2019年6月25日火曜日

制度としての育休は充実しても、それを活用しきれない・させない日本

昨日、今日と気になるタイトルの記事が立て続けに目に飛び込んできました。 

男性の育休6割が「5日未満」 名ばかり育休加速 厚労省が啓発強化 - 産経新聞
保育士不足が深刻化 待機児童減でも…将来不安で退職 自治体間の争奪戦も激化
保育士不足が深刻化 待機児童減でも…将来不安で退職 自治体間の争奪戦も激化
保育士不足が深刻化 待機児童減でも…将来不安で退職 自治体間の争奪戦も激化
保育士不足が深刻化 待機児童減でも…将来不安で退職 
自治体間の争奪戦も激化 - 毎日新聞

日本は、父親の有給育児休業日数はOECD加盟国中、韓国に次いで2位、365日(子どもが1歳になるまで、または育休プラスで1歳2カ月まで)もあります。
OECD加盟主要国の父親の有給育児休業日数(2016) OECD 
しかし、2018年の男性の育休取得率は過去最高を記録したとは言っても6.16%。しかも上記の産経新聞記事のように、男性が育休を取ったとしても5日未満が約6割という有様。
一方で、女性は待機児童の解消が進まず子どもを保育園に預けられないために職場復帰もままならない。最悪はこのままマミートラックに乗せられてしまいます。これでは、女性が積極的に子どもを産み・育てようという気になれるはずがありません。

ノルウェーやスウェーデンは、クオータ制(割り当て制)があり、父親が育休を取得しないと母親の育休取得権利が消滅してしまいます。90%以上の父親が育児休業を取得し、 1歳になるまでは両親で自宅で子育てをするのが社会的な前提です。

保育園で0歳児の預かりが無いノルウェー


また、毎日新聞の記事にあるように、育休延長※を狙って落選を前提に認可保育園に申し込むケースもあるようで、せっかくの手厚い育児休業制度も政府が期待するようには活用されていません。
※本来の育休は1歳の誕生日の前日まで。しかし、子どもが1歳になった時点で「保育所の入所待ち」、「配偶者が死亡・病気」など特別な理由がある場合に限り、半年間の延長申請が可能。さらに1歳6カ月の時点でも保育所の入所待ちが続いているなどの場合に限り、再び申請をして子どもが2歳になるまで延長できる。延長期間中も育児休業給付(休業開始前賃金の50%を支給)が受けられ、育児休業給付は非課税となっていること、また、育児休業期間中には社会保険料免除措置があることから、休業前の税・社会保険料支払後の賃金と比較した実質的な給付率は8割程度となる。


父親の育休無しでも子育てに積極参加


ところで、上のOECD加盟主要国の父親の有給育児休業日数グラフを見ていて今更ながら(今頃?)に驚いたことがあります。これまで、子育て先進国として取材に訪れたニュージーランド、カナダの有給育児休業日数は0!ノルウェーやスウェーデンでも70日です。
しかし、取材で訪れたどの国も合計特殊出生率は高く、父親が子育てに深く関わっていました。
過去の海外取材はこちらに整理しています

子育て先進国と日本との違いを整理 2017-フランス取材で見えてきた日本の子育て支援の方向性 

政府は、父親の育休取得を義務づける検討を始めていますが、こうしてみると、男性の育児休業取得よりも重要なことが見えてきます。

ノルウェー・カナダ(BC州)・ニュージーランドは、EQUAL(平等)という考え方を非常に重要視していました。民族(先住民・移民・難民、国籍、肌の色など)の多様性を受け入れ、子どもの頃から平等教育を徹底しています。もちろん性差についても同様です。平等の考え方の延長に子育てもあります。
フランスは少し違っていて、21世紀に入ってから実行に移された様々な取り組みや制度により、男性が子育てに関わることを仕組みとして作り上げたと言っても良いでしょう。女性だけでなく、男性も子どもが生まれた瞬間から「親」になったことを意識させ、「親になる」ことを支援する仕組みです。その上で、「親であること」を支援する様々な金銭的支援やサポート体制が確立されています。

