2014年7月16日水曜日

地方議会だけじゃない、組織に住む魔物と会議を支配する空気

ここのところ、地方議会でのセクハラ野次や議員の不適切な政務調査/活動費の処理、それに続く記者会見などがマスコミを賑わせています。誰の目にも、「こんなのは氷山の一角」と映っているでしょう。エディーマーフィー主演の映画「ホワイトハウス狂想曲」でも、その一角が描かれていました。

私の身近にも、政治家を志す者、政治家になった者が多くいます。政治家と言っても、行政の長を目指す者と議員を目指す人とでは随分違うのかもしれません。首長は極端な事を言えば独裁者にもなれます。全ての責任を負う覚悟の元で、理想を掲げそこに向かってあらゆる組織や議会、有権者を説得し、同じ方向に向かうパワーが求められます。
一方、議員は議会という組織の構成員です。議会は多数決で物事が決する世界ですから、政党や会派といったグループの結束力や多数派工作が重要になります。選挙は無所属で戦い支援者のおかげで無事に当選しても、 議会の中では一人だけで孤立してしまうと数の力に屈するほかありません。そして、無所属で当選した議員も、多くはやがて政党や会派に属し、組織の一員となってしまいます。

組織には魔物が住んでいる


「無所属だった新人の頃は」、とか会社でも「若かった頃は」元気でバイタリティがあったのにという言葉をよく聞きます。組織の中で自己主張したりぶつかったりしていうるちに抑えつけられ、角が丸くなるということはよくあること。ある政治家も言っていました。
「組織には魔物が住んでいる」と。
組織の一員としての役割や振る舞い、発言を求められ期待されるようになると、それに応えよう、あるいは組織の中での地位と役割を守ろうという意識が働き始めます。それが自分の本来の考えとは違っていて自分の中での整合性がとれなくなった時にどちらに振れるか。多くは組織の中での安定を選んで悶々としながらも、その役割を全うしようとします。
組織や会議には、目には見えないけれど明らかに存在する「空気」があります。組織の魔物は空気という形でプレッシャーをかけてきます。ある意味集団心理、全体でテンションが上がる、あるいは逆に重くなる空気が支配します。その空気の中でふるまおうとするのです。
セクハラ発言を擁護するつもりも毛頭無いですが、その「空気に支配された勢い」が冷静に考えれば発してはいけない言葉を吐かせたのではないかと考えるのです。
会議の場ではなく議場に入る前から、その空気は支配しています。組織の構成員との雑談やあるいは飲みの席でも、日常でそのような(セクハラを始めとした不適切)発言があり、それを誰も指摘したりたしなめたりしないし、できないのでしょう。日常そのままの空気が議会での野次に繋がったのではないでしょうか。
セクハラ野次は一人の議員が謝罪したことで幕引きを謀ろうとしていますが、実際には政党や会派の全員が同じ発言をする可能性があると考える方が普通です。

セクハラ野次に関しては、朝日新聞の記事「マタハラ議会じゃ産めない(考 民主主義はいま)」でもあるように、議会そのものが徹底的に男性社会を前提に成り立っているために、女性に対しての扱いや認識が対等ではないということです。
Action plan Equality 2014

9月にノルウェーに子育て事情を取材に行く予定です。そこで、ノルウェー大使館から多くの資料が送られてきました。 その中の一つが 「Action plan Equality 2014」。
あらゆる面で平等を徹底するためのアクションプランです。日本でも、憲法第14条で法の下での平等を謳っていますが、これほど徹底していません。ノルウェーでは、恐らく差別的な発言や扱いは徹底して排除される空気があるのでしょう(まだ行っていないので想像ですが)。しかし、日本では逆に男女格差が普通だという空気が、いろいろなところを支配しているのです。

兵庫県議会の野々村議員の政務調査/活動費不正使用疑惑では、ほかの議員にも同様の疑惑が広まりつつあります。これも、不正に使用するのが当たり前だという空気が、一部に広がっていて、お互いに見て見ぬふりをしていたのではないかと思えてきます。兵庫県だけでなく、各自治体のオンブズマンが一斉に調査に動き出すのではないでしょうか。

議会だけでなく、みなさんが所属する企業(特に歴史のある大きな会社)、組織についても、同じような空気が支配していませんか?
きっと、政治家も会社員も、一人一人はもともとはまじめで良い人なんです。でも、そのまじめな人さえも変えてしまう空気を排除しない限り、次々と魔物に取り込まれてしまうのです。その空気を変えるのは人なのでしょうか、仕組みやルールなのでしょうか?

