第1回のペヤングの異物混入の際には、まるか食品は記者会見を行いませんでした。そのため、ネット上には虫の姿が見える写真ばかりが拡散されています。しかし、日本マクドナルドでは、都度記者会見を開いて謝罪および説明を行っているために、その会見時の動画が多数アップされています。第2回目は、記者会見の動画を題材に議論を進めました。
併せて、上場企業のため、決算資料や売上推移などのIR情報もWEB上で公開しています。それらのデータと一般社団法人日本フードサービス協会が公開している外食産業動向のデータとを比較しながら、問題の本質を探りました。
●業績悪化は、事件前から既に始まっていた
まず、この1年の全体的な振り返りの後、売上推移、株価の推移などと重ねながら、事故の影響を考えました。メディアでは「中国工場の事件の影響で」と枕がつくことが多いのですが、これらを見ると、業績悪化の傾向はそれ以前に既に見て取れます。業績が悪化しているところに事件が起きて、更に客離れを加速させたと見る方が自然なようです。むしろ、株主に対しては業績悪化の理由は中ではなく外にあったと説明できる,良い材料になったとも言えます。
続いて、記者会見の動画を見ながらの討議。特に、通常のニュース番組では記者会見が行われたことは伝えても、その後の質疑応答の内容まで伝えることはありません(新聞ではたまにありますが)。
特に、ニコニコ動画で生中継される記者会見は動画(中継)を生で見ている人がその場で様々な事をTwitterのようにつぶやき投稿しますので、会見での発言がどう受け止められているのかがリアルタイムでわかります。1月7日の謝罪会見は、視聴者の数が9万人を超えていて、記者の質問内容にまで鋭い突っ込みをいれるコメントが、たくさん画面を流れています。ニコニコ動画の視聴者にとっては、記者の質問さえも評価・批判の対象になり、時として会見者よりもネット上で実名で非難されることにもなるのです。
●サラ・カサノバ社長が7月にきちんと謝罪をしていれば
私も、アメリカの企業を始め外資系企業の日本法人のクライアント様とお仕事をさせていただくことがありますが、長期的な視点よりも今期の数字を重視する傾向があります。特にアメリカの企業の場合は四半期毎の数字を重視した議論になります。そして、よく言われる訴訟社会のために、「謝罪=非を認めた」事になるという意識が強く、事件や事故後の会見でも謝罪から入ることを拒む傾向があります。2006年、シンドラーエレベータ社のエレベーター事故の記者会見の際にも、ケン・スミス社長は謝罪をしなかったことから多くの批判を浴びました(後に引責辞任)。
※勉強会ではこの動画(↑)は見ていません。全部で1時間半(うち、質疑応答が後半1時間)の会見全録です。「騙された」発言は、質疑応答の一番最後の質問、「カサノバ社長は被害者だという認識なのでしょうか」との問いに対してのものでした。この会見の最後の3分で言質を取られたことになります。
最後の最後で、クォータブル(引用)コメント (QUOTABLE COMMENT)を与えることになってしまったのでした。猪瀬前知事の不適切発言も、席を立とうとしたときの最後の質問に対して出た言葉でした。
今年、1月7日の異物混入の記者会見でも、カサノバ社長は海外からの帰国途中ということで出席しませんでした。結局、混入していた「青い異物」も「歯」も、何処でどうして混入したのかはわからないまま(分析の結果は、工場や店舗での製造時に混入した可能性は限りなく低い)となりました。単なる愉快犯だった可能性もあります。それだけに初動の対応の誤りが風評被害を拡大する結果となったと言えます。
2月の決算発表では、7月の時とは別人のようなカサノバ社長の会見でした。ヘアスタイルも服装も、メガネさえも変えて臨んでいます。冒頭、深く頭を下げての謝罪からスタートしました。
質疑応答も、事前に十分に準備されていたことが見て取れます。決算発表会見でありながら、危機対策プロジェクトのリーダーも同席してのものでした。
昨年7月の時点で、このような会見がもたれていれば、少なくとも風評の影響は小さくできたのではないでしょうか。
最後に、来年日本に進出すると発表があった、マックキラーと言われるシェイク・シャックを、日本マクドナルドはどのように迎え撃つのか、どうすべきかを議論して終了となりました。
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