2017年12月27日水曜日

マインナンバーの本格運用でフリーの消費税納付免除は風前の灯火?

マイナンバーの運用が一部で本格的になり、金融・証券・保険会社などでは口座の開設時にマイナンバーの提出が求められるようになりました。ブライト・ウェイでもこの年末は支払い調書を送付するために、原稿執筆をお願いしたライターさんやFP、フリーのカメラマンなどに個人番号を提出いただいています。

マイナンバーは社会保障、税、災害対策の3分野で、複数の機関に存在する個人の情報が同一人の情報であることを確認するために活用されます(内閣府マイナンバー制度についてより)。
行政手続きの効率化と国民の利便性を高めると謳っていますが、自治体毎の取り組みにも温度差があり、一番期待されている社会保障の分野ではなかなか活用が進みそうにありません。
一方、先行する金融・証券・保険業界などは、どちらかというと金融資産の把握のために進めている感もあります。同様に税に関する手続きや届けにはマイナンバーが求められるようになり、これは明らかに税金の取りこぼしを無くすために最優先で進めていると思われます。


売上1000万円以下の納税免除者は今後どうなる?



現在は、課税売上1000万円以下の事業者・個人については消費税の納税を免除されています。個人のライタ-さんなど、消費税を請求される方もいればされない方もいます。仕入れが発生しない仕事の場合は、消費税を請求すれば納税義務が無いので、消費税分だけ手元に残ります。一方、仕入れが発生する事業者の場合は仕入れ時に消費税を払っていますので、消費税を請求しないとその分利益も小さくなります。
これから個人ナンバーで全ての取引が紐付けされるようになると、消費税を請求しているのに免除されて納税していないものも明確になります。仕入れがほとんど発生しない士業やフリーの個人事業者にとっては大きな金額(売上900万円だと、消費税を乗せると72万円)です。支払った発注元は最終納税額からその分を差し引いて消費税の納税をします。税務署から見れば、消えた消費税ということになってしまいます。税収確保にやっきとなっているのに、ここを放っておくとは思えません。
今後、納税免除はなくなるのではないかと思っています。





2017年12月21日木曜日

パブリシティ掲載依頼とmikuの考え方

(株)ブライト・ウェイは、クライアント様からの依頼を受けてPRエージェンシーとしての活動をする一方で、育児情報誌mikuを発行し、育児のポータルサイト【こそだて】を運営する媒体社でもあります。そのため、毎日多くのプレスリリースや掲載・取材依頼、記者発表やプレスカンファレンスの案内などをいただきます。今回は、媒体社としての考え方を少し整理したいと思います。


私は、リクルートでいくつかの情報誌の創刊に関わり、編集長も務めさせていただきました。最初は編集長の役割も自分のなかで消化・理解できず、その肩書きの重圧に、ただもがいていました。しかし、ある時にエスクアイア編集長、ハロルド・ヘイズの以下の文に出会ったことで、目の前が開けた気がしたのです。

雑誌とは約束事だ。
新聞で報道されるうつろいゆく現実に、全体像や見通しを提供しようと雑誌は模索する。
雑誌の存在理由は姿勢だ。
読者を惹きつけ、愛されるのは、読者とあるものの見方を共有しているからだ。
雑誌の約束とは、定期的に、独自の世界観、独自の姿勢を送り届けるという約束に他ならない。

ハロルド・ヘイズ/エスクァイア元編集長(1967~73)


この文章に触れたとき、私は編集方針を明確にすること、読者にそれを伝える(感じさせる)ことが重要だと確信しました。読者がその本を手にしたときに、どんな約束事があるのか、何を共有するのか、そのために何を提供するべきなのか、と。

子ども達の未来のために情報を提供したい


miku【こそだて】も、基本的な考え方としては記事で個別商品情報を扱わない、イベントや地域情報は扱わないとしています(もちろん、広告は別です)。イベントや地域情報は、FacebookTwitterなどのSNSでの告知は行っています。これは、以下の考え方によるものです。

