2014年1月21日火曜日

ノロウィルスなどの食中毒が発生したら

ここ数日、ノロウィルスの集団感染による食中毒のニュースがメディアを騒がせています。
ホテル・レストランなどの飲食業にとどまらず、食品を扱う企業にとっては他人ごとではありません。 実際に私がサポートしたホテルでも食中毒を出し、厳しい対応をした経験もあります。
そこで、食中毒が発生した場合の対応を簡単にまとめてみます。

1,食中毒の報せは外から来ると心得る
食中毒発生の報せは、必ず外からもたらされます。そのほとんどは保健所からで、まれにマスコミの取材がそれよりも早いこともあります。食中毒の被害者が身内などでない限り、内部で発見できることはほとんどありません。報せを受けたときにはまさに晴天の霹靂です。
いつ、どのような方法で食中毒発生の報せが来るかはわかりません。経営者の元に直接報されるのか、たまたま電話を取った人が知るのか。このような非常事態に際し、 直ぐに経営者・現場責任者に情報が上がるように末端まで徹底していないと、知らないうちにマスコミが押し寄せて大変な騒ぎとなってしまいます。こうなると もう手遅れです。 

2,報せを受けて最初にすることは
大きな組織であれば「対策室」の設置となりますが、それほど大きくない組織でも直ぐに会議室に集まり対応協議です。しかし、会議室に集まるまでの間にも周辺では事は進んでいます。
まず、その時に対応指示・決定ができる、可能な限り大きな権限を持つ人を司令塔として決めます。可能であれば社長などの経営者でしょうが、現場から遠くにいることも多いので、スタートはその現場の組織図で一番上にいる人となるでしょう。
ホテルであれば総支配人、あるいは支配人。レストランであれば支配人や店長ということになります。社長、経営責任者が、この事案については誰の指示で動くのかを明確に表明してください。指揮官・司令塔のいない状態では正しい対応はまず不可能です。

3,指示することは4つ
司令塔からの的確な指示が求められますが、以下の4つを手分けして当たるよう、その責任者と担当を振り分けます。この時点で、保健所から営業停止処分が出ているはずですので、全員で事に当たります。
(1)被害者と症状・状況の把握
(2)保健所・マスコミ対応
(3)原因の調査
(4) お客様へのお知らせと今後の対応策の検討
以下、具体的に記します。

(1)被害者と症状・状況の把握
多くの場合、被害者は入院するか病院に運ばれて手当を受けています。保健所からは、入院先や搬送先、あるいは症状を訴えて治療を受けた病院などの情報も知らされます。その情報を元にしかるべき人が直ぐに謝罪とお見舞いに出向きます。入院先が複数の場合には、手分けして向かってください(順にまわっていると遅くなって既に帰られていたり、心象を害しかねません)。

最初の訪問では具合をお尋ねし、退院後の住所や連絡先を確認するにとどめ、改めて見舞いと謝罪に参りますと名刺を置いて一旦引き上げます。
食中毒発生の現場がホテルで対応が夜であれば、タオルや歯ブラシなどの洗面セットを用意して行くと良いでしょう。被害に遭われた方は、着替えも洗面道具も持たないままいきなりの入院で朝を迎えることになるからです。

(2)保健所・マスコミ対応
保健所からは具体的な指摘や改善指示が示されますので、粛々と対応します。
一方でマスコミ取材に対しての窓口は一本化し、対応する場所も決めます。普通は、社長や総支配人、店長のコメントを求められますのでそれに準じた人が良いでしょう。広報組織が有る会社であれば、広報部長などが対応することも可能です。社長や総支配人が被害者へのお見舞いを優先するかメディア対応を優先するかは、その時々で判断です。
特に、先日のアクリフーズの冷凍食品の事例のような、現在進行形で被害が拡大する恐れがあるようなケースでは、社長にはマスメディアを通じて発表することで被害拡大を防ぐ事が優先されます。
言うまでもありませんが、言い訳や自己弁護をするような発言は厳禁です。

(3)原因の調査
食中毒と断定された時点で、保健所からは原因菌や検出されたウィルスの情報が報されます。その情報を元に、発生場所、保菌者の特定、発生原因などを調査します。ほとんどは調理場・厨房が発生源ですが、そのような固定観念で調査を始めると発生場所・原因を見誤ることがあります。
特にノロウィルスでは、空気中に浮遊して拡散する場合が多くあります。2006年、池袋のホテルで起こったノロウィルスによる食中毒は、吐瀉物の処理が不適切であったためにウィルスが空気中を舞い、感染が広がりました。

(4) お客様へのお知らせと今後の対応策の検討
多くの場合先にメディアで報道されますので、こちらから連絡する以前にお客様の耳に入っています。 それでも、ご予約をいただいているお客様や常連のお客様へは個別にご連絡の必要があります。特に、営業停止期間中にご予約をいただいているお客様については早急な連絡と善後策の提示が必要です。ホテルや婚礼施設などであれば、結婚式・披露宴や宴会のケースもあります。開宴できないとなれば多くのお客様のスケジュールが狂うことになります。出席・列席予定者の中には、直ぐに連絡が取れない人もいるかもしれませんし、海外などの遠方からわざわざ来られる方もいます。ご予約をいただいているお客様からは、直ぐにお問い合わせがあることでしょう。同時にどのような対応をするか回答を求められます。もちろん、食中毒発生を受けて、キャンセルを申し出られるケースもあります。
そのような宴席をどのように振り替えるか、乗り切るか、一度シミュレーションをしておくことをオススメします。

食中毒の原因は、人に有ったり器機にあったり、あるいは仕組みにあったりと様々です。もちろん、複合的な要因で発生することがほとんどです。また、夏はO-157などの高病原性大腸菌を始めとする細菌による食中毒が中心になりますし、冬はウィルスによる感染性食中毒が中心となります。当然、原因菌によっても対応は変わって来ます。あまり詳細に書き出すときりがありませんので、今回はこのあたりにとどめておきます。
 
以下、ノロウィルスに関するご参考
厚生労働省 ノロウィルスに関するQ&A
ノロウイルス食中毒対策について(提言)-薬事・食品衛生審議会 食品衛生分科会食中毒部
厚生労働省 ノロウィルス対策リーフレット 
内閣府 食品安全委員会 ノロウィルスについて


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