2018年5月31日木曜日

今アメリカで起こっている変化に、日本の企業は気づいているのか?

今日の日経新聞電子版で、ネットフリックスは「三日天下」かという記事が配信されました。動画配信大手「ネットフリックス」の時価総額は約1536億ドル(約16.7兆円)となり、メディア大手ウォルト・ディズニー(約1490億ドル)を2日連続で上回り、「企業価値が最大の米メディア」となったというものです。
この「三日天下」という表現の背景にあるのは、ディズニーのオウンゴールによる株価下落による恩恵だというのです。ディズニー傘下の米テレビ局ABCが、人気ドラマ「ロザンヌ」の打ち切りを決めたことなどによる影響とあります。主演女優のロザンヌ・バー氏がTwitterに人種差別的な投稿をし、それを問題視したABC、ディズニーが業績好調の柱であった番組打ちきりを決めたというのです。 

この日経の記事だけでは詳細が分からなかったのですが、昨日のYahoo!ニュースで、LA在住の映画ジャーナリスト猿渡由紀氏による1本のツイートでキャリアを失ったスターの愚行と、トップ番組を容赦なく切ったテレビ局の英断」という記事が掲載されていて理解できました。この記事によると、
「Roseanne」は、今年、最も話題を呼んだ人気番組である。録画で見た人も入れると、視聴率はアメフトの中継をも抜き、全米で堂々のトップだ。ABCが久々にメジャーネットワークで首位を得られたのには、この番組のおかげが非常に大きい。そんなお宝番組を、ABCは、半日も経たないうちに、あっさりと切り捨てたのだ。 

番組打ち切りに対する評価が日経の記事と違うのは、従来のアメリカ的に直近四半期毎の売上・利益を追い求める株主やマーケットの視点ではなく、LGBTや#MeTooの広がりに見る世相・社会の空気の変化を捉えた、数字に表れる業績だけでない視聴者からの信頼やブランドなどの無形資産(Intangible)を守ろうとするreputation(評判)を軸にした視点によるものです。 短期的な業績への影響で株価が下落したことを「非」とするのか、それとも視聴者の信頼を裏切らなかったことを「是」とするのか。

今月世間を騒がせた日大アメフト部と重ねて見ると、日本一の栄冠を掴んだフェニックスの立役者である内田前監督やコーチを、問題が発覚した時点で解任していたら、ということになります。

これまでも、過去に起こった企業不祥事では、消費者や被害者を守るよりも先に自己や会社を守ろうとした構図は多くの場合同じです。あるいは義理・人情に厚いと思い違いした会社が、不祥事を起こしていながらその当事者を守ろうとするケースもありました(今回の日大も)。多くの日本企業(特に歴史があるオールドエコノミーに属する)で同様の事が起きた時には、今の日本大学の振る舞いに似たようなことになってしまうのは容易に想像できます。
内向きな視点でしか対応しなかったばかりに、世間の批判を浴びながらマーケットから退場せざるをえなくなった企業が、過去にはたくさんあります。

日本の企業・組織では、まだまだダイバーシティや平等についての理解が浸透していません。保守的で良くも悪くも人を大切にする日本の企業が、身近なしがらみや義理・人情を捨て社会的な視点を持つことができなければ、従来型の不祥事だけでなく、パワハラやセクハラ、人権に関わるような問題が起こった時に適切な対応はできないでしょう。






2018年5月30日水曜日

学部別謝罪文に見る日大16学部の危機に対する感度の差。最も危機感を感じているのは?

日本大学のアメフト部悪質タックル問題は、まだ、被害届けを出された加害選手の捜査は続いていますが、関東学生アメリカンフットボール連盟の処分発表で一つの区切りが見えてきました。
このタイミングを見計らったのか、日本大学の学長は5月29日、Webサイトに「日本大学学長から採用ご担当者の皆さまへ(お願い)」とする文面を掲載しました。
日本大学Webサイトより
実は学長が会見した5月25日までに、「日本大学学長からお詫びとお願い」ならびに日大16学部がそれぞれ学生向けの謝罪文を掲載(一部PDFリンク)していました。

AERAでは、全16学部の謝罪文をまとめて掲載しています。
日本大学16学部の謝罪声明(大学ウェブサイトから)

また、日大全16学部の「謝罪」を検証 多くはマニュアル文面のなか光ったのは「日芸」とする教育ジャーナリスト 小林哲夫氏の分析記事も掲載しています。

ここから見えてくるのは、今回のトラブルに対する学部ごとの感度の違い、危機意識の違いです。定型文をそのまま「流用」して掲載している学部もあれば、学生へ独自のメッセージを発信している藝術学部などもあります。
今回、誰もが注目し、在学生も不安を感じているのが危機管理学部とアメフト部員が多く在籍している文理学部でしょう。

最も危機感が見えるのは文理学部


2016年に開設された危機管理学部にはまだ卒業生もなく、1・2・3年生しか在学していません。今回、日大がまさに危機管理力を問われた一連の対応では、「危機管理学部」の対応も注目されていました。一番不安と不満を感じているはずです。その学生に向けてのメッセージは「危機管理学部は,学生の皆さんを必ず守ります」。大学がアメフト部の学生ではなく、常務理事である内田前監督を守る姿勢をはっきりさせたことで生じた混乱です。危機管理学部としては同じ過ちを犯す訳にはいきません。まずは学生を守る姿勢を明確にすることです。しかし、それ以上に言葉を継ぐと藪蛇にもなりかねないので、シンプルにまとめています。

一方、 文理学部は、まず25日に
文理学部の在学生ならびに保護者、卒業生のみなさまへ
として、文理学部が置かれている状況を説明しながら理解を求めています。
そして、28日には 報道機関の皆さまへ
29日には 就職活動中の学生の皆さまへ
と立て続けに文章を掲載しています。


「私たちは、日本大学アメリカンフットボール部全体が生まれ変わる必要があることを自覚しています」と声明文を発表したアメフト部。苦悩する多くの部員の姿を、学部の教職員や学生も目の当たりにしているはずです。加藤直人アメフト部部長が文理学部長でもある学部の危機感、状況がここからも見て取れます。

マンモス大学として、必ずしも一枚岩になれていない、温度差を感じざるを得ない学部毎の対応。 視野に入れなければならないステークホルダー(利益関与者)を見落としていないか、今一度検証が必要なようです。

結果的に、一番貴重な体験をしているのは、アメフト部の学生達なのかもしれません。この騒動を乗りきり、彼らが社会に出るときには一皮むけ成長した良い漢(おとこ)になっているのではないでしょうか。企業の採用担当者にとっては欲しい人材に育っていることでしょう。




2018年5月25日金曜日

内外から猛批判の日本大学。どう対応すれば良かったのか?

