2019年7月30日火曜日

ソーシャルメディア活用の基礎(2)企業アカウントでの運用…中堅・中小企業のリスク回避と危機管理

前回は、ソーシャルメディアの基本として、代表的なツールの基礎情報を整理しましたが、今回はそれらを利用・運用するときに起こしがちなミス・トラブル、リスクについて整理します。
ソーシャルメディアでのトラブルの行き着く先は、「炎上」です。言い換えれば、炎上の火種を作らない運用が大切と言うことになります。また、ソーシャルメディア炎上の火種は、運営主体が自らの発信で作る場合と、従業員やお客様の投稿による場合があります。本稿ではまず、アカウント運営者としてのリスクについて書いてみます。

企業やお店などが公式アカウントでソーシャルメディアを運用する場合、多くは新商品やサービスの告知、そのほか各種お知らせといった情報提供か、共通テーマでのコミュニケーションを通じたファン・コミュニティ作りの2つに分けられるかと思います。

フォロワーが増えない=人気が無いという評価に繋がるリスク


官公庁や大企業・有名企業のアカウントは前者の運用がほとんどです。提供できる情報が多く、情報自体に価値があるために変な小細工の必要もありません。どちらかと言えば堅め、かしこまった運用で、コメントも制限しているケースが少なくありません。

無名の中堅・中小企業の場合、一方通行の運用ですのでシェアされたりRTされたりと話題にされるためには、提供される情報そのものが魅力的・貴重・楽しい・役立つ・共感できるなど受け手に価値がなければ読んでももらえず、フォロワーも増えません。
誰もが知っている様な企業・ブランド・店舗であれば、名前で検索してフォローされることもあるでしょうが、無名の企業や新しいブランド・お店ではアカウントにたどり着かせるだけでも大変なことです。Facebookページやtwitterで情報発信を始めてもフォローするのは従業員やその家族、身近な友人止まりでせいぜいフォロワーは数十人というアカウントがたくさんあります。こうなると、担当者の心が折れて更新頻度が落ちたりおざなりになったりし、結果フォローを解除する人が増えてますます悪循環に陥ります。

フォロワーが少ないアカウントは、人気が無い・役に立たない・オモシロくない、フォローする価値がないということでもあり、それが企業やブランド、お店の評価にも繋がりかねません。
こういう時に、担当者の上司や経営者が無茶なプレッシャーをかけると、たまりかねて誤った方向の企画や投稿に繋がり、結果炎上に発展することもあるので要注意です。

動画コンテンツの投稿は細心の注意を


ブログや動画のコンテンツは、ウェブサイトに埋め込んだりリンクしたりするだけでなく、情報のアーカイブとしても遡って検索対象となります。数年前に投稿したものでも多数の人に閲覧されることも少なくありません。永く残る前提で内容や表現には注意が必要です。投稿したときには問題が無くても、後に法律や社会情勢が変わり許されなくなるような物や事も少なくありません。たばこに関する扱いなどが良い例です。

ブログであれば不適切な内容や表現があれば修正も可能ですが、動画の場合は一部を修正するのは難しく、削除するか削除後に改めてあげ直すことになります。しかしその動画がネットで話題になったりしてしまうと、すぐにコピーされ再投稿、拡散されたりもします。動画の内容は、そこで何を伝えようとしたのかだけでなく、そこに偶然映り込んでしまった物や音(あるいは音楽)も問題になることもあり、制作時に注意するだけでなく、定期的に内容の確認も必要です。特に、ジェンダーの役割に関する表現やハラスメントとして受け取られるような場面には要注意です。近年では大手企業のネットCMでいくつも炎上に発展しています。

調子に乗らない


一方、ファン・コミュニティ作りが主目的の場合には積極的にコメントを求めたり、コメントに答えたりと担当者に相当なコミュニケーションスキルが求められます。ソーシャルメディアをひとくくりで考えず、FacebookとTwitterに別の役割を持たせるなども有効です。発信する情報も硬軟取り混ぜ(多くは硬よりも軟の方が主)、話題によってはタイムライン上で意見が衝突したりする場合もあります。FacebookやInstagramは、投稿後に編集も可能ですが、Twitterは投稿の編集はできません。一度投稿した不適切なtweetはスクリーンショットを撮られたりし、削除してもその画像がまた「削除されたtweet」として拡散されたりして、更なる炎上を招くこともあります。

世間で話題だからと、自社や自社の扱う商品・サービスとは直接関係の無い話題を投稿する際には要注意です。政治・宗教・差別・ジェンダーに関する話題は、基本的に避けたいものです。特に、どんな話題であっても否定的な意見や指摘をすることは避けましょう。担当者の認識不足やちょっとした言葉足らずな投稿が炎上に発展する可能性もあります。

商品やサービスに合わせたキャラクターを設定して、そのキャラクターの世界観で発信する事もよくされますが、過去には自治体のキャラクターが不適切な投稿をして炎上し、アカウントを閉鎖したケースもあります。コミュニティの参加者(フォロワー)が増えて、運用に手応えを感じ始める頃は特に注意が必要です。