フランスもカナダも、保活の厳しさは日本と変わりません。妊娠が分かった段階で保育園に申し込みます。全員が認可保育園に入れるわけではないのですが、それ以外の施設や保育制度が充実し、フランスでは金銭的にも手厚い助成もあります。カナダは日本よりも保育園の保育料が随分高い(1カ月1000カナダ$以上)のですが、それでも母親が職場に復帰してキャリアを途切れさせないことを優先させます。
フランス、カナダ、それにノルウェーに共通していたのは、女性のキャリアに対する考え方と社会の受け入れ方です。出産・育児は女性のキャリアの妨げにならないしてはならない、日本で言うところのマミートラック は存在しない・させないという社会の共通認識です。

取材した国(フランスは除く)では午後4時くらいから帰宅ラッシュが始まっていました。夕方の小学校の周りには、お迎えの車が次々とやってきて、父親の運転する車で帰っていきます。育児休業よりも毎日の家族との時間を重要視し、家事や育児を夫婦で偏りなく分担していました。
日本の父親には、フランスで実施している産休の義務化と、北欧のクオータ制の併用が良いように思いますが、いかがでしょうか?

働き方改革が叫ばれるなか注目されたTBSドラマ「わたし、定時に帰ります」。
吉高由里子演じる主人公のように、全員が効率よく仕事を済ませ定時に帰る。日本の組織・社会でもそれを妨げない上司と会社の空気が当たり前になれば、少子化にも歯止めがかかると思うのですが。高度経済成長やバブルを経験していまだにその時の成功体験・幻想から抜け出せない世代はそろそろ退場して次の世代に社会を任せるときではないでしょうか。

先週、最終回放送の途中、新潟・山形沖地震のために放送中断となってしまいましたが、本日改めて最終回の放送予定。日本の会社で起こっていそうな様々な職場でのトラブル(パワハラ、引きこもり、マミートラック、空残業etc.)をケーススタディで見せられるようなドラマでしたが、さて、最後はどんな結末になるのでしょうか?


2019年6月21日金曜日

現実に目を向けず「家」制度を引きずり、少子化に向かう日本

今朝、BUSINESS INSIDER JAPANのこんな記事を見つけました。

30代子育て世帯の約1割が世帯年収1000万円以上! 共働きと片働きで二極化する収入

大和総研研究員の是枝俊悟さんの書いた記事で、大企業に勤める30代の平均年収は約500万円なので夫婦共働きなら約1000万円になり、二人なら世帯年収1000万円のハードルは大きく下がるというものです。公的年金2000万円不足問題で、年収1000万円についてネットでも様々な議論を巻き起こしているタイミングでキャッチーなタイトルです。
この記事をきっかけに、日本の子育ての現状について少し書いてみたいと思います。

昭和までは専業主婦が当たり前


私が社会人になった頃の1980年代前半までは、女子大、女子短大卒業後の職業は「家事手伝い」か企業の「一般職」(多くは角丸名刺)でした。どちらも永久就職口(結婚相手)を探すための腰掛け的な位置づけです。いわゆるお嬢様学校と言われる大学だと、卒業後に就職することは恥ずかしいと言う風潮さえありました。卒業後は家事手伝いをしながら花嫁修業をし、良い家の跡継ぎや医者・弁護士、あるいはエリートサラリーマンの嫁になるのが目指すゴールだったのです。家事手伝いのお嬢様が通う「花嫁学校」の取材をしたことがありますが、夫を支える妻としてのスキルや心構えを徹底的に教える学校でした。料理や洗濯、アイロン掛けといった家事全般はもちろん、和服の着付け、お茶やお花、書道などの日本文化、外交官や商社マンの夫と共に海外赴任も想定して語学やテーブルマナー、パーティに際しての立ち居振る舞いまで学んでいました。バブル期を境に花嫁学校という名前はやがて無くなり、発展的にフィニッシングスクールへと移行していったところもあります。

