謝罪文などをFAXすることもあります。報道機関に向けた発表という意味では、これもプレスリリースに違いはありません。しかし、主語が個人の場合、報道される際には個人の「コメント」や「謝罪」とされ、プレスリリースが届いたとは普通言いません。今回の塚原夫妻の「声明文」や「謝罪文」は、塚原副会長が「プレスリリース」と何度も口にしていたために、報道でもプレスリリースという表現になっているのでしょう。プレスリリースの発信元は2人が経営する体操クラブからか、会社からか、それとも自宅からなのか?少なくとも日本体操協会からリリースされたものでないことは確かです。

リリースをFAXで済ませる意図


報道機関・媒体社には、毎日膨大な数のプレスリリースが届きます。記者会見や発表会はその中では極々一部で、ほとんどはメールや封書、FAXです。記者はリリース全部に目を通すのは不可能です。記者に注目され、取り上げられる確率を上げるために、記者会見や発表会を開催します。
逆に、注目されたくない発表・説明や謝罪に際しては、できるだけ報道されないようにと形だけのプレスリリースで逃げようとします。特に独裁的な立場の人は会見を避ける傾向があります。ウェブサイトに謝罪文を掲載(しかも責任の所在は曖昧)し、FAXを送付するのみというケースがほとんどです。芸能人がプライベートな報告や謝罪をする際にFAXだけで済ませることが多いのも、質問を受けたくないからです。

今回の塚原夫妻は、本来ならば記者会見を開いて説明し、記者の質問にも答えるべき事案です。それをFAXだけで済ませようとしている段階で、宮川選手の告発内容や世間からの批判に正面から向き合うことなく逃げている姿勢がありありです。
そもそも、日本体操協会の人間として発言をしてきた塚原夫妻の言動が問題になっています。協会が2人に説明を求め、会見を開くべきでしょう。しかし、それができないということでしょうから、協会内での塚原夫妻の力がいかに強いか、同時に協会の体質が窺えます。

プレスリリースの発信の仕方、記者会見の開き方を通して、文字や映像から伝わる情報だけでなく、発信者の意図や姿勢が受け取る側に情報として伝わるということです。
今回、日本体操協会の初動(29日の会見)も、その後の対応も決して褒められたものではありませんが、塚原夫妻がそれを帳消しにするようなファインプレーを演じ続けてくれた、皮肉な結果とも言えます。マスコミは塚原夫妻ばかりを追いかけていますが、そもそもは日本体操協会に突きつけられた問題なのです。