2017年10月13日金曜日

希望の党の失速は都民ファースト(都議会選)と何が違ったのか?小池氏の誤算はどこに?

衆院選でいきなり台風の目となった希望の党。しかし、当初の勢いがここに来て急に失速した感が有ります。何が起こっているのでしょう?まだ選挙戦は序盤ですが、メッセージを受け取る有権者の立場で、コミュニケーションの構図から検証してみたいと思います。

都議選の再現を想像させるスタート


9月25日、上野動物園の子パンダの名前を発表したその直後、小池都知事は記者会見を開き「希望の党」の立ち上げと、自らが代表に就任することを表明しました。そして同時に希望の党の公式YouTube動画も公開。
報道によると「希望の党」は、既に2月に商標出願されていたということです。特許情報プラットフォームで検索すると、2月20日に小池百合子の名前で出願され、9月1日に登録されています。
これだけでも「希望の党」はいつかはやってくる衆院選に向け用意周到に準備され、発表のタイミングを謀っていたことがわかります。

記者会見は同日、安倍総理が衆院解散に向けた記者会見をするという直前、絶妙のタイミング。昨年の都知事選、7月の都議会選で圧勝をしたその勢いのままに「希望の党」旋風が吹き荒れるのかと誰もが思いました。
その勢いに飲まれまいと離党ドミノも懸念した民進党前原代表は、希望の党との合流を決意します。この合流により、希望の党は野党第1党の民進党前職議員から多数の候補を擁立することが可能となりました。若狭氏が立ち上げた勉強会や小池氏の勉強会から選抜した候補者と合わせれば、単独過半数以上の候補者を立てることができ、都議会選の勢いを振り返ると、ひょっとすると衆院単独過半数もありかも?という報道も出始めました。ところが、この時点で小池氏は自らの出馬は否定します。

敵役が見えなくなった


しかし、この勢いが希望の党に慢心を産み、失速に繋がる事になります。
民進党の立候補予定者全員の公認を求める前原氏に対し、小池氏は記者団に「全員を受け入れることはさらさらない」と強い表現で言い切りました。沈みかけている船の乗組員が助けを求めている時に、「助けてやるかどうかは私が決めること」と言い放ったに等しいインパクトです。
この発言は、本来政府与党と対決するはずの構図とは別の構図を有権者・国民の脳内に作ってしまったと私は思っています。それは、独裁者小池氏とそれに続く民進党を離党して合流した細野氏や小池氏が言うところのチャーターメンバー、そして民進党の遅れて合流した者との上下関係。
その後、枝野氏他のリベラル派は分離独立して立憲民主党を立ち上げ、希望の党はかつての盟友である立憲民主党の候補者にも対立候補を立てることになりました。
小池氏が女性初の総理を目指しているということは、自民党時代から良く知られることです。今回の衆院選で単独過半数、あるいは第一党獲得が視野に入った途端、打倒安倍政権から自らが総理に(希望の党の議席数最優先)という野望に切り替わってしまったのでしょうか。

都知事選、都議会選挙で大勝できたのは、明確な敵役を設定したことで劇場型の選挙に持ち込めたからです。しかし、この衆院選では、途中から希望の党の敵役の設定が曖昧になってしまい、観客(有権者)にとってヒーローとヒールが わからなくなってしまっています。日本人は判官贔屓です。希望の党から合流を拒否され民進党から独立した立憲民主党や、無所属で出馬する野田前首相などが判官(九郎判官源義経)側になってしまい、今度は希望の党が悪役にも見られています。
このいやな流れを再び変えることができるとしたら、小池氏の出馬でしょうが、小池氏は再び否定。しかも「最初から日本語で言っています」と、感情的ともとれる言い方をします。

主役がいなくなり、これからのストーリーは?


そして、10月10日の公示日、小池氏出馬のサプライズで希望の党が再び勢いづくのかと思いきや、結局それはないままに選挙戦がスタート。
この結果、希望の党は小池氏が応援演説に立つものの立候補はしていない、投票用紙に名前が書けないという煮え切らない立ち位置になってしまいました。今回、比例で「小池新党」と書いたら有効なのでしょうか?
いずれにしても、小池氏が当初想定していたストーリーとは大きくずれてしまったことは間違いないでしょう。本来なら、YouTubeのイメージビデオのように、古い体質の政党やしがらみを打ち倒して颯爽と前に進む主役を演じる小池氏を誰もが想像していたはずです。しかし、選挙戦がスタートすると主役はいなくなっていました。いつの間にか台本から外れて、即興劇に移行したようなものです。

これでは、観客(有権者)は誰に感情移入すれば良いのか?最後まで誰が味方で誰が敵かわからないサスペンスドラマを見せられているようなものです。こうなると、プレゼンで当初計画していたパフォーマンスは望むべくもありません。
果たして映画のような大どんでん返し、ハッピーエンド(誰にとって?)で終われるでしょうか?