戦後の高度成長期、日本人にとって欧米のブランドは憧れでしたし、品質の保証でもありました。国産品であれば、テレビなどの大手メディアを通じて広告宣伝される物が多くの人に認知されることでブランドとなりました。見方を変えると、宣伝そのものが品質の保証(これだけ大々的に宣伝する企業だから信頼できるだろうと)にもなっていました。
近年、新しいブランドや商品・サービスが次々と開発され市場に現れ、流通ルートも多様になってくると、かつてのように盲目的にブランドで商品を選ぶことができなくなります。商品やサービスのライフサイクルも大変短くなっています。ブランドだけでなく、商品カテゴリーさえもがコモディティ化し陳腐化します。液晶テレビがその代表例でしょうか。生産技術・効率の高度化と開発期間の短縮に伴い、商品の機能や価格での差別化はほとんど難しくなってきました。
そこで、差別化するために商品やブランドにわかりやすい付加価値を付けようとします。日本一や日本初、○○初出店などの他、●●さんが愛用しているとか△△で紹介された、メ
ディアで取り上げられた等です。商品ライフサイクルが短くなると、差別化と言うよりもわかりやすさが重要です。加えて価値観の多様化で、一人一人が求める価値も様々とな
り、同じ基準では評価できなくなっています。
この数年、ソーシャルメディアの活用が進んだことで、情報収集や商品選択の仕方も変わって来ました。ソーシャルメディアでは、自分が欲しい情報を能動的に問いかけることで、友人やフォロワーが情報を提供してくれます。「接待に使える良いお店」や、「子どもの誕生日に家族で食事するのにオススメのお店」、あるいは「▽▽のお土産は何が良い?」「□□□は何処に行ったら手に入る?」など簡単に情報が集まります。5W1Hを細かく条件設定した情報提供を求めることも珍しくありません。そんな細かな個別条件を想定することはできても、商品開発や宣伝をする際には最大公約数にまとめるか、逆にピンポイントに絞るかとなります。ITを活用したWEB上の広告では、ネット利用者の過去の検索や利用履歴に応じた広告表示などが可能になってきていますが、それでもまだまだあ限界があります。
ソーシャルメディアの浸透で、コミュニケーションにはコンテキストと物語が重要になってきました。Facebookに代表されるSNSやTwitterでの情報伝達は、基本的には発信者がいてその情報をフォロワーが広げて拡散(Facebookではシェア、TwitterではRetweet)していきます。
ソーシャルメディアで拡散される情報は、オモシロイものや珍しい・役に立つ情報などの他に、いわゆる「いい話」や「感動する(裏)話」などが多いのです。感動や喜び、悲しみや怒りといった感情を伴い(あるいは背景とした)、共感して欲しい・共有して欲しいという欲求があるのです。
ここに貼り付けた動画は、約20万人が「いいね!」をし、約4000万回近く再生されています。最近はやりのflashmobの1つではありますが、多くの人がその感動を共有しようとシェアしています。シェアをする時、それぞれがコメントを付けて拡散していきます。一言添えたコメントが、また新たなコンテキストを生み出す場合もあります。コインに意味を持たせる人、少女の視点で語る人、リクエストという行為に意味を見いだす人……
ソーシャルメディアに親しんだ生活者は、商品やサービスの選択に際しても、それを選ぶことで誰かと物語を共有したり、新たなコンテキストを創り出すような期待を持って手にするようになります。そしてまた新たにソーシャルメディアで共有され広がっていく。求めているのは物の消費だけではなく物語の消費であり、新たな物語を生み出す「きっかけ」でもあるのです。
商品開発や広告宣伝、コミュニケーション計画をたてる際には、ロジカルな数字や機能面だけでなく、情緒面にも訴えかける物語という視点でも振り返る事をおすすめします。
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