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2014年7月12日土曜日

ベネッセコーポレーションで働く皆さんへ。

ベネッセコーポレーション(以下ベネッセ)は7月9日、760万件の顧客情報が外部に漏洩したことを確認したと発表しました。さらに漏洩は、最大で約2070万件に増える可能性があるとしています。
お客様情報の漏えいについてお詫びとご説明

この発表を受けて、TwitterやSNSではジャストシステムのスマイルゼミからベネッセにしか登録していない情報でDMが届いたなどの書き込みも広がりました。報道では、ベネッセの関連会社「シンフォーム」から持ち出された顧客情報が、複数の業者を経て「文献社」にわたり、その名簿を購入したジャストシステムがDMを発送したことで発覚したという流れのようです。
それに対してジャストシステム、はホームページで反論のコメントを出しています。
本日の一部報道につきまして
しかし、その後の報道や社内調査の後、改めて以下の発表をしています。
ベネッセコーポレーションの個人情報漏洩の件に対する当社の対応につきまして

今後、他でも名簿を購入した企業の名前が出たり、そもそもデータを持ち出した犯人に関する報道も続くことは容易に想像がつきます。
そして、その都度ベネッセの顧客会員は不安になり、問い合わせをするのでしょう。その点、会員と直接コミュニケーションが取れる、ある意味通販会社のような立ち位置なので、窓口の一本化はしやすいといえます。しかし、2000万人以上の顧客からの問い合わせに対応できる窓口、体制は準備できているでしょうか?単に数の問題ではなく、誰が電話に出ても同じ受け答えができるかが重要となります。下手をすれば,この対応で更なる混乱や不審感に繋がりかねません。


リクルート事件で感じた思い

育児情報誌mikuは、3年半前にベネッセコーポレーションより事業譲渡を受けて今に至っていますし、mikuにかかわっていた方やリクルートのOBも多くいる会社です。この事件の報道に接すると、ベネッセで働く皆さんに気持ちがいってしまいます。
しばらくはテレビや新聞、週刊誌、あるいはNet上では「ベネッセ」の名前が飛び交い、お客様や知人からも様々に声を掛けられるでしょう。自分は直接の当事者ではなくても、第三者から見れば同じです。そうやって問い詰められたり、質問攻めにあったり、陰口を耳にしたり。外部の犯罪者のせいでどうして自分達が責められなければならないのか?とも考えます。

リクルート事件でも、当初は同じような思いをしました。株の売買がどうして責められることなのか?と理解できない者も多かったくらいです。そして、会社ではなく「社内報かもめ」を中心として全従業員が客観的な視点で事件に向き合いました。

事実は何なのか?
何がいけないのか?
何が間違っていたのか?
自分達が今携わっている仕事は間違っていたのか?

自分達は何をするべきなのか?

そして、2つの結論にたどりつきました。それは、

1,関与したのは極限られた一部の人間であっても、世間の一般常識ではやってはならないことを、リクルートという看板が関与して行われたという事実。これは会社として全体で、そして従業員一人一人が重く受け止めなければならない。
2,しかしリクルートが提供している商品・サービスは、事件とは分けて考えなければならない。お客様にも読者・利用者にも喜ばれるサービスを提供している。その点については自信と誇りを持つべきだ。

仕事に関しては卑屈になる必要は無い。リクルートというブランドは傷ついたけれど、商品に傷はついていないんだと自らに言い聞かせ、襟を正してお客様のために精一杯の仕事をする。それが信頼回復へ向けて自分達にできる唯一のことだという結論にです。そして苦難を乗り越えたリクルートは今に至っています。


今回のベネッセの個人情報漏洩も、事件に関与した人間が内部の者か外部の者かということよりも、個人情報が外部に漏洩したという事実が会員さんにとっては問題です。外部の人間が持ちだした事件だと考えると、自分達も被害者だという意識にもなりがちです。解決すべき事は明確である一方、会員情報管理に携わる部署以外の人は、他人事になりかねません。
今、これから何をするべきなのか?をそれぞれが考え、実行に移すことが重要です。決して指示を待つのではなく、自ら考えて行動することが。
ひょっとすると、現場の若い人は「自分には関係ない話」と、何も感じてなかったりするのでしょうか?そうでないことを願うばかりです。


※発表までの経緯と問い合わせ窓口は、こちらのニュースリリース(PDF)にまとめてあります。
ベネッセコーポレーションにおける個人情報漏えいに関するお知らせとお詫び(お問い合わせ窓口のご案内)
そして、すでにソーシャル上ではこのような整理されたページもできています。
ベネッセの情報漏えいをまとめてみた。Add Star

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