猪瀬東京都知事が、ニューヨークタイムズ紙のインタビューで不適切な発言をしたと報じられ、IOC(国際オリンピック委員会)がコメントを発表しました。
米ニューヨーク・タイムズ紙は27日付で「イスラム教国が共有するのはアラー(神)だけで、互いにけんかしており、階級がある」とする猪瀬知事の発言を伝えた。国際オリンピック委員会(IOC)は倫理規定で、他都市を批判することなどを禁じている。
-2013年4月30日 日本経済新聞
これを受けて猪瀬都知事は29日、「そのような発言をしたつもりはなく真意が伝わっていない。前後の文脈を考えず、問題の部分だけを取り上げられては困る」という趣旨のコメントをしていました。
これに対して,ニューヨークタイムズ紙は録音も残っており、その時に通訳が話したままを掲載したと反論しました。
30日、猪瀬都知事は緊急記者会見を開き、確かにそのような事を言ったと認めた上で、不適切な発言だったと謝罪しました。
この一件は、クォータブル(引用)コメント (QUOTABLE COMMENT)をまんまと録られた良い例です。猪瀬知事も最初の言い訳では、「インタビューも終わって,雑談の時のコメントを使われた」と言っていました。
記者は、本題が一旦終了して気を緩めたときにこそ本音や重要なコメントが拾えると、録音を止めることはしません。猪瀬知事が作家・ジャーナリストとして活躍していた頃の録音機材はカセットテープが主流で、録音時間も限られていましたから、取材テープは無駄の無いようそこそこのところで録音を止めていたかもしれません。しかし今のICレコーダーは、ほとんど無制限に録音を続けられます。記者はインタビューが始まる前から録音を始めていたでしょう(対面する前、レコーダーのスイッチを入れて、見えないところで録音していたかもしれません)。
今回の騒動では、ニューヨークタイムズ紙の記事が出た後の、猪瀬知事(東京都ならびにオリンピック招致委員会)の対応には、指摘されるべきポイントがいくつかあります。
時間軸を追って確認すると、
1,記事が書かれたと判明した段階での事実確認は?
すぐに記事を取り寄せ、その記事に書かれている発言は事実かどうかを、知事に対して誰かが確認したのでしょうか。冷静に、客観的に猪瀬知事に確認を取ることができる人が周りに居なければ、当事者である猪瀬知事は最初は否定するでしょう。東京都(スポーツ振興局)職員では追求も確認も無理です。招致委員会理事長なりが最初に確認を取り、事実確認が済むまでは知事はマスコミの前に出る(出す)べきではありませんでした。
2,何の確認も準備もしないままマスコミの前に出た(出した)
人間、想定外の事に対しての反応は反射的なものになってしまいます。マスコミ慣れしている芸能人でも政治家でも同様です。記者から浴びせられる質問を想定し、答えを準備していなければ、その場を取り繕うような返答になって、墓穴を掘ることになります。
最初の知事の会見は、まさにこの状況でした。
3,冷静に非を認めたことは○(マル)
一旦は記事を否定していたものの翌日には自らの過ちを認めて潔く謝罪したことで、不毛な泥試合は避けられました。これ以上のマイナスは避けられたのではないでしょうか。
4,今回の発言を別な視点で検証してみることも
IOCの倫理規定には反するものの、知事の発言に対しては同じような感想を持っている国や人々も少なからずいるかもしれません。 過去を変えることはできないのであれば、そのような口には出さないけれども「我が意を得たり」と言う人も味方に付けつつイスラム圏の国々・人々の理解を得る方策を見つけられれば問題は別な展開に移るかもしれません。
早期に体制を立て直し、今回のトラブルを「災い転じて福となす」とする行動・アイデアが期待されるところです。
5月2日追記
IOCは、猪瀬知事の発言に対しての処分は行わず、IOCの規範を遵守するよう念押ししてこれで決着とする、と東京五輪招致委員会へメールを送ったということです。 また、トルコも謝罪を受け入れる方向のようです。
猪瀬知事の早い謝罪が、早期の決着に結びついたと言えます。
しかし、その後の定例経験での知事の開き直りとも言えるコメントやTwitterでの書き込みが、ネット上でもさまざまな波紋を呼んでいます。
ブライト・ウェイへのご相談はこちらから。