日本大学アメリカンフットボール部員が、関西学院大学との試合中に危険なタックルをしたことに端を発する騒動。私はこれまでこのブログで、ポイントになる記者会見を3回取り上げて書きました。

「危機管理学部」を持つ日本大学、常務理事でもある内田監督のありえない会見

息子を「卑怯者にしたくない」父の愛情が支えた、日大アメフト部員会見

日大の緊急会見は謝罪ではなく弁明会見、思い出すのは「焼肉酒家えびす」の集団食中毒事件の会見

特に23日に開いた前監督・コーチの会見は大きな話題となり、アメフト部だけでなく日本大学そのもののあり方にまで批判の目が向けられるようになりました。アメフト部の部員や父母会だけでなく、教職員組合など学内でもミーティングを開いたり声明文を公表したりと、内部からの突き上げも激しくなっています。

今回の対応はどこで間違ったのでしょうか?どうすれば良かったのでしょうか?現在進行形ではありますが、一度整理したいと思います。

クライシス(危機)であることを認識できない


先ず何と言っても、感度の鈍さです。政治家やオーナー企業のTOPなど、絶大な権力を持った人が率いる組織は客観的な視点を持てず、世の中の変化に付いていけないことが往々に有ります。今回もその典型でした。

2007年に立て続けに発覚したミートホープ事件や赤福、石屋製菓のまき直しなどの食品偽装、2013年秋に一斉に報じられたホテル・レストランの料理メニュー偽装表示(バナエイエビを芝エビなど)などは、それまで「その業界では常識」、見て見ぬふりをするのが当たり前だったことです。しかし世間では「非常識、消費者への裏切り行為」だと認識されるようになっているのにも関わらずそれに気づかず、あるいは無視した結果です。
世間は嘘や偽装に対して厳しい目を持つようになり、今ではそのような行為はSNSなどネットですぐに拡散され、誰もが知ることになります。

今回のアメフトの危険行為も、早くからYouTubeにはアップされ、内田前監督も周囲からそれを報され、関学大からの抗議文が届く前に見ていたというような発言がありました(22日の会見)。恐らくこの動画に対しては、批判や問題視するコメントがあったから見つけた人は内田前監督に報せたのでしょうが、それが問題だとは感じなかった(恐らく今でも)のです。
この時に客観的な視点で動画を見、コメントを受けとめていればすぐに対応できたのでしょうが、そうではありませんでした。結果、関学大からの抗議文に対しても木で鼻をくくったような回答文を返すことになります。

日大アメフト部だけでなく、日本大学そのものも、今になってもクライシス(危機)に対する対応をしているようには見受けられず、この状況を危機とは認識していないのではないかとさえ思えます。日本大学には危機管理学部があり、その道の専門家もいるので、いつでも助言を求めることはできるはずですから。

クライシス対応は初動が全て


それでは今回はどの時点で、どのように対応すれば良かったのでしょうか。
クライシスマネジメントの鉄則は初動を間違えないこと。危機を認識したら事実確認と情報収集に務め、状況を見極めてできるだけ早く動くことです。企業の場合は即座に「緊急対策本部」を立ち上げ、できるだけ高位の役職者(基本はTOP)を本部長として事に当たるのが基本です。

今回、危機であると認識するタイミングは大きく2つありました。
1番目は上記の通り、Netに動画がアップされ、それが非難されていると認識した時点。
2番目は関西学院大学から抗議文が送付されたタイミング(10日あるいは受け取った日)。

1番目のネット動画に気がつきすぐに対応を取っていれば、10日の抗議文の前に対応も可能でした。関西学院大が抗議文作成に着手する前に適切な謝罪に出向いていれば、そこでこの問題は世間を騒がすことなく終っていた可能性があります。ところが、上記の通りそれを危機だと受けとめる感度がないのですから、ここで動かなかったのは当然と言えば当然でしょう。

しかし、抗議文を受け取った時点では否が応でも動かざるをえません。回答書を求められているのですから、適切に対応する必要があります。動画を見れば分かるとおり、明らかに危険なプレーであり被害者は全治3週間のケガを負っているのですから、まず事実を認めて謝罪する必要があります。
普通なら、以下の様な対応となります。

1,非を認め、謝罪と回答文持参(説明)のために、翌日(できれば朝一番)のアポイントを取る
2,事実確認をするとともに、何故このプレーが起きたのか、背景と原因の調査・特定
3,責任の所在を明確にし、必要であれば(被害者が納得できる、できるだけ重い)処分を下す
4,再発防止策を提示する

これは、まだ関学大が記者会見をする前を想定した対応ですが、抗議文を送付すると同時に記者会見を開いた場合には、すぐさま会見を開くか1~3についてコメントを公表します。 4については策定中として、後の公表でも良いでしょう。

必要なことは、できるだけ早期に最大限の謝罪の意を表明し、責任転嫁や言い訳をせず、反省と処分、今後への改善・対策を明確に示すことです。そしてもう一つ重要な事は、身内だけで対応せず、客観的な目を持った第三者を入れて進めることです。そうでないと、どうしても自己保身に向いてしまいます。
宮川選手は、そのとおりのお手本のような会見でした。

永い目で見れば膿を出す良い機会に


上記はあくまでも問題を起こした際の基本的な対応に過ぎませんが、実際には、日大アメフト部は責任を回避することに終始します。さらに、日本大学の組織や体質が背景に有り、責任の所在・本質は別な所にあることが見えてきました。

今回仮に上記の様に初動を誤らず大事に至らなかったとしても、それはテクニックとしてその場をしのいだに過ぎなかったでしょう。
日本大学では、いずれまた同じような事がアメフト部以外でも起こることを予感させてしまう対応であり、組織風土の様に思えます。今回このような大問題になったことで、同じ悲劇を繰り返す可能性を残すよりも、(膿を出し切り改善されれば)今後の事を考えると良かったのかもしれないとも思えてきました。
 




2018年5月24日木曜日

日大の緊急会見は謝罪ではなく弁明会見、思い出すのは「焼肉酒家えびす」の集団食中毒事件の会見



昨日、日大アメフト部内田前監督と井上コーチの緊急記者会見が開かれました。
前日の宮川選手の謝罪会見を受けての対応だろうと思われますが、マスコミに会見のお知らせFAXが届いたのは当日の午後7時過ぎ、受け付けは7時半から、開始は8時からというものです。

あまりに突然の記者会見の開催。しかも、直前に文春砲が炸裂し、内田前監督が試合直後に話した音声データが公開されています。これだけ切迫した案内だと、よほどの重要な内容なのだろうとマスコミ各社は推察したはずです。内田前監督は空港での会見発言を撤回し、全てを認める会見をするのか、あるいは学長が世間に対して謝罪するのかもしれないと思いながら会場に集まったのではないでしょうか。

上から目線の考えられない進行


会場は日本大学会館で、仕切りと司会進行は日大広報部の人のようです。しかし、会見が始まると予想とは違う展開となりました。 会見の一部始終は今朝からテレビのニュースや新聞各紙で紹介されていますし、上に貼り付けた動画(The PAGE)でも最初から最後(コーチの退室)まで確認できますので、発言の詳細や内容へのコメントはここではあえていたしません。

