2017年6月1日木曜日

子育て支援が叫ばれているのに、育児誌の部数減少が止まらない。

先日、Yahoo!ニュースで「育児系雑誌の部数動向をさぐる」という記事が流れてきました。一般社団法人 日本雑誌協会(JMPA)が四半期毎に発表する、「印刷証明付き部数」の最新値から不破雷蔵氏が計算し、記事にしたものです。
育児系雑誌の部数動向をさぐる」よりー不破雷蔵氏作成
JMPAが発表したのは数字だけですが、不破氏は解り易くグラフ化してアップしてありましたので、ここでもこのグラフをお借りしました。
私の記憶では、数年前まではひよこクラブの印刷証明着き部数は20万部前後でしたから、ほぼ4割減、 たまごクラブも12~3万部だったように記憶しているので、ほぼ半減でしょうか。
対前年だけの数字を見ても、たまごクラブもひよこクラブもほぼ11%減っています。
このペースで減少すれば、4年でほぼ4割減です。4年後にはひよこクラブの発行部数は7万部ほどになってしまう計算です。
少子化が進み、年間の出生数が100万人を切ったとは言え、出生数が同じように毎年1割も減っているわけではありません。出生数の減少以上に雑誌離れが進んでいることになります。
この減少傾向は他の育児誌も同様で、プレモに至っては対前年18.2%減。前の年には発行部数4万5千部ほどあったということになりますが、1年で2割近くも部数が落ちてしまうと言うのも驚きです。

実際の販売部数は6掛け


上記の印刷証明付き部数-発行部数は実売数ではありません。雑誌の実売率はだいたい6割前後と言われています。発行サイクルと店頭在庫の関係で、週刊誌は実売率が高め、月刊誌や季刊誌は低めになります。
雑誌の実売率・返本率のデータがないかと探したら、やはり不破雷蔵さんのガベージニュースにありました。
新刊書籍・雑誌出版点数や返本率推移をグラフ化してみる

再び不破氏のデータを引用させていただきますと、ちょっと古いですが2009年の雑誌全体の返本率は36.2%となっています。これもずっと右肩上がりですから、やはり今は4割くらいでしょうか。
そうすると、ひよこクラブの実売部数は約7~8万部、たまごクラブは4万5千~5万部といったところでしょう。

紙だから読まれなくなったのか?


不破氏は自らが運用管理するサイト「ガベージニュース」では、育児系だけでなく広く全般について考察しています。
部数が非公開になった雑誌、順位の入れ替わりが確定した分野…時代の流れを覚えさせる新たな動き…諸種雑誌部数動向(2017年1-3月)
これで見ると、育児誌に限らずあらゆるジャンルの雑誌が部数を落としているのがよく分かります。あれほど影響力があったKADOKAWAの東京ウォーカーも、今や5万部ほど。一時期の約1/3にまで落ち込んでいます。ウォーカーが扱う情報は、時間軸とセットになったフローな情報中心で、むしろネットの方が即時性や情報量、検索性、加えて写真・動画によるビジュアル情報による具体性などに優れているので、ネットに移行するのは致し方のないことです。リクルートが発行する情報誌も、ゼクシーを除けば全て紙の本を無くしてしまいました。週刊文春や新潮など、他では読めない特ダネを毎号探し続けることは通常の雑誌ではほとんど難しいものがあります。
紙の雑誌が優れているのは、保存性や一覧性。持っていること、目の前に形として存在することの安心感などがあります。私も持ち歩くのが重いからと、資料となる書籍・雑誌などはamazonのKindleで電子書籍を購入することがありますが、やはり目の前に物理的な本が無いと、いつの間にか購入したことさえ忘れてしまいます。

では、単純に紙の本が読まれなくなったのでしょうか。絵本がタブレットに全て置き換わるかと言えばそんなことはないでしょうし。かつて、本屋は情報収集の場であり、一つのエンタテイメントの場でもありました。学校帰りや散歩のついでに、何かと言えば書店に立ち寄ったものです。特に雑誌は,店頭での偶然の出会いで購入することが多く有りました。しかし、その書店も今や少なくなってしまい、店頭で偶然出会って購入するというシチュエーションがなくなってしまっています。

書店数の推移を調べてみると(書店組合のデータから一生懸命グラフを作っていたら、これまたガベージニュースにしっかり出ていました(T_T)。こちらも「書店数とその坪数推移をグラフ化してみる(2016年)(最新)」からお借りしました)やはり減少しています。
書店が減ったから本が売れなくなったのか、本が売れなくなったから書店が減ってしまったのか。いずれにしても本と接する機会・接触ポイントが少なくなってきていることも大きな原因で有ることは間違いありません。

現に、フリーペーパーであるmikuは、配付場所(配付協力施設は、先方からの申し出によるものです)が増えるだけ持ち帰られる部数も増えて、今では13万部の発行部数にまでなっています。持ち帰られるのはだいたい10〜11万部といったところですが、小児科などでは待ち時間に読んでいる方も多いので、実際の読者数は更に多くなります。

出産・育児を妨げる大きな要因は経済的な負担です。子どもの6人に一人は貧困と言う日本の現状では、若い子育てファミリーにとってはネットで調べれば事足りることで、有償の育児誌はわざわざ買うほどの物でもなくなっているのでしょう。

一方で、ネットの情報への不信感や不安感は常につきまとっています。そういう中で、無償で手に入り信頼できる媒体としてのmikuの存在はこれからも重要なのかと思っています。