2015年12月25日金曜日

日本の子育て支援制度の名称は、「ネウボラ」や「ドゥーラ」ではないと思う

最近は、政策や予算、あるいは選挙公約にも「子育て支援」ということばが必ず入って来ます。企業の働きやすさや福利厚生を語る際にも同様です。これは子ども達の未来、日本の未来に向けて良い傾向だと思います。
そして、その子育て支援の具体策を検討する際に引き合いに出されるのが、子育て先進国の国々の施策です。これまでmikuでもニュージーランド、カナダ、ノルウェーと、それぞれの国の抱える課題や背景、そして取組を取材してきました。それぞれの国の歴史があり、仕組みや制度ができあがっています。

何度聞いても覚えられなかった「ネウボラ」


今、盛んに話題に上るのが「ネウボラ neuvola」です。新聞などでもよく、「○○版ネウボラ」と記述されています。
「ネウボラ」とはフィンランドの子育て支援制度の名称で、フィンランド語で「アドヴァイスの場所」を意味するそうです。「ネウボラ」は妊娠期から就学前までの子育て家族を対象に、ワンストップで切れ目のない支援をする仕組みです。私は初めて「ネウボラ」と聞いたときに「ボウフラ?」と聞き返しました。その後も何度か「ネウボラ」の事を書いた記事などに触れましたが、名称として「ネウボラ」と認識し、記憶できるようになったのは最近のことです。

このようなワンストップで切れ目のない子育て支援は、ニュージーランドのプランケットでも提供されています。他の国でも同様の取組は為されていると思います。ネウボラが注目され、話題になるのは、やはり北欧フィンランドの福祉大国のイメージによるものでしょうか。あるいは「フィンランドの優れた子育て支援制度」として、いち早く紹介され、参考にされたからでしょうか。
厚生労働省が発表している「妊娠・出産包括支援事業の展開」には、「子育て世代包括支援センター」という名称でワンストップ拠点の設置が示されています。
「子育て世代包括支援センター」とはいかにもお役所的な硬い名称ですし、現段階では仮称でしょう。実際に運営を開始する際には別な名称(あるいは愛称)になるのかもしれません。いずれにしても、「日本版ネウボラ」と言うことはないでしょう。

濁音の名前は怪獣には良いけれど


日本人が感じる語感では、何も知らない人に「ネウボラ」といっても「ボウフラ」や「オオボラ」といった言葉に間違えられそうです(失礼!)。黒川伊保子氏の「怪獣の名はなぜガギグゲゴなのか」にも示されているように、人は音に対して無意識にサブリミナル・インプレッションを感じます。当然、母国語や日常生活・習慣などで音に対するインプレッションは違うでしょうが、少なくとも日本人にとって、濁音は強さと共に汚れも意識させます。怪獣の名前に濁音が多いのはサブリミナル・インプレッション効果を引き出すネーミングなのです。また「バカ」や「ボケ」、「ボロボロ」などなどは後者の汚れを感じさせる良い例でしょう。
もう一つ最近よく聞く「ドゥーラ」(産前産後のサポートをする専門職)も、私には「キングギドラ」や「ドラ息子」を想起させる同様の印象です。

名前やことばが与えたり想起させる印象・イメージは、マーケティングにおいても重要です。お手本として仕組みや制度などを取り入れるのは良いけれど、名前はもう少しスマートで清潔感のある名称で日本では普及させて欲しいと考えます。

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