2013年5月13日月曜日

「丸亀製麺のざるにカビ」公表遅れに思うこと

トリドールが展開するセルフ式うどん店「丸亀製麺」で、4月7日にうどんを食べたお客様から「ざるにカビが生えている」と指摘されていたのに公表しなかったと、5月9日一斉に報道されました。

何故、1ヶ月も公表しなかったのでしょうか?
会社側は、個別店舗の問題なので公表しなかったとしています。Facebookページ上では、そのお客様と会社アカウントとの間でやりとりがなされていたようです。既にその事実(ざるにカビが生えていた)については多くの人が知っている可能性があったわけです。しかも、Facebookでは、指摘した人の名前もやりとりの時刻もわかります。そのやりとりも含め、今ではインターネット上で様々な情報が飛び交い、隠したくても隠せない現実が目の前に広がっています。そのような現実は、会社もわかっているはずですし、知らないはずはありません。
※Facebookページでのやりとりは、インターネット上に残っている情報からの推測です。詳細は本文最下段を参照ください。

現在、トリドール社のホームページには、最新ニュースにお詫びが掲載されています。そのお詫びによると、4月9日には再発防止の対応が全て完了となっています。そのお詫びが掲載されたのは5月9日です。なぜ対応が完了したタイミングで公表しなかったのでしょうか?

これは深読みかもしれませんが、テレビ東京系列で4月25日に放送された「カンブリア宮殿」の影響もあったのではないでしょうか。この日の放送は、
日本一のうどんチェーン!急成長の秘密は“常識破り経営”にあり!
トリドール 代表取締役社長 粟田 貴也(あわた・たかや)氏でした。
放送前にこの件が明るみに出ると、放送が延期またはお蔵入りになりかねない。なんとしても「カンブリア宮殿」の放送までは抑えておきたい、と。

カンブリア宮殿が影響したのかどうかはわかりませんが、結果として公表したのは5月9日。そのお詫び文には「丸亀製麺」の文字は一切使われず、当該店舗名も特定せず、「ざるうどんのざる」にカビが発生していたことをお客様より指摘されて対応したとだけ表記しています。
しかもこのお詫び文は、会社ホームページTopページからはリンクしていますが、丸亀製麺のページからはリンクされておらず、「丸亀製麺」を守る姿勢が強くうかがえます。


5年ほど前、異物混入・食品偽装が全国で問題になった当時、新聞には毎日のようにお詫びの社告が掲載されていました。あの当時は、指摘される前に公表して、先に謝って許してもらおうという空気に溢れていました。あれから、「のど元過ぎれば熱さを忘れる」ほどの月日が流れました。
その間にソーシャルメディアが普及し、当時よりもさらに不祥事や不都合なことを隠せない時代になってしまったのです。隠し事はいずれ公にされてしまいます。

それは、公にされるのではなく「晒される」という時代になったということでもあるのです。
このようなまとめサイトで、わざわざ整理してくれる人もいるのですから。

2013年5月5日日曜日

子育て支援は、何故、何処に必要なのか?

日本の合計特殊出生率は、1975年に2.0を切って以来低下の一途をたどり、1995年以降は1.5を切ったまま。2005年に1.26まで下がった後は、徐々に回復の兆しを見せてはいるものの、1.4を前に足踏み状態が続いています。2010年の日本の合計特殊出生率は1.39(2011年も1.39)。
因みに、一人っ子政策の中国は1.6、韓国は日本よりもさらに低く1.22です。
このグラフを見ると、日本はゆっくりと出生率が低下しているのに比べ、中国・韓国は50年前は5以上あったのに急降下しているのがわかります。日本が長寿国なので高齢化が目立っていますが、今後の高齢化の進行は、中国・韓国の方が深刻であることは間違いないでしょう。

中国・韓国の話はさておき、日本では2001年に内閣府設置法の施行に伴い、内閣府特命大臣が任命され、少子化対策大臣も設置されるようになりました。少子化担当専任のケースはごく希(野田内閣の小宮山大臣くらい?)で、兼任が多くなっています。少子化対策は、雇用や保育、福祉、教育や住環境など様々なことを同時に解決しなければならないので、縦割りの官僚的な対応では何も 前に進みません。対応する官僚組織は組織防衛が第一優先なので、直属の担当大臣ではない内閣府特命大臣のいうことなんかほとんど無視しているのではないでしょうか。勢い、陳情の窓口とマスコミ対応がメインの仕事になってしまうのかもしれません。
小宮山大臣が少子化対策・子育て支援に力を発揮したのは、後に厚生労働大臣に就任してからでした。

今年、第2次安倍内閣が発足し、 少子化対策強化を名言、「2年間で20万人分の保育サービスを確保」すると表明しました。4月には「3年間抱っこし放題」と、育児休業の延長案も出ています。それぞれ個別には良いスローガンかもしれませんが、長く子育て家族への情報提供と共に様々な要望や意見を聞いてきた立場からすると、問題点の整理ができていないように感じます。

そもそも、どうして子育て支援が必要なのでしょうか?選挙では今それを掲げないと票を集められない、落選してしまうという戦術論はあるかもしれませんが、それは政治家の話。人口の減少がそのまま国力の低下に繋がるという論もありますが、それは20世紀までの産業構造で労働人口を語っているにすぎません。戦闘力や生産力は、兵士の数や労働者の数に比例するという、前世紀の考え方です。経済的な国力はGDPで計られますが、簡単に言えば支出の総計。収入があって初めて支出があるわけなので、収入が増えれば支出も増える。ここ数年の日本のGDPの伸び率低迷は、人口の問題ではありません。

話を元に戻します。
子育て支援は何のためにするのでしょうか?選挙対策?GDPの押し上げ?

