2015年10月17日土曜日

傾いたマンションの建て替えの同意を得るのは極めて困難-ではこんな案はどうでしょう?

同じ日に、データ改ざんで大きなニュースが2つも飛び込んできました。

1つは東洋ゴム工業の防振ゴムのデータ改ざん。東洋ゴム工業はこれまで2度のデータ改ざんが発覚し、今度で3度目。大きな問題となってニュースに流れ始めた所に、今度はデータの改ざんがもとでマンションが傾いているというニュース。
三井不動産レジデンシャルが横浜で販売したマンションの1棟が少し傾いていて、調べてみると基礎工事に不備があったことがわかりました。原因は、くい打ちを担当した旭化成建材で、「担当者がデータの測定に失敗し、手元にある別のデータを転用した可能性が高い」としています。傾いた建物の補強や改修、調査にかかる費用については旭化成建材が全額を負担する方針を示しています。17日までの報道によると、4棟のマンションの計473本の杭のうち虚偽データは70本にのぼるようです。また、施工時のセメント使用量の偽装も発覚しています。
旭化成は子会社の旭化成建材がくい打ちしたマンションについて、記録が残る過去の地盤データをすべて調査する方針を明らかにしました。対象はデータを保管している過去約10年分で、3千棟ほどになるといいます。
旭化成は鬼怒川の堤防決壊の際に、洪水の激流に耐えた「白い家」としてヘーベルハウスが話題になり株を上げたのもつかの間、今度はストップ安まで株を下げてしまいました。

三井不動産レジデンシャルは、調査と同時に住民に説明会を開き、今後の対応を提案していますが、まず簡単にはまとまらないでしょう。毎日新聞の記事では、「国土交通省によると、複数の棟がある団地型のマンションで全棟を建て替える場合は、区分所有法に基づき、『全棟の区分所有者および議決権の5分の4以上の賛成』と、『各棟の区分所有者および議決権の3分の2以上の賛成』が必要とされる」とあります。一時退去をして建て替えるには、このとりまとめは困難を極めます。意見が対立して住民間でトラブルになることも少なくありません。そうなると、まとまるものもまとまらなくなります。

住民(所有者)の視点で問題点を整理すると


今回の問題は、2つの視点で切り分ける必要があります。

1,建築物の安全性と法的な問題。
 ①既に傾いてはいますが、今後どの程度傾く可能性があるのか、危険があるのか?
   大型の地震が発生したときに耐えられるのか。
 ②建築基準法やその他建築関連法規に関する違反があり、建物を取り壊す必要があるのかどうか。

2,区分所有者の資産価値と住民の住戸(環境)への愛着

まず、建物の安全性について直ちに問題があるのであれば、これは有無を言わせず行政指導により退去命令。売買契約の取り消しと諸費用の払い戻しに加えて、慰謝料の支払いでまとめざるをえないでしょう。
しかし、多少の傾きはあるものの当面の安全性に問題は無く、将来的にも住み続けられるということになれば、区分所有者の意向をとりまとめるのは困難になります。

その時の住民の気持ちは、さまざまなことで揺れ動きます。
①資産としてのマンションの価値へのこだわり
②生活環境として、マンション・環境への愛着
③子どもの学校や通園・通勤など、生活への縛り
 保育園など、転居先で希望通りに入園できるかどうかなどの問題も有ります

①に拘るだけの人には別なマンションとの等価交換か、相応の価格での買い取りで片が付くでしょう。しかし、②・③の人はそうはいきません。
さらに細かく事情を想定すると、
a,不安だから一度転居して、建て替えたら戻りたい
b,不安だけど、この場所が気に入って購入したのだから、できればこのまま住み続けたい
c,不安よりも不満。特に終の棲家と思って購入した高齢者などは、引っ越したくない。
 何もなければ平和な日々だったのに、住民を巻き込むトラブルを起こして腹が立つ!
d,職場や学校・園などが優先。これが原因で転校や転園は考えられない

他にも事情はあるでしょうが、とにかくまとまらないでしょう。

一つの案として


では、こんな案はどうでしょうか。

①全ての区分所有者に返金(手続き・引っ越し費用などの諸費用も)
②期限を切って(5年程度?次の大規模修繕前が目安)居住を認める
 住んでいる間の家賃は、初年度無料、その後毎年周辺相場の1/5,1/3、1/2、3/4、と上がり、それ以後は10割(区分所有者のみが対象)。 転居する際の費用は三井不動産レジデンシャルが負担。
③期限が来たら例外なく退去。その後建て替え、再分譲
 再分譲時の価格メリットはないけれど、優先的に購入はできる。

区分所有者全員に現金が振り込まれ、住み続けたい人にも時間的な余裕ができることで解決策を見つけられるのではないでしょうか。保育園や幼稚園児、小学生や中学生も卒園、卒業まで環境を変えずに済みます。
デベロッパーの三井不動産レジデンシャルも、解体開始日も確定できるし、現居住者の事を考えずに新しいマンションとして設計し直しができ、付加価値を付けて損失を少しでも取り戻すことができるでしょう。

建築の専門家でもないですし、住民のみなさんの思いはもっと複雑かもしれませんが、一つのアイデアとして考えてみました。

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