2016年4月15日金曜日

東京都は5年で保育収容定員を5万人増やしたのに、待機児童が減らないのは?

今年になってにわかに注目を集める、保育園と待機児童問題。
一部のメディアやネットでは、実態の数字が提示されることなく話題性とイメージ先行で盛り上がってしまっています。そんなタイミングで、HOME'Sさんが東京23区を偏差値で比較し、「子育てしやすい街ランキング」を発表しました。このような記事をと思っていたら先を越されてしまいました。ただ、偏差値による比較で解り辛いので、ここでは東京都全体を俯瞰して、人口動態・女性の有職率などのデータと重ねながら課題を確認してみたいと思います。

施設・定員数ともに5年で約25%増加


東京都はこの5年で認可保育所は444施設、定員は43,167人も増やしています。また、東京都独自の取組として、認可保育所に準じる認証保育所の設置を進めています。認証保育所も5年で191施設、定員で6605人増加しています。合計すると、5年で約5万人も収容人数が増えています
東京都発表 保育サービス利用児童数の状況より
一方、東京都の出生数はどのくらい増えているかと見てみると、2011・12年が東日本大震災・福島第一原発事故の影響で落ち込んでいますが、これ以外ではだいたい一貫して右肩上がりに増えています。しかし、この5年で増えた年間出生数はせいぜい3,000人といったところです。
この5年で出生数の増加は3,000人程度なのに対し、保育所の収容人数は5万人も増えています。一方、この間の待機児童数はだいたい8000人前後で、それほど大きく変わっていません。内訳では、待機児童の約半数は1歳児。育休がとりやすくなり、育休明けに職場復帰を考えていた人が多いのでしょうか、保育希望数と受け入れ側のギャップ生じています。

東京都発表 保育所等利用待機児童の状況より
待機児童の数え方は区市町村ごとに基準が違っているので(多くはカウントしないいわゆる隠れ待機児童、世田谷区は隠れ待機児童もカウントしているので、飛び抜けて多く見える)、実際にはこの数倍とも言われています。
出生数の増加スピードを遥かに超える勢いで保育所を整備しているのに待機児童が減っていないのは、子どもの数が急に増えたのではなく、働く(働かざるをえない)母親がこれまでにない勢いで現れたことになります。

働く母親が急増


東京都の未就学児の数はおおよそ60万人。東京都の女性(15歳~64歳)の有業率は、2001年の49.9%から2013年は52.2%に上昇しています。 2012年の25歳~44歳の育児中の女性(子どもが未就学)の有業率は50%でした。近年、M字カーブの谷が浅くなっています。

総務省統計局ホームページより












総務省統計局ホームページより
東京都のデータではありませんが、 「妻の年齢階級別有業率(夫婦と子供のいる世帯)」の2007年と2012年の変化を見ると、6%前後有業率が上がっています。仮に東京都でも2010年から2015年で同様に6%有業率が上昇しているとすると、60万人の子どもの6%、3万6千人が保育所への新たな入所希望者ということになります。しかし、この5年間で5万人分保育収容人数を増やしているので、本来なら十分に足りるはずなのですが、それでも足りていません。待機児童数まで加えると約6万人以上の保育所入園希望が増えた事になりまので、有業率が10%以上上がっています。もともと東京都は女性の有業率が低かったので、それだけ男性だけの収入では子育てが厳しい状況になってきたことの現れともいえるでしょう。

ユニセフの「イノチェンティ レポートカード 13」が示唆するのは


ユニセフが4月14日に発表した『イノチェンティ レポートカード13  子どもたちのための公平性:先進諸国における子どもたちの幸福度の格差に関する順位表』では、日本は所得格差で41カ国中下から8位(格差が大きい)という結果です。高齢者の年金を支えるはずの若い世代の職業が安定しない、所得が低いことによって、様々な歪みが現れているのかもしれません。

待機児童問題の裏には、もっと本質的な問題が隠れていることに目を向けなければなりません。

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