大切なことは「子ども達の笑顔が溢れる」国にすること。北朝鮮の合計特殊出生率は2を超えていますが、第三者の報道を見る限り「子ども達の笑顔が溢れる国」とはなっていないようです。日本で出生率とともに問題になっているのが児童虐待です。児童虐待の根底には家庭の貧困が横たわっています。安心して子どもを産み育てることの前提には、安定した生活が必要です。アベノミクスで社会が好景気に向かうことは、大歓迎です。現況の待機児童の何割かは、共働きでなければ安定した家計が営めないから働かざるを得ないという家庭でしょう。これが、好景気で女性の戦力がなければ企業の存続に影響する、早く職場復帰して欲しい、ということになれば大きく前提は変わります。
その時、子どもを受け入れるところが必要であるから、保育所の整備は必要となります。しかし、「3年間抱っこし放題」という育児休業期間の延長はちょっと違うような気がします。
日本商工会議所が実施した「第2回子育て世帯全国調査」結果でも、拡充してほしい公的支援では、「児童(子ども)手当の増額」、「年少扶養控除の復活」、「乳幼児医療費助成期間の延長」「休日保育、延長保育等サービスの 多様化」、「病時・病後児保育の充実」「保育所の増設・受入児童数の増加」を求める意見が多く、育児休業制度の法定期間の延長を望む保護者は全 体の1割未満と言う結果でした。

目標数値を掲げてそれを達成することは大事ですが、そもそもの目的が違っていたら目標そのものが意味をなしません。ましてや、目標達成のための手段が目的化してしまうことも少なくありません。
子どもの笑顔を増やすための政策が、結果として出生率のアップに繋がることを願います。

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2013年5月1日水曜日

猪瀬東京都知事の不適切発言

猪瀬東京都知事が、ニューヨークタイムズ紙のインタビューで不適切な発言をしたと報じられ、IOC(国際オリンピック委員会)がコメントを発表しました。

米ニューヨーク・タイムズ紙は27日付で「イスラム教国が共有するのはアラー(神)だけで、互いにけんかしており、階級がある」とする猪瀬知事の発言を伝えた。国際オリンピック委員会(IOC)は倫理規定で、他都市を批判することなどを禁じている。
-2013年4月30日 日本経済新聞

これを受けて猪瀬都知事は29日、「そのような発言をしたつもりはなく真意が伝わっていない。前後の文脈を考えず、問題の部分だけを取り上げられては困る」という趣旨のコメントをしていました。
これに対して,ニューヨークタイムズ紙は録音も残っており、その時に通訳が話したままを掲載したと反論しました。
30日、猪瀬都知事は緊急記者会見を開き、確かにそのような事を言ったと認めた上で、不適切な発言だったと謝罪しました。

この一件は、クォータブル(引用)コメント (QUOTABLE COMMENT)をまんまと録られた良い例です。猪瀬知事も最初の言い訳では、「インタビューも終わって,雑談の時のコメントを使われた」と言っていました。

記者は、本題が一旦終了して気を緩めたときにこそ本音や重要なコメントが拾えると、録音を止めることはしません。猪瀬知事が作家・ジャーナリストとして活躍していた頃の録音機材はカセットテープが主流で、録音時間も限られていましたから、取材テープは無駄の無いようそこそこのところで録音を止めていたかもしれません。しかし今のICレコーダーは、ほとんど無制限に録音を続けられます。記者はインタビューが始まる前から録音を始めていたでしょう(対面する前、レコーダーのスイッチを入れて、見えないところで録音していたかもしれません)。

今回の騒動では、ニューヨークタイムズ紙の記事が出た後の、猪瀬知事(東京都ならびにオリンピック招致委員会)の対応には、指摘されるべきポイントがいくつかあります。
時間軸を追って確認すると、

1,記事が書かれたと判明した段階での事実確認は?

すぐに記事を取り寄せ、その記事に書かれている発言は事実かどうかを、知事に対して誰かが確認したのでしょうか。冷静に、客観的に猪瀬知事に確認を取ることができる人が周りに居なければ、当事者である猪瀬知事は最初は否定するでしょう。東京都(スポーツ振興局)職員では追求も確認も無理です。招致委員会理事長なりが最初に確認を取り、事実確認が済むまでは知事はマスコミの前に出る(出す)べきではありませんでした。

2,何の確認も準備もしないままマスコミの前に出た(出した)

人間、想定外の事に対しての反応は反射的なものになってしまいます。マスコミ慣れしている芸能人でも政治家でも同様です。記者から浴びせられる質問を想定し、答えを準備していなければ、その場を取り繕うような返答になって、墓穴を掘ることになります。
最初の知事の会見は、まさにこの状況でした。

3,冷静に非を認めたことは○(マル)

一旦は記事を否定していたものの翌日には自らの過ちを認めて潔く謝罪したことで、不毛な泥試合は避けられました。これ以上のマイナスは避けられたのではないでしょうか。

4,今回の発言を別な視点で検証してみることも

IOCの倫理規定には反するものの、知事の発言に対しては同じような感想を持っている国や人々も少なからずいるかもしれません。 過去を変えることはできないのであれば、そのような口には出さないけれども「我が意を得たり」と言う人も味方に付けつつイスラム圏の国々・人々の理解を得る方策を見つけられれば問題は別な展開に移るかもしれません。

早期に体制を立て直し、今回のトラブルを「災い転じて福となす」とする行動・アイデアが期待されるところです。