2019年1月14日月曜日

前澤社長のお年玉企画で考える、企業のSNS活用

前澤友作社長のTwitterアカウントの画面より
ZOZOTOWNを運営する株式会社ZOZOの前澤友作社長が、100万円を100人に(1億円)プレゼントするというTwitterでのお年玉企画を実施し、話題になりました。前澤社長をフォローしたうえでそのtweetをretweet(RT)することがプレゼントへの応募条件ということで、あっという間に前澤社長のフォロワー数は542万人、RT数は526万を超え世界最高記録を塗り替えたといいます。

1億円を遙かに上回る広告効果


TwitterやFacebook、InstagramなどのSNSは個人のコミュニケーションツールとしてだけでなく、導入コストがかからず手軽に始められる広報ツールとしてアカウントを取得する企業も増えています。しかし、アカウントを取得して始めるのは簡単でも、フォロワーを増やすことは容易ではありません。広報ツールとして活用するには、より多くのフォロワーを獲得し多くの人に発信できなければ意味がないのですから。その上でシェアやRTされる投稿をし、より多くの人とコミュニケーションを目指さなければなりません。

フォロワー1人がだいたい100円の価値(獲得コスト)と言われています。前澤社長のフォロワー数が今回のお年玉企画で300万人増えたとしたら、3億円の価値があったともいえますし、526万回のRTとそれを取り上げるマスコミでの露出を考慮すれば、その広告効果は1億円を遙かに上回っているでしょう。RTした人は少なくとも、なぜ前澤社長がお年玉企画を実施したのかー「ZOZOTOWN新春セールが史上最速で取扱高100億円を突破」したことを記念してーということを知ったわけです。
普通の企業なら、広報からニュースリリースを流すところですが、1月5日は土曜日でしかもお正月休みの最中。タイミング的には最悪です。ニュースリリースを出したところで大きな話題にはなりません。それに比べればとてつもない話題提供です。
普段はアパレル業界に関心もなく、ネットで服を買う習慣がない私は、TwitterにRTで流れてきたこのtweetとそれを伝えるニュースで、たったの5日間足らずで100億円を売り上げるZOZOTOWNはやっぱり凄いんだな、と単純に驚きました。

単なる話題作りだけではなかった


1月8日に発表された100名の当選者は、なんらかの夢を叶える資金や社会貢献に使いたいと具体的にコメントして応募した人たちだったことにまた驚きました(「応募方法はRTするだけ」と書いていたのに抽選ではなかったことに批判も出ていますが)。一人一人の当選通知のメッセージに、その夢についてのコメントも添えられていたというのです。自分に代わってお金を有効に使って欲しいという思いと願いが込められています。単なる話題作りに終わらせず、エンジェル的なある種の投資行為ともいえます。お金を受け取った人は前澤氏に感謝するとともに、世間が注視する中でそのお金を使うことになるのでプレッシャーも大きいでしょう。無駄遣いはできません。ひょっとしたら、この1億円がきっかけで多くの人を救ったり、幸せにすることになるのかもしれません。
今回のお年玉企画は、前澤氏がお金をより有効に使うために周到に考えられた実験だったのかもしれないとさえ思えてきました。

企業アカウントでの企画だったら?


しかし、前澤社長のお年玉は、個人のアカウントで個人のお金を使った企画です。会社やブランドとしての公式な企画ではありません。
それでは、ZOZOTOWNの公式アカウントで実施していたらどうでしょう?49万人というフォロワー(これも凄い)を抱えるZOZOTOWNですが、ここまでの話題にはならなかったでしょう。その前に、1億円のプレゼント企画を誰が提案して実施にまでこぎつけるか。普通の企業では簡単なことではありません。実施する意味であったり費用対効果であったり、いろんなハードルが待ち構えています。発案者が誰、あるいはどの部署かによっても違うでしょう。意思決定と準備に相当な時間とエネルギーも必要ですから、新春セールを企画する段階でお年玉企画もスタートさせなければなりません。ZOZOが若くて柔軟な会社であることを割り引いても、会社としての実施はなかったと思います。
  

企業アカウントのフォロワーを増やすには


企業アカウントのフォロワーを増やすには、かつてはプレゼントキャンペーンなどで獲得する方法が一般的でした。しかし、そのような方法で獲得したフォロワーは、キャンペーンが終わるとすぐにフォローを外す人が大半です。前澤社長のフォロワーも当選発表後は減っているのではないでしょうか。

アカウントは偽物やなりすましの可能性もあるので、ユーザーが誰かをフォローするときには、TwitterでもFacebookでもプロフィールをまず確認します。企業アカウントのSNSは、目的を持って運用されるはずです。アカウントのプロフィールではその目的が何であるか、どんな情報を発信していくのかを明確にする必要があり、フォローしたくなるようなプロフィールでなければなりません。
その上で、誰にどんな情報を発信していくか、ほかのアカウントとどう差別化するか(キャラクターを立てて発信するなども一例)、フォロワーにとってどんな価値を提供するのかを考えて運用します。
他の人にも知らせたいと思えるような、役に立つ、あるいは面白いなどの発信が支持されればリツィートやシェアも増え、フォローにつながるはずです。
ただ漫然と発信するだけではフォローに結びつくことはなく、担当者もただただ空しい思いをすることになってしまいます。Facebookならインサイト、Twitterならanalyticsなどで分析しながら改善していくようにしましょう。