2016年4月13日水曜日

保育園の建設反対は何故起こるのか?市川市の事例で考える

「保育園落ちた、日本死ね」のブログから注目を集めた待機児童問題。
待機児童解消に向けて、政府・自治体が腐心している所に、今度は市川氏で今年4月開園予定だった保育園が、周辺住民の反対にあい中止に追い込まれたというニュースが流れました。このタイミングですから全国から抗議の電話やメールが市川市へ多数寄せられ、4月12日に市が説明会見を行いました。
そもそも市川市は平成27年4月の待機児童数は373人で、全国の市区町村で待機児童数は第9位の市です。
厚生労働省3月28日発表releaseより、ワースト15

今回開園できなかった保育園は、100名を超える園児を収容できるはずでした。当然、この4月から入園を予定していた家族もそれだけいたはずです。開園できていれば、待機児童は(昨年とベースが増えていなければ)3割近く減っていたのです。
そんな、入園予定の家族からも行政からも期待されていた保育園が開園できなかったのですから、「何故?」という声が上がるのは当然です。ところが、市川市だけでなく全国でも近隣住民との折り合いが付かず、昨年10カ所ほどの保育園が開園の延期や中止に追い込まれたということです。

今回報道で上げられている反対理由は主に3つでした。
1,事前(計画時)に十分な説明が無かった
2,子どもの声がうるさい
3,送り迎えの車や自転車が増えて危険

想像力不足と行政との連携不足


1,については大前提ですからここでは置いておきますが、時間や回数、説明の姿勢や内容などでも受け取り方は違って来ます。2,3,については十分に予想されることですし、現実のリスクとして事前に解決策を準備しておかなければなりません。
例えば、閑静な住宅地などに、いきなり高層マンションや大型スーパーの建設計画が明らかになると、同様に近隣住民の反対が予想されます。特に大型商業施設の建設だと、今回の保育園と似たような反対理由です。施主・デベロッパー・行政で十分協議し、解決策を事前に準備するはずです。特に交通量の変化が渋滞や事故の発生に繋がることが予想される様な場合、道路・横断歩道や信号の見直し・整備も必要になります。警察とも協議しなければなりません。

市川市の保育園については、
①施設の遮音策と園児が園庭で遊ぶ時間帯
②周辺道路の利用に関する取り決め  
  例)通園時間帯は、進入禁止、一方通行路を設ける(標識を立てる)
  近くに一時駐車場を設ける(朝だけ30分無料のコインパーキングを確保するなど)
③地域に保育園が及ぼすプラス効果

などを準備し、時間をかけて説明できていればこんな事にはならなかったと思われます。今回、市の説明をニュースなどで見る限りでは、事業者任せであったようです。

予定地の選定そのものにも問題があったと言えます。
「閑静な住宅地」と言われるような場所は、古くからの住民、それも高齢者を中心の地域がほとんどになっています。そのような場所は相続の問題で用地が出やすいかもしれませんが、同様の問題がついてまわります。今後は、保育園単独での用地確保だけでなく、住宅地の駅前再開発や大規模開発の際には、保育園を設置する様に指導するなどを開発条件にすることも必要でしょう。

海外では車で送迎を前提に


保育園の前の道路はお迎えの車でびっしり
-ノルウェー オスロにて
これまで取材に訪れた3カ国では、いずれも車で送迎する事が前提で、取材先の保育園は少し町外れ(周辺に多数の車を停められる)に立地していました。前提として、日本の都市部ほど公共交通機関が発達していないので、移動交通手段はほとんどが自動車ということがあるからでしょう。いわゆる子ども乗せ自転車もありません。
13歳未満では子どもだけにすると罪に問われるニュージーランドやカナダでは、小学校でさえ親が送り迎えをしなければなりませんので、登・下校時には学校の周りは車でいっぱいになります。

ただ、国際都市のロンドンやパリではどうなのでしょうか?昔から基本的に集合住宅により都市が構成されているので、園庭がある様な新たな保育園は都心部では作れないでしょう。興味がある所です。近いうちに取材して確かめたいと思います。

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