2019年5月21日火曜日

実態はデフレで消費税率上げを心待ちか?外食産業

今週、GDPの速報値が公表され、年率換算で+2.1%の伸びという数字に多くの人は違和感を持ったはずです。報道でも、実態はマイナスで輸出と輸入の差(輸入が減った)が影響したためと分析していました。

ここのところ、原材料費の価格上昇と人件費や物流コストの上昇などで、いろいろな物の価格が少しずつ上がっています。身近なところではQBハウスのカット料金が1080円から1200円に、元祖長浜屋はラーメン500円を550円に、しかも替え玉が100円から200円( しかし、替え玉の200円はさすがにインパクトが大きかったのか、直ぐに150円に改訂)!
スーパーでも、定番商品の販売価格が少しずつ上がっています。

実質賃金は横ばいなのに


しかし、物価は上がっても所得水準は上がっていません。

毎月勤労統計調査 平成31年3月分結果速報から実質賃金指数推移を抜き出すと、左の表になります。
平成27年からずっと横ばいで実質賃金は増えていません。そこに来ての物価上昇です。
収入は増えないのにいろいろな物の値段が上がれば、限られた財布でやりくりするためには量(回数)を減らすか、単価の低い物を選択せざるを得ません。
子育て中のファミリーには車は必需品。ガソリン価格も上昇し、それだけでも大きなダメージです。それに加えて数のインパクトが大きくなり、ファミリーでは少しの値上げも単身者以上に財布に響いてきます。ファミリーレストランで単価が50円上がれば×人数分の支出増です。外食はファミリーにとっては楽しみでもありますが、財布の事を考えるとお店選び・メニュー選びも慎重になります。

サラリーマンの昼食代は570円


サラリーマンの毎日の昼食代もこの10年ほどはほとんど横ばいです。今回もガベージニュースさんが新生銀行発表のデータをグラフ化してあったのでお借りしますが、ここ数年は1食570円といったところです。まさに元祖長浜屋のラーメン1杯分。替え玉は諦めざるを得ません。

外食大手で最近値上げをした大戸屋は、ここのところ対前年割れが続いています。今期の業績予想はバイトテロの影響でマイナスと発表していますが、その影響よりも2018年の値上げに続きこのタイミングでの更なる値上げとメニューの価格設定のミスの方が大きいと考えます。特に、コスパも良く人気だった「大戸屋ランチ」(税込720円)がメニューから無くなったことはネットでも話題になり、値上げの印象を強くしています。
いきなり!ステーキも、単価を上げた(この5年で1グラムあたり2円程度)結果か、業績が悪化しているようです。
収入も上がらない、小遣いも上がらないのに生活費だけが上がっていくと、自由に使えるお金の使い道が慎重になります。無駄な支出を控えるようになり、価格に敏感になります。ちょうど10年前のリーマンショック後に値下げ競争に走った牛丼戦争を思い出しますが、今回は各社とも値下げには踏み切れません。むしろ、値上げしたいところをじっと我慢して耐えているという状況でしょう。

消費税上げのタイミングで価格改定?


今このタイミングで価格改定を発表すると、「値上げ」の印象が強くなり、お客様の足が遠のく心配もあります。 しかし、全国一斉に消費税が上がるタイミングでメニューや価格を改定すれば、ある意味どさくさに紛れて値上げができます。価格表示を税別から税込み価格(あるいはその逆)に変更すればなおさら分かりづらくなります。
ファーストフード、ファミリーレストラン、居酒屋や町の食堂まで、外食産業は消費税増税を心待ちにしているように感じます。消費税増税を待ち望んでいるのは、政府・財務省よりも外食産業なのではと思うのは考えすぎでしょうか?しかし、消費する側は収入が増えないので、消費税が上がった分だけ更に節約することになり、そこからまた激しい競争になるのですが。