1,ストック情報とフロー情報を分ける

mikuは配付期間が3か月、フリーペーパーでありながらも長く保存する読者も多数いる媒体です。限られた紙面を最大限有効に活用するため、優先順位を付け、他でも手に入れられる情報、無駄な情報は削ぎ落とします。何時読まれても、繰り返し読まれても役に立つ情報を記事にしています。mikuのWebサイトを含む【こそだて】も、同様の考え方です。各記事への導線は検索によるアクセスが8割を超え、10年以上前の記事も読まれています。
一方、イベントや地域情報(ほとんどはイベント)は日時や場所が限定されたフローな情報です。その日を過ぎてしまえば過去の案内となってしまいます。そのため、長期イベントのお披露目などを別として、取材にうかがうこともほとんどありません。このような情報は、SNSで発信しています。子育て中の父母は日々色々な事に追われ、先の予定も立てづらいうえに、タイムラインではすぐに流れてしまうので、イベント直前に情報発信するように心がけています。

2,商品を紹介するには客観的な評価が必要

商品については、本当に読者へ紹介するに値する物かを評価する必要があります。特に育児用品は様々な視点で安全性等を確認しなければなりません。リリースを元に紹介するだけなら記事とは言えません。商品カテゴリー毎に評価基準を設定し、客観的なデータや使用感を伝える必要があります。かつての暮しの手帖のように商品テストを行い記事にするとなると膨大な手間とコストがかかります。しかも紹介できるのは号あたりに1点~数点どまり。広告収入に頼って成り立つフリーペーパーですから、営業現場では「忖度」圧力もあるでしょう。
自動車雑誌を始めとする専門誌は、評価対象物のプロの評論家がいて初めて成り立つものです。広告主におもねって、何にでも高評価を付けると読者の信頼を無くします。記事は中立、客観的、具体的であるべきです。私もカーセンサー編集部に異動直後には、車の評価記事についてメーカーから指摘を受けたりもしました。「悪い所は悪いと書いてもらって構わない。しかし、具体的な部分や事象、その根拠を示せなければメーカーだけでなく読者にとっても役に立たない」と。
残念ながら、育児用品を評価できるプロはいません。真の利用者が乳幼児なのですから、母親の感想をいくら聞いてもそれは当人のものではありません。だっこ紐の抱き方にしても、対面抱っこが良いとか正面抱っこが良いとか、メーカー毎に違う見解ですし、ベビースリングについても様々な意見があります。抱かれる赤ちゃんに感想を聞いてみたいものですが、話ができません。それができるなら、夜泣きに悩まされることも無くなるでしょう。

このような考え方で、mikuでは全ての記事に責任を持つというスタンスからも、個別商品の紹介はしていません。個別商品を紹介するのは、編集タイアップ広告という形で編集部で実際に使ったり読者モデルが使ってレポートするか、純粋な広告としての掲載です。唯一の例外が、読者プレゼントの商品紹介です。
新商品情報は、いずれ過去の情報になってしまいます。世の中にどんな育児用品があるかを探すなら、それこそamazonや楽天でカテゴリー検索すれば、沢山の商品をレビュー付きで比較検討できます。

物の情報よりも重要な記事とは

赤ちゃん・子ども達の未来を開く情報を提供し続けたいと考えている私たちは、その子ども達を育てる母親や父親には、精神的に少しでも楽になってもらえる記事をと考えています。物の情報よりも心を軽くする情報の方が、重要な記事だと位置づけています。

ベネッセコーポレーションからmikuを譲り受け、最初にしたのは編集方針の確認とそれに伴うショルダータイトルの変更です。それまでのショルダーは「自分なりの子育てを見つける」でした。
変更後は「子どもと私が育つ!楽しむ!」としました。
子育ては、「私のため」でもなく、「子どものため」だけでもなく、親子で共に楽しく健やかに成長するお手伝いができればと思っています。






2017年12月19日火曜日

自治体毎に個別導入する、同じような電子母子手帳は無駄な投資では?

