自民党配布の失言防止マニュアル |
マニュアルや研修会は有って当然
プロ野球界や角界などスポーツの世界でも、ルールやマナーについては新人に対してはもちろん、年に一回程度の全体での研修会なども実施しています。ファーストフードやスーパー、コンビニなどのサービス業では、教育マニュアルを整備し、新入社員やアルバイトには導入研修などをして現場に送り込みます。社内ルールや就業規則などを記した従業員手帖を配布し、就業中は携行させるところもあります。そこまでしても、バイトテロやSNSへの不適切な投稿は無くなりません。
業界ごとに必要なスキルや注意すべき事は変わってきますし、マニュアルに求められる内容も変わります。今回自民党で配布されたマニュアルは、言葉を武器にする政治家にとっては極めて基本的なこと。確かに、地方議員や首長を経て国会議員になった議員も多く、政治家としてはベテランの人も多いでしょう。しかし、過去にも多くの議員が失言で失脚や辞職しているのですから、このようなマニュアルは当然整備され配布されている、もっと言えば毎年改訂されながら更新されているべき物です。
今まで作っていなかった方が不思議なくらいの物ですから、「今更」でも作った自民党は(何もしない他の政党よりも)まだ危機感があるということでしょう。
会見の際には参考になる
政治家にとっての失言マニュアルですが、企業の記者会見、特に謝罪会見をするような際にも参考になります。マニュアルのタイトルも「失言」や「誤解」を防ぐには。報道された画像などから一部をそのまま抜き出してみます。
発言は「切り取られる」事を意識する
報道各社は、放送の尺や記事の文字数など限られた条件の中で取材内容をまとめます。当然、政治家の演説会等での発言や映像を「丸ごと」発信することは、ほぼありません。確実に一部が切り取られ報道されます。わかっているつもりでも、意外と忘れているこのポイント、改めて意識しましょう。
報道内容を決めるのは目の前の記者ではない
日夜、政治家の動向や発言を追う報道記者。しかし、彼らの取材内容がそのまま報道されるわけではなく、「編集」という作業が社内で加えられます。これは、取材内容を各社の方針に沿ってまとめたり、記事が多くの読者の目に触れるようにインパクトをつけたりする作業で、現場記者とは別の担当が行っています。ですから目の前の記者を邪険に扱うようなことはせず、自らの発言に注意しながら、丁寧に対応しましょう。また、親しい記者の取材も注意が必要です。説明を端折ったり、言葉遣いが荒くなったりしないよう心がけましょう。
これまでもこのブログでも取り上げたり、メディアトレーニングセミナーなどでお伝えしてきましたが、サウンドバイト(SOUND BITE 耳に強く印象に残る言葉)とクォータブルコメント( QUOTABLE COMMENT 引用できるコメント)を取られないようにと注意しています。
また、親しい記者との会話や取材前後の雑談でも気をつけなければなりません。猪瀬東京都知事(当時)も取材後の雑談での発言を記事にされて謝罪しています。 名前は出せませんが、過去には旧知の社長が親しい新聞記者と食事をし、信用をして「ここだけの話」をしたら翌日には記事になり、激怒して私に相談(というよりも愚痴ですね)にこられたこともあります。話を聞くと事実であり否定もできない事でした。記者としては自分にだけの「リーク」だと受け取ったのでしょう。
失言マニュアルに話を戻します。後半には「リスクを軽減する3つの対策」があげてありますが、この中でも最後の
対策③「弱者」や「被害者」に触れる際は一層の配慮を
は、謝罪会見でも重要です。 自分(自社)は悪くないという主張が中心となり、被害者や消費者への配慮が欠けた発言で荒れた会見や炎上もたくさんありました。
今回の自民党の「失言防止マニュアル」を参考に、社内に潜むリスクを洗い出し、「●●防止マニュアル」の作成に取りかかってはいかがでしょうか?