2018年12月31日月曜日

日本のIWC脱退が気仙沼のサメ・フカヒレ産業に影響を与える懸念

12月26日、日本がIWCを脱退し商業捕鯨を再開すると表明しました。反捕鯨国はじめ海外の多くの国が報道するなど関心を寄せているだけでなく、今回の政府決定については、国内でも賛否の声が上がっています。
私はこのニュースに接し、気仙沼のサメ関連産業のことが心配になりました。

気仙沼産のふかひれを使った「吉兆」銀座店の「和風ふかひれ」
ダイナースクラブの会員誌「SIGNATURE」の記事より

復興の途半ばの被災地


12月初旬、東日本大震災の被災地であり、日本有数の水産業の町、気仙沼に足を運びました。気仙沼を訪れるのは生まれて初めて。震災後、東北の被災地を訪れるのも初めてです。気仙沼市とはすぐ隣の陸前高田市の様子も高台から臨むことができました。
津波被害から復興半ばの三陸の海沿いの町は、まるで中世のお城や砦の壁のような巨大な防潮堤に囲まれ、 地元の人たちが「板チョコ」のようだと表現するかさ上げされた土地に少しずつ新しい建物が建ち始めている状況でした。
壮絶な体験をした被災者の皆さんは、7年の歳月を経て前向きに生きていこうと少しずつ明るさを取り戻しているようでした。それでも、当時の様子を語る際には時に涙を浮かべ、言葉に詰まるような場面もあります。

東日本大震災からの水産業復旧の進捗状況 (平成29年度 水産白書より)

気仙沼のサメ関連産業


気仙沼といえば三陸沖の豊かな漁場を目の前にする、日本有数の水揚げを誇る漁港です。良質なフカヒレの産地としても有名です。早朝の気仙沼魚市場を見学させていただきましたが、この日も漁港には多くのサメが並んでいました。魚市場の後にはフカヒレの加工工場も見学させていただき、色々なお話しを伺いました。その時にもシーシェパードのクジラの次の標的がサメ漁に向いてきているのではないかと心配されていました。
今月こんなニュースもありました。


洋上で高級食材のフカヒレだけを切り取り、それ以外の魚体を海上投棄するフィンニングが20世紀終盤から国際的に問題視され、様々なキャンペーンやロビー活動が展開されました。5年ほど前には、ふかひれスープを販売する無印良品に対して、販売中止を求めるキャンペーンも展開されました。それに対し無印良品は気仙沼のフカヒレを原料とした商品であることを理由に毅然と反論しました。その時の良品計画のニュースリリースは既にサイトから見られなくなっていますが、その経緯を伝える以下の記事がまだ読む事ができます。


2012年にはすでに、笹川平和財団海洋政策研究所の【Ocean Newsletter】「国際的なサメ保護運動の行方」(桃山学院大学兼任講師鈴木隆史氏)の最後に「気仙沼のサメ産業にも大きな影響を及ぼしかねない」と警鐘を鳴らしています。
気仙沼のフカヒレ加工会社の社長も、サメの保護運動の高まりは輸出を始めとしたフカヒレの流通にも影響を与えていると言います。上の無印良品の反論にもあるように、気仙沼のサメ産業ではフカヒレだけでなく、身から皮・内臓・骨まで全て無駄なく使用されていますが、それがなかなか理解されないと言います。

日本がIWCを脱退し、南氷洋の捕鯨から領海・EEZ内での捕鯨に切り換えると、シーシェパードなどの海洋生物保護団体の活動対象は「サメ」に向かう可能性が高くなるのではないかと心配になる年の瀬となってしまいました。