7月30日、カネボウ化粧品の親会社である花王の沢田道隆社長は「グループ一丸となって原因究明と再発防止に取り組む」と記者会見で明言しました。この瞬間から、美白化粧品による「白斑様症状」を引き起こした問題は、カネボウ化粧品の問題から花王グループの問題へとステージを替えました。
今期の花王グループの売り上げへの影響は100億円に達するとみられており、美白化粧品だけでなく他の化粧品についても買い控えが出ているようです。
この30日夜のマスコミ各社の報道では、2011年から消費者の問い合わせがあったとあります。2年前の問い合わせの段階で「異常」と判断していれば事態は全く変わっていたでしょう。
ところで、当社ブライト・ウェイへのアクセスの経路では当然検索エンジンからが一番多いのですが、その検索ワードで多いのが「不祥事」なのです。もちろん、不祥事のニュースを検索してる訳ではなく、不祥事に対する対応策を探してたどり着いているようです。事実、担当者レベルで不安に感じて相談のご連絡を受けることもあります。しかし、現場の不安が経営を動かすことはなかなかありません。当社に相談をしたことで、担当者が突然移動になったり配置転換、あるいはいわれのない降格というケースさえもありました。今回のカネボウ化粧品でも、ひょっとしたら現場では「異常」のサインだと感じていたのに、上司や組織がそれを「別な原因にすり替え」ていたり、「見て見ぬふり」をしたりと「握りつぶしていた」のかもしれません。
カネボウ化粧品の話題に話を戻すと、7月4日最初の公表時には、美白化粧品の使用を止めれば回復するとされていました。しかし、1ヶ月を経過した現在では「回復」どころか被害者の数は拡大するばかりです。
7月23日の
お詫びと自主回収発表後の状況、並びに弊社の対応について(第2報) には「当該製品を使用し、白斑様症状を発症したお客様には、完治するまで責任をもって対応する」とあります。
考えたくはありませんが、2008年にサイゼリヤでレシートがなくてもピザの返金に応じるとしたときに、食べてもいないで食べたと偽って返金請求をした者が少なからず出ました。カネボウ化粧品のケースでもそのような人が現れないとは言えません。また、使用を中止して症状は改善し、本人は安心しているところに友人知人、親戚がけしかけて慰謝料を要求するようなことも今後考えられます。私自身が関わった事故でも、初期の謝罪対応で被害者本人とはスムーズに収束するかに思われたのに、途中から家族や周囲の入れ知恵で応対が豹変し、想定外に時間を要したケースもあります。
また、今回のカネボウ化粧品のケースでは、問題とされている美白化粧品の原料「医薬部外品有効成分“ロドデノール”4‐(4‐ヒドロキシフェニル)‐2‐ブタノール」については、厚生労働省の認可を受けて使用している原料でもあり、現時点で当該原料と発症との因果関係が明確に立証されているわけでもありません。2011年の段階で、「白斑症状の発症と商品使用との間に、因果関係がある可能性を否定できない」として使用中止・製品回収をしていれば企業としてお客様の安心を優先した「自主回収」と受け止められて収束していたはずです。しかし、そこから2年も「放置」したことによって被害者の数は増え、対応のステージは変わってしまいました。
ロドデノールを認可した厚生労働省の面子もあるでしょうから、発症の原因物質、あるいは発症に至る使用条件が特定されるまでは時間がかかるでしょう。あるいは原因を特定できないまま「迷宮入り」するかもしれません。そうなると、「完治するまで責任をもって対応する」とする範囲と時間の拡大解釈で、花王グループがいくらの負担を強いられるのか見当がつきません。
大きな事故や事件には、初期に小さなサインが発せられているものです。そのサインを見逃さないこと、見て見ぬふりをしないことがお客様の被害も企業のダメージも拡大させないポイントだということを、今回改めて気づかせてくれることとなってしまいました。
ブライト・ウェイへのご相談はこちらから。