2013年10月28日月曜日

みずほ頭取は残留、阪急阪神ホテルズ社長は辞任   -この違いは?

今日は注目されていた2つの不祥事のTopの責任の取り方が、図らずも同じ日に発表されました。

みずほ銀行は、暴力団員らへの融資に関して第三者委員会が調査報告書を公表したのを受け、金融庁への業務改善計画を提出すると共に社内処分を発表しました。それによると、塚本隆史会長が来月1日付けで銀行の会長を辞任し、持ち株会社、「みずほフィナンシャルグループ」の会長職にはとどまるものの役員報酬を6か月間ゼロに。法令遵守を担当してきた常務と執行役員の2人も来月1日付けで辞任、さらに関係する役員を減俸の処分とするなど、銀行と持ち株会社、合わせて42人の役員を減俸などの処分としました。佐藤頭取は役員報酬を6か月間ゼロとしますが、辞任はせずそのまま頭取の職に留まります。

一方、料理メニューの不適切表示で世間を賑わせている阪急阪神ホテルグループ。午後8時から緊急会見を開き、出崎社長の辞任を発表しました。

この2つの不祥事で、どちらのトップの責任が重いのかを言及するのは難しいところです。どちらも世間を騒がし、生活者の期待と信頼を裏切ったことに関しては変わりありません。しかし、一方は辞任し、一方は留任。さて、この違いはどうしてでしょう?

違いは、ステークホルダーのスイッチングコストの差ではないかと考えます。
ホテルやレストランは、他に選択肢が無いなど余程の環境条件や個別の繋がりがある顧客でない限り、都市圏ではいくらでも代わりは見つかります。しかし銀行は代わりの銀行はあるものの、給与振り込みや公共料金、カードの引き落としなど、口座にはさまざまな縛りができてしまっています。メインバンクになっていれば、口座を変えることはなかなかに大変なことです。借り入れをしている企業にとっても、今回の事があるから借入先を変えますともいきません。
ドラマ半沢直樹でも描かれていましたが、恐らくメガバンクの組織内のパワーゲームは熾烈なのでしょう。しかし、それは口座を持つ個人顧客には関係の無いこと。ほとんどの個人顧客は、銀行にとっては資金提供者にしか過ぎません。いかに囲い込むか、運用資金を確保できるかは預金口座の獲得にかかってきます。普通預金に定期預金、様々なポイントプログラムで囲い込まれた口座を変更するには膨大なパワー、スイッチングコストが必要です。みずほ銀行としては、このような囲い込みをした個人顧客の口座は離れないだろうとの読みがあるのでしょう。
社内処分が世間的に見て甘いと言われようとも、業績には影響は無いとの判断があるのかもしれません。 結局は自己保身のための仕組みを作り上げていたといったら言い過ぎでしょうか?

これはみずほ銀行に限ったことではないでしょう。銀行に限らず鉄道や電力、ガスなどの生活インフラを担う企業の経営陣には、高いスイッチングコストを背景に少なからずこのような意識があるのではないかと思える記者会見をこれまでにも多く目にしています。

中小・中堅企業においても、ワンマン経営の企業では経営者のおごりが同じような過ちを犯しかねません。その時は、インフラ企業とは違いスイッチングコストが小さな業種・企業は、あっという間に顧客離れを起こして窮地に陥ることになります。

阪急阪神ホールディングス、みずほ銀行。どちらの会見でも、顧客・消費者への視点・思いが感じられませんでした。どちらも組織に混乱を招き、親会社、行政に迷惑をかけたから反省して処分をしましたという内容。反面教師としてのお手本としてください。

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