昭和50年代の初婚平均年齢は、男性28歳前後、女性25歳前後でしたから、大卒だと卒業後3年、短卒だと5年ほどで結婚して専業主婦というのが一般的だった頃です。

女性の就業率は上がっているのに出生率が上がらない


1985年(昭和60年)に男女雇用機会均等法が成立し、まもなくバブル景気に突入します。ビジネスの世界だけでなく消費における女性の存在感が高まり、「アッシー」「メッシー」「ミツグ君」といった言葉が生まれるほど男性の消費にまで女性が影響を与えるようになってきました。

就業率の推移

よく言われるのは、先進国では女性の就業率が高いほど合計特殊出生率が高いという正の関係です。しかし、上のグラフでは女性の就業率は右肩上がりであるのに対して、下の合計特殊出生率は男女雇用機会均等法が成立した1985年前後から2005年までは右肩下がりです。

出生数及び合計特殊出生率の年次推移ー内閣府より

女性の社会進出を後押しし子どもが生まれても働ける環境作りのために、育児休業法の改正や子ども子育て新制度のスタートなど、様々な施策が実行に移されています。しかし合計特殊出生率は、2005年の1.26から徐々に持ち直してはいますが、1.44で足踏みした状態です。

都道府県別合計特殊出生率の動向-内閣府より

都道府県別の合計特殊出生率の2011年と2016年を比べると、各都道府県共に出生率は上がっていますが大都市を抱える関東・関西圏は低くなっています。本来なら様々な政策の恩恵を受ける労働力人口が多い(若者が集まる)大都市圏での出生率はもっと上がっても良さそうですが、相変わらず低いままです。これはなぜなのでしょうか?
BUSINESS INSIDER JAPANの記事でもあるように、正規雇用の共働きであれば1000万円前後の世帯収入があり、勤め先の充実した福利厚生や育休制度もあるでしょう。仮に認可保育園に落ちても、高い世帯収入を背景に子育てしながら職場復帰をすることはできるはずです。しかし、そういう家庭はごく一握りです。

子どもがいる家庭の多くは共働き


平成30年国民生活基礎調査の結果を見ると、世帯収入の平均は545.4万円、中央値は427万円です。児童のいる世帯の平均所得金額は707万6千円で一人あたりの所得金額は下のグラフで示すとおり世帯収入のほぼ半分。このグラフから見てもほぼ共働きであることがうかがえます(正規か非正規雇用かはわかりませんが)。

児童のいる世帯の平均所得金額・有業人員1人当たり所得金額
平成30年国民生活基礎調査より
 冒頭で紹介した記事で、大和総研研究員の是枝俊悟さんは以下のような言葉でしめくくっています。
政府は近年、育児休業給付金の拡大や保育所の増設など子育て支援を充実させてきた。
それにもかかわらず出生率が伸び悩んでいるのは、世帯年収の向上や子育て支援の充実の恩恵を受けられたのが事実上共働き世帯ばかりであり、片働き世帯が取り残されていたからかもしれない。

近年、男女ともに婚姻年齢が上がり、生涯未婚率も高くなっています。内閣府が公表している未婚率の年次推移を見ると全年代に渡って未婚率が上がっていますが、なかでも結婚適齢期と言われる25~29歳では6割を超えています。
内閣府の同じレポートには夫婦の完結出生児数(結婚持続期間が15~19年の初婚どうしの夫婦の平均出生子供数)についても記述があります。1970 年代から2002(平成14)年まで2.2 人前後で安定的に推移していたが、2005( 平成17) 年から減少傾向となり、2015(平成27)年には1.94となったと。

女性の未婚率年次推移ー内閣府
日本の政府は、家族を全て戸籍や住民票という書類のベースで考えて処理しようとします。武家社会の家父長制、「家」制度を引きずった考え方です。婚姻は異性のみに許され、嫡出子を全てにおいて優先します。保育園に入るにしても、「家」の単位でポイント制にして順位付けしています。
女性の50歳未婚率が15%を越えている現状で、完結出生児数が2を下回っているのですから嫡出子を増やすことだけを子育て支援とするのは、既に現実的ではありません。しかし夫婦別姓でさえ法改正の道は険しいのが現状です。独立した個人を尊重し、嫡出子・非嫡出子に関わらず一人の子どもとして、あるいはその子の親として向き合い支援するべきです。
ここに、他の先進国(女性の就業率と出生率の正の相関)の仲間に入れない理由が有るように思います。

