2018年5月30日水曜日

学部別謝罪文に見る日大16学部の危機に対する感度の差。最も危機感を感じているのは?

日本大学のアメフト部悪質タックル問題は、まだ、被害届けを出された加害選手の捜査は続いていますが、関東学生アメリカンフットボール連盟の処分発表で一つの区切りが見えてきました。
このタイミングを見計らったのか、日本大学の学長は5月29日、Webサイトに「日本大学学長から採用ご担当者の皆さまへ(お願い)」とする文面を掲載しました。
日本大学Webサイトより
実は学長が会見した5月25日までに、「日本大学学長からお詫びとお願い」ならびに日大16学部がそれぞれ学生向けの謝罪文を掲載(一部PDFリンク)していました。

AERAでは、全16学部の謝罪文をまとめて掲載しています。
日本大学16学部の謝罪声明(大学ウェブサイトから)

また、日大全16学部の「謝罪」を検証 多くはマニュアル文面のなか光ったのは「日芸」とする教育ジャーナリスト 小林哲夫氏の分析記事も掲載しています。

ここから見えてくるのは、今回のトラブルに対する学部ごとの感度の違い、危機意識の違いです。定型文をそのまま「流用」して掲載している学部もあれば、学生へ独自のメッセージを発信している藝術学部などもあります。
今回、誰もが注目し、在学生も不安を感じているのが危機管理学部とアメフト部員が多く在籍している文理学部でしょう。

最も危機感が見えるのは文理学部


2016年に開設された危機管理学部にはまだ卒業生もなく、1・2・3年生しか在学していません。今回、日大がまさに危機管理力を問われた一連の対応では、「危機管理学部」の対応も注目されていました。一番不安と不満を感じているはずです。その学生に向けてのメッセージは「危機管理学部は,学生の皆さんを必ず守ります」。大学がアメフト部の学生ではなく、常務理事である内田前監督を守る姿勢をはっきりさせたことで生じた混乱です。危機管理学部としては同じ過ちを犯す訳にはいきません。まずは学生を守る姿勢を明確にすることです。しかし、それ以上に言葉を継ぐと藪蛇にもなりかねないので、シンプルにまとめています。

一方、 文理学部は、まず25日に
文理学部の在学生ならびに保護者、卒業生のみなさまへ
として、文理学部が置かれている状況を説明しながら理解を求めています。
そして、28日には 報道機関の皆さまへ
29日には 就職活動中の学生の皆さまへ
と立て続けに文章を掲載しています。


「私たちは、日本大学アメリカンフットボール部全体が生まれ変わる必要があることを自覚しています」と声明文を発表したアメフト部。苦悩する多くの部員の姿を、学部の教職員や学生も目の当たりにしているはずです。加藤直人アメフト部部長が文理学部長でもある学部の危機感、状況がここからも見て取れます。

マンモス大学として、必ずしも一枚岩になれていない、温度差を感じざるを得ない学部毎の対応。 視野に入れなければならないステークホルダー(利益関与者)を見落としていないか、今一度検証が必要なようです。

結果的に、一番貴重な体験をしているのは、アメフト部の学生達なのかもしれません。この騒動を乗りきり、彼らが社会に出るときには一皮むけ成長した良い漢(おとこ)になっているのではないでしょうか。企業の採用担当者にとっては欲しい人材に育っていることでしょう。