体裁は謝罪のようですが、内容は良い訳、弁明に終始しました。謝罪しているようで謝罪していない。非を認めているようで認めない。結局宮川選手が悪いという主張です。

当然記者からは質問が相次ぎますが、ここに司会が度々割って入ります。ネットでも司会進行に対する書き込みが多数有ったようです。
開始1時間45分過ぎあたりから記者と司会者の激しいやりとりが始まります。マイクを通さず記者から「この会見は、みんな見てますよ」という声に対して、司会者は「見てても見てなくてもいいんですけど。同じ質問を繰り返されたら迷惑です」と返し、記者席からは失笑が漏れます。さらに、「司会者のあなたの発言で、日大のブランドが落ちてしまうかもしれないんですよ」というと「落ちません」と即答し、再び笑いが起きる場面もありました。

会見を見終わると、結局何が語られたのかよく分からず、ただただ司会者(日大)の傲慢さだけが印象に残りました。
この、謝罪しているようで責任を認めない会見は、7年前の 「焼肉酒家えびす」の集団食中毒事件の社長の最初の会見(逆ギレ会見と話題になりました)を思い出します。運営会社「フーズ・フォーラス」はその後倒産し、奇しくも今月13日に賠償請求訴訟の判決が下されています

会見の設定事態が逃げる気満々


そもそも、会見の設定が変でした。24日に再回答書を関西学院大に送る予定でしたから、その回答を送るタイミングで会見しても良いものです。それをあえてせずに、会見開始僅か1時間前にマスコミにFAXを送り、しかもそのFAXには会見場所も記されていなかったようです(フジテレビ「特ダネ」での情報)。 報せはするけど来てくれるなといわんばかりです。

通常、午後8時からの会見というのは余程のことがないと設定しません。政府からの緊急の報せや大きな自然災害に関しての気象庁の会見、それ以外では企業不祥事に関してTOPの謝罪会見くらいです。
なぜなら、午後8時台はテレビのゴールデンタイムで報道番組はありません。報道で取り上げて欲しければ絶対に避ける時間帯です。日中の会見だと、どこかしらの局がライブで放映可能ですが、8時台は急に番組の編成を替えることはできないのでライブ放映するところはありません。実際、会見をライブで流したのはネットメディアだけでした。

会見場では、記者の質問用に用意されたマイクは1本だけで、それも係の人が渡すのではなく、会場の記者が手渡しリレーで送っていたというのです。これではマイクから遠い記者はマイクが動いている合間に発言したくなります。時間稼ぎをして質問をできるだけ少なくし、時間切れを狙ったようにも見えてしまいます。
実際、この会見内容なら、こんなに緊急に設定せず、今日24日の午後で十分でした。

これは明らかにほっかむりをして、時間が経てば他の話題に隠れて忘れ去られるだろうと逃げる作戦です。司会者の「見てても見てなくてもいいんですけど」との発言は見てくれない方がいいんですけど」というのが本音でしょう。

結果としては日本大学構内で、日本大学広報部が仕切った会見でこの有様を世間に晒してしまいました。日本大学は巨人軍の球団公式スポンサーだったようですが、日大に関する広告を外したそうです。日大アメフト部だけでなく、日本大学に対する視線は一層厳しいものになったことは明かです。





2018年5月22日火曜日

息子を「卑怯者にしたくない」父の愛情が支えた、日大アメフト部員会見


関西学院大学とのアメリカンフットボールの試合で、危険なタックルをして関学大QBの選手にケガをさせた日大アメフト部の宮川選手が、本日記者会見を開きました。
加害者である宮川選手の謝罪会見ですが、ここ最近の謝罪会見とは少し様相が異なっていました。

日本記者クラブの異例の対応


会見場は日本記者クラブ。会見の進行役は記者クラブの企画委員である、スポーツニッポン新聞社の方です。
まず、進行役が記者クラブで会見を行うことになった経緯などを説明します。それによると、試合後マスコミの取材を受けてこなかった加害選手の「記者会見を、日本記者クラブで行いたい」との要望が代理人(弁護士)を通じて申し入れられたと言うことです。それに対し、「社会を騒がせている事案であり、真実を知るには本人の説明が不可欠」と判断して申し入れを受けたということが説明されました。
また、記者クラブの取り決めとして「会見時に弁護士の同席は認めないことになっているが、今回については会見者が20歳になったばかりの学生さんであり、今後の(発言による)責任問題などを考慮して、代理人である弁護士の同席を特例として認めた」ことも告げられました。

家族で危機に向き合った姿


続いて、代理人である2名の弁護士(西畠正氏、薬師寺孝亮氏)から、顔出し・本名を隠さず会見に至った経緯と両親の思い、謝罪の意を明確にしたい旨などが話されました。また、「これから長い将来のある若者であり、この先どのような不測の事態が起こるかもわからない、被害を被らないよう」代理人の立場からマスコミに対して配慮を求めました。
その後、 会見の主旨と開くに至った経緯の説明(←マスコミに配付された主旨と経過 参照)がありました。

経緯の説明では、試合の後、宮川選手とそのご両親は、関学大の被害学生に対して、早くから謝罪のために接触を試みようとしていたことがわかります。しかし監督・コーチからは個別に謝罪に出向くことを認めて貰えません。そして15日、日大アメフト部から関学大に対して回答書が送られ、その中では監督・コーチからの指示でタックルをしたことが否定されていました。謝罪もできない上に、このままでは宮川選手が勝手に行動をして怪我をさせたことになりかねない。そこで宮川選手のお父さんが西畠弁護士の元を訪れたということでした。

翌日、両弁護士が宮川選手から詳細な聞き取りを行い(陳述書はこの聞き取りを元に作成されたのでしょう)、同時に関西学院大へ個人的に謝罪に出向きたいと申し入れをしました。その申し入れは受け入れられ、18日に宮川選手と両親で謝罪に出向いています。
この経緯を見ると、宮川選手のお父さんは関学大アメフト部から日大アメフト部に申し入れ書が送られた翌日の11日以降、ずっと仕事を休んで宮川選手につきっきりだったようです。10日以上家族の為にずっと走り回り、家族がひとつになって今回の問題に向き合っていたことがこの会見から伝わってきました。

恐らく記者クラブとも入念に打ちあわせをしたはずです。十分な準備をして臨んだ会見は、宮川選手本人の決意とそれを支えた両親、息子に卑怯者の誹りを向けさせたくないという父(と代理人)の思いが会見場を支配していたように見えました。

記者会見の全容は、上に貼った動画(SankeiNews)と、マスコミ各社の報道でご確認ください。以下は、陳述書の全文を書き起こしたハフポスト記事です。
危険タックルの日大アメフト選手「1プレー目で潰せば出してやる、と言われた」(陳述書全文)

この会見を受けて、24日に予定されている再回答書を含め、日本大学はこれからどのような対応をするのか、日本中が見守ることになります。対応次第では来年の学生募集や卒業生の就職にも影響しかねない重大な局面を迎えそうです。