自ら親になることを選べる国に


2016年に取材で訪れたフランスは根本的に考え方が違っていました。翌2017年、取材をコーディネートしていただいた『フランスはどう少子化を克服したか』の著者、高崎順子さんが帰国された際に、「フランスの子育てのヒントを日本に生かすには」というセミナーを開催しました。
この時に印象的だったのが、フランスでは「自ら選んで親になる」ということでした。そして「親になることを支援する」「親であることを支援する」ために論理的に体系的な子育て支援策を用意するのが政府の役割だと位置づけていること。日本の行き当たりばったり、過去を捨てられない政策とは大違いでした。

このセミナーの書き起こしを、「家」制度を引きずり男女や家庭内の役割分担を固定化したままの昭和生まれの政治家・政府関係者に是非読んでいただきたいものです。






2019年6月20日木曜日

一歩前進 改正児童虐待防止法と改正児童福祉法の成立

2019年6月19日、親による体罰禁止を明文化した改正児童虐待防止法と改正児童福祉法が参院本会議で全会一致で可決、成立しました。
改正児童虐待防止法と改正児童福祉法が全会一致で可決、成立し一礼する根本匠厚労相(19日午前)=共同
 私の妻であり、【こそだて】の編集長であり、認定NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク理事/NPO法人子どもすこやかサポートネット副代表理事/NPO法人タイガーマスク基金理事でもある高祖常子は、児童虐待・子どもの体罰を無くそうと長い間活動してきました。

彼女は、昨年、今年と家庭内の体罰・虐待による悲しい死亡事故が続いたことでいてもたってもいられなくなり、署名サイト「change.org」で自らが発起人となり、「虐待死をなくしたい!子どもへの体罰・暴力の法的禁止を求めます」というキャンペーンを立ち上げました。短期間で署名は23,388人に上り、その署名を持って党派を超えて国会議員に体罰禁止を訴え、勉強会にも積極的に参加してきました(もちろん、彼女一人ではありません)。

2万3千人に及ぶ署名は、プリントアウトするだけでも大変です。署名のファイルをUSBメモリーにダウンロードし、それをkinko'sに持って行き出力し、大量の署名を持っての陳情、参加です。 出力枚数も膨大で、出力時間もかかりますし、重量も大変です。毎回その署名リストは手渡していますから、そのたびに出力して持って行かなければなりません。kinko'sの領収書を見て驚いたものです。

そんな苦労もありましたが、無事、昨日法案は可決されました。
change.orgにはキャンペーンについてのお知らせが出ました。

キャンペーン成功!親権者等による体罰禁止の改正法が成立しました!

子どもへの体罰・暴力の法的禁止を求めるプロジェクト2019

署名の届け先も、上記リンク先に記してあります。
公益財団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン、NPO法人子どもすこやかサポートネット、認定NPO法人児童虐待防止全国ネットワークによる共同声明もご一読ください。

 声明「親権者等による体罰禁止を含む 児童虐待防止強化のための改正法成立を受けて

ただただ高祖常子の頑張りを横から応援するだけで私は何も力になれませんでしたが、 この法案が成立したことで、子ども達を苦しめる体罰や虐待が少しは減り、しつけに体罰は必要ない、やってはいけないという意識が浸透することに期待します。

