2017年7月3日月曜日

男性が「産休」を取って育児・家事をする事の意味-パリ取材で見えてきた日本の子育て支援の方向性(3)



日本男性の育休取得率は3%未満で、取っても短期

先日Forbes
という記事に驚きました。日本は、制度的には育児休業取得可能期間(権利)は52週でOECD加盟国中2位の長さだというのです。しかし、実際には育休の取得率は3%にも届きません。しかも、取得してもその期間は1か月未満がほとんどです。52週もの長期間の育休が認められていながらそれをフルに生かそうとすれば、会社でのキャリアを捨てる事にもなりかねないというのが今の日本の現状でしょう。
一方で、ノルウェー10週やスウェーデンの14週はパパクォータ制で、権利ではなく義務(父親が育休を取得しないと母親の育休が削られる)です。ママが育休を取得するなら同様にパパも育休を取得して育児に参加しなさいということなのです。ノルウェーでは100%保育園に入園可能ですが、それは1歳から。0歳児の受け入れは原則ありません。給与の100%が支給される育休期間が49週(58週を選べば80%)あり、0歳児の間は家庭で育てられるという前提があるからです。

フランスでは男性にも有給で2週間の「産休」がある

Hopital Trousseau
ところが、フランスはこれまでの育休という概念とはちょっと違っていました。それは男性も「産休」を取得するというものです。
フランスでは子どもの誕生に際しての男性会社員の有給休暇は3と定められています。日本では、配偶者の出産に際しての休暇は法律で決められたものは有りません。会社毎に慶弔休暇が定められていますが、それさえも取得率は100%ではありません。フランスでは、この3日に加えて更に「子どもの受け入れ及び父親休暇」が11日、合計14日の有給休暇が取得できるのです。厳密に言えば「子どもの受け入れ及び父親休暇」は会社からの給与ではなく国の社会保険からの支払いですが。
日本と違って里帰り出産や出産に際しての親のサポートが期待できないフランス。パートナーが出産のために入院し、出産後退院するまでは男性が病院と自宅の間を行き来します。病院では単なるお見舞い・付き添いではなく、沐浴やオムツかえの仕方、授乳の仕方(フランスは液体ミルクも普及しているので、ミルクの作り方よりも重要)などを、助産師が父親にも指導します。病院からは着替えなどの洗濯物を持ち帰り、主夫もしつつ退院してくるパートナーと我が子を迎え入れる準備もしなければなりません。
Hopital Trousseauの病室 父親は床に
マットレスなどを敷いて寝泊まりする
今回、取材したHopital Trousseau では、希望すれば父親は母子と同じ病室に寝泊まりすることが許されます。とは言ってもベッドがある訳ではなく、部屋の隅にマットレスやシュラフのような簡易寝具を持ち込んで同じ部屋で過ごすのだそうです。それでも多くの新しい父親はそこで生まれたばかりの我が子とパートナーと一緒に退院まで過ごします。
フランスでは会社員はほとんど2週間の「産休」をとっているようです。座談会の参加者のパートナーも皆取っているということでした。参加者の一人のパートナー(IT系企業勤務)にインタビューをさせていただきましたが、「産休」を取るのは当たり前のことで、取得に際して抵抗どころか何も考える事はなかったといいます。仕事も定時に会社を出るのが当たり前で、「30分でも帰宅が遅くなりそうだったら申し訳なさそうに電話をしてくる」と取材した日本人ママが言います。日本では残業は当たり前なので、「30分くらいでわざわざ」とも思うみたいですが、フランス人のパパはそうではないのです。家族や会社に対するベースの価値観、優先順位が全く違う事がわかります。

2週間の産休期間は、基本的に夫婦と子どもだけで過ごします。会社や仕事を言い訳に逃げることもできません。生まれたばかりの赤ちゃんと、産後の体調が万全ではないパートナーとの日々です。頭の中で考えていた子どもや子育てに対する意識も、根本から覆されることになります。家事も子育ても自分の事として過ごす2週間で、「男は父親になる」のです。この2週間を赤ちゃんと一緒に過ごすことで、子ども・家族を自分の一部ともいえる位置づけに置く事になります。
こうして、社会全体が子ども・家族を大切にするのが当たり前となり、誰もが出産・子育てに前向きになれるのでしょう。

フランスの育休取得率は2%

ところで、フランスには日本のような長期の育児休業の制度はないのかというと、ちゃんと28週あります。しかし、育休については取得率は日本同様、僅か2%に留まっています(フランスはどう少子化を克服したか より)。2週間の「産休」の効果と重要性がよく分かる数字ではないでしょうか。日本では各地の首長が育休を取って話題になったりしますが、せいぜい1週間程度。フランスの産休にも及びません。
日本で、真に自分が子の父親であると意識するのはいつでしょう?誰もが子どもの誕生後の早い時期に、「何事にも換えられないかけがえのない子」と意識することができれば、働き方改革もスムーズに進むのではないでしょうか。日本でも男性の「産休」を制度化することを検討して欲しいものです。
その4 保育園とベビーシッターの差が僅かに月1万円
その5 都市インフラ的には子育てに優しいとは言えないパリなのに

子育て先進国と日本との違いを整理してみると 2017

※フランスの男性の産休制度や各種データはフランスはどう少子化を克服したかに詳細に記述されていますので、是非ご一読ください。