生鮮食品を除いた物価指数が前の年の同じ月を2.9%上まわって、17か月連続の上昇となりました。消費税率の引き上げで、消費者物価指数は2%程度押し上げられると日銀は試算していますので、増税分を除いた上昇率は、0.9%程度と見られます。
一方、先日発表され市場に大きなショックを与えた7~9月期のGDP速報値は、年率換算で前期比マイナス1.6%でした。消費税増税の反動で大幅にマイナスになった4~6月に引き続いてのマイナスですから、未だに増税の傷から立ち直れていないことがわかります。アベノミクスで株価(日経平均)はほぼ2倍に上昇し、景気は回復基調にあるといわれている中でのGDPマイナスです。
GDPの約6割は個人消費といわれます。大手企業の業績が好調というなかでのマイナスですから、個人消費の落ち込みが大きく響いているのは明らかです。消費支出が下がれば、消費者を対象とする企業業績(売上)も下がり、その企業とビジネスをしている企業の業績も玉突きで悪くなります。当初、増税前の駆け込みの反動で4~6月期は落ち込むものの、7~9月期はプラスになると予想されていたのに、どうして個人消費は快復しないのでしょう?
高齢者人口は、消費税初導入時の2倍以上
10月は有効求人倍率など雇用関連の指標が改善し、鉱工業生産指数もプラスを維持してはいます。しかし、消費支出は4%のマイナスでした。
私は経済評論家ではないので、マクロ経済を語る程の知見は持っていませんが、消費支出が伸びない一番の要因として、外税表記を認めたことだと考えています。そう考える背景には、人口構成があります。
今年発表された人口推計では、人口の25.1%が65歳以上です。日本人の4人に一人は高齢者で(基本)年金暮らしということです。
これまで消費税が導入・増税されたのは、1989年、1997年、そして今年ですが、1989年の高齢者人口は1,431万人(高齢化率11.6%)、97年が1,976万人(高齢化率15.7%)、そして現在は3,189万人(高齢化率25.1%)です。この人口構成の変化を見逃しています。
今年3月までは税込総額表示で、5%の消費税もあまり意識することなく買い物ができていました。表示価格の現金を財布から出して支払うだけで良かったのです。しかし外税表記を認めたことで、多くの店では店頭表示価格で買い物できなくなりました。
お年寄りにとってはこの外税での支払いがとてもやっかいです。外税表記では、店頭価格に8%を加えての支払いとなりますが、このときに2つの点で購入を躊躇わせることになります。
1点目は、店頭の価格が税込なのか税別なのかを確認しなければならないこと。外税だといちいち計算しなければなりませんが、お年寄りにはその計算自体が苦痛です。多くの場合はレジで初めて支払総額を知ることになります。
2点目は上乗せされる8%という金額が意外に大きいと意識すること。これは5%であっても同様だと思いますが、既述のように内税では意識せずにすみました。外税にしたことによって、上乗せされる消費税を意識することになったのです。高額商品であれば尚更その金額のインパクトは大きくなります。
この2点に加えて、表示方法の不統一が更に混乱させています。高齢者にとっては買い物そのものが苦痛になってしまったのではないでしょうか。
個人商店やスーパーでも店によっては税込表記の所もあります。福岡のスーパー「ルミエール」はその価格の安さだけでなく、全品税込価格表示で大変な賑わいです。週末、私も両親の買い物に荷物持ちとして同行することが多いのですが、お客様の大半は高齢者に見えます。価格も安く、店頭表示価格で買い物ができる安心感からでしょうか。
一方、若者は近くのコンビニで買い物をすませ、若い家族連れは、こども達も楽しめる大きなショッピングモールなどに出かけているのでしょう。
今回の増税に際しては、産業界や流通業界からの要望を受け入れ、政府は税別表示を認めてしまいました。消費者(買い手)の利便性よりも企業(売り手)の理論、都合を優先させたのです。しかも、表示方法を統一しませんでした。大きく落ち込み、なかなか回復しない消費支出のトレンドを作ってしまったのは、増税だけではなく外税表記を認めてしまったことにあると思えてなりません。
次期増税に向けては、これまた低所得者・消費者のためという都合の良い業界の要望を受けて、軽減税率の導入などを検討しているようです。このまま税別表記を続けたままだと、さらに複雑になって混乱するだけです。そんなことを検討する前に、税込総額表示に戻す方が消費の回復は早いと思いますがいかがでしょうか?
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