高祖常子はじめ、共同発起人の皆様、法案成立に向けて活動・ご支援いただいた皆様に深い感謝と尊敬の念に堪えません。ありがとうございました。





2019年6月16日日曜日

老後2000万円問題を自分ごと、として考えるときの参考に

先週、金融庁が公表した金融審議会 市場ワーキング・グループの「高齢社会における資産形成・管理」報告書が物議を醸しています。メディアで大きく取り上げられ、麻生財務大臣が報告書を受け取る受け取らないとか、野党は選挙に向けた争点にしようと追求をするなど、騒動は治まりそうにありません。
件の報告書は、金融庁のサイトからダウンロードできます(上のリンクからもダウンロード可)が、金融審議会の報告書の公表は今回が初めてではありません。2016年には「国民の安定的な資産形成に向けた取組みと市場・取引所を巡る制度整備について」という報告書を公表していて、こちらもダウンロード可能です。

これらの報告書は、金融庁のワーキンググループの報告書です。公的年金は厚生労働省から委託された日本年金機構が業務運営を行い、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用していますから、いわば第三者の別な視点からの報告書です。ある意味、客観的に正しい指摘をしてくれているわけです。

それでは、この報告書を受けて、私たちはどうすれば良いのでしょうか?私の場合は年齢的にすでにできることは限られていますが、これから公的年金は先細りすることが確実な30代~40代、あるいは私たちの子どもの世代はまだ時間もあります。報告書にあるように、老後に備えて自分で何か手を打たなければなりません。
節約ライフプランの「家計診断 年金・老後」画面の一部

その参考になるのが、NTTイフが運営しているサイト「節約ライフプラン」です。
実は、このサイトのコンテンツの多くをブライト・ウェイが提供しています。 老後の備えに関しては「家計診断 年金・老後」が参考になります。
相談者からの具体的な相談に対して、ファイナンシャルプランナーがキャッシュフロー表やグラフを示しながら、具体的にアドバイスをしています。iDecoやNISAに対する質問もあり、金融商品や投資に関するアドバイスも多くあります。相談者の家族構成や所得、相談の背景などバリエーションも多く、これらのケースの中に自分と重なるパターンも見つかるのではないでしょうか?

参考にしていただければ幸いです。





2019年6月10日月曜日

田口被告の突然の土下座ー世間の反応から学ぶ、謝罪でやってはいけないこと

東京都内の自宅で、乾燥大麻を所持していた罪に問われているKAT-TUN元メンバー・田口淳之介被告。先週7日、300万円の保釈金を支払い、勾留されていた警視庁東京湾岸署から保釈されました。
そのときの様子をテレビ各局のニュースで伝えていましたが、いきなりの土下座に驚いた人も多いことでしょう(上の動画はTHE PAGEより)。

田口淳之介被告は、我が家ではKAT-TUNの元メンバーというよりも、堺雅人主演のドラマ「リーガル・ハイ」の加賀蘭丸として親しまれていました。田口被告が逮捕された一報が流れた際にも、息子が「蘭丸が逮捕された!」と家族のLINEグループに送ってきたくらいです。2016年にKATーTUNを脱退し、ジャニーズ事務所も退社してからはテレビでも見なくなりました。それだけに、蘭丸の印象が強く残っています。
「リーガル・ハイ」の中での加賀蘭丸の存在は、「忍び」のような存在。変装したり誰かになりすましたりしながら情報を集め、堺雅人演じる小御門弁護士をアシストします。実は、「リーガル・ハイ」の脚本を担当したのは古沢良太さんで、昨年の人気ドラマ「コンフィデンスマンJP」、現在ヒット中の映画「コンフィデンスマンJPーロマンス編」も手がけています。コンフィデンスマンJPの各登場人物は、私には加賀蘭丸の派生・発展の様にも見えます。

土下座を止めることはできなかったのか?


