2019年6月25日火曜日

制度としての育休は充実しても、それを活用しきれない・させない日本

昨日、今日と気になるタイトルの記事が立て続けに目に飛び込んできました。 

男性の育休6割が「5日未満」 名ばかり育休加速 厚労省が啓発強化 - 産経新聞
保育士不足が深刻化 待機児童減でも…将来不安で退職 自治体間の争奪戦も激化
保育士不足が深刻化 待機児童減でも…将来不安で退職 自治体間の争奪戦も激化
保育士不足が深刻化 待機児童減でも…将来不安で退職 自治体間の争奪戦も激化
保育士不足が深刻化 待機児童減でも…将来不安で退職 
自治体間の争奪戦も激化 - 毎日新聞

日本は、父親の有給育児休業日数はOECD加盟国中、韓国に次いで2位、365日(子どもが1歳になるまで、または育休プラスで1歳2カ月まで)もあります。
OECD加盟主要国の父親の有給育児休業日数(2016) OECD 
しかし、2018年の男性の育休取得率は過去最高を記録したとは言っても6.16%。しかも上記の産経新聞記事のように、男性が育休を取ったとしても5日未満が約6割という有様。
一方で、女性は待機児童の解消が進まず子どもを保育園に預けられないために職場復帰もままならない。最悪はこのままマミートラックに乗せられてしまいます。これでは、女性が積極的に子どもを産み・育てようという気になれるはずがありません。

ノルウェーやスウェーデンは、クオータ制(割り当て制)があり、父親が育休を取得しないと母親の育休取得権利が消滅してしまいます。90%以上の父親が育児休業を取得し、 1歳になるまでは両親で自宅で子育てをするのが社会的な前提です。

保育園で0歳児の預かりが無いノルウェー


また、毎日新聞の記事にあるように、育休延長※を狙って落選を前提に認可保育園に申し込むケースもあるようで、せっかくの手厚い育児休業制度も政府が期待するようには活用されていません。
※本来の育休は1歳の誕生日の前日まで。しかし、子どもが1歳になった時点で「保育所の入所待ち」、「配偶者が死亡・病気」など特別な理由がある場合に限り、半年間の延長申請が可能。さらに1歳6カ月の時点でも保育所の入所待ちが続いているなどの場合に限り、再び申請をして子どもが2歳になるまで延長できる。延長期間中も育児休業給付(休業開始前賃金の50%を支給)が受けられ、育児休業給付は非課税となっていること、また、育児休業期間中には社会保険料免除措置があることから、休業前の税・社会保険料支払後の賃金と比較した実質的な給付率は8割程度となる。


父親の育休無しでも子育てに積極参加


ところで、上のOECD加盟主要国の父親の有給育児休業日数グラフを見ていて今更ながら(今頃?)に驚いたことがあります。これまで、子育て先進国として取材に訪れたニュージーランド、カナダの有給育児休業日数は0!ノルウェーやスウェーデンでも70日です。
しかし、取材で訪れたどの国も合計特殊出生率は高く、父親が子育てに深く関わっていました。
過去の海外取材はこちらに整理しています

子育て先進国と日本との違いを整理 2017-フランス取材で見えてきた日本の子育て支援の方向性 

政府は、父親の育休取得を義務づける検討を始めていますが、こうしてみると、男性の育児休業取得よりも重要なことが見えてきます。

ノルウェー・カナダ(BC州)・ニュージーランドは、EQUAL(平等)という考え方を非常に重要視していました。民族(先住民・移民・難民、国籍、肌の色など)の多様性を受け入れ、子どもの頃から平等教育を徹底しています。もちろん性差についても同様です。平等の考え方の延長に子育てもあります。
フランスは少し違っていて、21世紀に入ってから実行に移された様々な取り組みや制度により、男性が子育てに関わることを仕組みとして作り上げたと言っても良いでしょう。女性だけでなく、男性も子どもが生まれた瞬間から「親」になったことを意識させ、「親になる」ことを支援する仕組みです。その上で、「親であること」を支援する様々な金銭的支援やサポート体制が確立されています。

フランスもカナダも、保活の厳しさは日本と変わりません。妊娠が分かった段階で保育園に申し込みます。全員が認可保育園に入れるわけではないのですが、それ以外の施設や保育制度が充実し、フランスでは金銭的にも手厚い助成もあります。カナダは日本よりも保育園の保育料が随分高い(1カ月1000カナダ$以上)のですが、それでも母親が職場に復帰してキャリアを途切れさせないことを優先させます。
フランス、カナダ、それにノルウェーに共通していたのは、女性のキャリアに対する考え方と社会の受け入れ方です。出産・育児は女性のキャリアの妨げにならないしてはならない、日本で言うところのマミートラック は存在しない・させないという社会の共通認識です。

取材した国(フランスは除く)では午後4時くらいから帰宅ラッシュが始まっていました。夕方の小学校の周りには、お迎えの車が次々とやってきて、父親の運転する車で帰っていきます。育児休業よりも毎日の家族との時間を重要視し、家事や育児を夫婦で偏りなく分担していました。
日本の父親には、フランスで実施している産休の義務化と、北欧のクオータ制の併用が良いように思いますが、いかがでしょうか?

働き方改革が叫ばれるなか注目されたTBSドラマ「わたし、定時に帰ります」。
吉高由里子演じる主人公のように、全員が効率よく仕事を済ませ定時に帰る。日本の組織・社会でもそれを妨げない上司と会社の空気が当たり前になれば、少子化にも歯止めがかかると思うのですが。高度経済成長やバブルを経験していまだにその時の成功体験・幻想から抜け出せない世代はそろそろ退場して次の世代に社会を任せるときではないでしょうか。

先週、最終回放送の途中、新潟・山形沖地震のために放送中断となってしまいましたが、本日改めて最終回の放送予定。日本の会社で起こっていそうな様々な職場でのトラブル(パワハラ、引きこもり、マミートラック、空残業etc.)をケーススタディで見せられるようなドラマでしたが、さて、最後はどんな結末になるのでしょうか?