2015年12月27日日曜日

下町ロケットに見る企業の「意欲」と「所有欲」

日曜劇場 下町ロケット TBS Webサイトより
毎週日曜日の夜9時スタートの日曜劇場。「とんび」や「半澤直樹」「ルーズヴェルトゲーム」「天皇の料理番」「ナポレオンの村」と、毎回高視聴率のドラマが続く大好きな時間帯。少し前だと、「空飛ぶ広報室」や「新参者」もこの日曜劇場でした。そして先日放送最終回を迎えた「下町ロケット」も毎回楽しみに見ていました。
その「下町ロケット」の第一部と言えるロケット編では、帝国重工が自社製主要部品による純国産ロケット開発にこだわり、佃製作所の持つ特許を巡って話が展開されます。このドラマの始まりは、帝国重工の社長が主要部品の自社製にこだわる所からです。
ドラマを見ている視聴者は、佃製作所の登場人物に感情移入して「どうしてそんなことにこだわるんだよ!?部品の一つくらい他社製でもいいじゃない。同じ国産なんだし」と想いながら見ていたことでしょう。自社で開発するよりもできあがった高品質の部品を調達した方がコストもかからないし、と。
特に経営に携わっている人は、そんな想いで御覧になっていたのではないでしょうか。
ところがこれが「主要部品」ではなく「人材」になると突然話は変わり、身内にこだわるようになります。特に地方都市では。人を育てるのは時間がかかりますし、特定のスキルや経験を有した人はどこにでもいるわけではありません。

新しい事業を始める時には組織よりもビジョン


企業は経済状況やマーケットの変化に臨機応変に対応しなければなりません。事業ドメインの変更や多角化、分社化、M&A……しかし、その変化に従業員がついていくのはなかなかに大変です。脳は現状維持(楽な方)を選択しようとして、変化に抵抗するものです。下町ロケットでもそんな場面は何度も出てきます。
新規事業の検討や事業見直しの際に、客観的な視点を取り入れるべきなのですが、多くの場合はなかなかそうはなりません。目的に合わせた合理的な変化が求められます。佃製作所の佃社長のように、明確なビジョンが有り、やるべき方向性がはっきりしていれば、従業員は迷うことなく前に進めます。しかし、明確なビジョンも方向性もないままに「何か考えろ!」では困ってしまいます。いきおい、社内に新しい組織を作り、人事異動で対応しようとします。リーダーシップを取れない人がその組織のトップに据えられてしまうと、不幸な結果を招くだけです。

部品は外部調達しても人は社内に


事業組織を作る前段階で相談をいただくケースでは、目指すべき方向の整理から始まり、何をするのかを明確にします。それから必要な組織(人材感、人数)、ハードなどを無駄なく揃え、場合によっては社外のプロフェッショナルの力を借りながら短時間で高いパフォーマンスを得られるチームを作って一気にスタートします。
スピードが重要だと考える東京の多くの企業は、コンサルタントや外部のパートナーを上手に活用します。社員として抱えることにこだわらず、むしろ今必要なスキルや経験を持ったプロフェッショナルをチームに迎え、短期間でミッションを完了させます。

ところが、日本のオーナー系の企業の多くは、全てを中でやろうとします。社内にない知識やスキルでも今いる従業員に求めようとします。そして残業してでも社内で完結させようとします。長期的には経験値もスキルも上がり、社内に蓄積されていくのでしょうが、きちんとドキュメント化していないと、会社の財産ではなく特定の人の物となってしまいます。それになによりも時間がかかります。
一方で中間管理職は、居心地の良い縦社会を維持しようとして上下関係にこだわります。そのため自分の上司以外で口を挟んで来るコンサルタントや外部協力者は邪魔者に映るようです。特に、義理・人情・根性で仕事をしてきたような人には、専門的な話しと論理的な説明は苦手です。扱いやすい部下に無理難題を押しつけます。

会社に必要な知見やスキルを持った人材を社外にパートナーや協力者として求めるのではなく、すぐに社内にとなると、引き抜き・ヘッドハントや中途採用ということになります。社内に迎え入れてしまえば、上下関係も崩れることはありませんし部下として扱えます(実際に、私もこれまで何度か同じようなお声かけ《コンサル契約ではなく入社のお誘い》をいただきましたが、全てお断りしました)。
下町ロケットでは、ガウディ編にそのような場面が多く登場していましたね。

今や、新規事業はM&Aで買う時代になったとも言えます。大手企業でも中堅企業でも、事業の受け皿となる「組織」を先に作ってそれから何をするかを考えた所は、なかなかうまく行っていません。事業は意欲と覚悟を持った人材が作り上げるものです。

大切なのは、それぞれの企業が何のために存在し、何をすべきかを経営トップが明確にし、従業員がきちんと理解・共有することです。 組織は目的のために存在するのですから、所有にこだわる必用は無いのです。外部のプロフェッショナル・パートナーと関わらせながら仕事を進めることも、社内の人材育成に繋がることも忘れてはなりません。
財前部長のチームは、そこに気付いたはずです。

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