仕事柄、多くのPR会社や配信会社からリリースが届きます。基本的には、育児・子育てや社会福祉まわりの話題のみ配信してくるよう登録していますが、それだけでも毎日100件以上の関連するリリースが届きます。その中でも、よく目にするのが自治体が電子母子手帳をスタートさせたというリリース。採用された企業と採用した自治体が、同じ事象を別々のタイミングでそれぞれに配信しているだけで、受け取る側からは毎回同じです。

ここで一つの疑問です。自治体毎に電子母子手帳を導入する必要があるのかと。リリースをみると、ほぼ同じ開発会社からのものです(他が受託してもニュースリリースを配信していないのかもしれませんが)。代表的な2社を筆頭に受託会社は複数存在しますが、多少自治体毎にカスタマイズはしたとしてもほとんど同じ内容の電子母子手帳であることは想像に難くありません。
電子母子手帳の機能・コンテンツは、

1,成長の記録
2,予防接種のスケジュールと接種記録
3,育児・子育て支援関連情報提供
4,アルバムなど家族との情報共有

といったところが主なものです。
これらは、既に様々なアプリがリリースされています。【こそだて】がコンテンツの提供で提携しているwellnoteなどはその一つです。2の予防接種に関してはNPO法人VPDを知って、子どもを守ろうの会 のスケジューラーアプリが信頼できて多機能です。
子どもの成長サポートという視点で見れば、自治体毎に変えなければならない情報や機能はありません。 むしろ全国共通どこででも同じであるべきです。変わるとしたら、自治体毎の子育て支援政策の違いによる情報提供でしょうか。しかしそれはアプリである必要はありません。スマホでなくてもプッシュ通知ができるメール登録で十分です。
転勤だけでなく、子どもの成長に合わせてより良い環境にと引っ越しもします。東京23区内で引っ越ししても、区毎の電子母子手帳だと新たに切り換えるのでしょうか? 引っ越し先の自治体で受託企業が違うと、別なフォーマットでまた0から登録し直しでしょうか?子どもや住民は自治体の物ではないですし、縛ることもできません。自由に移動もしますし自治体がわざわざ独自のものを作る意味がわかりません。
マイナンバーを本気で活用するのであれば、フランスのように子どもの情報を一元管理でき、全国で共通のサポート体制が作れるはずです。
スマホが普及し、アプリが注目されているからと言って、作る事が目的化してはいないでしょうか。どのくらいダウンロードされて、どのくらいアクティブに活用されているのでしょう?そのデータも公表すべきです。
自治体毎の無駄な開発投資は見直すべきではないでしょうか。





2017年12月11日月曜日

東京五輪マスコットの選考方法と今後の展開についての懸念

東京オリンピックのマスコット最終候補3案が発表されました
この3案を見た時に、ポケモン、あるいは妖怪ウォッチのキャラクターのように感じたのは私だけではないようで、net上では同じような感想・意見が飛び交っています。しかし、今回私が気になったのはその個々のマスコットデザインではなく、キャラクターの設定についてです。最終提示されたマスコットの3案は、短文で簡単ではありますがそれぞれに別の性格付け、キャラクター設定がされています。今回の公募の募集要項には、マスコットのプロフィールとして制作意図と特徴それぞれ200字以内で添えて提出となっています。キャラクターの性格設定までは求めていません。
例えば、小説や映画に登場する人物やキャラクターは、作者が最初にかなり時間を掛けて慎重に設定します。どんな生い立ちでどんな性格かなど、細かなディティールを決めてから物語りを書き始めるものです。その上で、映画であればそのキャラクターを表現するのに最適な俳優さんをキャスティングすることになります。

今回、最終的にはこの3案のどれかに決まるのですが、先に登場人物(マスコット)が決まってしまいます。今後本番に向けてアニメを制作したりさまざまな印刷物に展開するにあたり、細かなキャラクターの設定が行われることになるはずです。国内での活動を考えれば、着ぐるみも制作するでしょう。アニメや物語に登場させるような事を考えると、「ドラえもんはどら焼きが大好きでネズミが苦手」、「オバQは犬が苦手」のような人間味のある設定も求められるかもしれません。
一方で、募集要項には全ての開催競技の描写ができること、言葉を出さずに広範な感情のレパートリーを表現できることという項目があります。既に最終審査で残っている案ですが、はたしてこの条件を全てクリアしているのかと、ちょっと疑問も残ります。展開案として示してあったのでしょうか。

小学生の投票で決まることになっていますが、見た目の好き嫌いだけで決まってしまうと、そのキャラクター設定と展開に苦労することになるかもしれません。