話が横道にそれてしまいましたが、 爽やかなイメージで売っていた若者が大麻所持で逮捕され、出てくれば土下座をして謝罪という、なんともギャップの大きな後味の悪い保釈劇。所属事務所は、実質的には自身の個人事務所で組織だった活動実態は無さそうですから、今回の逮捕後も事務所のサポートも無いでしょう。親族以外で唯一アドバイスできたとしたら弁護士さんでしょうか。しかし、さすがに弁護士さんが土下座をして謝罪しなさいとアドバイスをしたとは考えられません。

Wikipediaでも、
現在では土下座自体に謝罪というよりも「なりふり構わぬ自己保身の手段」というネガティブなイメージを抱く人が多くなった一面があり、土下座の使い方や使いどころ次第でかえって世間の反感や冷笑を買ってしまい、逆効果になってしまうケースも見られる様になっている。 
との記述があります。 ネット上の反応などを見ると、今回はまさにこのケースに当てはまったようです。

カメラの前での土下座は「パフォーマンス」


過去に土下座をした謝罪で思い出すのが、焼肉酒家えびすの勘坂社長です。和牛ユッケから腸管出血性大腸菌O-111による集団食中毒を引き起こし5名の死者と多数の食中毒被害者を出した事件です。当初は非を認めず強気の会見を行いましたが、数日後に報道陣の前で土下座して謝罪し、パフォーマンスだと非難されました。2011年の事でさんざん話題になった事ですから、田口被告も知らないということはないでしょう。

バラエティ番組やギャグでなくとも、テレビや報道カメラの前で行う土下座は謝意が本物かどうかに関わらず「パフォーマンス」にしか見られないのが今の現実です。謝罪に際しては、謝意を表す・伝えることは重要ですが、そこに余計なパフォーマンスは要らないのです。しらけたり不快に感じさせたりしてしまうことになります。
田口被告も今後、芸能界に復帰を希望するしないにかかわらず、「土下座をした人」として記憶され、 芸能界復帰どころか何をするにも自身を苦しめることでしょう。今頃、どうして土下座をしたんだろう、と後悔しているかもしれません。それとも、他人にはわからないもっと深い考え(カメラの向こうにいる特定の人に向かってのメッセージなど)があったのでしょうか?

何にしても、要らない土下座であったことは間違いありません。

過去にこの場でも何度も書いていますが、不祥事や不測の危機に際して当事者となると、その対応あるいは会見に際しては第三者のアドバイス無しで乗り切るのは極めて困難です。躊躇せず第三者に客観的なアドバイスを求めてください。

2019年6月6日木曜日

育休直後にパタハラで退職→ネットで炎上のカネカの対応について


今週、パピ_育休5月復帰さんの書き込みをきっかけに、Twitter始めネットでパタハラが大きな話題となっています。そもそものきっかけは、4月23日のこの投稿でした。
パピ_育休5月復帰さんのTwitter投稿より
 この投稿に多くのアドバイスや励ましのコメント、更には 1,100を超えるRTが付き、その後の労組や連合、労働局との相談結果などもつぶさにtweetをしています。そして、4月26日に
ちなみに夫は日系大手メーカー勤務。連結1万人くらいの規模、本社で2人目の男性育休取得者で、取得前人事からは、社会の流れから男性育休の事例作らなきゃいけないんです、的な事言われてた。取ってみたら明けて2日で地方に単身赴任命令。時代に逆行してるのか、まだまだ本質がそこにあるのか。
とtweet(赤字は筆者が強調)し、どこの会社なのかに注目が集まるようになりました。結局ご主人は5月31日付で退職し、6月1日に
改めて決意
夫日系一部上場企業で育休とったら明けて2日で関西に転勤内示、私の復職まで2週間、2歳と0歳は4月に転園入園できたばかり、新居に引越して10日後のこと。 いろいろかけ合い、有給も取らせてもらえず、結局昨日で退職、夫は今日から専業主夫になりました。
私産後4か月で家族4人を支えます
とtweet。さらにその後のtweetに、「#カガクでネガイをカナエル会社」とハッシュタグを付けたことで、その会社がカネカだということが判明したのです。 
Twitterを 端緒とするネットでの炎上については、
 
 会社から『男性育休の事例を作らないといけない』と言われ1ヶ月の育休を取得した夫が職場復帰したらパタハラに遭ってしまった話(togetter)
などの複数のサイトにまとめてあります。

 

ネットからリアルビジネス誌へ

 

テレビでも知花くららさんを起用し、企業CMを多く流している知名度の高い一部上場企業のカネカであったことから、リアルなビジネス誌からも注目を集めます。日経ビジネス電子版は直ぐに当事者を直撃取材し、