まず運用ポリシーを明文化する


ソーシャルメディアを活用する場合、トラブルを回避するためには運用ポリシーとガイドラインを明文化しておくことが重要です。「発信して良いこと」と「発信してはならないこと」を明確にします。複数人で運用する場合には文書化するだけでなく、全員に周知徹底することも同時に行わなければ意味がありません。定期的な勉強会やチェックリストを準備するなども必要です。
流行だから、お金が掛からないからとソーシャルメディアをスタートする事も少なくないでしょう。しかし、それだけに行き当たりばったりや担当者の意欲・スキルに依存し過ぎて、いつの間にか企業やブランドから離れていってしまうこともあります。そうならないためにも、既に運用中のアカウントに対しても運用ポリシーやガイドラインを整備する事をオススメします。

ソーシャルメディア活用の基礎(1)
ソーシャルメディア活用の基礎(2)企業アカウントでの運用
ソーシャルメディア活用の基礎(3)従業員のSNS利用
ソーシャルメディア活用の基礎(4)従業員のSNS利用 その2

中堅・中小企業のリスク回避と危機管理-目次に代えて(まえがき)



2019年7月22日月曜日

会見の目的を明確にせず準備不足で大失敗の吉本興業

7月20日の宮迫さん、田村亮さんの会見を受け、本日14時から吉本興業の緊急会見が開催されました。



冒頭、広報室長から会見の進行についての説明があり、その際に質問がなくなるまで会見を打ち切らないと告げられました。私は、会見の事前準備は万全だという自信の表れだと受け止めました。しかし期待は裏切られ、途中10分の休憩を挟んで5時間半の長時間会見となりました。

まず法務本部長が、これまでの聞き取りなどでまとめた事実関係と経緯を時系列で説明(会見場では記者に紙資料配付)。その後に岡本社長が登場し、お詫びを述べた後に
2人の処分の撤回を告げ、これから会社として取り組むべき2つのテーマが示されます。
・コンプライアンスの徹底
・芸人・タレントファーストで物事を考える
というものでした。更に、社長・会長2名の役員報酬を1年間50%カットすることも発表されました。

これから予想を越えた、長い質疑応答へと移ります。
一言で言えば、一つ一つの質問への回答が簡潔でなく、だらだらと時間をかけて話をするばかりで何も答えが出ないのです。YESかNOを求められてもその答えを明確にしないのです。

7月20日の2人の会見で引きずり出された形の吉本興業ですが、会見を開くことありきで何のために会見を開くのかが明確になっていませんでした。2人の会見内容について説明・反論するのが目的か、それとも全てを認めて謝罪するための会見か。そのどちらも整理されず、具体的なことが何も提示されないため、まれに見る長時間で大失敗の会見となってしまいました。

よく似た記憶に残る会見


過去にも、このような経緯で開かれた会見はいくつもあります。特に昨年はスポーツ関連で同様の会見がいくつも開かれました。なかでも日大アメフト部、日本体操協会の記憶に残る2つの会見がありました。どちらも、直前の選手による(告発)会見を受けて開かれたものです。そして、同じように失敗しています。

日大の緊急会見は謝罪ではなく弁明会見、思い出すのは「焼肉酒家えびす」の集団食中毒事件の会見

準備不足で中途半端な日本体操協会記者会見の矛盾。

今回の吉本興業の緊急会見は、本来なら20日の会見で2人が明らかにした会話の内容について、認めるのかそうでないのかが焦点です。緊急会見を開催するに際し、当然そのことについて整理しQ&Aも準備されているものと思っていました。2人に下した処分を撤回するに至ったのも、その整理の結果だろうと。しかし、その期待は完全に裏切られるものでした。5時間半という無駄に長い記者会見となってしまった原因です。

会見の終盤に、フジテレビ「とくダネ!」の岸本レポーターの質問ー亮さん、宮迫さんの会見の中で、社長が言ったとされる言葉の中で、何か反論できることはありますか?これは事実とは違うと言うことはありますか?」ーがまさにその核心でした。
しかし、岡本社長はこの質問に明確に答えを返すことはできず、結果、二人の告発を否定することができないまま会見を終えることとなってしまいました。

処分や責任を取らせるという場合には、その処分の対象が明確に示されなければなりません。2人の処分取り消しは、そもそも何に対しての処分だったのか(反社会的組織との関わりに対してのはずだった)、どうして(反社との関係は否定されていない)処分を撤回したのか明確に示されませんでした。社長・会長の役員報酬の減額も、会社として何かに対しての非を認めて初めて意味を持つものですが、何に対してのものなのかがはっきりしない、どうでもいい「責任を取ったポーズ」でしかありませんでした。
期待されていた吉本興業の「体制変化」についても、何もありませんでした。サプライズが何もないという「サプライズ」会見だったと言えば良いでしょうか。

日大アメフト部も日本体操協会も、告発会見直後に開いた緊急会見では、告発内容に対する事実関係の認否と説明をするものでした。両者ともその後にも何度か会見を開いていますが、日本体操協会は具志堅副会長の会見でムードが大きく変わることになります。

