2013年5月5日日曜日

子育て支援は、何故、何処に必要なのか?

日本の合計特殊出生率は、1975年に2.0を切って以来低下の一途をたどり、1995年以降は1.5を切ったまま。2005年に1.26まで下がった後は、徐々に回復の兆しを見せてはいるものの、1.4を前に足踏み状態が続いています。2010年の日本の合計特殊出生率は1.39(2011年も1.39)。
因みに、一人っ子政策の中国は1.6、韓国は日本よりもさらに低く1.22です。
このグラフを見ると、日本はゆっくりと出生率が低下しているのに比べ、中国・韓国は50年前は5以上あったのに急降下しているのがわかります。日本が長寿国なので高齢化が目立っていますが、今後の高齢化の進行は、中国・韓国の方が深刻であることは間違いないでしょう。

中国・韓国の話はさておき、日本では2001年に内閣府設置法の施行に伴い、内閣府特命大臣が任命され、少子化対策大臣も設置されるようになりました。少子化担当専任のケースはごく希(野田内閣の小宮山大臣くらい?)で、兼任が多くなっています。少子化対策は、雇用や保育、福祉、教育や住環境など様々なことを同時に解決しなければならないので、縦割りの官僚的な対応では何も 前に進みません。対応する官僚組織は組織防衛が第一優先なので、直属の担当大臣ではない内閣府特命大臣のいうことなんかほとんど無視しているのではないでしょうか。勢い、陳情の窓口とマスコミ対応がメインの仕事になってしまうのかもしれません。
小宮山大臣が少子化対策・子育て支援に力を発揮したのは、後に厚生労働大臣に就任してからでした。

今年、第2次安倍内閣が発足し、 少子化対策強化を名言、「2年間で20万人分の保育サービスを確保」すると表明しました。4月には「3年間抱っこし放題」と、育児休業の延長案も出ています。それぞれ個別には良いスローガンかもしれませんが、長く子育て家族への情報提供と共に様々な要望や意見を聞いてきた立場からすると、問題点の整理ができていないように感じます。

そもそも、どうして子育て支援が必要なのでしょうか?選挙では今それを掲げないと票を集められない、落選してしまうという戦術論はあるかもしれませんが、それは政治家の話。人口の減少がそのまま国力の低下に繋がるという論もありますが、それは20世紀までの産業構造で労働人口を語っているにすぎません。戦闘力や生産力は、兵士の数や労働者の数に比例するという、前世紀の考え方です。経済的な国力はGDPで計られますが、簡単に言えば支出の総計。収入があって初めて支出があるわけなので、収入が増えれば支出も増える。ここ数年の日本のGDPの伸び率低迷は、人口の問題ではありません。

話を元に戻します。
子育て支援は何のためにするのでしょうか?選挙対策?GDPの押し上げ?

大切なことは「子ども達の笑顔が溢れる」国にすること。北朝鮮の合計特殊出生率は2を超えていますが、第三者の報道を見る限り「子ども達の笑顔が溢れる国」とはなっていないようです。日本で出生率とともに問題になっているのが児童虐待です。児童虐待の根底には家庭の貧困が横たわっています。安心して子どもを産み育てることの前提には、安定した生活が必要です。アベノミクスで社会が好景気に向かうことは、大歓迎です。現況の待機児童の何割かは、共働きでなければ安定した家計が営めないから働かざるを得ないという家庭でしょう。これが、好景気で女性の戦力がなければ企業の存続に影響する、早く職場復帰して欲しい、ということになれば大きく前提は変わります。
その時、子どもを受け入れるところが必要であるから、保育所の整備は必要となります。しかし、「3年間抱っこし放題」という育児休業期間の延長はちょっと違うような気がします。
日本商工会議所が実施した「第2回子育て世帯全国調査」結果でも、拡充してほしい公的支援では、「児童(子ども)手当の増額」、「年少扶養控除の復活」、「乳幼児医療費助成期間の延長」「休日保育、延長保育等サービスの 多様化」、「病時・病後児保育の充実」「保育所の増設・受入児童数の増加」を求める意見が多く、育児休業制度の法定期間の延長を望む保護者は全 体の1割未満と言う結果でした。

目標数値を掲げてそれを達成することは大事ですが、そもそもの目的が違っていたら目標そのものが意味をなしません。ましてや、目標達成のための手段が目的化してしまうことも少なくありません。
子どもの笑顔を増やすための政策が、結果として出生率のアップに繋がることを願います。

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