2017年12月21日木曜日

パブリシティ掲載依頼とmikuの考え方

(株)ブライト・ウェイは、クライアント様からの依頼を受けてPRエージェンシーとしての活動をする一方で、育児情報誌mikuを発行し、育児のポータルサイト【こそだて】を運営する媒体社でもあります。そのため、毎日多くのプレスリリースや掲載・取材依頼、記者発表やプレスカンファレンスの案内などをいただきます。今回は、媒体社としての考え方を少し整理したいと思います。


私は、リクルートでいくつかの情報誌の創刊に関わり、編集長も務めさせていただきました。最初は編集長の役割も自分のなかで消化・理解できず、その肩書きの重圧に、ただもがいていました。しかし、ある時にエスクアイア編集長、ハロルド・ヘイズの以下の文に出会ったことで、目の前が開けた気がしたのです。

雑誌とは約束事だ。
新聞で報道されるうつろいゆく現実に、全体像や見通しを提供しようと雑誌は模索する。
雑誌の存在理由は姿勢だ。
読者を惹きつけ、愛されるのは、読者とあるものの見方を共有しているからだ。
雑誌の約束とは、定期的に、独自の世界観、独自の姿勢を送り届けるという約束に他ならない。

ハロルド・ヘイズ/エスクァイア元編集長(1967~73)


この文章に触れたとき、私は編集方針を明確にすること、読者にそれを伝える(感じさせる)ことが重要だと確信しました。読者がその本を手にしたときに、どんな約束事があるのか、何を共有するのか、そのために何を提供するべきなのか、と。

子ども達の未来のために情報を提供したい


miku【こそだて】も、基本的な考え方としては記事で個別商品情報を扱わない、イベントや地域情報は扱わないとしています(もちろん、広告は別です)。イベントや地域情報は、FacebookTwitterなどのSNSでの告知は行っています。これは、以下の考え方によるものです。

1,ストック情報とフロー情報を分ける

mikuは配付期間が3か月、フリーペーパーでありながらも長く保存する読者も多数いる媒体です。限られた紙面を最大限有効に活用するため、優先順位を付け、他でも手に入れられる情報、無駄な情報は削ぎ落とします。何時読まれても、繰り返し読まれても役に立つ情報を記事にしています。mikuのWebサイトを含む【こそだて】も、同様の考え方です。各記事への導線は検索によるアクセスが8割を超え、10年以上前の記事も読まれています。
一方、イベントや地域情報(ほとんどはイベント)は日時や場所が限定されたフローな情報です。その日を過ぎてしまえば過去の案内となってしまいます。そのため、長期イベントのお披露目などを別として、取材にうかがうこともほとんどありません。このような情報は、SNSで発信しています。子育て中の父母は日々色々な事に追われ、先の予定も立てづらいうえに、タイムラインではすぐに流れてしまうので、イベント直前に情報発信するように心がけています。

2,商品を紹介するには客観的な評価が必要

商品については、本当に読者へ紹介するに値する物かを評価する必要があります。特に育児用品は様々な視点で安全性等を確認しなければなりません。リリースを元に紹介するだけなら記事とは言えません。商品カテゴリー毎に評価基準を設定し、客観的なデータや使用感を伝える必要があります。かつての暮しの手帖のように商品テストを行い記事にするとなると膨大な手間とコストがかかります。しかも紹介できるのは号あたりに1点~数点どまり。広告収入に頼って成り立つフリーペーパーですから、営業現場では「忖度」圧力もあるでしょう。
自動車雑誌を始めとする専門誌は、評価対象物のプロの評論家がいて初めて成り立つものです。広告主におもねって、何にでも高評価を付けると読者の信頼を無くします。記事は中立、客観的、具体的であるべきです。私もカーセンサー編集部に異動直後には、車の評価記事についてメーカーから指摘を受けたりもしました。「悪い所は悪いと書いてもらって構わない。しかし、具体的な部分や事象、その根拠を示せなければメーカーだけでなく読者にとっても役に立たない」と。
残念ながら、育児用品を評価できるプロはいません。真の利用者が乳幼児なのですから、母親の感想をいくら聞いてもそれは当人のものではありません。だっこ紐の抱き方にしても、対面抱っこが良いとか正面抱っこが良いとか、メーカー毎に違う見解ですし、ベビースリングについても様々な意見があります。抱かれる赤ちゃんに感想を聞いてみたいものですが、話ができません。それができるなら、夜泣きに悩まされることも無くなるでしょう。

このような考え方で、mikuでは全ての記事に責任を持つというスタンスからも、個別商品の紹介はしていません。個別商品を紹介するのは、編集タイアップ広告という形で編集部で実際に使ったり読者モデルが使ってレポートするか、純粋な広告としての掲載です。唯一の例外が、読者プレゼントの商品紹介です。
新商品情報は、いずれ過去の情報になってしまいます。世の中にどんな育児用品があるかを探すなら、それこそamazonや楽天でカテゴリー検索すれば、沢山の商品をレビュー付きで比較検討できます。

物の情報よりも重要な記事とは

赤ちゃん・子ども達の未来を開く情報を提供し続けたいと考えている私たちは、その子ども達を育てる母親や父親には、精神的に少しでも楽になってもらえる記事をと考えています。物の情報よりも心を軽くする情報の方が、重要な記事だと位置づけています。

ベネッセコーポレーションからmikuを譲り受け、最初にしたのは編集方針の確認とそれに伴うショルダータイトルの変更です。それまでのショルダーは「自分なりの子育てを見つける」でした。
変更後は「子どもと私が育つ!楽しむ!」としました。
子育ては、「私のため」でもなく、「子どものため」だけでもなく、親子で共に楽しく健やかに成長するお手伝いができればと思っています。