2014年6月10日火曜日

ネットでの個人的感想に企業はどこまで責任を負うか

リクルートの同期入社で、カーセンサー編集部でも一緒だった永江一石氏(付き合いが永く、今更「永江氏」でもないのですが、あえて「氏」と書かせていただきます)が、Yahoo!ニュース個人のオーサーを降りたことでネット上で騒ぎになっています。

ソーシャルは難しい。わたしはこれでYahoo!個人に投稿するのをやめることにしました

事の顛末は「Yahoo!Japan佐野岳人氏によるYahoo!ニュース・オーサーの永江一石氏へのコメントについて」(同じくYahoo!ニュース個人 片岡英彦氏の記事)に詳しく説明してあるのでこの場では割愛させていただくとして、この一件は企業/組織人のソーシャルメディアの利用・発信について、まさに「一石」を投じることになりました。

組織人の「個人」としてのソーシャルメディアでの発信が問題になったと言えば、昨年9月、経済産業省の50代男性キャリア職員が自身の匿名ブログに「復興は不要だ」という書き込みや周囲への誹謗中傷など不適切な書き込みを繰り返し行っていたとして懲戒処分を受けたことを思い出します。
「ソーシャルメディアでの「不祥事」を未然に防ぐ、一つのヒント」

このときも、匿名だと自分の素性は突き止められないから安心という気持ちがあったのでしょうが、今やブログ、Facebook、Twitterその他のSNSでの発言と行動をプロファイリング・分析すれば、いずれ誰だかは突き止められてしまいます。そもそも、犯罪を犯すために匿名でSNSをやっている訳ではないのですから、どこかに隙や証拠が残されているものです。
今回の永江氏の一件も、Yahoo!JAPANの現役社員である佐野氏がFacebook上でコメントしたことから始まったようです。佐野氏は単に「個人的な」感想を書き込んだだけだったのかもしれません。しかし、Facebookは原則実名でアカウントを取得し、プロフィールなどを登録します。佐野氏はプロフィールの基本データを「公開」にしています。佐野氏の「しょーもない」というコメントに対して永江氏はフォロワーである佐野氏のプロフィールを確認したところ、原稿を依頼されているYahoo!JAPAN社の現役社員だったことから立腹したということのようです。

Net上では、それぞれの側に立って賛同や擁護、あるいは批判が飛び交っています。
整理すると、話題になっているポイントは

1,佐野氏のコメントはいくら「個人的」とはいえ、原稿を依頼している会社に属している。
  ステークホルダーの一人として他のステークホルダーへの配慮が欠けている。
2,永江氏は個人的なコメントに対して過敏に過ぎないか。他にも何か理由があるのではないか。
  (Yahoo!ニュース個人のオーサーをやめる、一つのきっかけに過ぎないのでは)
3,単なる感想を述べるのに所属する会社まで紐付けられて批判されるのはおかしい。
4,この顛末に対して、Yahoo!JAPANはどのような対応をするのか?

といったところでしょうか。

●今後の興味は所属組織(Yahoo!JAPAN社)の対応に


既に、Yahoo!ニュースへの投稿は終了宣言が出されたので、今後何かの進展があるとは思えません。ただし、佐野氏が所属するYahoo!JAPAN社の対応には注目が集まるでしょう。
今回の一件では記事やブログを通して、Yahoo!ニュース個人の原稿を書いているのはどのような人なのか、謝礼はどのくらいなのか、記事はどのくらい読まれているのかなど、 Yahoo!にとってはあまり触れられたくないようなことまで知られることとなってしまいました(永江氏がそれを意図した訳ではなく)。そういういう意味では、会社にとっても大きな問題と捉えている可能性は高いでしょう。 こうやって注目され話題になっている以上、社内でも何らかの対応は検討されているはずです。

「ネットの炎上投稿、企業はどう対処すべきか」でも一度言及しましたが、アルバイトの悪ふざけ同様、従業員の言動が企業経営やブランドに大きなインパクトを与えるリスク(場合によってはメリット)はこれから益々増大していきます。公開されたSNSだけでなく、LINEのような新たなコミュニケーションツールでの拡散もこれからは注意しなければなりません。
FacebookやTwitterを管理する担当者の不用意なコメントやTweetが物議を醸すことも増えて来ました。そのような際の対応の相談もあります。ビジネス文書なら長い時間をかけて整備されたマニュアルや例文があっても、近年急速に普及したソーシャルメディアについては多くの企業では対応も不十分で未整備です。中高生に教えるように、ネットとの付き合い方や投稿する際のチェックポイントなども、ビジネスマナー同様に従業員研修の中に取り入れるべき時期が来たようです。


6月10日追記
「倒産して税金でやってる会社…調子乗ってんじゃねえよ!」 ANA機長、JALのフェイスブックに暴言

ライバル会社のFacebookページやホームページ、Twitterでのコメントなどでもこんな事が起こり、わかってしまうんですね。

ブライト・ウェイへのご相談はこちらから。