2013年6月14日金曜日

NPB統一球のゴタゴタをコンプライアンスという視点で見ると

NPBで2011年シーズンより導入された統一球。それ以前は、各球団が野球用品メーカーと契約を交わして調達し、公式戦では主催チームが用意したボールを使っていました。ボールの大きさや重さなどは規定に従い作られていても、当然、メーカーにより素材の調達先や製造工程の違いもあり、またチームの細かな要望に応じることで違いも有ったはずです。それを、WBCなどの国際試合やメジャーリーグとの交流試合、また、メジャーへ移籍する選手が増えるなどでグローバルスタンダードに合わせた国際規格のボールに統一しよう、国内の公式戦は同じボールを使おうと言うことになったわけです。それを先頭に立って強力に進めたのが加藤コミッショナーでした。

6月12日、その統一球の中身が昨シーズンと違っていることがわかり、急遽コミッショナーの記者会見が開かれました。しかし、この記者会見は大変な非難を浴びることとなりました。

この記者会見をコンプライアンスという視点で見ると、残念な点がいろいろとあります。一般的にコンプライアンスは法令遵守と訳されることが多いのですが、私は「ステークホルダーの期待に応えること、裏切らないこと」ととらえています。今回の「事件」は、法を犯した犯罪とは違います。じゃあ、コンプライアンス的に問題が無いのかというとそうではないはずです。

今回の統一球の問題に関しての主なステークホルダーは、
1,プロ野球選手
2,ファン
3,球団・オーナー
4,スポーツ・関連用品メーカー
5,マスメディア(スポーツ担当)
6,審判
7,日本野球機構(NPB)
8,球場ならびに周辺施設等
などですが、これらステークホルダーに対して正しく説明や謝罪をするために記者会見をするという姿勢であれば、あのような記者会見はそもそも設定しなかったはずです。

まず、記者会見の設定時刻は午後8時。
この日のこの時刻、12球団全てが交流戦を戦っている真っ最中。5回から7回の最も緊迫した攻防を繰り広げている時間帯。上記ステークホルダーはほとんどが試合に集中しています。その時間帯に記者会見を設定するということは、関係者が見てない間にこっそり済ませてしまおうという意図があったと見られて当然です。

記者会見そのものは謝罪会見でもなく、発覚を追認した単なる説明のためのものと位置づけられたようです。そのため、事実の詳細、そこに至った経緯、原因、今回の件が与える影響の大きさや範囲、今後の対応、改善策などは何も示されませんでした。
そして、責任についての質問に対しては、コミッショナーは「今回の件は不祥事ではない」という認識であり、「辞めることはない」との発言。しきりにその口から発せられていたのはガバナンス(統治)といういかにも官僚的、組織人的内向きな言葉。

この記者会見後、4000件を越える抗議のメールが届いたと言います。
当たり前でしょう。ファンや選手を裏切り、納得できる説明も無ければ期待に応える回答もなかったのですから。

今後、コミッショナーとしてなのか野球機構としてなのか、きちんとした説明が改めて必要なことは言うまでもありません。

※ミズノ社は12日、反発係数の設定についてニュースリリースを配信しています。
http://www.mizuno.co.jp/whatsnew/2013/06/20130612.html


9月19日追記

加藤コミッショナーは、今シーズン終了後に辞任する意向をオーナー会議で表明、記者会見を行いました。

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