誰が対応するかで記者会見の印象が変わることを明確に示した、具志堅副会長

吉本興業も、今回の会見は混乱に拍車をかけただけとなってしまいました。日本体操協会の具志堅副会長のように、信頼を取り戻せる人物の登場・納得の会見が待たれます。

今回の会見の様子もTHE PAGEさんのYoutubeチャンネルを貼っていますが、どうやらYoutubeの制限なのか後半4時間のみ、冒頭の1時間半はカットされています。上記岸本レポーターの質問は、3時間36分あたりです。



2019年7月20日土曜日

吉本興業がどう対応するのか、に注目。宮迫博之さん・田村亮さんの謝罪会見


お笑い芸人の闇営業問題では、吉本興業は会見を開かないまま1カ月以上が過ぎました。
そして今日、闇営業で吉本興業を契約解除になった雨上がり決死隊の宮迫博之さん、ロンドンブーツ1号2号の田村亮さんの二人が記者会見を開きました。
今回も、THE PAGEの動画を貼っていますが、この動画では10分過ぎに二人が入場し、会見がスタートしています。田村亮さんの痩せてやつれた姿が痛々しい会見でした。

記者会見をさせてくれなかった


この会見では、FLYDAYの記事が出ることが明かになってからの吉本興業の対応について、つぶさに述べられました。二人の話が全て真実かどうかは分かりませんが、会見に出席していた記者や会見を観た芸人仲間などは(テレビの報道・コメントでは)、「嘘は言っていない」という印象を受けたと、皆一様に口にしています。
松本人志さんはtwitterで、以下のようにtweetしています。
後輩芸人達は不安よな。
松本 動きます。

このtweetには100万件近いいいね、RTは約25万にのぼっています(20日23時30分現在)。
この会見を観た芸人仲間や様々な人が、twitter他でメッセージやコメントを明らかにしています。

松本人志さん「松本動きます」と発信 宮迫さんらの謝罪会見に芸人たちの反応


吉本興業の対応の不味さを証言され(本当であれば、多分)それが誰の目にも明らかになった記者会見でした。吉本興業はこれまで記者会見を開かず、社長が個別に取材に答えていましたが、さて、そろそろお尻に火が付いてきたようです。吉本興業は、この会見の後の週刊朝日の取材に以下のように答えています。

吉本側が宮迫と田村の爆弾発言に反論 「会見場を押さえたのに、2人が来なかった」

これから吉本興業はどのような対応をするのか?芸能界だけでなく、マスコミ、政界や経済界、企業の広報に関わるような人間全てが注目していることでしょう。


2019年7月19日金曜日

ソーシャルメディア活用の基礎(1)ー中堅・中小企業のリスク回避と危機管理

初めて聞く社名や新たに取引を開始する企業などは、かつてなら帝国データバンクや東京商工リサーチに問い合わせをし、企業データを取り寄せたりしていました(しかも有料で)。しかし、今ではネット検索でどのような会社か、どんな評判かある程度まで簡単に調べられます。そのため近年、企業は自社の事業や商品・サービスを紹介するためにウェブサイト(ホームページ)を持つことは常識になってきています。自社サイトを持っていないと社名が同じというだけで別な会社と間違われたり、あらぬ疑いを受けることもあります。実は株式会社ブライト・ウェイは他にもあり、そのうちの1社は2chでもスレッドが立っていたこともあり、一時期 間違いの問い合わせが来たこともありました。
2017年には、東名高速のあおり運転で追突事故の原因を作ってしまった容疑者の名前と同じというだけで、誤った情報を信じた人から嫌がらせを受けた工務店がニュースでも取り上げられました。


東名高速追突事故の二次被害、デマによる嫌がらせや営業妨害から考えるホームページの重要性 

企業アカウントでソーシャルメディアを活用する


最低限の情報提供ツールとして自社サイト(ホームページ)を持ったとしても、基本的にはアクセスを待つことしかできません。そのため、SEO(検索エンジン最適化)やリスティング広告を駆使するなどしてサイトの訪問者を増やす努力をします。しかし、それにしても辿り着いたサイト上では一方的な情報発信に留まります。

そこで企業でも活用が増えているのがソーシャルメディアです。アカウントにたくさんのファン・フォロワーが付けば、そのファン・フォロワーに対してこちらから情報発信・コミュニケーションが可能になります。ソーシャルネットワークサービス(SNS)のFacebookやTwitterなど多くのプラットフォームは無料でアカウントを開設でき、利用開始も簡単です。しかしその分スタートする前に十分な準備も必要です。

企業が活用する主なソーシャルメディアは、

1,ブログ
2,Twitter
3,Facebook
4,Instagram
5,LINE
6,Youtube

等があります。順に特徴を簡単に整理してみます。

1,ブログ
写真や図・グラフなども駆使しながら、専門的なノウハウを提供するのに適しています。ブログの専門性のある記事コンテンツは検索対象にもなり、ブログが強力な営業ツールとなっている企業も少なくありません。社長のブログや担当スタッフのブログなどは読み物として固定ファンを持つ場合もあります。
AmebaココログBlogger(このブログはこれです)などのプラットフォームを利用すれば無料で開設できますが、運営会社の都合で閉鎖になったり利用制限が掛かるリスクもあります。自社サイト内にCMS(コンテンツ管理システムContent Management System)で構築するのが望ましく、ブログの更新によりサイトの充実も図れ、結果として検索エンジンに対するサイトの評価を上げることに繋がります。

