2018年6月21日木曜日

同質性が強い組織では、社会的視点を無くして権力者に尻尾を振る、問題が見えなくなる

6月15日の受動喫煙対策強化を目指す健康増進法改正案を審議した衆院厚生労働委員会で、参考人として招かれたがん患者が意見を述べている最中に、自民党の穴見陽一議員が「いい加減にしろ!」とヤジを飛ばしていたとして炎上しています。

本業ジョイフルへの影響も?


きっかけは今日のBuzzFeedが報じた
受動喫煙対策を訴える肺がん患者にヤジ 国会議員「いい加減にしろ!」
ネットでは穴見議員に対する批判が巻き起こり、毎日新聞でも
自民議員、がん患者にやじ 受動喫煙巡り衆院厚労委
と、患者団体が反発していることを報じています。

穴見陽一議員は、九州では馴染みのあるファミリーレストランチェーン「ジョイフル」の代表者でもあります。ネットでは、「ジョイフルには二度と行かない」など、ジョイフルボイコットの声まで上がる事態です。

同質集団が抱える潜在的な問題


今日の新聞で、もう一つ目に付いた記事があります。 
経団連、この恐るべき同質集団
この記事によると、経団連の正・副会長は
(1)全員男性で女性ゼロ(2)全員日本人で外国人ゼロ(3)一番若い杉森務副会長(JXTGエネルギー社長)でも62歳。30代、40代はおろか50代もいない。
19人の正副会長全員のだれ一人として転職経験がないのだ。別の言い方をすれば、全員が大学を出て今の会社の門をたたき、細かくみれば曲折があったにせよ、ほぼ順調に出世の階段を上ってきた人物であるということだ。
そして、
日本企業がかつて躍進したのは社員の同質性が高く、それが品質の改良などに威力を発揮したからだ。だが、近年は同質性より異質性が重要になった。異なるモノの見方や経験がぶつかり合うことで、そこにイノベーションが生まれる。
 移民や外国人の活躍する米シリコンバレーの繁栄がその証しであり、逆に同質性を色濃く引きずる日本企業は失速した。

とあります。
話がいきなり経団連に飛んでしまいましたが、穴見議員の発言は今の政府自民党がこのような同質性を求めている現れではないかと思えてくるのです。穴見議員ではなく経営者の穴見陽一氏であれば、現場に出てお客様の顔を見、そこで食事を楽しむファミリーの姿を想像することができるはずなので、このような野次は出なかったかもしれません。

しかし、自民党のほとんどの重鎮議員は愛煙家で、受動喫煙対策強化を望んでいません。自民党議員という立場で衆院厚生労働委員会の場に臨むと、「愛煙家の集まりとしての政府自民党」の一員として上司に尻尾を振るような言動になってしまうのでしょう。これまでも国会や地方議会で不用意な野次を飛ばして問題になる議員がいましたが、「普通の感覚や視点」を忘れて、そこにいる「同質集団の中でのパフォーマンス」を演じてしまうのです。

このような傾向は、企業や行政組織、NPOやNGOなどでもありますし、直近では日本大学アメフト部の問題がまさにここに起因していたと言えます。 同質集団の空気を崩さないばかりか、そこで優れたパフォーマンスを示して認めて貰おうという欲求や圧力が生まれたときに、社会一般の常識や視点を無視してしまうのです。
また逆の例が神戸製鋼や三菱マテリアル、スバルや三菱自動車などデータ改ざんや隠蔽といった、常識的には悪い事だとすぐわかる事でも、その組織では正当化してしまうような空気と歴史を作ってしまうのです。

私が経営課題解決の相談を受けて取りかかるときには、主要なメンバー(企業規模によっては従業員全員)と個別に面談させていただくようにしています。可能であれば全員にアンケート※をとらせていただき、経営者が気づかない課題や問題点をあぶり出すようにしています。
「うちは結束が固い」と信じている組織ほど、外部から見ると根本的な問題を抱えている事は少なくないのです。

※もちろん、面談やアンケートの個別内容を経営や会社へ伝えることはありません。

6月22日

過去(3年半も前)に、今回と全く逆のこと(組織の同質性を崩す存在の必要性)を書いていたのでリンクしておきます。

生番組中での差別発言を、長嶋一茂さんが注意