「育休復帰、即転勤」で炎上、カネカ元社員と妻を直撃
を6月3日にアップしています。
すると今度は、角倉護社長から社員宛てにメールが配信されたことがわかり、
カネカ続報、「即転勤」認める社長メールを入手
と続報を流します。
さらに、 今日6月6日に
カネカが初めてコメント「弁護士を入れて調査している」
とする記事をアップするや、カネカのWEBサイトのTOPページには、「当社元社員ご家族によるSNSへの書き込みについて」とする公式コメントが掲載されました。
日経ビジネスの記事の公開後にカネカのサイトが更新されたということで、記事の2P目に追記として全文が紹介されています。

Googleトレンドに見るカネカへの関心度


 4月23日のパピ_育休5月復帰さんの最初のtweetから、カネカが公式に行動を起こす今日までの流れをざっと振り返ってみました。
この1ヶ月半の間、カネカは何をしていたのでしょうか?何をすべきだったのでしょうか?

パピ_育休5月復帰さんのtweetを遡ってみると、既に4月23日には上司にも人事にも相談しています。その後、労組や連合、労働局にまで相談していることもわかります。しかし、この段階では一従業員と会社との間でのやりとりなので、表に出ることはありません。ところが、退職し雇用関係が無くなった途端に恩も義理もないので→ #カガクでネガイをカナエル会社」とtweetです。
パピ_育休5月復帰さんのTwitterアカウント取得は2015年で、遡るとアフリカと日本の遠距離恋愛の後結婚、ご主人は海外での単身赴任が長かったことなどもわかります。4月以前のtweetはほとんどお子さんとの日常のことで、ご主人の帰国を心待ちにする様子以外には会社への不満などはほとんど見られません。それなのにこのような事になったのは、4月の転勤内示以降のコミュニケーションに問題があったと言わざるを得ません。

カネカは、このネットでの騒ぎをいつ知ったのでしょうか? 知ることができたでしょうか?

 これだけ大きな企業となれば、広報や総務では自社に関するネット上での書き込みや話題については常にチェックしているはずです。リアルタイムでなくてもGoogleやTwitter、FacebookなどのSNSのツールを使えばある程度は把握できます。社内で対応できなくてもアウトソースで監視してくれる企業はたくさんあります。
Googleトレンドの急上昇ワードを確認すると、社名が判明した直後から検索が増え、6月2日の検索急上昇ワードの3位にランクイン、10万+となっています。Googleトレンドの最初の変化は6月1日の23時頃です。その後深夜にかけて一度山は低くなり、6月2日の夜明けと共に一気に検索が増えていきます。
日経ビジネス、6月3日の最初の記事では カネカIR・広報部は取材に対して、「ツイッターでの一連の議論は承知している」と答えていることから、2日の時点では把握している事がうかがえます。

早い段階で把握し、経営TOPにまで情報は上がっています。その証拠に3日には社長名で社員にメールが配信されているのですが、不用意すぎます。社長名で出す必要があったのでしょうか?社長名で誰(一部の幹部?社員全員?)宛てのメールだったのでしょうか?こういうメールはどこで漏れるか分からない(現に漏れています)ものですし、年月が経ってから見つかっても問題となることがありますから、細心の注意が必要です。

パピ_育休5月復帰さん本人のTwitterアカウントから読み取れる情報、まとめサイトや他のサイトで話題にされている内容はすぐに集める事が可能です。カネカがどのような企業だと見られ批判の的になっているかはわかっているはずです。その上でサイト上に公表した公式見解。ここから読み取れるのは、カネカは法的に間違ったことはしていないので問題ない、一般生活者がどう思おうと経営には支障が無いのでこのまま押し切る、という姿勢を明確にしたと見ることができます。