2,Twitter
アメリカのトランプ大統領が利用していることで有名です。投稿できる文字数に制限(日本語では140文字)があるため、文章は簡潔を求められます。投稿はtweet(つぶやき)と言い、Twitterの最大の特徴はRetweet(RT リツイート)機能。気になるtweetや他のみんなにも知って欲しい情報があればRT(拡散)され、多くのフォロワーがいるアカウントがRTすると、意図せずあっという間に広がることもあります。一度投稿したtweetは修正がききません。削除は可能ですがRTされた物までは削除できないので、企業アカウントではより慎重に運用する必要があります。本人確認がないので、なりすまし(偽)のアカウント(企業でも)も多く存在します。
また、フォローは承認制ではなく、フォロワーが一方的に気になるアカウントをフォローするだけの繋がりです。知り合いでなくても勝手にフォローします。有名人以外では、フォローの決め手はプロフィール欄が重要になります。趣味や関心事が同じとか、フォローする理由がなければフォローしません。
利用者のタイムライン(ホーム画面)には、フォローした人のtweetがリアルタイムで流れていきます。多くのアカウントをフォローしていると、タイムラインはどんどん流れていくので保存性に乏しく、注目されないtweetは直ぐに過去のものになります。
アカウントの運用は、硬派(情報発信型)と軟派(キャラクター型)に分かれ、官公庁はほぼ硬派運用です。軟派の運用では、伊藤ハムの「ハム係長」や加ト吉のうどん部長(退職)も有名です。硬派運用アカウントはその発信する情報にフォロワーがつき、軟派運用ではそのキャラクターの言動にファンが付きます。こそだてではキャラクターのムーがつぶやいていますが情報発信型です。
Twitter内では検索も可能で、通常の検索エンジン同様&検索など絞り込みもできます。#(ハッシュタグ)を使ったグルーピングはイベントの情報共有や#Metoo運動のようなキャンペーンで有効です。

3,Facebook
こそだてFacebookページのヘッダ
企業の場合は、Facebookページ(スタート当初はFunページと言っていました)での運用になります。ページ情報にはかなり詳細な情報が登録可能です。個人商店などはウェブサイトを持たず、Facebookページをホームページ代わりに運用しているところも少なくありません。
Facebookページの投稿は、そのページに「いいね!」してくれた人にしか表示(リーチ)されず、しかも現状では表示されるのは「いいね!」してくれた人の1割以下という状況です。「いいね!」してくれた人が1万人いても、その人たちに表示されるのは1,000人にも届きません。その投稿が役に立つとか、みんなに知らせたい内容であれば、TwitterのRTに相当する機能として「シェア」があります。その投稿に「いいね!」や「シェア」が付けばリーチが広がります。
現在、こそだてのFacebookページの「いいね!」は8,000を越えていますが、リーチは投稿によって少ないと500程度から、多いときで3,000前後と幅があります。
しかし、これからスタートするのであれば、まず何よりもページの「いいね!」を獲得するのが容易ではありません

4,Instagram
画像・動画投稿を中心としたソーシャルメディアです。2017年に新語・流行語大賞を獲得した「インスタ映え」も記憶に新しいかと思います。羨ましがられるような写真や驚きの写真、美しい映像がこぞって投稿されています。Instagramは映像が主役で、文章は説明・補足です。Twitter同様に、検索機能がありますが、検索対象は3つ。人物(ピープル)とタグ(#)、スポットの3つの検索です。検索窓にワードを書き込むと、その3つから検索履歴を参考にオススメがまず表示されます。
twitterと違い全文検索ではないので、文中に#(ハッシュタグ)付きのワードを入れることでタグ検索が可能となり、#○○○で検索して美しい場所やインスタ映えする食べ物を探します。
突然外国人が多く訪れるようになった観光スポットなどは、Instagramがきっかけという事は少なくありません。例えば、これから福岡を訪問しようとする観光客が、#fukuokaで検索して出てくる画像の中から「これは!?」というところを見つけて訪問したり、再度詳細をGoogleで検索したりといった流れです。Instagram自体にはRTやシェアといった拡散機能はありません
Instagramを運用する際には、映像としての「世界観」の統一と、テキストに入れる#キーワードが重要になります。フォロワーを増やすには映像の世界観(に加えられる情報)のファンを増やすこと、検索で見つけてもらうには、#キーワードを多く入れることが重要になります。

5,LINE
LINEは個人間やグループ間でのコミュニケーションツール(トーク)としての利用が中心です。トークに表示されるためには、友達にならなければなりません。LINEの公式アカウントを取得(無料・有料)するのはもちろん、友達登録してもらうための施策が必要です。飲食店などでは、友達になると割引や特別サービスのような特典を付けてメニューやSHOPカードにQRコードを載せて勧誘したりしています。
友達登録してもらえれば、通常のトークと同じようにメッセージを配信できるようになります(プランによって配信可能数などが異なります)。
スマホが普及する以前、ガラケーで空メールを送らせてメールアドレスを取得していたのと同じと思えば良いかと思います。