2018年5月21日月曜日

「危機管理学部」を持つ日本大学、常務理事でもある内田監督のありえない会見


5月6日に行われた日本大学と関西学院大学とのアメリカンフットボール定期戦で、日大の選手がボールを持っていないクォーターバックの選手にタックルをして全治3週間のケガをさせたなど、「意図的で危険」なプレーを繰り返したことに対して抗議文(10日付け)を送付したと、関西学院大学が12日に会見を行いました。
(経緯は朝日新聞の記事「アメフト日大との定期戦取りやめも 関学大が抗議文」などに)

その会見で提供された当該試合のプレー動画は繰り返しテレビの報道番組などで流され批判が高まり、日大の対応に注目が集まっていました。
そして15日、日大からの回答書がアメフト部コーチによって関学大に持参され、それを受けて17日に関学大が再び会見を開きました。
「疑問、疑念を解消できておらず、誠意のある回答とは判断しかねる」との見解を表明し、日大側の24日までの再回答を待つとしました。
日大回答は「疑念を解消できず」 関学大会見 - 毎日新聞ー会見動画有り
日大回答は「疑念を解消できず」 関学大会見

ところが19日(土)、日大の内田監督は、関学大に謝罪と説明に行った帰りという伊丹空港で突然会見を行いました(上の動画)。さらに到着した羽田空港でも再び会見をしました。


危機管理学部はお飾り?


内田監督は、1度目はピンクのネクタイで会見に臨み、関西学院大学を「かんさいがくいんだいがく」と名前を間違えるなど、そもそも会見内容について語る以前の問題です。何も事前準備をしないまま会見に臨んだことは明らかです。羽田空港の2度目の会見ではピンクのネクタイを外し、名前も正しく「かんせいがくいん」としていましたから、移動する機内で指摘されたのでしょう。2度とも内田監督は「全て私の責任」を繰り返すばかりで、何も重要な事は明らかにしていません。日本大学には広報部もあるはずですが、「一人で責任をとれ」と大学から突き放されたのでしょうか。あるいは自分が責任を取るといえば、騒動は収まると思って一人で対応しているのでしょうか。

日大アメフト部の監督である内田正人氏は、日大の常務理事でもあり、報道では大学の実質ナンバー2ということです。今回の騒動は、日大アメフト部のみならず、アメリカンフットボールというスポーツのイメージも日本大学という大学のイメージも同時に大きく毀損しかねないものです。既にマスコミにも大きく取り上げられ、世間の耳目を集める問題に発展している中で、大学としても最優先で対応しなければならない案件のはず。しかも驚くことに、日本大学には「危機管理学部」が設置されています。

危機管理学部」の教授陣は危機管理の専門家であるはずですし、5月12日の関学大の会見を受けて何かしらの行動(事実関係の確認、大学・アメフト部への問い合わせ、危機管理の専門家としての助言)に移っているはずです。少なくとも私なら、すぐに関係者にアプローチして「翌日の5月13日には何かしらの会見かコメントを発表する準備を」、と助言したはずです。しかし、その後の15日の回答書、19日の内田監督の会見ともに危機管理の専門家がサポートした形跡は見受けられません。自分達が所属する大学の危機に際して、何も動かなかったのでしょうか?

今日、タックルを受けた関学大の学生の父親が、警察に被害届けを出したそうです。これからは警察の捜査も始まることになります。
サイトの理事長あいさつでは「日本一教育力のある大学」を目指すという日本大学ですが、今回の対応の仕方次第では、その「教育力」自体にも疑問符が付きかねません。
日大には法学部も有り法律の専門家もたくさんいらっしゃいます。 今後、どのような展開になるかも普通に想定できるはずですから、学内の専門家を総動員して目の前に迫る危機に対処するのでしょう。ある意味、大学の総合力を検証されるような事態になりました。

24日の回答書の再提出、恐らくその提出後に開かれる会見に注目したいと思います。





2018年5月19日土曜日

福岡市は年間300回以上寄港するクルーズ船を観光資源にするべき

大分に出張するときには,もっぱら天神から高速バスを利用しています。バスは長浜から北向きに都市高速に乗り、入ってすぐの分岐を右に進み左手に博多湾を臨みながら暫く東へ進みます。間もなく再び右に進路を変えて南を目指します。
都市高速は高架になっているうえに、乗用車よりも更に視点が高いバスの車窓からはほとんど視線を遮る物なく景色を楽しむ事ができます。天神から高速に入り東進している僅かな時間、マリンメッセの先に大型のクルーズ船が停まっているのをかなりの確率で見ることができます。
5月17日に入港したCOSTA FORTUNA (高速バスの車窓より)
私は子どもの頃船乗りに憧れ、一時商船大学を目指していたことがあります。大学ではヨット部でしたし、海外の港町に行くと、ヨットや帆船だけでなく大きな船を見るのも楽しみです(本当は乗りたいのですが…)。 
ということもあり今では、停泊するクルーズ船を見るのが高速バスに乗る楽しみの一つとなっています。 

博多港は日本一のクルーズ船寄港地


博多港は、訪日クルーズ旅客数とクルーズ船の寄港回数で3年連続日本一です。それ以前、2014年まではずっと「港町横浜」が1位でした。
2017年の訪日クルーズ旅客数とクルーズ船の寄港回数(速報値)

Fukuoka Facts より
今年(平成30年)も福岡港湾空港局のデータ-クルーズ客船入港予定(岸壁予約)-によると314回の寄港が予定されています。回数が314回でそのうち11回は複数泊ですので、1年のうち約330日、ほぼ9割の確率で大型クルーズ船が停泊していることになります。

一昨年でしたか私はある日、大型クルーズ船を近くで見ようと休みの日に車で中央埠頭に向かいました。大博通りを北に走り、福岡サンパレスに突き当たるT字路を右に折れ、国際会議場、マリンメッセを左に見ながら中央埠頭に。しかしなんとその日はクルーズ船の姿はありませんでした。事前にネットで調べて行けば良かったのですが、いつも停泊しているイメージがあったのできっと大丈夫だろうと高をくくって港まで行ってしまいました。
あれだけ巨大なクルーズ船ですから、港まで行かなくても途中で船がいるかいないかはわかりそうだと思う人もいるかもしれません。しかし、博多港の状況だと中央埠頭に巨大なクルーズ船が停泊していても市街地からはもちろん、近くまで行ってもなかなかその姿が見えないのです。巨大なクルーズ船も隔離されたような状態で、市民の目からは遠い存在となっています。

