2013年9月14日土曜日

従来からある合わせガラスを「防犯ガラス」にしてGood Design賞受賞

たまにはマーケティングの話題を。
私は2002年に、防犯ガラスの商品化でGood Design賞を受賞しています。

実はこの防犯ガラスは、従来から存在する普通の合わせガラスです。一番身近なのはクルマのフロントガラスで、現在日本国内で販売されている自動車のフロントガラスは、全て合わせガラスとなっています。

合わせガラスとは、2枚のガラスを特殊な樹脂(ポリビニルブチラール=PVB)を挟んで高温高圧の釜で熱圧着して一体化した物です。ガラスが割れても飛散することなく、貫通も容易ではありません。ガラスの透明性・平滑性・扱いやすさに、樹脂の強靱性を併せ持たせ、安全性を高めたものです。またこのPVBは紫外線をほぼ99%遮断する特性があります。そのため、自動車のフロントガラスを通して入ってくる光には紫外線はほとんど含まれていません。サイドウィンドウも合わせガラスにすれば紫外線はほぼカットすることが可能です。事故の際、ガラスの破壊による車外放出も防ぐことができます。

欧米では、学校や公共性が高い建築物には合わせガラスを使うのが一般的です。市民や生徒をガラス事故から守るためにです。テロによる爆破事件が多い地域などでは、ショーウインドウや道路に面したガラスを合わせガラスにして、もしもに備えるところもありますし、高級ブランドショップは盗難被害を防ぐために合わせガラスを採用することも普通です。ショーウィンドウでは紫外線をほぼ通さないので、商品の劣化も抑えられます。
戦闘機のキャノピーガラスや 、防弾ガラスも合わせガラスの応用です。





2枚のガラスの間にポリビニルブチラールを挟んで、熱圧着することにより一体化。
PVBはガラスと一体化することで透明になる






しかし、これだけ優れた機能を持った合わせガラスですが、日本では建築物への普及が進んでいませんでした。PVBの世界Topシェアを持つソルーシア社の日本法人、ソルーシアジャパン(いずれも当時)様より、日本の建築物にもっと合わせガラスを普及させるべくご相談をいただきました。
その時にお話しいただいたのは、「ガラス事故の一番の被害者・負傷者はこども」という事実。こども達をガラス事故から守るためにも、合わせガラスの普及は必要なので協力して欲しいということでした。断る理由はなにもありません。むしろ、御願いしてでも普及に協力したいと思いました。

日本で合わせガラスが普及しない理由は、

1,存在を知らない
2,安全よりもコスト優先

の2つ。
建設省や文部省(いずれも当時)に通い、打開策を探しましたが、何を採用するかは施主の問題であり強制はできないということ。多くの建築家にも話をうかがいましたが、合わせガラスとペアガラスの区別もできていない人が多く居ました。建設省からの「安全ガラスの使用指針」はあるものの、建築基準法での取り決めではないので、建築申請時の強制力はないということでした。それでは、どうやって合わせガラスの存在を知らしめるか?

ちょうどその頃、ピッキング強盗が社会で問題になり、セキュリティへの関心が高まっていました。そこで、突破口として合わせガラスを防犯ガラスとしてセキュリティショップで販売することを提案。日本には防犯ガラスの概念が無いので、ヨーロッパとアメリカの防犯ガラス基準に合格させて、防犯ガラスの基準も紹介。今までのガラス流通とは全く違うマーケティング手法を採り、日本初の防犯ガラス「とおせんぼ」(R)は多くのマスコミにも取り上げられることとなり、一気に防犯ガラスは市民権を得るに至りました。
「とおせんぼ」発売からほぼ半年後、日本の大手ガラスメーカーがいずれも「とおせんぼ」に準じた仕様で一斉に防犯ガラスを発売。日本の防犯ガラスの基準は、この「とおせんぼ」がベースになっています。

今では、多くの戸建て注文住宅のオプションで防犯ガラスが選べるようになり、ハウスメーカーの商品プランによっては標準仕様にもなっています。

2002年、日本初の防犯ガラスの商品化で、GoodDesign賞を受賞※しました。
今では、防犯ガラスだけでなく合わせガラスの普及が進み、家庭や公共施設、一般建築物でのガラス事故による被害は減っていると確信しています。

※合わせガラスが世の中に認知されたことにより、ソルーシアジャパン社は防犯ガラス「とおせんぼ」の事業を譲渡し、本来の中間膜供給事業に専念しています。

●竜巻にも有効

ところで、近年竜巻による被害がニュースを賑わせています。戸建て住宅の被害の多くは竜巻により、屋根が飛ばされることです。どうして屋根が飛ばされるかというと、窓やドアが開いていたり破壊されたりすることにより強い風を建物内に流入させることになり、屋根の上では引き上げる、内側からは押し上げる上昇気流の風圧で屋根を飛ばしてしまうのです。
ですから、竜巻が近づいてきたら窓やドアは閉めること。防犯ガラス(合わせガラス)であれば窓が破壊されて開口部ができることを防ぎます。

泥棒だけでなく自然災害家からも家族と財産を守るためには、合わせガラスは有効です。

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