詳しくはmiku35号の記事に譲るとして、簡単に整理してみました。
美しいBC州都ビクトリアの州議会議事堂 |
●女性が外で働くということ
日本で女性が外で働く、自立して男性と互して働くことが認識されるようになったのは、1986年に男女雇用機会均等法が施行されてから。それまでは、ほとんどの企業では女性は男性のサポートとしての仕事しかさせてもらえていませんでした。雇均法施行直後にはバブル景気に突入し、好況を背景に一気に女性の社会進出が進みました。
日本の法律の多くは、その基礎が明治時代に制定されています。元武士と公家が作った明治政府のもとで作られた法律です。家父長制度が存在し、男性が家計・家族を支える前提の仕組みの元で様々な法律や社会秩序が作られました。そのため日本において女性の働き方を議論する際、男性が外に出て女性は家を守るということを基本として語られてきました。
30年ほど前はまだ「お嬢様学校」が存在し、卒業生の大半の職業は「家事手伝い」という時代もあったし、花嫁学校もありました(外交官や商社マンの婦人になる女性向けコースなど)。
しかし大学進学率や卒業生の就職率などの推移を見ると、もはや男女の差はほとんどなくなり、平成20年のデータでは大卒女子の就職率は男性を上まわってさえいます。
「平成20年版 働く女性の実情」-厚生労働省発表、「大卒女性の働き方」から
最新版の統計は「平成22年版 働く女性の実情」
一方で、農家や商家など家業を持つ家では、女性も男性と同じ職場で働くのが当たり前です。
働き方を議論する余地などありません。最初から女性も労働力として組み入れられています。外ではなく中で働いているのですから、仕事と家事や子育ては多くは同時並行的に進んでいます。
ところで、日本で女性に参政権が与えられたのは戦後のこと。意外にこのことを忘れてしまっています。因みに、ニュージーランドやカナダでは、1920年までには女性の被選挙権も認められた普通選挙が実施されていますが、wikipediaによると、子育て先進国として名前が挙がる国々は、ほとんどが1920年までに男女平等の参政権を獲得しています。日本でも大正デモクラシーが盛んだった頃ですが、女性の参政権を獲得することはできませんでした。
こうしてみると、女性の参政権獲得の遅れの分だけ女性の社会進出が遅れ、結果として子育て支援策や子育て環境整備の遅れに繋がっていまっているのかもしれません。
●子どもを一人にしないという前提
親にとって等しく求められるのは、子どもの安全確保。国や貧富の差は関係ありません。ニュージーランドでもカナダでも、そしてもちろんイギリスもですが、13歳未満の子どもには常に大人が付いていなければなりません。子どもだけにすることは法律で禁じられています。
家で留守番させただけで通報され、親は逮捕されると言います。幼稚園や保育園は言うまでもなく、小学校の送り迎えも親が一緒でなければなりません。今回取材した家族でも、自家用車を持たないので、バスを乗り継いで毎日送り迎えをしているということでした。
子どもは親に守られながら育てるという前提で社会全体が動いています。学校の送り迎えは常に母親だけというわけにはいかないので、父親の早退や近所の家族同士で迎えに行ったり預かったりが普通に行われています。小学校が終わる(幼稚園や保育園も)3時頃、お迎えの車で渋滞するということも日常です。会社や職場、そして社会全体もその前提で動いていると言うことです。
日本は、古くから集団責任体制が発達し結束も強かったために、コミュニティ内では相互セキュリティの監視の目が行き届いていました。コミュニティ内では子ども達も親と離れて自由に移動し、親でなくとも誰かが見守っていました。戦前まではコミュニティのこのようなセキュリティも機能していました。しかし、高度経済成長と共にコミュニティは徐々に崩れていきます。鍵っ子という言葉も生まれました。だからといって、子どもの安全のために子どもだけにしてはいけないという法律を定めるなどということは、日本では思いも付かない発想です。今でも日本は安全な国ではありますが、子どもにとっての安全という意味では戦前のそれとはその背景が全く変わり、決して安全とは言い切れなくなっています。
●育休明けの地位と給与を法律で保証するカナダ
カナダ(BC州)では、出産のために育休を取ることは当たりまえです。1年間の育児休暇を夫婦でシェアすることができ、母親が30週取って父親が20週取るということも可能です。そし て、育児休暇を取っても、元の職場で元の仕事に同じ給与条件で復帰することができます。これは法律で保証されているので、安心して育休も取得できるし出産 にも臨めるのです。
上記、「平成22年版 働く女性の実情」でも、M字型カーブの解消が課題と指摘されてはいるものの、カナダ(BC州)のように法律で職場復帰を保証するというところまでは言及されていません。
●保育園は安くないけれど狭き門
個人宅のchild day care |
そんなに高い保育料を負担してまでどうして?という疑問に、みな口々に「キャリアを繋ぐためには、負担は大きいけれどそのくらいは当たり前」と答えます。育休で身分が保証されてるのは1年ですが、その後職場に戻るためにはやはり子どもを預かってもらわなければなりません。2歳になると保育料も下がり預けやすくなるので、それまでは給料の全額をつぎ込んででも職場に戻るのだと言います。自分の仕事に対するこだわりやキャリアに対する考え方も明確です。
職場に戻れば、社会全体が子育てをサポートする仕組みになっているので気兼ねすること無く働けるし、もしもの早退にも寛容です。そもそも、3時や4時に仕事を終えて退社するのが普通なのですから。
ニュージーランドでは毎日4時頃には帰宅の渋滞が始まり、バンクーバーでは感謝祭の3連休の前日、3時過ぎに帰宅のための大渋滞を体験しました。3連休に出かける準備をするためだそうです。
いずれも日本では考えられません。
●幼稚園は教育機関、保育園は?