博多は交易で栄えた港町であるはずなのに


福岡・博多は交易で栄えた港町でもあります。現在も大型クルーズ船が日本で一番多く寄港し、全国で10位の水揚げ高を誇る漁港(しかも平成28年の取扱金額は438.79億円で全国主要20漁港中1位)も造船所もあります。長崎や神戸、横浜とならぶ立派な港湾都市のはずです。しかし現在の福岡市は、空港が市街地から近く交通の便が良い商業都市のイメージは有っても港町のイメージはありません。横浜の場合は海岸線に沿って観光地となる赤レンガ倉庫や山下公園などもあり、大桟橋に寄港するクルーズ船も都市景観の一部となっています。クルーズ船が停泊していれば、自然と多くの人の目に入ります。しかし博多港の場合は都市高速からは見えても、陸地側からはマリンメッセや国際会議場、福岡サンパレス、倉庫群、それに都市高速などが視界を遮り、その姿は見えないのです。
福岡コンベンションビューローのサイトでも、福岡市の公式観光サイトよかなびでも、観光地としての「港」が紹介される事はありません。実態として横浜を超える日本一の港町なのに、自らそこに目を向けようとしていません。

クルーズ船のお客ではなく船に目を向ける


数千人(最大定員で5000人弱)を乗せた巨大なクルーズ船が入港すると、乗客は限られた時間で市内観光や買い物に出かけるために一度に多くの大型観光バスが必要になります。場合によってはバスの争奪戦となり、学校の遠足やバスツアーなどでもバスが手配できないという話も聞きます。また、いっせいに同じ目的地に向かうために、駐車場や道路を多くの観光バスが占領するなどの弊害も語られています。 様々な条件が整わないと寄港地として選ばれることはありませんから、寄港を望む港からすれば贅沢な悩みかもしれません。
しかし、船からはき出される人ではなく船に目を向けるとどうでしょう?

日本が誇る豪華客船「飛鳥Ⅱ」の全長は240m。普通の港ならこの船が入港するだけでも話題になります。しかし福岡に入港するクルーズ船は300mを超える巨大な船が珍しくありません。誰もが知っている外洋クルーズ船と言えば「クイーンエリザベス3」(全長294m)ですが、それよりも大きな船が今年もこれから何度も入港する予定です。そんな大きな船が港に入る景色は何処ででも見られるものではありません。

上の写真の「COSTA FORTUNA」の全長は 272.2m。タイタニック号(269.1m)とほぼ同じ全長(総トン数は倍以上)です。このような船が入港するとわかれば、見に行こうという人もいるでしょうし、Insta映えする写真も撮れるでしょう。それなのに、ほとんど注目される事はないのです。なんともったいないことでしょう。せっかくむこうからやって来てくれているのに、です。

中央埠頭に向けた定点カメラを設置して、24時間ライブのネット配信も良いかもしれません(流すだけならコストはほとんどかかりません)。クルーズ船の寄港予定がもっとオープンに(例えば朝のTVやラジオ番組で今日の入港クルーズ船情報を伝えるとか)なれば、クルーズ船の姿を見に行く人、巨大な船の着岸風景を見に行く人、船の多くの人に手を振りに行く人……いろいろな人がクルーズ船に引き寄せられるように港に足を運ぶことでしょう。
対岸の博多埠頭からは毎日クルーズ船の出入りも眺められるということで、ベイサイドプレイスの魅力も増し、訪れる人も増えるのではないでしょうか。

巨大なクルーズ船が停泊している博多港の風景が定着すれば、福岡市の魅力は更に増すはずです。





2018年5月16日水曜日

「フィッシュパス」-同じ時期、ほとんど同じアイデアで先を越されました!

岡山出張から帰りの新幹線さくらの車中、ほとんどトンネルでWimaxが繋がらないのでスマホのYahoo!ニュースをチェックしていました。すると

河川で安全、電子遊漁券広がる ウエアラブル端末で監視

という記事が目にとまりました。福井県のIT企業フィッシュパスが電子遊漁券販売サービスを開発して、販売も好調というニュースです。この記事を見て愕然としました。

釣り人は考える事が同じ?


ヤマメやイワナ、鮎などは河川を管理する漁協が資源保護と環境整備などを行い、そこで釣りをするためには決められた遊漁料を支払わなければなりません。しかしその遊漁券を購入するには様々な障壁があります。特に初めての場所・川で釣りをしようと思うと、その河川を管轄する漁協はどこか、遊漁券はどこで手に入るのかなどの情報を得ることから始めなければならず、しかもほとんどの場合は遊漁券はその地元でしか購入できないのです。実は釣り(flyfishing)が趣味(プライベートなブログ flyとflight日記)の私、3年ほど前からこの記事のフィッシュパスのサービスとほぼ同じアイデア「全国どこからでも24時間、ネットで遊漁券を購入できるシステム」で事業化を考え、 詳細を詰めていました。上記のような問題をを解決し、釣り人にとってのメリットだけでなく漁協にとっても増収と人件費・コスト削減に繋がる提案ができると確信していました。開発背景はまさに「フィッシュパス」と同じです。
忍野(忍草漁業協同組合)の日釣り遊漁券
スマホアプリやバックで動くシステムの要件と同時に、販路についてはJTBさんのPassMeとの連携について「串カツ田中」の全席禁煙ブログでも登場した永江君と条件や課題の確認などもし、ドメインも取得していました。 
そしてちょうど2年前の2016年6月には、事業化に向けたさらに具体的な動きとして、ウミーベの渡辺社長と、さらに全国内水面漁業組合連合会にアポイントを取り「全国どこからでも24時間、ネットで遊漁券を購入できるシステム」構想について説明、協力を求めました。

ウミーベは地元福岡、糸島半島の今宿に本社を置き、釣り情報サイト「ツリホウ」「ツリバカメラ」を運営しています。釣り人(特にスポーツフィッシャーを自認する人)には釣れるポイントを知りたいというニーズだけでなく、自分の釣果を記録したい、自慢したい、見て欲しい…という欲求があります。このニーズに応えるにはより多くの閲覧者が求められます。それにはオリジナルの機能で持つよりもウミーベのサービスを一つのプラットフォームとして連携することで、スタート時から多くの人を対象に釣果の「自慢」と「記録」が可能になり、さらに他の釣り人の釣り場の釣果情報を得ることが可能になります。釣り人の承認欲求はInsta映えを気にする若い女性と同じく、より多くの人に見てもらうことが重要です。もちろん、スタートからより多くの利用者に新しいサービスを知って貰うこともできます。

全国内水面漁業組合連合会は、全国の内水面漁協をとりまとめる組織です。記事のフィッシュパスは地元の漁協と組んで事業化にこぎ着けました。私には地元にタッグを組める漁協のつてもなく、一番足を運ぶ梅野川を管理する津江漁協のUさんも退職して、具体的に相談する先がありませんでした。そこで一足飛びに連合会にアポイントを取ることにしたのです。「全国どこからでも24時間、ネットで遊漁券を購入できるシステム」についての提案をし、全国の内水面漁協にご協力いただき、いっきにサービスを広げたいと思いました。
しかし、結果はだいたいご想像いただけるかと思います。

