アップル、中国発のスマホ不振 19年も減収避けられず
とする記事で、2018年10~12月期決算で売上高が前年同期比5%減、純利益は0.5%減と伝えています。不振の原因はiPhoneの落ち込み。売上高は15%減少し、売上高全体に占めるiPhoneの比率は69.2%から62%へと低下しています。
同じく日経新聞の同日のこちらの記事「アップル、次の成長手探り 脱・iPhone依存なるか」では、
米調査会社のカナリスによるとアップルの中国シェアが16年以降、9%で足踏みを続けるのと対照的に、中国の華為技術(ファーウェイ)は18年の中国シェアを3年前の約2倍の27%まで伸ばした。と指摘しています。また、
「中国の電子部品メーカーが実力を上げたことでiPhoneと同等以上の性能を半値以下で提供できるようになった」(IHSの早瀬宏シニアディレクター)ともあります。
AppleはiPhone6以降、利益率を重視しての戦略転換で大型化高価格化に舵を切り、唯一残っていた4インチモデルのSEも昨年9月で生産・販売を終了しています。SEは基本性能はしっかりと押さえ小型であるだけでなく、3万円台からと購入しやすい価格のエントリーモデルとして人気がありました。現行機種で言えばiPhone8の約半額、最高級機種Xsの512GBモデルだとなんと税別164,800円で、SEが4台も買えてしまいます。
スマ-トフォン市場は成熟期にさしかかり、ここのところ劇的なイノベーションも目新しい機能も追加されず、マーケットも飽和感があります。このような状況下で2つのことが同時に起こっています。
1つめは低価格化です。上の指摘のように、iPhoneと同等以上の性能のスマートフォンを半値以下で提供するメーカーが現れています。
2つめは買い換えサイクルの長期化です。新製品が出ても見た目はどれも同じようなもので、機能や性能も大して変わらなければ、買い換えるメリットはありません。
順調に伸びるサービス事業
いま、Appleはハードメーカーからサービス主体の会社に変わろうとしています。ターゲットと進め方は違いますが、IBMがたどっている道です。
Appleのサービス事業の本格スタートは音楽配信事業でしょう。
AppleはiPodを開発・発売し、大量の楽曲を小さなハードに納めて持ち歩けるようにしました。この段階では、Walkmanが楽曲の記憶メディアをカセット→CD→MDに変えてきた延長に過ぎません。カセットやMDだと、厳選したお気に入りの1枚をセットし、予備に数本(合計でも数十曲)持ち歩くのが限界でしたが、iPodは持ち運べる楽曲の数が桁違い、およそ100倍に増えました。そうなるとユーザーはその容量を満たすだけの楽曲が欲しくなります。そこでAppleはNETを介して音楽を購入(ダウンロード)できるiTunes Music Storeをスタート。1曲わずか99セントです。日本では1曲150円からという価格でスタートしました。
パソコンにiTunesをダウンロードし、そこから楽曲を購入する仕組みで、PCとiPodを繋いでデータを移します。iTunesはWindowsにも提供されたことで、Macユーザーに限らず音楽好きに広く行き渡りました。iPodは、小さなNanoやShuffle(今でも私のお気に入りです)、Touchと商品を展開し大プームとなり、ミュージシャンの楽曲の提供もCDからNET配信へとだんだんとシフトしていきます。後にiTunes Music Storeでは、動画やゲームもダウンロードできるようになりミュージックビデオも配信されるようになりました。そして、定額制で音楽聴き放題のApple Musicもスタートしました。
音楽再生機能も持ったiPhoneの登場でiPodは実質無くなって(iPod touchが唯一ラインナップされていますが、電話機能を外したiPhoneともいえます)しまいましたが、Appleの音楽配信関連ビジネスの売り上げはiPhoneの販売拡大とともにその後も順調に伸びています。
AppleはiPhoneをキーデバイスとし、音楽配信に続きapp storeやicroud、Apple Payといったサービスを次々と展開し、いまやサービス事業で大きな利益を上げるようになっています。
