話しは変わりますが、VWの不正報道が始まるタイミングと前後して放送が終了した、フジテレビの「リスクの神様」はご覧になりましたか?総合商社「サンライズ物産」とその関係会社に次々と起こる危機(クライシス) に際し、危機対策室が対応して解決するというドラマでした。スタート当初は、一般企業でも起こりそうな(あるいは過去に実際に起こった似たような)危機をテーマにしていたので、自社と重ねながら見ていた経営者や管理職の方も多かったのではないでしょうか。ところが、終盤になると隠されていた会社の不正を暴く権力闘争の話しへと変わっていき、少し現実離れしたフィクションとして最終回を迎えたと思ったのでした。
ところが、VWのディーゼルエンジン排ガス不正のニュースが、背景が明らかになるにつれてこの「リスクの神様」のストーリーと重なってきたではありませんか。商社と自動車メーカー、エネルギー事業での損失隠しとエンジンの性能不正隠蔽と、業界や隠そうとした中身の違いはあるものの、似たような展開。背景にTOPの権力争いが見え隠れするところまで重なっています。
ドラマでは、危機対策室・リスクの神様の活躍で会社の最悪の事態は避けることができました。
しかし、VWの不正については、2013年には欧州委員会は認知していたと報道されています。またトヨタや競合メーカーも、数値の異常さから不正があるのではと疑問を投げかけていたといいます。当然VW社内では不正が発覚したときのことも想定できていたでしょうし、隠し通せるとは思っていなかったでしょう。本来なら遅くとも2013年に何かしらのメッセージが発表されても良かったはずです。それなのに2年間、隠す事以外に何も行動を起こしていなかったように見えます。独裁的なTOPが君臨して正常な判断ができなくなった企業の典型的な行動です。
アメリカで不正が公になり、世界的に問題になってからのVWから(日本の)ユーザーに対してのコミュニケーションについては疑問が残ります。
私は長男が生まれた1990年にパサートヴァリアントを購入して以来のVWユーザーです。今回の一連の報道を受けて、まず9月25日に「Volkswagenに関する報道について」とのメールが届きました。メールの送信者の名前は「フォルクスワーゲン グループ ジャパン株式会社」となっていました。メールの内容は、VWを愛するオーナーにとってはとても情けない、がっかりするものでした。そしてこのときにはホームページには何も掲載されていませんでした。
さらに10月2日、改めて 「[重要] VW Japan 代表からお客様へ」というメールが届きました。その文面と同じ内容がVWジャパンのホームページにも掲載されています(写真)。この文面を見て、更にガッカリしていまいました。冒頭、「VWジャパンが輸入して販売した車は今回の不正には該当しないから安心して欲しい」という内容。これは違うでしょう。そもそも、今回の問題はそのまま乗り続けていて事故に繋がるとか人命に関わることではないのです。安心するというのは何に対してなのでしょうか?これまで企業ポリシーやVWブランドに対して信頼を置いていたからこそ、なおさら感じる違和感です。
今回のメールの差出人署名は「フォルクスワーゲングループジャパン株式会社 代表取締役 スヴェン シュタイン」。きっと、本国で作成した(あるいはドイツ人のスヴェン シュタイン氏の)ドイツ語の謝罪文を何も考えずに日本で翻訳しただけでしょう。
フォルクスワーゲンには、「リスクの神様」はいなかったようで、とても残念す。