1月25日、アクリフーズの契約社員が、偽計業務妨害容疑で逮捕されました。昨年末の発表からほぼ1か月、異臭がするという最初の報せから2ヶ月半経過して、やっと一つの区切りを迎えたことになります。
容疑者逮捕を受けて、同日夜、マルハニチロホールディングス社長久代敏男氏、アクリフーズ社長田辺裕氏、群馬工場長木下好夫が揃って記者会見に臨みました。その席で久代社長は「グループ内に悪質な犯罪行為に及ぶ人物の存在を許したことは痛恨の極み」と述べると共に、自らを含め、田辺社長、マルハニチロHDの品質保証担当の役員の辞任、関係する役員の報酬削減などの処分も発表しました。
消費者への健康被害をもたらす事件の原因が、社内の給与制度や管理体制にも有るとの認識を示し、自らの経営責任を明確にしました。 両社長は3月31日をもって辞任、それまでの役員報酬も減額するということです。
しかし、もともと4月1日付けでマルハニチログループの5社は合併してマルハニチロとなることが決まっていますので、何も起こらなくても両社の社長は4月1日以降存在しません。社長席がある最終日に辞任することになります。潔く引責辞任を発表したところまでは、これまでの社長と違うなと思ったのですが、合併がなかったらどうだったんだろうかと穿った見方もしてしまいます。ただし、久代社長は4月からは新会社の取締役相談役に就任する予定でしたが、取り消すということです。
今後は、容疑者の動機や犯行手口などは警察からの発表となるでしょうから、会社としての会見はこれが最後となるのかもしれません。
これまでの記者会見を振り返ると、珍しくキチンと準備されたものでした※。特に昨夜の会見では、久代社長自らが経営責任を明確にし、「引責辞任」を口にしました。テレビニュースや新聞記事では、「責任逃れをする経営者」を悪役に見立てて報道しがちです。しかし今回は、責任追及をして首を取ることが役目だと勘違いしている一部の記者にとっても先手を取られ、それ以上の追求のカードが無くなってしまいました。 これにより、責任問題追求で無駄な時間を使うことなく、事実確認と今後の対応や改善計画などの未来についての整理に集中することができます。
社長の椅子にしがみつく経営者の醜い姿が報道されると、ブランドイメージまで損なうことになりますから、事件発覚当初より、一区切りが付いた段階で引責辞任を発表することは決めていたと思われます。
今回の事件の影響で、2013年度のグループ連結営業利益の下方修正も発表しました。容疑者の動機がまだわかりませんが、給与や待遇に不満があったとの報道もあります。給与や人事制度の不公平感、管理体制の甘さを放置すると従業員の不満が爆発し、制度整備への投資を惜しんだ額の数倍もの損失として跳ね返ってくる可能性を示唆した事件と言えるでしょう。
※記者会見に出席したわけではなく、テレビのニュース報道などで見る限りの印象です。
ブライト・ウェイへのご相談はこちらから。