6,Youtube
Youtubeについては、2つの使い方があります。1つはチャンネルとして多くの視聴者を獲得する使い方。いわゆるYoutuberといわれる人は、多くのチャンネル登録者を持つ人たちです。1回動画をアップすれば、すぐに数万人が動画を見るというYoutuberも少なくありません。しかし、Youtubeでも他のソーシャルメディア同様、役に立つ動画、面白い動画など「観たい」と思わせる動画を次々アップし続けないとチャンネル登録してくれません。Youtubeの企業アカウントでチャンネル登録が多いのは、CMを制作できる大企業がほとんどです。他では、料理レシピやガーデニング、釣りなどの分野に特化したノウハウを提供しているチャンネルです。
もう一つは、チャンネル登録者を増やすという目的ではなく、自社のウェブサイトや他のソーシャルメディアに動画をアップするのを主目的とする運用です。社長のご挨拶動画や新商品の解説、使い方マニュアルなどをサイトに埋め込むような使い方です。管理画面で公開範囲やコメントの可否なども選べます。
動画は写真や文字とは比べものにならない情報量を持ちます。それだけに、撮影場所・背景、服装や表情、さらには音(BGMを入れる場合には著作権)などにも十分チェックする必要があります。

他にも、最近若者に利用者が増えているTikTokや今やソーシャルゲームのプラットフォームとなってしまったmixi、あるいはビジネスに直接影響する口コミサイトでもある価格.comや食べログなどもありますが、ここでは割愛させていただきます。
ソーシャルメディアを活用する際に重要なのは、誰に向かって何を発信するのか?どういうコミュニケーションをとるのかということです。ソーシャルでもメディアですからコンテンツが重要なのは言うまでもありません。

21日投開票の参議院選挙でも、各政党・候補者はソーシャルメディアを駆使して戦っているようです。 

SNS選挙様変わり 動画作成や投稿、候補者自ら工夫

ソーシャルメディア活用を考えるときには、天国と地獄の境にいる候補者くらいの本気度を持って取り組まなければ、良い結果が出るはずはありません。
次回は、ソーシャルメディアの運用リスクについてまとめます。

ソーシャルメディア活用の基礎(1)
ソーシャルメディア活用の基礎(2)企業アカウントでの運用
ソーシャルメディア活用の基礎(3)従業員のSNS利用
ソーシャルメディア活用の基礎(4)従業員のSNS利用 その2

中堅・中小企業のリスク回避と危機管理-目次に代えて(まえがき)


2019年7月15日月曜日

後手後手になってしまったメルパルク仙台の最悪の対応

メルパルク仙台で結婚式・披露宴を行った利用者が、打ち合わせと違う不適切な対応をされたと式後にクレームを入れ、納得できる説明を求めました。しかしその後行われた式場側の数回の説明は、到底納得できるものではなかったといいます。

ゼクシィに投稿されたクチコミ
ゼクシィのメルパルク仙台の口コミ欄(花嫁・ゲストのクチコミ)には、当人が投稿したクチコミがあります。

式場とのやりとりとその顛末はしらべぇの

「結婚式トラブル」で苦悩し続けた夫婦 出席した友人の勇気ある告発の結果

で詳しく書かれています。
このトラブルはネットからテレビのニュースにとどまらず、さらには昨日のサンデージャポンでも取り上げられ、多くの人が知るところとなりました。

ナジャ、メルパルク問題に「わざとやった?」 藤田ニコルも苦言

この問題がネットで話題になり始めた当初、ホテル側は「事前に打ち合わせした内容と実際に提供された飲食や装花との差額分を返金する」としていたようですが、テレビでまで問題が取り上げられるようになった結果か、しらべぇの記事によると最終的には、「今回の費用を請求しないということと、プラスアルファとして海外の挙式や挙式のやり直しなどを提案された」とあります。

コンプレに対して式場が犯した2つのミス


私も2年間(株)福岡サンパレスの社長を経験し、ホテルでは結婚式・披露宴にも多くのお客様をお迎えしました。自身の経験からも打ち合わせと違う不適切な対応の数々は許せるものではありません。このようにいくつものトラブルが同時に起こってしまうというのは、打ち合わせした事が全く現場に伝わっていなかったということです。ホテルの責任において、申込書・打ち合わせ記録や聞き取りから原因はすぐに特定できるはずです。式のトラブルについてここで言及する必要は無いでしょう。

当日の式で起きたトラブルを時間を遡って修正することは不可能です。そこで、ここではその後の対応のミスがブランド価値と将来の売り上げを大きく毀損する可能性について検証してみたいと思います。報じられている記事やネットの情報から、事後の対応でここまで問題を大きくする前に収束できたタイミングが2回ありました。

