2017年2月21日火曜日

里帰り出産のデータ提供をきっかけに考えてみました

フジテレビ朝の番組「ノンストップ!」、2月3日放送の回に、mikuの読者アンケートのデータが使われました。テーマは「里帰り出産」。残念ながら福岡では放送されていない(TNCは福岡ローカル「ももち浜ストア」を放送) ため見られませんでしたが。

使われたデータは、2002年と2016年の里帰り出産の割合の変化。2002年アンケート(こそだて)の時には、63.2%が里帰り出産していたのに対し、2016年のmiku読者アンケートでは55.9%にまで減ったというもの。番組としては親子の関係のあり方の変化などを背景に伝えたいという企画意図のようでした(結局、番組を見ていないのでどういう構成だったかは不明です)が、その背景にあるものはもっと別な気がしますので、ここで自分なりに整理したいと思います。

地方で分娩可能な病院が減少


まず、産科の減少です。

2004年12月、帝王切開手術を受けた妊婦が亡くなり、医療ミスとして医師が業務上過失致死と医師法違反の容疑で逮捕されました(後に無罪判決)。2006年には分娩時に起こった脳内出血による意識不明を子癇と誤り、救急車でたらい回しにされた末に亡くなるという出来事も有りました。この2つの出来事以来、訴訟リスクを恐れて産科を閉鎖する医院が続出、産科希望の若手医師も激減するに至りました。このような背景から2009年1月に「産科医療補償制度」がスタートしました(ここでは制度の詳細は割愛します)が、分娩可能な個人経営の産科はどんどん減少しています。

分娩施設数の推移(周産期医療体制の現状についてより)
厚生労働省がまとめた「周産期医療体制の現状について」を見ると、分娩施設が都市部に集中していることがよくわかります。出産可能な病院は都市部の大学病院や総合病院に限られる県もあります。分娩施設数が少ない都道府県だと、そもそも実家に帰っても近くに分娩できる施設がない、あるいはキャパシティの問題で受け入れられないということもありえます。

加えて、 共働きで女性も出産直前まで働く傾向にあり、余裕を持って里帰りをするのも難しくなっていることもあるでしょう。予定より早く産気づいて、里帰りできないまま出産ということもあるかもしれません。早産だけでなく低体重出生児の割合も増えています。妊婦健診の段階で赤ちゃんの状況がわかり、かかりつけの産院(あるいは高度医療対応施設)でないと不安ということもあるかもしれません。
里帰り出産をしたくても、様々な要因で分娩を受け入れてくれる産院が見つからなければ里帰りもできないのです。

父親の意識に変化も


最近は父親になる夫の立ち会い出産を希望される事も多くなりました。我が子の出産に立ち会うんだ!出産シーンをビデオに収めるんだ!と意気込む男性も増えているようです。その場合、里帰り出産で遠方だと、タイミングを見越して会社を休むなど克服しなければならない別な壁が立ちはだかります。旅行と違ってあらかじめスケジュールがきっちりと決められるものではないからです。
そうすると、立ち会い出産を希望するとやはり近くの病院でということになってしまいます。
我が子への愛情、夫婦の絆が強いということは良い事です。2016年のアンケート結果でも、「夫のサポート」の数字が高くなっています。出産/育児は夫婦で行うものだという意識が男性にも定着してきていると言って良いでしょう。
里帰りでなくても、実家の親が手伝いに出てきてくれる事も増えています。ちょうど私の世代が孫が生まれるくらいですから、元気いっぱいです。ちょっとした旅行気分で出産の手伝いに都会に出てくるくらいのことは苦でもないでしょう。


保育園の待機児童問題もあり、出産後に長期間の里帰りで体を休めるという訳にもいかなくなっています。

出産や育児が負担にならない社会にしなくてはなりません。