その後、福岡市美術館リニューアルコンペやmikuの事業譲渡へ向けた準備で手が付かないまま時間が過ぎていましたが、昨年ゼンリングループの友人にこの 「全国どこからでも24時間、ネットで遊漁券を購入できるシステム」の構想を改めて持ちかけ、ゼンリンが持つ地図情報とのマッチングで、まさに「フィッシュパス」で取り入れているGPS機能を活用した遊漁者と遊漁券のマッチングの可能性についても 議論していました。
しかし、既に昨年ほぼ同じサービスがスタートし、しかもこのアイデアは2015年に「福井発! ビジネスプランコンテスト」でグランプリを獲得していたという事実を今頃知ったのです。

川釣りの電子遊漁券、アプリで販売 GPS連動、釣果情報配信も

まさに私が構想をまとめていたときとほぼ同じタイミングで構想され、実現にいたっていました。ショックです。実現に向けた情熱の差でもあったと思います。
これから「フィッシュパス」を全国の内水面漁業共同組合が採用し、ルールを守る釣り人が増え、釣り人が全国の河川に手軽に出かけられるようになればと願うばかりです。
ガンバレ!フィッシュパス






2018年5月14日月曜日

ネットで炎上している「串カツ田中」の「全席禁煙リリース」について:追記有り


串カツ田中 TOPページ
株式会社串カツ田中が、4月12日に発信したNewsリリース

居酒屋チェーンでは初 6月1日(金)から串カツ田中は全店約180店舗で全席禁煙化し、より多くのお客様からのご愛顧を目指します。

は、嫌煙家や小さな子どもを持つファミリーを始め、受動喫煙防止法案が国会で骨抜きにされていく様を忸怩たる思いで見守っていた多くの人に賞賛をもって迎えられました。ネットでは歓迎(もちろん、喫煙者の落胆も)の書き込みが相次ぎました。「子どもを世の中の中心に置いた、住み良く安全な社会を実現する」をテーマに掲げる弊社にとっても、このニュースは嬉しい知らせです。
 リリースには、
現状居酒屋チェーンでは、一部の店舗や首都圏中心に全席禁煙としている店舗が多い中、ほぼ全店で禁煙化するのは居酒屋チェーンでは初(当社調べ)となります。

 と謳っているように、「居酒屋チェーンでは初」としており、他の居酒屋チェーン、ファミリーレストランチェーンの追随も期待されました。
しかし、5月11日に新たに配信されたリリース

6月1日からの禁煙化に関する最新情報

で発表された内容が6月1日を楽しみにしていた串カツファンやファミリーを落胆させることになり、今度はネットが批判の嵐で炎上することになります。立ち飲み店を除く全店で全席禁煙を期待していたのに、フロア分煙の店舗が22店、「喫煙ルームを設置することは現時点では検討しておりません」としていた喫煙ルーム(ブース)設置を検討中の店舗が4店舗とあったからです。

子連れファミリーは3次喫煙まで警戒


フロア分煙や喫煙ブースについては、「喫煙者が隣の席に座ることがないから良いのでは?」と考える人もいますが、いま、世界的には受動喫煙(2次喫煙)だけでなく3次喫煙まで問題にされています。
昨年、受動喫煙防止法案の内容で綱引きが続いている最中、ダイヤモンドオンラインでは

受動喫煙だけでは生ぬるい!新たな懸念「三次喫煙」の深刻性

という記事を掲載し、実験・測定結果をもとに警鐘を鳴らしました。
恐らく串カツ田中とターゲットが重なるであろうマクドナルドも、かつては多くの店舗がフロア分煙でした。当時マクドナルドを利用したことがある人は、禁煙フロアであってもタバコの臭いが漂っていたことを記憶していると思います。フロア分煙はそれぞれのフロアへの導線を別にしない限り、禁煙フロアの意味はほとんど無いことを、多くの人が体験しているのです。

ブライト・ウェイで運営する【こそだて】でも、記事やFacebookページ、Twitterなどを通じて、受動喫煙やタバコの誤飲、さらには3次喫煙に対する注意喚起も行ってきました。
小さな子どもがいるファミリーでは、盆・正月の里帰り時にタバコの誤飲事故や受動喫煙を避けるために、家の中での喫煙をやめるよう事前に両親に連絡をすることも珍しくありません。

リリースは一方的な発信なので、
より慎重さが求められる


前置きが長くなりましたが、今回このブログを書くきっかけとなったのは、かつての同僚で友人、サイトやビジネスモデル構築コンサルタントの永江一石くんからのご指名を受けてのことです。彼はブログで

【5/11さらに燃料追加!!】串カツ田中さん、禁煙で日和って大炎上。

をアップしていますが、今朝Facebookで
串カツ田中は正式に社長名でお詫び文を出すだろうが、文面は「リリースで誤解を生む表現を使ったことをお詫びします」となるだろうが、誤解を生む表現ではない。誤解を狙った表現であったとさらに炎上するから止めた方がいいよ。素直に85%の店舗で完全禁煙にというのに差し替えた方が良い
と、危機管理の専門家の高祖君がブログ書くとバズると思う。ww
とわざわざ私をタグ付けして投稿してくれたのです。という訳で、バズるかどうかは別として整理してみます。

広報活動は、媒体費に多額の費用を伴う代わりに媒体掲載を確実にできる広告宣伝と違って、記事掲載や番組での取り扱いの保証はありません。その代わりにもし話題になり多くのメディアで取り上げてくれると、媒体への掲載費・出稿料金は発生しません。そのためか近年は広報活動に力を入れる企業が増えて来ました。その多くはニュースリリースを発信する程度ですが、「もしどこかが無料で記事掲載してくれれば儲けもん」程度のところがほとんどです。そのため、メディアへ届くニュースリリースの数は年々増えるばかりで、それを受け取る媒体社・記者の負担は増えている現状です。企業も話題作りのためにあれこれと知恵を絞り、新商品・サービスの発表ではタレントさんを登場させたりと、時には本末転倒の発表会も見受けられます。

ニュースリリースは企業からの一方的な発信です。問い合わせ先を入れていますが,余程のことが無い限り受け取ったメディアは基本的にリリースを元に記事原稿をまとめます。近年ではネットでリリース配信するサービスも増え、配信されたリリースはそのままニュースサイトや媒体社のサイトで掲載されます。ですから、「そのまま記事タイトルに使われる」前提でリリースタイトルを付けることが一般的です。サイトのタイトル同様、リリースもタイトルは重要なのです。
一方で企業からの公式な発表文章ですから、嘘やネットでバズることを狙った誇張は御法度です。発表した時点で企業としての責任を負うことになります。(株)串カツ田中はマザーズ上場企業でIRの担当もいるでしょうから、広報のことはある程度わかっていると思われます。業績予想のような未来の話であってもその内容が株価や様々な方面に影響を及ぼすことは良くあることです。今回の「全席禁煙」も業績に大きく影響を与える事案のはずですから、そのまま記事になって誤解を与えるような曖昧な情報をリリースで発信することは避けなければなりません。

4月のリリースは勇み足だった?


