それによると、出生数は1,001,000人。年間出生数100万人割れが目前です。
このニュースを受けて、海外では(冷静に)悲観的な分析をしています。 NewSphereでは
“日本は移民受け入れ必要” 出生数過去最少、海外はどう報じたか
と題する記事(リンク先はBLOGOS)で、フィナンシャルタイムズ、フォーブス誌やCNNの論調を伝えています。この記事によると「人口統計的数字は、とても長い間非常に悪い状態を示していて、その軌道を健全な方向に変えるのはほぼ不可能だ」とのフォーブス誌の指摘を引用しています。
これまでも、選挙では各党・各候補者が選挙公約に「子育て支援」を声高に掲げてきました。子ども手当の支給や待機児童の解消、認定こども園や小規模認可保育所の設置など、その都度新しい施策を実行には移しています。しかし、そのような(大事ではありますが)小手先のことでは、出生率を2.07まで上げることは不可能です。そもそもの考え方を抜本的に変える必要があります。
女性の就業率が高い国の方が出生率が高いのか?
良く出てくる数字ですが、女性の就業率と出生率には正の相関関係が有ると言います。
「少子化と男女共同参画に関する社会環境の国際比較報告書概要版」-男女共同参画会議
少子化と男女共同参画に関する専門調査-では合計特殊出生率の推移と合計特殊出生率・女性労働力率の水準をもとに、 OECD 加盟 24 か国を大きく3つに類型化しています。1980年から2000年の20年間で合計特殊出生率が上がった国をA、下がったけれど減少率が20%未満の国をB、20%以上の国をCとしています。日本はもちろんCに分類されています。
この報告書を見ると、いずれの国も年を追う毎にだいたい女性の労働力率が上昇しています。一方1970年代から80年代は労働力率の上昇に伴って出生率は低下しています。しかし、A、Bグループでは1980年代半ばくらいから上昇に転じています。それに対してCのグループは上昇すること無く下がり続けています。
出生率の改善理由についてこの報告書では、「女性の社会進出にともない、働くことと子どもを産み育てることを両立しうるように社会環境を整備してきた取組の結果と考えられる」としています。
残念ながら2000年以降のグラフがありませんが、日本は2005年の1.25を底に上昇に転じています。2005年は、「次世代育成支援対策推進法」(次世代法)が4月に本格施行した年であり、世の中が少子化を社会的な問題として意識した年でもあります。これらの取組が社会環境の変化をもたらした結果、上昇に転じたとも言えます。
一方で女性が働きやすい→子どもが生まれる訳ではありません。どんなに女性の社会進出が進み、子どもを産み育てる社会環境が整っても子どもを産みたくならなければ産みませんし、女性1人ではそもそも産むことができません。
男女の偏在と晩婚・晩産化を食い止める
日本では、戦後の高度経済成長期は終身雇用と年功序列という安定した雇用が背景にありました。いまだに日本人はその当時の成功体験に引きずられ、雇用の流動化が進みません。女性が新卒で就職するまでは良くても、一旦結婚や出産で離職すると復職は困難です。昔のテレビドラマでは仕事漬けの亭主が「仕事を取るか家庭を取るか、どっちなの?」と専業主婦の妻から迫られる場面がありましたが、働く女性はそれと同様の事を社会から突きつけられている状況です。
「キャリアを取るか家庭を取るか」
これでは結婚もできませんし子どもも作れません。
また、そもそも相手がいないことには何も始まりません。若者は仕事を求めて都会に集まります。それも地域差があります。福岡市で言えば、約152万人の市民のうち、男性は約72万人に対し女性は約80万人と、女性が8万人も多くなっています。高齢者では寿命が長い女性比率が高くなるのは当たり前ですが、出産年齢の20代~30代だけを比べても、男性が約20万5千人に対して女性が22万1千人と約1割多いのです。生涯独身の男性が2割にもなろうかというのにです。婚活が話題ですが、男性・女性の偏在も現実にあります。
きょうだいの多い家族が暮らしやすく
高齢出産(特に初産)は母胎にも負担が大きく、晩婚・晩産化傾向が進めば進むほど出産数は望めません。合計特殊出生率はあくまでも平均です。生涯子どもをまったく産まない女性と4人産む女性が同数いたら、出生率は2になります。若く結婚し、子どもを産みたくても経済的な理由で断念する家族もいるでしょう。フランスのように経済的にも充実したサポートがあれば、きょうだいの多い家族も増えるのではないでしょうか。
そもそも、社会が子どもを望み大切にしない限りは、前向きに子どもを産み育てることはできないでしょうから。
今年2015年の出生数が100万人を維持できるか、日本の未来を占う大事な年になりそうです。
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