2020年1月20日月曜日

ソーシャルメディア活用の基礎(4)従業員のSNS利用 その2…中堅・中小企業のリスク回避と危機管理

多くのソーシャルメディアは、誰でもアカウントを取得して利用できます。
前回は、ロイヤリティが低い非正規・臨時雇用の従業員が引き起こすバイトテロについて予防策を書きましたが、今回は従業員が引き起こす間接的な炎上が、自社やブランドに影響を与える可能性について取り上げます。

従業員が個人でSNSを利用することに制限をかけることは事実上不可能です。社会的にも副業を容認する流れの中で、職場を離れた所で何をしているか、どんな時間の使い方をしているかまで制御・束縛はできません。特に個人の趣味の分野については、趣味のために働いているというくらいに重きを置いている人も少なくありません。会社の中では いち従業員に過ぎない人でも、「その世界」では有名人であったり、ネットの世界では別な名前で活動している人もいます。

プライベートな時間の問題


ごく普通の従業員でも酔って喧嘩をしたり、交通事故を起こしたり、最悪なケースでは意図せず薬物や反社会的勢力との関係を持ったり犯罪に巻き込まれるようなこともあります。通常なら、プライベートな時間に起こした過失事故や業務と関わりの無い犯罪だと、所属企業の名前が出るようなことはありません。実際、これまでにクライアントさんの従業員がストーカー行為で逮捕されたり、殺人!で逮捕された際にも、動機や背景は会社と関係の無いプライベートな問題であり、マスコミに社名が出たり会社に取材に来ることはありませんでした(警察から身元確認の連絡があったので、一応最悪の場合に備えての準備はしていましたが)。

しかし、上記のような「別の顔」を持った従業員が、会社以外の場で問題を起こすことも少なくありません。ネットでは匿名で利用できるサービスも多く、別な名前で多くの読者やフォロワーを持つブログやアカウントも存在します。

ネット上の匿名投稿は調べれば……


匿名だから何を書いても大丈夫だろうと安心し、失敗するケースはよくあります。
一つは、自社や上司、会社の業務に対する不平不満・批判などの悪口を匿名で書き連ねるケース。その内容がネット上で炎上したり問題視されて拡散されるようなことになると、会社の評判や業績にも大きな影響を及ぼします。過去には、経済産業省のキャリア職員が匿名ブログで国の施策に対して著しく不適切な内容の掲載を繰り返し行ったとして、停職2カ月の懲戒処分を受けています。
その事件を受けて書いたブログ→ソーシャルメディアでの「不祥事」を未然に防ぐ、一つのヒント
問題のブログ(既に閉鎖)自体は匿名で書かれていたものの、内容が過激だったことでたびたび炎上し、問題視したネット民が素性を暴いてネット上に公表し、発覚しました。

もう一つよくあるのは、クライアント様やお取引先様を批判したり誹謗中傷するような投稿をしている書き込みの主が、自社の従業員であった場合です。ターゲットにされたクライアント様が問題視して投稿者を調べたら、取引先の従業員だということが判明し大問題になるというケースです。取引停止など、取引や業務遂行に影響を及ぼすこともあります。

批判する側とされる側(ターゲット)に雇用関係や取引、業務上の関係などがありながら、「匿名」やハンドルネームでの仮面を被り、(素性を知られることは無いだろうと高をくくって)不平や不満だけでなく第三者的な立場で批判や誹謗中傷などを繰り返す者が少なからずいます。

ネットでの副業が問題になる


副業でアフィリエイト収入を目的にブログやYoutubeチャンネルを開設することも珍しくありません。より多くのアクセスを得るために、時に誤った情報を載せたりあえて炎上するような投稿をしたり、過激な動画や批判を浴びるような不適切な動画を投稿する人もいます。
ブログの場合、アフィリエイト収入を稼ごうとすればブログ主宰者の信用も重要になります。そのため、プロフィールは丁寧に書き込むことが多いのですが、そこに現職の所属先を掲載する人も少なくありません。また、経歴を詐称する人もいます。

このようなプライベートな時間や副業が問題を起こしたり法に触れる行為に至った場合、会社の業務や評判に悪影響を及ぼし損害を与えた場合、どのような対応をするかを明確にしておく必要があります。公務員では業務時間外のプライベートであっても、飲酒運転は懲戒解雇などの厳しい処分が一般的になっています。
懲戒規定を見直し、業務外のプライベートな時間の行いであっても懲戒処分の対象になるということを告知することです。

ソーシャルメディア活用の基礎(1)
ソーシャルメディア活用の基礎(2)企業アカウントでの運用
ソーシャルメディア活用の基礎(3)従業員のSNS利用
ソーシャルメディア活用の基礎(4)従業員のSNS利用 その2

中堅・中小企業のリスク回避と危機管理-目次に代えて(まえがき)