4月の串カツ田中のリリースタイトルは、 普通なら「全席禁煙宣言」と受け取られます。居酒屋チェーンで初の取り組みであれば話題性も注目度も高いので、本気で話題にして欲しければ記者会見までいかなくても記者クラブでの説明会(ブリーフィング)くらいしても良さそうです。しかしそれをしなかったのは「全席禁煙宣言」と受けとめられては困る、あるいは曖昧さを残した見切り発車だったのではと思えてしまいます。記者発表や記者クラブでのブリーフィングでは、必ず質疑に答えることになります。記者発表や説明会は事前に開催を告知するので、記者もある程度内容を予想して質問も考え(私の場合)臨みます。それ(質疑応答)を避けたかったのかもしれません。
そうでないのなら、禁煙実施店リストを添付してリリースするべきだったでしょう。リストを付けていたら、リリースタイトルも変わっていたでしょうが。

深読みすると、4月の発表時には全席禁煙実施をするつもりだったのかもしれません。しかし、串カツ田中はFCでの店舗展開です。FCオーナーへの説明・了解をとる前にリリースを出してしまい、一部店舗オーナーが猛抗議をしたことも考えられます。健康志向イメージが強いあのモスバーガーでさえ、いまだに全店禁煙に踏み切れないのと同じことが起きているのでしょう。そういうことが背景にあるのであれば、生活者に対してだけでなく、身内であるFCオーナーをも裏切ったことになります。
注↓下記追記


串カツ田中は北千住にもあり、いつか行ってみようとは思いながら未経験のお店でしたが、今回、永江くんのご指名を受けて改めて調べてみて色々とわかった事(大阪発祥のお店でないことも!)もあります。その過程でこんな記事(5月12・13日配信)を見つけました。

『串カツ田中』は8割が住宅街。なぜ繁華街を選ばないのか?
「借金してよかった」串カツ 田中の社長が語る“不安経営”

このインタビューの中で、「子どもは大事です。10年後には大人になっていて、だいたいの人はお酒を飲みます。成人より客単価は減りますが、将来のことを考えるとそれでいいのです」と社長は答え、インタビュアーのタケ小山氏は「ある意味、子供が一番のターゲットと言っても過言ではないのだ」とまとめています。

串カツ田中が、来店する子どもを大事にするというのであれば、是非最初の宣言通りに「全店、全席禁煙」に向けて社内(FCオーナー)をまとめて欲しいと思いますし、そうでなければ次回の株主総会では株主からの追求は避けられないでしょう。同時に、今回の腰砕けの成り行きに、受動喫煙防止法案に反対していた煙草議連の議員を勢いづかせないかと心配になってしまいます。そういう意味でも、今回のリリースの出し方は後々責めを負うことにもなりそうで心配です。


2018年5月6日日曜日

山口達也のジャニーズ事務所契約解除報道を受けて

楽しみにしていた鉄腕DASHも放送されない(もともと13日が次回放映予定)日曜日、どんよりしながら「世界の果てまでイッテQ!」を見ていたら、再び驚きの「ニュース」が。

ジャニーズ事務所が報道機関向けに文書

を始めとして、報道各社がテレビ・Netで報じました。

各社が報じているFAXの文書は以下の通りです。

 この度の山口達也の事件に際し、被害者とそのご家族の方々には多大なご迷惑をお掛け致しました。誠に申し訳ございませんでした。
 またご負担をお掛けしております仕事関係者の皆様や、報道関係者の皆様、さらに報道をご覧になった多くの皆様にもご心配をお掛けしておりますことを重ねてお詫び申し上げます。
 山口達也の処遇につきましては、5月2日のTOKIOの4人のメンバーの会見において本人からの辞意表明があった旨の説明がございましたが、重ねて6日本日、本人からも直接、弊社に対し強い意思表明がございました。
 それを踏まえ本日、弊社社長とTOKIOリーダー城島茂との協議が行われ、この申し出を受理する決断に至りましたことをご報告申し上げます。
 これにより弊社は、山口達也と契約を解除することとなりますが、事件の社会的な影響や、現在、山口の置かれている状況等に鑑み、彼を育ててきた立場として、社会に責任を果たすために必要な支援を今後も積極的かつ継続的に行って参る所存でございます。
◆経緯について
 弊社では山口達也の処分について、23年間、バンド活動を軸に芸能活動をグループとして行ってきたTOKIOメンバーの意志も尊重すべきとのスタンスを取ってまいりました。メンバーは4月26日の山口の会見によってその詳細を知り、5人での会合を30日に実施いたしましたが、その際に本人からの辞意表明があったこと、結果としてその場で辞意への回答ができなかったことは、話し合いの直後に弊社社長に伝えられておりました。
 弊社と致しましてはTOKIOメンバーの心情に配慮しながらも、社会的影響の大きさから、すみやかに意思決定をすべきとの考えでしたが、本日6日にメンバーの総意として辞表が社長に託され、当人からも別途、社長への直接の意思表明があったことも踏まえ、辞意の受け入れとなりました。
◆契約解除の理由について
 4月26日の会見では、山口が事件への十分な認識と反省をしていないとのご不安を皆様に与える形となってしまいましたが、その後のメンバーとの話し合いの際の「TOKIOを辞めたい」との意思表明は、被害者の方への謝罪の念、引き起こした社会的影響力の大きさを自覚し、責任を取るという本人の強い決意をメンバーがそれぞれに感じており、弊社もそれを確認しております。
 山口は今後、被害者へ誠心誠意、謝罪を重ねることはもちろん、事件の要因となったさまざまな問題を克服すべき状況にあります。一人の人間として再び社会に復帰するためには、本人の強い意志と周囲のサポートが不可欠です。
 そのためには無期限謹慎という曖昧な形ではなく、本人の強い意思でもある辞意を受け入れ、山口が一人の人間として自分と向き合う形をとらせるべきだと決断いたしました。今後も山口をサポートしていく旨は、弊社社長からメンバーの意思を預かるリーダー城島にも伝えられ、今回の選択の最終合意に至りました。
◆今後について
 山口の籍は残りませんが、彼を長年育んできた立場として、彼が健やかな一人の人間としての精神と振る舞いを取り戻し、被害者の方の許しを十分に得た上で、どのような形であれ未来を描けるまで具体的に支援することが弊社の責任と考えます。
 また弊社がTOKIOを大人のグループとして尊重し、意思決定に強く関与させたことについて、さまざまなご批判もいただきましたが、今回の事件での意思決定と責任はすべて弊社にあることは言うまでもありません。
 彼らは会見でも言及した通り「4人のTOKIOが必要とされるのか」という命題を背負い、茨の道を歩むことになります。
 弊社も当然、彼らとそれを分かち合い歩んでいきますが、これまでご理解、ご支援をいただいた皆様におかれましては、彼らの今後の活動へもあたたかいまなざしを注いでいただけましたら幸いです。
 重ね重ね申し上げていることですが、被害者、ならびにご関係者の方々の精神的な負荷がこれ以上大きくなることを防ぐため、報道関係者の皆様には「被害者の方、被害者のご関係者の方、および山口の家族への取材自粛のお願い」をお願い申し上げます。
2018年5月6日
ジャニーズ事務所

