来年4月24日に開館する大分県立美術館 OPAM。2006年に開館した青森県立美術館以来、9年ぶりに新設される美術館です。設計は、建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞を2014年に受賞した坂茂氏。館長は西武美術館・セゾン美術館が一番元気だった頃に学芸員として数々の展覧会を手がけ、2011年には第7回西洋美術振興財団賞「学術賞」を受賞した武蔵野美術大学教授 新見隆氏。建築の面からも、美術館のあり方、コンセプトからも開館前から注目を集めている新しい美術館です。このOPAMの開館に向け、当社ブライト・ウェイは、大分県外広報のお手伝いをさせていただいています。今回はOPAMの来年の開館に向けての取組について、触れてみたいと思います。
OPAMは10月末に建物が完成・引き渡され、11月23日からオープニングイベント「誕生祭」が開催されています。開館は来年なのですが、その前に県民に向けて建物を開放してのイベントです。美術館の建物は、作品の展示と収納をする入れ物ですから本来は脇役なのかもしれません。しかし、ミシュランのレストランガイドでも、料理(星の数)だけではなく、お店の内装からテーブルウェア、それを提供するサービス(フォークとスプーンの数)を評価して掲載しているように、美術館もその収蔵作品や展示作品だけで評価される時代ではなくなっています。
OPAMは、収蔵・展示館という単なる箱とは位置づけず、建物自らもソフトとして機能しようとしているような、これまでにない柔軟性を兼ね備えた美術館です。
コンセプトに、
「五感で楽しむことができる」
「自分の家のリビングと思える」
「県民と共に成長する」
美術館を掲げています。
新見館長も、美術館は作品を収蔵する場ではなく見せる場だとし、所有にこだわらず世界中から多くの良い作品をここで紹介したいと明快に話します。
高まる好奇心を満足させ、かわす誕生祭
人には誰にも好奇心があり、話題になった物や新しい物に興味を持ちます。新しい商業施設やランドマークとなる施設がオープンする時には、大挙して人が押し寄せます。多く人の来場目的は「見るだけ」です。かつて福岡ドームやシーホークホテル&リゾートがオープンしたときには、それはものすごい人でした。シーホークはホテルでしたが、宿泊やレストラン、宴会場を利用するわけではなく、その話題性から好奇心旺盛な「単に見に来た人」で館内はごったがえしました(ドームに来たついでに見学も)。
その時とは違うとは思いますが、OPAMも開館すれば多くの人が美術品ではなく「建物を見に来る」人で溢れることは容易に想像がつきます。それを想定してか、「五感で楽しむ出会いのミュージアム」のお披露目は2段階としました。まず11月23~30日、新しい美術館ができたことを祝う誕生祭。プリツカー賞を受賞したことで俄然注目されることになった坂茂氏設計の美術館そのものを誕生祭でお披露目です。誕生祭ではまだ収蔵作品を展示せず、OPAMのコンセプトを伝えるために依頼された3人の作家と、こども達の作品だけが展示されました。
他でやるようなことはしたくないという新見館長の意向なのか、どこででも実施するテープカットは行われず、これから結婚式という新郎新婦が最初に入館するというパフォーマンスからスタート。iichico総合文化センターと繋がるペデストリアンデッキを渡っての入館です。道路を挟んで寿町と高砂町というおめでたい町名にちなんだ演出でした。
さらに、県民の美術館の誕生を共に祝うという県民参加のイベントが目白押しです。美術館の前の道路を歩行者天国とし、美術館の中だけでなくそこでもイベントを実施。建物の一つの目玉である折り戸式の外壁をオープンにし、美術館から歩行者天国までもが一体化したような開放感のある空間を来場者に印象づけました。
県民はこれから30日まで続く誕生祭を通じて、OPAMの建物の魅力に触れ、それは十分に伝わることでしょう。
そして、来年4月の開館イベントは世界から集まる美術品の企画展。いよいよ美術館の本領を発揮するソフトを前面に出すことで本来の魅力をアピールします。建物を見るよりも作品、企画イベントを見るために美術館を訪れるお客様が中心になるはずです。いわゆる建物見学の冷やかしの来館者は減るので、美術愛好者には落ち着いて鑑賞できるので嬉しいでしょう。
2段階でお披露目することにより、新しい県立美術館に対しての理解をすすめると共に、開館までの半年の間に修正や(場合によっては来館者による汚れや破損の)修復、サイン計画や導線の見直しなども可能となります。商業施設も公共施設も、一度開業して通常営業に移ると簡単には休館したり営業をストップすることはできません。
形ある物に巨額な投資をするビジネスやサービスは、形ができたときがゴールではなくスタートです。そのことを良く理解したオープニング(まだ第一弾ではありますが)だと感心しました。来年4月にはJR大分駅ビル「JRおおいたシティ」を含めた駅周辺の再開発オープンも控えます。来年の春は、大分から目が離せません。
※誕生祭ではマスコミ向け内覧会の案内~当日対応と、式典の取材対応のサポートをさせていただきました。これからも来年の開館に向けて、他の美術館とは違う取組を発信していく予定です。お楽しみに。
大分県立美術館OPAM http://www.opam.jp/
コレクション http://www.opam.jp/page/collection.html
誕生祭フライヤー(PDF) http://www.opam.jp/files/TopicDetail_8284_file.pdf
開館記念展覧会(PDF) http://opam.jp/files/SpcDocumentDetail_3155_file.pdf
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