まず、式後に被害者から指摘・コンプレイン(苦情)が入った段階での対応の問題です。申込書や打ち合わせメモが残っているはずなので、式場がお客様と事前に交わした約束が守られなかったことはすぐに把握できたはずです。その段階で誠心誠意の受け止めができていたのでしょうか?
もし、この段階でホテルが非を認め、お客様が納得できる回答ができていればそこで納まって、テレビでまで話題になるようなことにはならなかったはずです。メルパルクはかつては郵便貯金会館で、今はワタベウェディング100%出資のメルパルク(株)が運営しています。ワタベウェディングと言えば婚礼事業が専門の会社。そのグループ会社とは思えない失態と事後の対応です。

ゼクシィの口コミ欄に投稿された日付は6月30日となっています。ここに、「ゲストの引き出物の中に原価まで細かく書かれた発注表が同封」とあります。この発注表の事を知ったのは、友人が帰宅後引き出物を開いたら入っていたと、写真付きで報告があったからでした。6月の何日に式が執り行われたのかはわかりませんが、この投稿までには数日のやりとりがあったはずです。ここで被害者が納得できる回答が得られていれば良かったのですがそうとはならず、結局6月30日に我慢しきれずに告発投稿に至ったのです。

2つめのミスは、この6月30日の投稿に対してのレスポンスです。クチコミへの返信は7月5日。あまりにも遅すぎます。通常、婚礼担当者はこのような口コミサイトは常にチェックしているはずです。少なくとも翌日の7月1日には投稿されたことを把握しているでしょう。そこからさらに4日も経過しての返信が、木で鼻をくくったようなテンプレートの文章でした。
他社の事例では、スリーエムジャパンはSNSでのトラブル発生時には4時間以内にステートメントの掲載をルールづけているくらいですから、その彼我の意識の隔たりは歴然です。これでは被害者の気持ちは治まるどころか悲しみは増すばかりです。

その落胆ぶりを見ていた友人が、7月6日にTwitterに怒りの告発をしたことでいっきに拡散(約12万のRetweet)・炎上し、メディアが知ることになりました。
そして、メルパルク仙台もようやく7月8日、ウェブサイトにコメントを掲載しましたが、これまた他人事のような「お知らせ」でお茶を濁しています。この後特に公式な見解もゼクシィの口コミ欄へのコメントもありませんでしたが、上記の「結婚式トラブル」で苦悩し続けた夫婦 出席した友人の勇気ある告発の結果では、「今回の費用を請求しないということと、プラスアルファとして海外の挙式や挙式のやり直しなどを提案された」ということですので、この数日のクチコミ投稿→Twitterで拡散→炎上でメルパルク仙台もやっと自分たちの対応の問題に気がついたのでしょう。

式後、最初の指摘・コンプレインの段階で適切に向き合っていればこんなことにはならなかった(対面で話を解決し、土俵をネットに移さずに済んだ)はずです。しかし今は、誰でも情報発信が可能で、マスメディアもネットの情報をチェックし、フォローしています。
今回のメルパルク仙台は、目の前にいる苦情を申し出たお客様に対応することだけを考え、そのお客様やそのお友達・フォロワーのSNSでの拡散を軽視していました。結果として、目先の損失を避ける対応をしたことが、「婚礼費用全額+式のやり直し費用」だけでなく、メルパルク仙台の評判を大きく落とす事になりました。そして更には、親会社のワタベウェディングのブライダルのクォリティにまで疑念を抱かせることにも繋がりかねず、グループのレピュテーション(評判)にまで大きな影響を与える結果となりました。

日常の現場で起こる様々なトラブルは、その場の対応で完結したと安易に考えてはいけません。苦情や被害を訴えるお客様は、いったんは矛を収めて帰っても、実のところは不満足で十分に納得したわけではなく、火種がくすぶったままということは多いのです。お客様の立場になって、その真の気持ちを想像できなければ本当の解決にはたどり着けません。
メルパルク仙台の対応は、お客様の気持ちではなく、会社の立場・損得を優先させたことで最悪の結果を招いたと言って良いでしょう。



2019年7月12日金曜日

経営TOPにもしものことがあったらー中堅・中小企業のリスク回避と危機管理

代表取締役社長ジャニー喜多川に関するご報告
7月9日、ジャニー喜多川さんがお亡くなりになり、テレビのニュースはこの話題でもちきりでした。
50年以上にわたり日本の芸能界に影響を持ち続けたプロデューサーでありヒットメーカーの死は、日本の芸能界にとって衝撃であると同時に、株式会社ジャニーズ事務所という企業にとっては代表取締役社長の死でもあります。 社内においてもジャニー喜多川さんは絶対的、偉大な存在であることは間違いないでしょう。
ジャニー喜多川さんがここまでお元気でおられたことと、所属タレントの口からジャニーさんとの会話や多くの逸話が語られることから突然の感じはありますが、87歳は通常ならとっくに一線を退いていても不思議ではない年齢です。2017年の男性の平均寿命は81.09歳ですから、近い将来には体調不良で一線を退くことを想定して準備をされていたことでしょう。会社経営という面での実務は既に副社長以下で組織的に動いていたはずです。