日本では、長い間子どもを育てるのは母親の役割とされていました。
そのため、保育園は保育に欠ける家庭・子どもをサポートするための福祉施設という考え方です。母親が働きに行かざるを得ない家庭で、子どもを家に残せないから保育園に預けるという、ある意味「後ろめたさを感じつつ子どもを預けなさい」と言わんばかりの位置づけと言えます。
対して、ニュージーランドは幼児期においては教育を担う場と位置づけられ、カナダにおいては(特に女性の)就労をサポートするためにありました。
一 方、義務教育を受ける前準備としての幼児教育の場は幼稚園です。カナダにおいても同様で、3歳からは基本的にプリスクール(幼稚園)なのですが、基本の保育時間は3時までですので小学校の学童保育とかわりません。
まるで個人宅のような佇まいの保育園 |
ニュージーランドの子育て
●就労サポートと子育て支援を分けて考える
ニュージーランドは、子どもの健やかは成長をサポートするために様々な仕組みが整備されていました。カナダBC州では、女性が働いていることが前提で、妊娠・出産がその妨げにならない社会があり、子育て支援の仕組みができあがっているという印象でした。
日本では、明治時代に作られた法律や仕組みを引きずりながら、世の中の変化を先取りすることも対応することもできないままに、ズルズルと時間が過ぎているようです。
カナダのように、出産・育児が働く事の妨げにならない社会作りがまず第一。現在の待機児童の解消の目的はこちらです。子育て支援ではなく、女性の就労支援です。
そして子育て支援は、ワクチン接種の無料化(カナダBC州ではインフルエンザも含め基本無料)や子育て手当、教育関連費の政府負担の割合を増すなど、子どもを持つことができるだけ家計の負担にならないように支援することではないでしょうか。
※ニュージーランドは合計特殊出生率が2.1を越えています。カナダBC州は、これから2020年までに、子どもの数が1割増えることが予想され、6歳までの子どものサポートに特化した「児童家庭省」という独立した省を設置。2012年にはTHE Families agenda For British Columbiaを発表、2013年にはBC Early Childhood Development Centreを設立しました。これから増える子どもの受け入れ先の拡大と情報提供・マッチングサポートに取り組むということでした。
参考データ 合計特出生率ランキング
→ブリティッシュ・コロンビア州の子育て支援を整理しました
→Nobody's Perfect (ノーバディズ パーフェクト)発祥の国で、現状を聞いて来ました
→Child Care Resource Centre に代わるのは日本では?
ブライト・ウェイへのご相談はこちらから。
カナダのように、出産・育児が働く事の妨げにならない社会作りがまず第一。現在の待機児童の解消の目的はこちらです。子育て支援ではなく、女性の就労支援です。
そして子育て支援は、ワクチン接種の無料化(カナダBC州ではインフルエンザも含め基本無料)や子育て手当、教育関連費の政府負担の割合を増すなど、子どもを持つことができるだけ家計の負担にならないように支援することではないでしょうか。
※ニュージーランドは合計特殊出生率が2.1を越えています。カナダBC州は、これから2020年までに、子どもの数が1割増えることが予想され、6歳までの子どものサポートに特化した「児童家庭省」という独立した省を設置。2012年にはTHE Families agenda For British Columbiaを発表、2013年にはBC Early Childhood Development Centreを設立しました。これから増える子どもの受け入れ先の拡大と情報提供・マッチングサポートに取り組むということでした。
参考データ 合計特出生率ランキング
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