今回の決定はジャニーズ事務所にとってはある意味最善の(不都合の無い)選択だと思います。その理由は以下の2点です。

1,クライシス(危機)対応のスタートは、最悪の結果を想定することから始まる

私は、クライアント様からご依頼・ご相談を受けたときには、まず最悪の結果を想定することから始めます。これ以上ないという最悪の結果を想像することで、それを回避するための次善の策、思い切った決断ができると考えてお話しを伺います。
今回の案件で最悪の結果はどういうことだったのでしょうか?色々と考えられますが、その最悪の状況から「より良い結果」を導き出すために、様々なケースを想定して、TOKIOのメンバーもジャニーズ事務所も判断したはずです。先送りすることなくこの週末に結論を出し、この時刻に公表したことは覚悟(と戦略)が感じられます。

2,山口達也さんの間違いだらけの謝罪会見をDELETE

山口達也さんの謝罪会見は、どうみても褒められる会見ではありませんでした。ジャニーズ事務所が敏腕弁護士も付けてサポートしたにもかかわらず、ダメダメの会見でした。
恐らく、ジャニーズ事務所の影響力をもってすれば、記者へのプレッシャーで乗り切れると思っていたのかもしれません。
文春ONLINEでも
TOKIO山口達也の謝罪会見 ジャニーズ幹部との“異常な”やりとり
にあるように、ジャニーズ事務所の各社へのプレッシャーは相当なもののようです。しかし、そうはいきませんでした。

その結果として、山口達也さんのダメダメの会見、それを受けてのTOKIOの会見がマスコミや視聴者・読者の心に響きました。そのギャップの大きさに違和感を感じているファンは多いはずです。3月に事態を知っていながら山口さんにも的確なアドバイスをせず、結果としてTOKIOのメンバーにもNHKの発表後に初めて伝わるという、客観的に見れば事務所の対応ミスです。今後この点についてメディアが追求を始めることは容易に想定できるタイミングでした。
ある意味、過去のミスを無いものにしようとする発表のようにも見えます。

ジャニーズ事務所への風当たりと山口さん、TOKIOの今後を考えると、一番良いタイミングでの発表だったとも考えられますし、逆にあることの発覚を恐れた早い幕引きを狙っての事のようにも見えてしまいます。
明日以降、マスコミ各社・Netではどんな受けとめ方をされた報道になるでしょうか?






2018年5月2日水曜日

TOKIOの謝罪会見で感心した、進行とホテルニューオータニのサービスレベル

今日5月2日14時から、山口達也さんが起こした強制わいせつ行為に関して、TOKIOの4人が謝罪会見を行いました。この会見の様子は民放3社(日本テレビ、TBS、フジテレビ)がLIVEで中継を実施。日本テレビは会見が始まって45分以上CMを入れませんでした。サッカーのハーフタイムと同じです。そのくらい視聴者の関心が高い会見だという判断だったのでしょう。他の局でも同様にCMを何処で入れるか、どのくらい中断するか悩んだことだと思います。普通のタイムテーブルなら、どの局も同じタイミングでCMが入ってくるものですが、おかげで、CMが入ってもチャンネルを変えればそのまま中継を見続けることができました。
中継をずっと見て感心したこと、気がついたことがいくつかありましたので、以下書き出してみたいと思います。

ホテルの対応は流石


まず感心したのは会場のセッティングです。
恐らく、ジャニーズ事務所の指示もあったのでしょうが、終始スムーズで手慣れた進行でした。進行役(事務所スタッフ?プロのMC?)も落ち着き、進行台本もしっかりできている感じでした。これが不慣れなホテルや会議室だと、細かなところで雑な進行になり、そういう部分が全体に雑な、ささくれだった空気を作り出すこともあります。

定刻の14時になるとアナウンスが流れ、TOKIOのメンバーは会場下手のパーティションから会見場に入場しました。扉や入り口からいきなりではなく、パーティションの後ろに一度整列してアナウンスを待っていたのでしょう。そして一人ずつパーティションから登場すると、会場に向かって深く頭を下げテーブルの定位置に付きました。全員が定位置に付くとMCから「これよりフラッシュ・ストロボの撮影はご遠慮ください」とアナウンスされ、フラッシュの点滅は無くなりました。恐らく事前に申し合わせ・確認されていたのでしょう。テレビでの中継・放送を(視聴するファンを考慮し)前提としたジャニーズ事務所らしい配慮です。
まず、城島リーダーが謝罪の挨拶をした後に、メンバー全員で深々と頭を下げ、陳謝の意を表しました。リーダーが最初に頭を上げるまで実に25秒でした。
その後、メンバー一人一人が謝罪のコメントを述べ終わり、質疑応答の時間となります。ここでやっと4人は着席となりました。
この時、ホテルスタッフがスッと4人の後ろに付き着席をアシストし、4人が着席すると再びスッといなくなりました。これは、4人が会見を終えて立ち上がるときにも同様でした。
しかも、立ったときにはすぐに4人は会場に向かって再び深々と頭を下げましたが、その時にはホテルスタッフの姿はありませんでした。
恐らく記者も、テレビで見ていた視聴者も、4人の後ろにホテルスタッフが現れ、アシストしていたことにほとんど気がつかなかったのではないでしょうか。まさに黒子です。
何処のホテルだろうとネットで調べると早速上がっていました。
ホテルニューオータニさん、さすがです。

山口達也さんの前回の謝罪会見も同じくこのホテルだったようです。
しかし、前回の会見は記者に囲まれて、あまり良い仕切りだったとは言えません。ネットを見ると、どうやら弁護士が同席していたようで、仕切りはその弁護士さんだったのでしょうか。

会見を見られる公式チャンネルは無い


「はれのひ」社長の会見ではライブ中継だけでなく、YouTubeや新聞社のサイトでその後も動画がアーカイブされましたので、今でもクリアな画質で会見を見られるチャンネルがあります。しかし今回はジャニーズ事務所メンバーの会見。さすがにテレビ局はじめメディアの公式サイトやチャンネルでは会見の様子はアップされていません。テレビの中継を録画したような非公式な動画ばかりがアップされています。中にはテレビで放送された90分の会見をほぼ全編アップしているものもありますが、ここでリンクを貼ることは控えておきます。
90分の会見ですから、ニュース番組などでは切り取らざるをえません。しかも番組キャスターも質問していますので、各局・番組はその部分を優先して使うでしょう。見る局、番組によって切り取られ放送されるところが変わって来ます。
私はTOKIO(鉄腕DASH)のファンでもあり、仕事柄全編チェックしましたが、ニュースやワイドショーの切り取られた会見ではなく、可能であれば会見を通しで見ていただきたかったと思います。

TOKIOメンバーの彼を思う気持ちが強く伝わってくると同時に、事前準備と会場との入念な打ちあわせが重要であることを感じた会見でもありました。

山口達也さんがその気持ちを受けとめ、甘えることなく強くなって戻ってくるのを1ファンの立場で見守りたいと思います。