米アップル、10─12月期はサービス事業好調 株価6%高
Appleが2018年10~12月期決算発表を行った日、iPhoneの売り上げは不振でも時間外取引で株価は6%も上昇しました。上昇の要因の一つが、サービス事業の堅調な伸びでした。
iPhoneの利用者を増やすことがカギ
アンドロイド陣営では、GoogleがAppleと同じような音楽配信、アプリ販売サービスを提供していますし、中国ではテンセントミュージックなどが独自の音楽配信事業をスタートしています。テンセントミュージックのアクティブユーザー数は7億人を超えると言われています。
Appleがサービス事業を伸ばすためには、そのサービスを利用できるデバイスの普及が必要です。 iTunesはWindowsマシンでもダウンロードして利用できますが、そこでダウンロードした楽曲や動画をPC以外の端末でシームレスに楽しむためには、iPodやiPhoneが必要になります。今後もAppleがサービス事業で売り上げ・利益を伸ばすには、サービスを利用するための端末(iPhone)の普及が重要になってきます。iPhoneの売り上げよりも販売台数、もっと言えば実稼働しているiPhoneの台数が重要です。
一度iPhoneを手にし、Appleが提供するサービスを利用し始めるとなかなかiPhoneからアンドロイドのスマホには移れません。特に機械やデジタルな機器が苦手な層にはアンドロイドは難しいようです(逆にデジタルに明るい人だと自分仕様にカスタマイズして使いやすくします)。子どもや学生が初めてスマホを持つときに安いアンドロイドの機種からスタートすると、スマホのデータはやがてGoogleのサービスに格納され、離れられなくなり、ずっとアンドロイドの端末での機種更新になります。永く使えば使うほど、iOSとアンドロイド間での機種変更・データ移行は難しくなります。
それだけにエントリーモデルでユーザーを獲得することは重要なのです。
私もiPhoneとアンドロイドのXPERIAを所有していますが、XPERIAは限定された使い方になっています。
行き着く先は、クラウドとの通信機器
自動車や自転車が所有からシェアに移行するように、PCやスマートフォンに格納されていたデータはクラウドに移り、やがて端末はクラウドからデータを読み込むためのデバイスになるでしょう。私も、使い方は少し違いますが主要なデータはDropboxに置いて、PC本体にはできるだけデータを置かないようになりました。PCで言えばGoogleのChromebookが既にそういう存在です。
通信規格で5Gが普及すればスマートフォンだって同じように本体に持つデータは最小限(クラウドから読み込む設定程度)にして、データの保存やアプリの利用はその都度クラウドとの間で読み書きすれば事足りるようになるでしょう。そうなると、スマートフォンも使い方や場所に応じてレンタルしたりシェアしたりという利用シーンが想像されます。いや、スマートフォンである必要もなくなります。
そのときに重要なのは、どこのサービスを利用しているか。AppleかGoogleか、ひょっとしたらAmazonかもしれません。それとも別な新興のクラウドサービスなのか。
いずれにしても、スマートフォンはクラウドサービスを利用するための通信機器でしかなくなり、端末販売の売り上げ利益はいずれ意味を持たなくなるはずです。 そしてより多くの人にAppleのサービスを利用してもらうためにも。サービスの入り口であるAppleの端末を普及させることは重要です。AmazonがEchoやkindleを低価格で提供しているのも同じ理由です。
今、AppleはiPhoneの下取りセールを積極的に展開しています。エントリーモデルでなくても、下取りした中古機器がうまく市場に流れ、Appleのサービス利用者が増えることになれば将来への布石になります。
色々と書いてきましたが、4インチ画面のiPhone SEの後継機を是非市場投入して欲しいという、個人的な希望を理屈っぽく書いてみました。
注)私はApple製品はiPhone・iPodくらいしか使ったことが無く、Appleについても浅薄な知識で書いていますので、文中に認識の誤りがあればご指摘ください。