2019年10月16日水曜日

災害の度に話題になるハザードマップ、正しくチェックしていますか?

福岡市中央区の浸水ハザードマップ

台風19号では全国の広範囲で甚大な被害が出ています。特に大雨による河川の増水・氾濫による被害は大きく、10月16日時点で、全国55河川76カ所の堤防決壊が確認されています。山間の渓流や支流だけでなく、過去にも何度も氾濫をし、十分な対策を取ってきたと思われる千曲川や阿武隈川、多摩川などの一級河川でも今回被害が出ています。荒川が氾濫していれば首都機能も混乱して、災害復旧はもっと困難になっていたことでしょう。

台風19号が九州を直撃していれば…


福岡市では、1999年と2003年に大雨で御笠川が氾濫し、博多駅周辺が冠水して死者を出すなど大きな被害が出ました。当時の雨量は時間雨量で80mm~100mm、累計360mm程度でした。その後福岡市は河川の改良工事を進め、雨水を素早く排水するために排水溝を大型に改良するとともに、地上や地下に雨水を一時的に溜める施設を作るなど多くの対策を講じてきました。その甲斐あってか、昨年の大雨特別警報が出た際にもなんとか大きな被害を出さずに済んだようです。

今回の台風19号や近年各地で水害を引き起こす雨量は1時間100mmを越え、24時間雨量が1000mmを超えたところもあります。地球温暖化の影響で過去のデータが通用しなくなってきています。福岡市の水害対策は主に局地的な都市型の対策で、地表に落ちる雨を早く排出する、あるいは逃がす対応です。しかし、今回の台風19号のように広範囲で大雨が降ると、上流で降った大量の雨を受け入れた主要河川の水量のコントロールはできません。過去のデータをもとに「これなら大丈夫」という事が通用しなくなっているのです。台風19号が九州を縦断していれば、那珂川や御笠川、室見川などが氾濫していてもおかしくありません。

ハザードマップをチェックすると!?


台風19号の水害でも、過去では鬼怒川の堤防決壊や九州北部豪雨・西日本豪雨などの大雨による水害や土砂崩れなどで大きな被害が出ると必ず引き合いに出されるのが「ハザードマップ」です。災害が発生した場所は、いずれもハザードマップで危険性を指摘されていた場所だからです。
今回千曲川の氾濫で被害に遭った長野市の新幹線車両基地も、ハザードマップでは10m上の浸水が予想されるとなっていた場所だそうです。

みなさんはハザードマップで自分の住んでいる場所や職場周辺の危険度を正しくチェックしていますか?例として福岡市周辺のハザードマップをチェックしてみましょう。

まず、福岡市の場合は、市のウェブサイトからダウンロードできる「福岡市浸水ハザードマップ」があります。「区」別に用意されたpdfから中央区を開くと、事務所がある今泉近辺は浸水時に1m~2mに達すると想定されるピンク色に塗られています。
この前提は、「那珂川が、おおむね100年に1回程度起こる大雨(24時間総雨量328mm)によりはん濫した場合および樋井川が、おおむね70年に1回程度起こる大雨(12時間総雨量256mm)により、はん濫した場合想定される浸水」とあります。台風19号が直撃していればこの想定雨量を大きく上回ったでしょう。
福岡市博多区の浸水ハザードマップ
福岡県の御笠川水系洪水浸水想定区域図

















もう一つ福岡県が公開しているハザードマップがあります。
福岡県管理河川の洪水浸水想定区域図について
こちらは行政区別ではなく水系別です。福岡市の博多区を中心に流れる御笠川水系のハザードマップを見ると、浸水予想地域は福岡市のそれとは随分違います。それもそのはず、前提となる降水量が市のそれとはかけ離れています。市の想定は24時間総雨量が御笠川325mm、那珂川328mm、多々良川水系339mmにより氾濫としています。対して県の想定では流域全域に24時間で966mmと市の3倍の降雨量が設定されています。台風19号の豪雨はまさにこの降雨量でしょう。
県のサイトには「想定最大規模降雨による洪水浸水想定区域の公表」とあります。しかし、この勢いで大雨が続くと今後「想定最大規模降雨」は更に引き上げられる可能性があります。

市のハザードマップだけチェックして安心していると、実は県や他のハザードマップでは浸水地域になっていたと言うことは十分にありえます。何事もその前提や条件を必ず確認することです。水害始め自然災害の備えだけでなく、これから工場建設用地を取得したり社屋を建設するような際には、一つの情報に偏ることなく、複数の情報源から正しい情報を集めて最適な場所を選び、災害にも備えたいものです。