後進の指導やプロデュースには、滝沢秀明さんが2018年でタレント活動を終了しプロデュース業に専念すると発表し、今年新たに興された関連会社・ジャニーズアイランド社長に就任するなど、次世代へバトンを繋ぐ準備は進められていました。 このように、株式会社ジャニーズ事務所にとって代表取締役社長の死去は想定内のできごとであり、これから事前に準備されていたシナリオに沿って淡々と様々なことが進められると思われます。

権限の承継とバックアップ


映画では、アメリカ大統領が暗殺された、あるいはそれに準じる事件が発生した際には、大統領権限が副大統領、下院議長へと順に継承される場面が描かれることがあります(「ホワイトハウス・ダウン」など)。日本でも、「シン・ゴジラ」では総理他多くの閣僚が亡くなり、農水大臣が内閣総理大臣臨時代理として就任しました。このように、国家や地方自治体、大企業ではTOPにもしものことがあった際の権限の承継について、明確に規定されています。しかし中堅・中小企業では、そのような権限の承継について明文化しているところはほとんどありません。

企業の代表が突然死亡した例で記憶に残っているのは、日航機墜落事故で亡くなった阪神球団の小津社長。任天堂の岩田社長も社長在任中に胆管腫瘍のため55歳という若さで亡くなっています。しかし、阪神球団は阪神グループ、任天堂はもともと山内家の同族経営から岩田社長を中心とした集団指導体に代わり、前年にも一度手術・入院、その後療養などで社長不在でも支障なく会社運営できる体制ができていました。

ところが、中堅・中小企業の多くはオーナー経営。創業者・オーナーに権限も情報も集中しているところがほとんどです。 そんな企業で、TOPにもしもの事があったら?皆さんの会社のTOPが事故で亡くなったり、心臓や脳疾患で倒れたり、あるいは出張先で行方不明になったり…… そんなときに慌てることなく会社運営は継続できますか?

コンティンジェンシープラン(CP)の策定


コンティンジェンシープラン(Contingency Plan)とは、その策定対象が潜在的に抱える脅威が万一発生した場合に、その緊急事態を克服するための理想的な手続き、手順を決めたものです。 企業活動では、社長が出張先で事故に遭ったとか、工場から出火したなど、様々なリスクやトラブルが想定できます。それらを事前に拾い出し、万が一発生した際の対応について、手順や取り決めを文書化しておくのです。特にオーナー企業やTOPに権限が集中している企業では、経営TOPを対象としたコンティンジェンシープランの策定が必要です。オーナーに想定外のもしもというのが一番のリスクです。想定外を想定内にしておかなければなりません。

今日、SNSで「亡くなった夫のスマホのパスワードが分からなくて開けない」という投稿がありました。PCやスマホには重要な情報が詰まっているため、パスワードや生体認証でセキュリティをかけますが、反面そのPWを知る人がいなければ開けなくなって情報が取り出せなくなるリスクもあります。
個人の頭の中にしかない情報や未整理な情報を整理保管するのに参考になるのは、「エンディングノート」や「もしもノート」として販売されている整理ノートです。パスワードや暗証番号を記すページもありますし、他にも整理すべき項目の参考になります。
時間があるときに少しずつ整理し、「もしもの時にはここに」と厳重に保管するか誰かに託しておくこともあわせて検討しておきましょう。

中堅・中小企業のリスク回避と危機管理-目次に代えて(まえがき)



2019年7月10日水曜日

中堅・中小企業のリスク回避と危機管理-まえがき

これまで、世の中で注目された事件や謝罪会見などを題材にブログを書いてきました。それは引き続き取り上げながら書いていこうと思いますが、一方で一貫したテーマで少し整理しながら書いていこうと思い立ちました。


コーポレート・ガバナンスからレピュテーション・マネジメントへ 


近年、企業の不祥事や問題発生を回避するという時に必ず出てくる「コーポレート・ガバナンス」。謝罪会見でも何度も聞いた言葉です。ウィキペディアによれば、企業の不正行為の防止と競争力・収益力の向上を総合的にとらえ、長期的な企業価値の増大に向けた企業経営の仕組みとあります(これも日経連「我が国におけるコーポレート・ガバナンス制度のあり方について」からの引用)。企業統治と訳されますが、ガバナンス=統治は権力やルールで押さえつけるイメージで私は好きではありません。特に、中堅・中小企業においては下町ロケットの佃製作所のように同じ志を持ち、同じ目的・目標に向かって一丸となって前向きに進みたいものです。

そして、こういう話題で必ず登場するもう一つの言葉は「コンプライアンス」。法令遵守と訳されることが多いですが、私は「消費者や社会の期待に応えること」と捉えています。

そこで、私は「統治」や「法令遵守」という「~でなければならない」ではなく「他者の目や期待」を意識し、「自らを客観的に見る」事で自立的に判断・行動する「Reputation Management(R) レピュテーション・マネジメント」を提唱(2001年に商標登録)しました。あらゆるステークホルダー(利害関与者)とのコミュニケーション・リレーションシップを良好に築き、最適化することがReputation(評判)を高く維持し、結果、企業業績の最大化にも繋がると考えています。