かつてこのスタンスで対応したB2C企業であるベネッセやマクドナルドは批判を浴び、業績を落としました。B2B企業であるカネカはそこは意に介さないのでしょう。しかし、この突き放した対応がカネカの企業姿勢だと捉えられると、他の事例や不祥事の内部告発などが週刊誌やネットに相次ぐ心配もあります。優秀な社員が他の会社に出て行く可能性もありますし、少なくとも、採用には大きく影響するでしょう。
昨日、自民党で「男性育休義務化議連」が発足しました。「パタハラ」への罰則規定も検討するということですが、今回のカネカの事例についての見解も聞いてみたいものです。


パタハラはもってのほかですが、労使間での希望や要望の食い違いはある程度は起きるものです。最悪、退職に至ったとしても退職者に対しては円満に、気持ちよく去ってもらえる対応を旨としたいものですね。



2019年6月5日水曜日

「日経MJ 2019年上期ヒット商品番付」を福岡で見て思うこと

今朝は、福岡出身の女優、蒼井優さんと南海キャンディーズの山里亮太さんの電撃結婚のニュースで、パッチリと目が覚めました。そんな一日の始まりでしたが、芸能ニュースがない日経新聞には「日経MJ 2019年上期ヒット商品番付」の記事がありました。
日本経済新聞デジタル 6月5日 より
 これを見て、横綱の「令和」と「スマホペイ還元」は誰もが納得いくところでしょうが、大関以下になると人によって受け止め方も違うでしょうし、そもそも「これ何?」というものもあります。西の大関、任天堂「大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL」 からして私にはわかりませんが、ゲームをやる人には納得の番付なのでしょう。

関脇の「ダイナミックプライシング」は、これまでも宿泊施設やパック旅行が季節により料金を変えたり、スーパーや百貨店の閉店前に値引きするなど、小売りの現場では普通に行われていた需要と供給の関係で価格を変えていくという行為。私は、東京への夕方移動で、スケジュールの変更が無いようなときにはSkymarkやJETSTARを使うことがありますが、購入するタイミングで価格が変わります。JETSTARだと1週間前の予約で、足下が広いシート(+990円)を選んでも7000円以下で購入できるときもあります。JAL・ANAの正規料金の1/5以下です。
ダイナミックプライシングは、これまでは定価・定額販売だったものを季節や曜日、天候など市場のニーズの変化に合わせてダイナミックに価格を変えていくというものです。どちらかというと需要期に価格を上げる方向の自由度が注目されています。これまでホテルなどはタリフ(料金表)を印刷したりウェブサイトに掲載して、需要期でもその金額に縛られていましたが、その呪縛から解き放たれた訳です。
名前が「ダイナミック」というので何か新しいような気もしますが、これまでごく一部で行われてきたことが、もっと大々的に広い業種で行われるようになったと言うことです。
変動料金制を言い換えただけですけど、名前は大事ですね。

さて、この番付では東京あるいは関東圏でないとよくわからない、あるいは接点がない物もいくつかあります。「無印良品 銀座」は銀座にできた新しい無印良品ですし、「ムーミンバレーパーク」は埼玉県の新しいテーマパーク、「うんこミュージアム」も横浜にできたテーマパークです。 店舗やテーマパークは足を運ばないことには何が魅力なのか、なにが話題なのかはわかりません。「翔んで埼玉」も、原作のコミックがあるにしても、関東圏で生活していないとその空気というか背景を肌で感じられないので、単なるコミック原作の映画がヒットしただけという捉え方になるでしょう。

首都圏で話題になる物はこうして全国のヒット番付に登場しますが、地方発のヒット商品がなかなか出ません。人気投票やマーケットデータに基づくものではなく、(多分首都圏在住でしょう)担当記者による番付のせいもあるのでしょうが。
マーケットの大きさだけではなく、今はSNSやネット発信で話題になることも増えてきました。福岡発でヒット番付に載るような新商品・サービスが出てくることを期待したいと思います。

ところで、本日もう一つの驚きは、西日本リビング新聞社の解散報道でした。フリーペーパーを取り巻く環境は厳しいのは確かですが、サンケイリビング新聞社がRIZAPグループになったことも影響しているのかもしれません。