取り上げるテーマ


これまでご相談いただいたテーマや世の中で頻繁に起こっているトラブル、これから問題が多発しそうな隠れたリスクなどを順に拾いながら進めたいと思います。順不同ではありますが、以下のようなテーマを考えています。

雇用契約・就業規則
SNS・ソーシャルメディア
・法人登記や商標・特許など
ジェンダー規範、ハラスメント
経営者の死亡・入院・誘拐など
・安全管理・衛生管理
自然災害とBCP
従業員のプライベートでの事故・事件
・火災・盗難
・社会保険
・個人情報の取り扱い
・不祥事
・品質管理とクレーム対応
SDGs(持続可能な開発目標)の視点
など

危機的状態に限らず、好ましくない事象の発生確率を下げ、実際に発生した際の被害を最小限に留めるための準備と対応について整理できればと思いますが、私は法律や会計の専門家ではありませんので、そういった専門分野についてはリスクの拾い出しと注意喚起程度にとどめさせていただきます。また、投資リスクなどの経営判断についても言及しません。

「好事魔多し」といいます。業績が好調なとき、あるいは新規事業やプロジェクトに目処が立ちそうなときなど、思わぬトラブルに見舞われがちです。そんなトラブルを起こさぬよう、巻き込まれないよう、そして起こってしまっても慌てないよう、準備と予習に役立てていただければと思います。

これから不定期ではありますが、順次アップしていきたいと思います。



2019年7月1日月曜日

吉本興業は会見も開かず、サイトに「謝罪」ではなく「決意表明」を掲載

カラテカの入江慎也さん、雨上がり決死隊の宮迫博之さん、ロンドンブーツ1号2号の田村亮さん、レイザーラモンHGさんら吉本興業所属芸人の12人とワタナベエンターテインメント所属芸人2人が、振り込め詐欺グループの忘年会に参加して金銭を受け取ったことをFRIDAYが立て続けに報じ、大騒ぎとなっています。
こちら↓は、FRIDAYからの転載のlivedoor newsの記事ですが、
まだあった! 有名芸人たちが今度は「詐欺組織誕生会」で闇営業
テレビでは言及されない生々しい内容が掲載されています。

吉本興業は、詐欺グループとの仲介をしたカラテカの入江さんを契約解除とし、他の11人を謹慎処分とした上で、ウェブサイトに「決意表明」を掲載しました。現在TOPページにはこの「決意表明」が表示され、英語・中国語でも読むことができます(画面の下にあるリンクで切り替え)。
吉本興業WEBサイトに掲載された決意表明

なぜ決意表明?


今回の闇営業(事務所を通さず直で受けた)問題では、吉本興業のコンプライアンスに対するスタンスや対応について批判が高まっています。そもそも、サイトに掲載したのは「謝罪」ではなく「決意表明」であることに違和感を覚えます。
掲載された決意表明は、長文を労して言い訳をしているようにしか読めません。吉本興業はこれまでも「所属タレントに向けた研修を通じて、コンプライアンス意識の向上及び徹底を図ってきた」けれどこういうことが起こったと。会社はやるべき事はやっている、悪いのはルールを守らない所属芸人だと言わんばかりに。これは、バイトテロが発覚した時の会社の対応にも多くありました。
吉本興業の場合には、過去にも反社会勢力との関わりを取り沙汰されたタレントの問題もあり、コンプライアンスの教育はしていたはずです。しかし、私たちが自動車免許の更新時に観るビデオのように、一時の啓蒙にはなっても自分事としては捉えられていない人がいる(だから交通違反も事故も減らない)のと同じでしょう。

どうして反社会的勢力との関わりを持ったのか、何故闇営業を許してしまったのか?その原因を自社の問題として分析していません。伝えられるところによると、所属タレントとの間に「契約書」という形に残る契約は存在していないと言います。契約書を交わしていないということは、何をしなければならないか、何をしてはいけないかなど、双方の同意が取れているかも不明です。そのことについてもこの「決意表明」には触れられていません。

懲戒処分を下す根拠


今年の春、クライアントさんから従業員が逮捕されたので解雇しようと思うのだけれど、との相談を受けました。 ここで詳しくは書けませんが、この時に問題になったのが就業規則と懲戒規定です。近年、ハラスメントが問題になり、懲戒処分を下すには処分の対象となる事実と明確な理由が求められます。最も重い懲戒解雇処分となると、どのような場合が該当するのかが就業規則の懲戒規定に明記されていないと、不当解雇だと訴訟を起こされる場合もあります。特にプライベートな時間に起こした事故や事件は、懲戒処分の対象になるのかならないのか。明文化しておくことは重要です。

今回のような反社会的勢力との関わりを持ったのが銀行や大手企業の幹部だったら、こんな対応では許されないでしょう。一連の騒動で、吉本興業は記者会見をしていません。会見を開けば想定質問は100や200は準備しないとなりませんし、答えづらいこともたくさんあるようです。だから開けないというのが本音ではないでしょうか。

吉本興業は「コンプライアンスの徹底に全力を尽くす」という決意表明だけで「逃げ切り」を考えているようです。